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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

LiSA「炎」が遂にトップ10陥落…ポイントがほぼ右肩下がりとなった3つの理由とは

最新4月7日公開(4月12日付)ビルボードジャパンソングスチャートではLiSA「炎」が12位に後退。昨年10月21日公開(10月26日付)チャートで首位に登場後、通算8週首位の座に立ったこの曲がトップ10内連続エントリーを24週で終えています。

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この「炎」の動向を詳しくチェックすると、見えてくるものがあります。

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注目はポイント前週比。首位登場以降、ポイント前週超えを果たしたのはわずか二回しかありません。昨年10月28日公開(11月2日付)は映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が公開された直後が集計期間であり伸びることは必至、1月6日公開(1月11日付)は年末年始の集計期間ゆえ日本レコード大賞受賞や『NHK紅白歌合戦』出演効果が出た形ですが、その他の週はすべてポイント前週割れを起こしているのです。

ポイント前週超えを果たした週で特に顕著なのが、1月6日公開(1月11日付)におけるダウンロードの前週比5割以上上昇。テレビ出演効果は所有行動、それも即座に手に入れやすいデジタルにより波及することが解ります。

 

"ポイント前週超え"については、昨日のブログエントリーにおけるYOASOBIの動向で述べたばかりです。

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昨年度の年間ソングスチャートを制した「夜に駆ける」を例にとると、大ブレイク以降もポイント前週超えが幾度となく発生。昨年12月2日公開(12月7日付)以降の2021年度では19週中8週でポイント前週超えを達成しています。

YOASOBIを大ブレイクに導いたのはファンとのエンゲージメント確立の巧さにあるということは、このブログでも何度か述べています。しかしながら「夜に駆ける」は2月3日公開(2月8日付)以降ストリーミング再生回数が前週割れを続けている状態であり、その影響力は(少なくとも「夜に駆ける」においては)弱まったと言えるかもしれません。一方で、その2月3日公開分以降ではダウンロードの前週超えが四度発生しており、最新週における『マツコ会議』等のメディア露出効果が表れたと言えるでしょう。無論これには、メディア出演の効果をより増幅させるSNSでのフォローも大きく影響しているものと考えます。

とはいえLiSAさんも、たとえば今年1月15日放送の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS)で特集され、且つ自身も出演しています。しかしながらOA日を集計期間に含む1月20日公開(1月25日付)チャートでは、ダウンロード前週比は他の週より良いものの前週超えは果たせていません。総合ポイントも前週割れを起こしているのです。

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「炎」は興行収入記録を塗り替えた映画主題歌として特大ヒットしたゆえの反動があると言えるかもしれません。しかしその後の仕掛けが十分な効果をもたらさなければポイントは漸減の状態が続くということではないでしょうか。

 

このブログでは、Adoさんや優里さんによる大ヒット中の曲の、その前後の作品もまたヒットしているという例を今週記しました。

LiSAさんも今年初めに「dawn」をフィジカルリリースしているのですが、100位以内在籍がわずか3週にとどまり、ヒットしたとは言い難い状況です。

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「dawn」は「炎」を刺激する役割をあまり成さなかったと言えるかもしれません。

 

"ポイント前週超え"とは逆の状態が続くこと、いわば右肩下がりについてはストリーミング再生回数において紹介したばかりです。

初動時の話題性の高さの反動サブスク(解禁)前からブレイクしていたためにファンやライト層がどちらかといえばサブスクに重きを置いていない可能性…これらが右肩下がりの原因と記載しました。これはサブスクのみにとどまらず、複合指標から成るソングスチャートでも言える気がするのです。

これら原因に加えて、LiSA「炎」についてはタイアップ作品に、歌手以上に曲単位としてファンが付いたことによるヒットと言えるのではないでしょうか。ゆえに『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の興行収入や話題性のダウンに比例する形でポイントが下がり続けたのかもしれません。一方でYOASOBIやAdoさん、優里さんは曲単位以上に歌手全体としてヒットし、ゆえに急激な勢いの減退にはつながりにくいのではないでしょうか。となると、歌手としての魅力を高めるエンゲージメントの徹底はやはり重要に成ってくるのだと強く考えます。

 

おそらくは今年度のビルボードジャパンソングスチャートをLiSA「炎」が制するだろうと考えていた方は少なくないと思いますが、優里「ドライフラワー」の逆転は必至かもしれません。