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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン年間チャート発表、2020年のチャートトピックス10項目とは

(※追記(12月4日 13時12分):記事およびブログのリンク先を追加しました。)

(※追記(2023年8月31日17時12分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。また一部リンクについては現在確認できなくなっており、その旨を記載しています。)

 

 

 

2020年度のビルボードジャパン年間チャートが発表されました。集計期間は2019年11月25日~2020年11月22日(2019年12月9日付~2020年11月30日付)となります。

ソングスチャート(JAPAN HOT 100)ではYOASOBI「夜に駆ける」が終盤でOfficial髭男dism「I LOVE...」を逆転し、史上初となるCD未リリース曲での年間首位を獲得。アルバムチャート(HOT Albums)は米津玄師『STRAY SHEEP』が同チャート開始後初となる構成3指標完全制覇を達成。そしてアーティストランキング(TOP Artists)はOfficial髭男dismが堂々のナンバーワンを記録しました。各チャートの詳細はこちらから。

・年間ソングスチャートおよび各指標

 

・年間アニメーションソングスチャート

 

・年間アルバムチャートおよび各指標

 

・年間作詞家および作曲家チャート

 

・年間アーティストランキング

首位獲得歌手のインタビューはこちらに。

かなり長くなりましたが、いつでも確認できるようにリンクを貼った形です。

また、2020年度ビルボードジャパンソングスチャートにおける定点観測は別途ブログに記しています。

 

 

ではここから、ソングスチャートを中心に年間チャートから見えてくる今年度のチャートトピックスを10項目、出していきたいと思います。昨年については下記に。

 

それでは、今年度の10項目を取り上げていきます。

目次

 

① YOASOBI「夜に駆ける」、デビュー年度にソングスチャートを制覇

最新12月7日付におけるチャート推移(CHART insight)はこちら。

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2020年度における総合および各指標の順位、およびポイントの動向は下記に。

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YOASOBIはコンポーザーのAyaseさんとボーカルのikura(幾田りら)さんによる、昨年11月結成のユニット。ソニー・ミュージックが運営する、題目に沿って小説やイラスト等の投稿を募るいわば芸術版SNSのmonogatary.comにおいて開催されたイベントにてソニーミュージック賞が用意され、その受賞小説を楽曲化したのが「夜に駆ける」でした。YOASOBIは以降も、小説等をベースにした作品をコンスタントに発表し、来年1月6日に初のEP『THE BOOK』をリリースします。言い換えればそれまで一切フィジカル(CD、レコードおよびカセットテープといった物理的媒体)をリリースしておらず、年間ソングスチャートでは初めてCD未リリースにて制した作品および歌手となりました。

YOASOBIについては、以前担当していたラジオ番組での同歌手特集のタイミングでブログエントリーにまとめています。流行の理由として取り上げた4点とは”楽曲表現の多角的な訴求” ”ボカロやボカロP、歌ってみた系というジャンルの確立” ”受け手が参加する姿勢” ”運営によるファンとのエンゲージメントの徹底”を指し、またプラスαとは”ソニー・ミュージックのSNS姿勢の巧さ”のこと。この5点のポイント、そしてYOASOBI「夜に駆ける」の勝利から今年のチャートトピックスの過半数について語れるゆえ、後述していきます。それにしても、デビュー年度(「夜に駆ける」のリリースは今年度内である2019年12月15日)に年間チャートを制するというのは快挙以外の何物でもありません。 

 

 

② コロナ禍によるCDリリース減少と、CD未リリースでもヒットできる環境の醸成

YOASOBI「夜に駆ける」がチャートを初めて制したのは6月1日付。その前週には瑛人「香水」が頂点に立っています。当時はコロナ禍による緊急事態宣言発令に伴うCDショップ(実店舗)の自粛やCDリリースの延期、カラオケ客の減少とそれに伴うビルボードジャパンソングスチャートのカラオケ指標集計取り止め等があり、逆にシングルCDセールスに強くない、もしくはCD自体リリースしていない曲が上位進出できる環境にあったと言えます。

CDリリースに頼らずともこれらの楽曲が上昇しやすい、もしくは世に出やすい環境を築き上げたのが配信代行サービスの興隆。「香水」はTuneCore Japan経由でダウンロードやサブスク解禁がなされ、他にもBIG UP!等のサービスがコロナ禍以降注目を集めることになった曲をバックアップしており、配信代行サービスは日本の音楽業界になくてはならないものになりました。かつてメジャーレーベルに在籍していた歌手でこのサービスを用いる方も少なくなく、メジャー/インディに関係なく曲が注目されやすい現在にあっては欠かせないサービスなのです。瑛人さんに至っては「香水」リリース当時、レコード会社はおろか芸能事務所にも所属しておらず、完全インディペンデントという状況でした。

年間アーティストランキングをみると、CD未リリースでも上位に進出できる状況が見えてきます。20位以内の歌手においては、YOASOBI(8位)、NiziU(15位)そして瑛人さん(17位)の3組が当該年度まで一切CDをリリースしていません。下記は年間アーティストランキングの紹介ページから遷移できる、年間アーティストランキング上位20組の順位およびチャート構成8指標(アルバムチャートは3指標)の順位を指します。

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③ ”愛される動画”のヒットとサブスクへの波及

今回のブログエントリーの最初に紹介している年間チャート総括記事、その冒頭では新型コロナウィルスの猛威という状況下において『従来の地上波発信型、メディア・ミックス型、音楽フェス発信型に加え、TikTokYouTubeSNS、ストリーミングによるヒットのパターンが日本でも確立されるという新しい動きも見られた』と記されています。コロナ禍に伴う自粛期間はCDセールス等に悪影響を及ぼした一方で、各サブスクサービスやYouTubeに没入する方が増え、利用者や加入者が増えています。これはTikTokも同様で、このタイミングではじめて見た、もしくは投稿した方もいらっしゃるのではないでしょうか。

(ちなみにCDセールスのみならずダウンロードもダウンしている模様です。アルバムチャートでの言及はありませんが、ソングスチャートにおいては『今年の年間“Download Songs”100位のトータル・ポイントを合算すると1,381,290ポイントとなり、昨年の1,537,889から156,599ポイントほどダウン』。コロナ禍に伴うリリース作品の減少もありますが、『ストリーミングが浸透してDL全体の売上が下がってきていること』が真っ先に挙げられていることから、所有指標から接触指標へという流れが着実に進行し、それがコロナ禍によってより加速されたと言えるでしょう(『』内は上記ダウンロードソングスチャートの記事より)。)

このYouTubeTikTokの存在が音楽のあり方を変えたと言っても過言ではありません。動画サービスでアップされた"歌ってみた""踊ってみた"動画の元曲や、日常等を示す動画のBGMに用いられる曲等、ユーザーに使われることでチャートを駆け上がるという新しいヒットの形が定着したのです。曲を多角的に楽しむ、体験を共有することで生まれた流れは、チョコレートプラネットのパロディMVが「香水」人気をより高めたことに代表されます。 

これら動画はUGC(ユーザー生成コンテンツ)として元曲の動画再生やストリーミング指標に加算され、曲のヒットを押し上げました。人気動画を弊ブログでは”愛される動画”と表現したことがありますが、まさに動画に用いられやすい、愛される曲が2020年度の上位進出曲に目立つ傾向なのです。

ただし2021年度のチャートからは、UGCの再生分が動画再生およびストリーミング指標から除外され、新年度の初週には「夜に駆ける」や「香水」のポイント前週比が前週比15%以上落としています。UGCが新たなヒットの形として定着したゆえにUGCのチャートを別途新設したことが除外の理由ですが、仮に2020年度にチャートポリシー変更を実施していたならば、ともすれば「夜に駆ける」の年間チャート制覇はなかったかもしれません。

 

 

④ CD中心策から離れたソニーミュージック、弱点克服し大ヒットを連発

この件については別途、一昨日のブログにて公開しています。

各種年間チャート、トップ20におけるソニーミュージック在籍歌手の占有数はソングスチャートで9曲、アルバムチャートで6作品、そしてトップアーティストで7組。『NHK紅白歌合戦』でも多くの歌手が出演を決めており、仮に今後YOASOBIや米津玄師さんの追加出演が決まったならば尚の事、今年のソニーミュージックの勢いの凄まじさが解ろうというものです。そしてさらに。

新年度2週目となる12月14日付ビルボードジャパンソングスチャート(12月9日発表予定)ではNiziU「Step and a step」の総合首位獲得が見込まれています。CDセールス加算前の12月7日付で4位に登場というのは歌手としての勢いの象徴でもありますが、CDを配信のさらなる後押しに据えたことにレコード会社の戦略の巧さを感じます。

 

 

ボーカロイド文化の定着

もはやボーカロイド文化が今の音楽業界において重要な位置を担っていることは間違いありません。その歴史は11月にReal Soundにアップされた対談記事で解りやすく記されています。

このジャンルについてはまったくもって疎い自分でも、名前を聞いたことがあるボカロPが多数登場していますが、そのボカロPが、生身の人間の声を用いてポップの世界に進出し、成功を収めた例が今年も多数登場しました。①で述べたYOASOBIをはじめ、ヨルシカ(年間アーティストランキング14位)やずっと真夜中でいいのに。の人気は勿論のこと(彼らを”夜好性”と称する傾向も)、現在Eve「廻廻奇譚」がアニメタイアップに伴い上昇している等、この傾向はどんどん加速しています。そして、なんといっても重要なのは米津玄師さんの作品群。CDで圧倒的なセールスを記録した『STRAY SHEEP』は勿論のこと、そのオリジナルアルバム発売と同日に、そのアルバムを含む作品を遂にサブスクサービスに解禁し、記録的なチャートアクションを作り上げました。

米津玄師さんのチャートアクションの凄さはソニーミュージックを取り上げた際にも記しましたが、このタイミングでハチ名義の作品も解禁され、「砂の惑星」等の作品群が米津玄師さん名義の代表曲に混じって上位進出したのも象徴的な動きでした。

 

 

⑥ 大ヒットへのステップアップにつなげるSNSでのエンゲージメントの確立

TikTokYouTubeUGC(ユーザー生成コンテンツ)等、いわゆる”愛される動画”がサブスクや公式動画の再生増加につながることは先に申し上げた通り。それをさらに加速させることができるかどうかは、レコード会社側や歌手のマネジメントによるSNSのエンゲージメントの巧さにかかっていると断言してよいでしょう。この点については、arneの松島功さんとLINEの宮本浩志さんによる対談が解りやすく、例も多く登場しており参考になります。

直近のチャートでは優里「ドライフラワー」が特筆すべきチャートアクションを示しています。TikTokで人気に火がついた優里さんの作品群をさらなるヒットに押し上げた要因のひとつは間違いなく、自身のSNS活動の巧さ(YouTube公式アカウント発の動画を含む)にあると言えます。

ライト層を惹き付けること、コアなファンに昇華させること、そしてコアなファンとの結びつきを強化し続けることによりファンの存在がヒットに寄与していることを意識していただくこと…これらは今後のチャート強化策としても、そして歌手の人気を中長期的なものにすることにも大きな役割を持つことは間違いありません。とりわけYOASOBIにおけるその巧さは、arneの松島さんが記事化していますのでこちらも是非。

インタビューも行われています。

さて、先週noteに興味深い考察がアップされています。一度ソニーミュージックの件でも紹介しましたが、あらためて。

(※追記(2023年8月31日17時12分):上記リンク先は現在確認することができません。)

YOASOBIのSNS活用においてはソニーミュージックがどこまで絡んでいるかは解りかねますが、YOASOBIは上記noteによるところの"元本"を強く意識していることでしょう。ソニーミュージック側の巧さであるとすればレコード会社側にそのノウハウがどんどん蓄積されているように思われ、今後ますますSNSエンゲージメントを高めることに注力し且つ中長期的な視野に立って歌手活動を支えていくものと考えます。一方で利回りを重視という従来の手法にこだわり続けるレコード会社や芸能事務所は、近い将来淘汰される可能性すらあるかもしれません。

 

 

K-Popムーブメントの日本市場への定着

K-Popのヒットは今に始まったことではありませんが、今年は大きな転換点となったと捉えています。

米チャートを初めて制したBTS「Dynamite」(年間ソングスチャート18位)は、日本では週間最高2位ながらストリーミング指標では週間チャートで首位を獲得し、米よりもはるかに接触指標群のシェアが高いためロングヒットにつながっています。彼らにとって最大級のヒットとなり、加えてカラオケ指標で100位以内に入ったことがさらなるステップアップ、広く浸透したことの証明と捉えています。

そして、ストリーミングにおいて週間再生回数の新記録を樹立したのがNiziU「Make you happy」(年間ソングスチャート12位)。今でこそストリーミング記録はLiSA「炎」に奪われましたが、オーディション番組発という視聴者の思い入れの強さ、日本テレビの魅せ方の妙(賛否両論はありますが)、そして邦楽でありながらK-Pop的な要素を楽曲に踏襲したことが成功の理由と言えそうです。

さてこの秋、BTSが日本人クリエイターを募集した際の条件が話題になっていました。この件については以前ブログに私見を記しましたが、「Dynamite」や「Make you happy」の成功を踏まえれば、今後K-Popアクトが敢えてJ-Popライクな曲を用意しなくても一定の成功を収められるものと考えます。そうなると尚の事、J-Popライクな作品の意味とは、そして"そもそもJ-Popとは?"を考えなければならないフェーズに来ていると思うのです。尤もJ-Popライク、たとえば歌謡曲的に落とし込んだメロディライン等による作品が悪いというわけではありませんが、それが如何にドメスティックなものかについては考える必要があるでしょう。

 

 

Official髭男dism、年間アーティストランキングを制覇

年間ソングスチャートでは「I LOVE...」がYOASOBI「夜に駆ける」に終盤で逆転され、アルバム『Traveler』は昨年10月リリースゆえ売上等が昨年度と今年度に分散したということはありますが、しかし「I LOVE...」の4位をはじめとして年間ソングスチャート100位以内に11曲を送り込み、『Traveler』が年間アルバムチャート5位にランクインする等の結果、Official髭男dismは年間アーティストランキングで首位を獲得しました。

Official髭男dismの特徴は、興隆するサブスクサービスで短尺(イントロの短さも含む)が好まれると言われる中にあって、長尺が多いということ。「I LOVE...」は5分弱、「Pretender」はおよそ5分半、「Laughter」に至っては6分弱という尺なのです。たとえば「Pretender」が曲の構造や歌詞に注目が集まる等、他の曲ではあまり見られないタイプのスポットライトが当てられることで彼らの強いこだわりがより多くの方に届き、ゆえにより深く聴かれているのではないでしょうか。そしてそのこだわりをさらに広めたのが、ライブアルバムやインストゥルメンタルアルバムの登場と言えます。『Traveler』はルックアップの長期安定もあってロングヒットを続けていますが、そのロングヒットに寄与したのがこれら作品の存在だと考えており、実際『Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館』は年間アルバムチャート75位にランクインしているのです。

無論ここには、先に述べたSNSエンゲージメントの巧さも挙げられます。また来年は『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』 に「Universe」を提供することが既に決まっており、多くの作品から引く手あまた。タイアップの多さは彼らの人気と実力、評価の高さを物語っています。

 

 

⑨ 大ヒット映画やドラマタイアップ曲が続々上位進出

社会現象を巻き起こしている映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』主題歌であるLiSA「炎」が週間チャート首位登場からわずか6週で年間ソングスチャート9位に入ったことが何よりの証明ですが、Official髭男dism「I LOVE...」(年間ソングスチャート4位)やあいみょん「裸の心」(同10位)、米津玄師「感電」(同14位)といったドラマ発のヒットが目立ったのは今年も同様。そして今挙げた3曲はいずれもTBSのドラマ主題歌であり、『恋はつづくよどこまでも』『私の家政夫ナギサさん』『MIU404』に代表される高質な作品のヒットはドラマ主題歌のロングヒットにもつながっていることが解ります。

一方、昨年世界中でヒットしたビリー・アイリッシュ「Bad Guy」は今年、『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(日本テレビ)の主題歌に起用されたことで日本では昨年度の年間ソングスチャート71位を大きく上回る24位を記録。昨年も日本で注目はされていたものの、ドラマタイアップ効果の凄まじさを実感させられます。また、ドラマ放送時期に開催されたグラミー賞で主要4部門を独占したこともヒットの加速につながりました。ただ私見を申し上げるならば、世界でヒットしているタイミングでもっとヒットすべきであったと考えており、このヒットのタイムラグが日本の音楽市場のドメスティックさを示していると考えるのは早計でしょうか。

 

 

⑩ シングルCDセールス特化型は年間チャート上位に立てない傾向

今年ジャニーズ事務所からCDデビューを飾ったSixTONESSnow Man。「Imitation Rain」と「D.D.」は共にこれまで同事務所からデビューした歌手として非常に高いCDセールスを記録し、セカンドシングル以降も好セールスをキープしていますが、その一方で年間ソングスチャートの順位は「Imitation Rain」が19位、「D.D.」が15位となり共にトップ10入りは果たせませんでした。これは”デジタルに放つ”と謳いながらもサブスクやダウンロードが未解禁であり、ミュージックビデオがショートバージョンでの解禁だったことが影響していると言えるでしょう。さらにジャニーズ事務所所属歌手が毎週出演する『ミュージックステーション』において、今年の1曲ランキングの上位10曲に「Imitation Rain」「D.D.」が共に入っておらず、シングルCDセールスがとりわけ強い曲の社会的浸透度について考えさせられます。

他方、昨年11月3日にリリースされた「Turning Up」(年間ソングスチャート51位)を中心に、嵐はソングスチャートでコンスタントにヒットを獲得。年間チャートでは「Imitation Rain」「D.D.」に及ばないものの、年間アーティストランキングでは6位となりました(SixTONESは同11位、Snow Manは同12位)。しかしながら唯一ソングスチャートを制した「カイト」(年間ソングスチャート38位)は現段階でサブスクはおろかダウンロード未解禁、ミュージックビデオはショートバージョンすらアップされず、さらにはアルバム『This is 嵐』(年間アルバムチャート3位)も未だデジタル未解禁のまま(12月11日に解禁されることになりましたが)。付け加えるならば、ジャニーズ事務所所属歌手が今年リリースしたシングルCDの表題曲で、デジタルをすべて完全に解禁した作品は未だ出ていません。

カイトは昨年の『NHK紅白歌合戦』で披露され、その模様はNHKYouTubeアカウントで発信されていますが、Foorin「パプリカ」同様にISRC(国際標準レコーディングコード)が未付番のため、同コードの付番がカウントの基準となる動画再生指標は加算されません(付け加えるならばこのコードは後からでも付番可能であり、仮にそれを行い動画再生指標を獲得していたならば、「カイト」の年間ソングスチャートの順位は上昇していたはずです)。これらチャートの取りこぼしがないようにする、そしてそもそもデジタルへの意識をどれだけ持ち合わせているのか、所属事務所の意向が非常に気になります。

なお、シングルCDセールスで年間首位に立ったAKB48「失恋、ありがとう」は年間ソングスチャート93位と大きく乖離し、『NHK紅白歌合戦』では遂に出場記録が途絶えてしまいました。紅白における落選は、シングルCDセールスにのみ特化した曲をヒットとみなさないことの表れと言え、その意識は少しづつ、確実に広く世間に伝わっていくことでしょう。ゆくゆくはジャニーズ事務所所属歌手に対しても同様の選考基準が適用されるはずです。

 

 

以上10項目を紹介しました。

なお、日本の音楽業界の課題、世界に通用するために必要なことについて、今浮かんでいるものを年内に掲載しようと考えています。