毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。
10月5~11日を集計期間とする10月19日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)、初週のシングルCDセールスが圧倒的だったSnow Man「KISSIN' MY LIPS」が首位に立ちました。
【ビルボード】Snow Man「KISSIN' MY LIPS」が939,589枚を売り上げ3冠で総合首位獲得 https://t.co/0WxqslAgwg pic.twitter.com/Ql9na10pt7
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年10月14日
前週のHey! Say! JUMP「Your Song」同様にラジオエアプレイ2位。最近のジャニーズ事務所所属歌手の作品は一定以上のラジオエアプレイを獲得しているとはいえ、この2週の動向は特筆すべきと言えます。
一方、「KISSIN' MY LIPS」において勿体無いと感じるのは動画再生の動向。9月上旬に公開されたミュージックビデオは解禁時から動画再生指標が高水準を維持していたものの、最新週においては同指標のカウント開始以降最低となる41位に。邪推の域を出ないと前置きして書くならば、ミュージックビデオをフルバージョンで解禁していないことで思うように再生回数が伸びなかったのではと考えます。
ショートバージョンにて公開する理由としては、フルバージョンで公開すればミュージックビデオを収めた映像盤を同梱するCDの売上が落ちるのではという懸念があるものと考えますが、弊ブログではフルバージョン解禁でも売上には大きな変化がないものと幾度か記載しています。そしてショートバージョンがビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標を押し上げないだろうことについても指摘させていただいています。
そのミュージックビデオ問題を克服してきたのがLiSA「炎 (ほむら)」。昨日CDがリリースされ、月曜にはダウンロードおよびサブスクが解禁されましたが、CDのフラゲ日にあたる火曜、ミュージックビデオをフルバージョンにて解禁しました。
このブログを執筆する10月15日7時30分の段階で再生回数は320万を突破。ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標では日本における再生回数が加算されるためこの数字が丸々加算対象とはなりませんが、主題歌となった映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が明日公開されてからはさらに再生回数が加速しそうです。CDレンタルの解禁はアルバム同様10月31日土曜になるためレンタルにおけるルックアップのピークは今後となりそうですが、CDセールス(および購入者の取込に伴うルックアップ)、ダウンロード、サブスクそして動画再生が今週同時公開されたことにより、来週発表の10月26日付ソングスチャートにおいて高位置での登場が予想されます。仮に首位を獲得したならば、悲願と呼べるかもしれません。
『鬼滅の刃』の大ヒット、『NHK紅白歌合戦』出演そして一発録りYouTubeチャンネル”THE FIRST TAKE”への出演とその評判…これらによりロングヒットを続ける「紅蓮華」は、最新10月19日付ソングスチャートでトップ10に返り咲きました。おそらくは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』への期待感の高さでしょう、ポイントは前週比100.2%と勢いをキープしています。今週トップ10入りした曲の中でCDセールス初加算曲を除けばポイントを落とす曲が多い中にあって、この踏み止まりは凄いことです。
しかしながら「紅蓮華」は、動画再生指標が優れているとは言えません。
チャート推移から総合順位(黒の折れ線で表示)と動画再生(同赤)のみを抜き出したものをみると、総合は最高2位に対した一方で動画再生は8位となり乖離しています。最高ポイントを叩き出したのは今年1月13日付、つまり『NHK紅白歌合戦』放送日を含む集計期間となるのですが、その際のポイントは9897であり、終ぞ1万ポイントに達していないのです。同日付ではTwitter指標を制し、シングルCDセールスおよびルックアップ、ダウンロードそしてストリーミングで4位、カラオケで7位と高水準だった一方、動画再生が30位という成績であり、動画再生指標の高くなさはおそらくはミュージックビデオがショートバージョンだったことに起因するものと考えています。
1月13日付では紅白効果が如実に表れ、同日付で4位を記録したLiSA「紅蓮華」より上位にはOfficial髭男dism「Pretender」(1位)、King Gnu「白日」(2位)そして菅田将暉「まちがいさがし」(3位)と、全て前年の紅白初出場者およびその披露曲が入っていますが、上位3強は総合順位と動画再生指標の順位がイコールであり、だからこそLiSA「紅蓮華」の動画再生指標が勿体無いと感じるのです。なお同日付の上位3強はストリーミング、ダウンロード指標も共に3位以内となっており、紅白効果はダウンロードやサブスク、動画再生に真っ先に影響を与えることがここから見て取れます。だからこそデジタル指標群の充実が必須であることはこのトップ3から解るのです。
このような経緯があったことが、「炎」をフルバージョンにて公開した要因ではないかと思われます。
月曜の段階で、仮に「炎」ミュージックビデオがフルバージョンで公開されたならばチャートアクションでより大きなうねりが起きるものと書きました。「炎」は公開以降iTunes Storeが毎時表示するダウンロードソングスチャートを制し続け、動画再生は24時間で200万を突破。下記スタッフのツイートをみると、「炎」ミュージックビデオの再生回数を映画公開に合わせて盛り上げようとする思いが汲み取れます。
【祝】🔥🔥LiSA「炎」MV 200万回再生突破🔥🔥
— LiSA_STAFF (@LiSA_STAFF) 2020年10月14日
公開開始から24時間、
「炎」のMVが200万回再生を突破!
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編は、
いよいよ10/16公開開始です!
▼「炎」MVhttps://t.co/tqs9MVLt6j
▼「炎」配信https://t.co/yyGhky3nGZ#LiSA#炎ほむら#鬼滅の刃 pic.twitter.com/WJk7Px4I8Q
そしてシングルCDセールスにおいても、ビルボードジャパンとデータ元は異なれど、フラゲ日のオリコンデイリーランキングを制し、その売上は2万7千を突破。仮にビルボードジャパンでも同程度であるならば、「紅蓮華」の初週CDセールス(24262枚)を既に超えていることになるのです。
今週シングルCDをリリースする曲で強力なライバルが存在しないだろう状況を踏まえれば、LiSA「炎」は「紅蓮華」で未だ成し得ていないビルボードジャパンソングスチャート週間1万ポイント超え、そして週間1位を狙えるだろうと考えます。そして「炎」が悲願を達成したならば、CDもリリースする曲における適切な解禁タイミング、またミュージックビデオをフルバージョンで解禁すること、これらの重要性が日本の音楽業界全体に伝播するはずです。