最新3月9日公開分(3月14日付)ビルボードジャパンアルバムチャートにおいて、気になる動きがみられます。
フィジカルセールス、ダウンロードおよびルックアップの3指標から構成されるビルボードジャパンアルバムチャートのトップ10では、100位以内に1指標のみランクインした作品がHKT48 『アウトスタンディング』(8位)のみ。同作品の指標構成は極端なものとなっています。
上記CHART insight(リンク先はこちら)のチャート構成比から解るように、ダウンロード(紫で表示)およびルックアップ(オレンジ)は300位以内にも入らず加点対象外に。直近5週ではフィジカルセールス(黄色)のみ隔週でトップ10入りし、その都度総合アルバムチャートでも上位進出。最新週においてはトップ10入りを果たしています。
ルックアップ指標はCDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる回数を指し、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測を可能とします。今回の動向を調べてみると、劇場盤に付随するイベント参加権の影響が大きいと考えられ(下記参照)、フィジカルセールス指標との乖離はユニークユーザー数の極端な少なさを想起させるに十分です。
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今回紹介したチャートアクション、AKB48グループにおいてはソングスチャートにおいてよく見られます。
・AKB48「根も葉もRumor」(→CHART insight)
・SKE48「あの頃の君を見つけた」(→CHART insight)
・NMB48「シダレヤナギ」(→CHART insight)
・HKT48 「君とどこかへ行きたい」(→CHART insight)
・NGT48「ポンコツな君が好きだ」(→CHART insight)
・STU48「ヘタレたちよ」(→CHART insight)
上記はAKB48グループ6組が2021年までにリリースしたシングルのうち、直近の作品におけるCHART insight。SKE48「あの頃の君を見つけた」を除き、フィジカルセールス指標が急上昇と急下降を繰り返し、STU48「ヘタレたちよ」においては急下降時に300位以内にも入っていないため、折れ線ではなく点となっています。またフィジカルセールスが安定しているようにみえる「あの頃の君を見つけた」の最終ランクインは昨年12月1日公開分(12月6日付)であり、パタリと止まってしまっているのです。
この動きはフィジカルにイベント参加権が封入されたことが影響したゆえと思われますが、総合順位で100位以内に復活することはほぼありません(総合順位は黒で表示)。これはチャートポリシー変更によりフィジカルセールス指標のウエイトが段階的に減少したこと(係数処理適用枚数の基準値引き下げを含む)が影響すると考えられ、つまりフィジカルのみのヒットが真の社会的ヒットとは言えなくなったことが解ります。
一方、HKT48『アウトスタンディング』はフィジカルセールス突出の度に総合アルバムチャートも大きく上昇。フィジカルセールスのみ突出し且つルックアップと大きく乖離すること、ダウンロード指標も未加算の状況では聴かれているかに疑問が持たれかねないのですが、そのような作品が総合チャートでトップ10入りするとなればビルボードジャパンアルバムチャートが果たして真の社会的ヒットと言えるのか、疑問が生じます。
宇多田ヒカル『BADモード』(→CHART insight)がデジタル先行でリリースされながら、初登場時にはデジタル未解禁の作品に次ぐ総合2位となりました。『BADモード』収録曲はサブスクサービスでも上昇したため、ストリーミング(動画再生含む)および単曲ダウンロードを加えた米ビルボードアルバムチャートのようなユニット換算方式を仮に採っていたならば、フィジカルの加算を待つことなく総合首位に立てたかもしれません。
また最新アルバムチャートにおいて8位の優里『壱』や14位のYOASOBI『THE BOOK 2』もより高い位置にて安定するはずで、そうなればアルバムチャートがより社会に浸透している作品を映す鑑と成り、音楽を聴く方にとっての納得度も高まるのではないでしょうか。チャートポリシー変更の提案については下記ブログエントリーで記していますが、今一度紹介します。
米ビルボードアルバムチャートにも問題がないわけではありませんが、ビルボードジャパンはアルバムチャートのチャートポリシーを米ビルボードに倣うかについて、まず一度議論してほしいと強く願います。
最後に。このブログエントリーでは今回取り上げたAKB48グループの施策(商法と呼ばれるもの)を否定するつもりはありません。ライト層への浸透度が高いといえない作品が総合チャートで上位に来やすいチャート設計への疑問を示しています。