イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【月曜日のプレイリスト】米津玄師やJO1等引用する曲と、引用された曲をまとめてみました

新曲をチェックすると、時折ある共通項をもった作品に同じタイミングで出会うことがあります。そのような作品をひとくくりにして、プレイリストの形で紹介します。テーマは【引用する曲/された曲】です。今後は月曜にプレイリストを掲載していこうと思います。

 

なんといっても、テレビアニメ『チェンソーマン』(テレビ東京)のオープニングテーマである米津玄師「KICK BACK」を真っ先に挙げなければならないでしょう。

(上記は『チェンソーマン』オープニングテーマのノンクレジット版。)

引用元はモーニング娘。「そうだ! We're ALIVE」(2002)。有名なフレーズを『チェンソーマン』の世界観に照らして引用、昇華しています。元曲を手掛けたつんくさんもnoteにて、この引用の経緯を綴っています。

「KICK BACK」はサブスクで既に大ヒットしており、ビルボードジャパン総合ソングスチャートでの首位初登場も見込まれるだけに、また引用のアナウンスが出たタイミングで既にSNSを賑わせたこともあるゆえ尚の事、モーニング娘。がサブスク解禁されていたならば「そうだ! We're ALIVE」は間違いなく上昇したはずです。

(これは松浦亜弥さんがCMで復帰した際にも思ったことであり、ハロー!プロジェクトの作品を是非サブスク解禁してほしいと強く願っています。)

 

JO1「SuperCali」では、映画『メリー・ポピンズ』(1964)の劇中歌「Supercalifragilisticexpialidocious」の一節(タイトル部分)が引用。デジタル先行リリースですが、米津玄師「KICK BACK」リリースと同日にフィジカルリリースされており、引用曲が明後日発表のビルボードジャパンソングスチャートで首位を争うのは実に興味深いと言えます。

上記はブロードウェイミュージカル版より。JO1「SuperCali」での引用については以前も記載しており、同じ曲を引用元としてJO1と同時期にリリースされた海外の作品もチェック可能です。

 

さらに、先週リリースされたラッパー、フレンチ・モンタナによる「Whippin' It Slowly」では、フージーズ「Killing Me Softly」(1996)をサンプリングしたのみならず、歌詞を引用。どちらかといえばほぼ替え歌に近い状態です。

フージーズ版はロバータ・フラック「Killing Me Softly With His Song」(1973)のカバー。フレンチ・モンタナ「Whippin' It Slowly」もロバータ・フラックのカバーと言えますが、どちらかといえばカバーしたフージーズ版をサンプリング且つ歌詞を引用していると説明したほうが正しいかもしれません。

(ロバータ・フラック版は公式オーディオ。)

 

引用曲のリリースが偶然にも今月重なっていますが、この引用という制作手法は1990年代っぽいと感じています。先程紹介したフージーズは「Killing Me Softly」の前のシングルである「Fu-Gee-La」(1996)において、ティーナ・マリー「Ooh La La La」(1988)のタイトル部分を効果的に引用しています。

また複数曲を引用した作品も登場。メアリー・J. ブライジでは冒頭に坂本九上を向いて歩こう」(1961 2年後に米ビルボードソングスチャートを制覇)をカバーしたテイスト・オブ・ハニーによる1981年版(タイトルは「上を向いて歩こう」の米版同様「Sukiyaki」)の冒頭部分を、サビ終わりにはスタイリスティックス「You Are Everything」(1971)を、それぞれ引用しています。

(スタイリスティックス「You Are Everything」は公式オーディオ。)

 

 

米津玄師「KICK BACK」は『チェンソーマン』の世界観を意識した上でのモーニング娘。「そうだ! We're ALIVE」の効果的な引用であり、事前にきちんと許可をとることも含め、引用元に対して敬意を払っています。引用が効いているものには聴き手側も賛辞を送り、曲の新たな可能性や拡がりを楽しみたいものです。

事前連絡等が無かった例を今回のプレイリスト作成のタイミングで見つけたことで、敬意や賛辞の重要性をより強く感じています(最終的には解決しているとのことで、後述するプレイリストにも収録しました)。サブスクの普及で曲が見つかりやすくなったこと、海外にJ-Popが届きやすくなったことで万一の際には高額な訴訟を起こされるだろう可能性も踏まえ、引用する際には事前許可がますます必須になるのではないでしょうか。

 

 

今回紹介した曲はプレイリストにまとめていますので、よろしければお聴きください。そして書き加えるならば、このようなプレイリストに入れられない、もしくは公式動画がないために紹介できない曲が複数存在するのは機会損失であり、悔しいと感じています。デジタルアーカイブの充実を、音楽業界には強く願うばかりです。