イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2016年私的邦楽ベストソング集

毎年行っている、あくまで私的な選曲集。まとめてみました。

<2016年私的邦楽ベスト (2016年12月28日作成)>

◯ 作成時のルール

 ・今年発売されたシングル、またはアルバムからの先行配信曲で、基本的にミュージックビデオが制作された曲から選出(ただし一部例外有り)

 ・1組の歌手につき1曲、ただし主演と客演は別とする

 ・1枚のCD-R(80分弱)に収まるように編集、歌手名の前の数字はトラックNo.であり順位ではない

YouTubeにミュージックビデオが掲載されている曲はYouTubeより引用、弊ブログで言及している曲にはブログのリンクを掲載

 

では一曲毎に紹介。

 

01. NakamuraEmi「YAMABIKO」

オーガスタからこんな新人が出るとは想起出来ずいい意味で裏切られた感。このようなアコースティックファンカーがメジャーに登場するというのは嬉しいですし、10年前まで四谷天窓などのアコースティックライブハウスに足繁く通っていた身にはノスタルジアも感じた次第。”頂上の高さなんて隣と比べるもんじゃない”という歌詞はとりわけ刺さるものがありました。

 

02. PUSHIM「Feel It」

ベテランの彼女がレコード会社を移籍、レーベルオーナーとなって放つ第一弾アルバムからの先行曲。”さぁ ありのまま Let it go”というフレーズは一昨年多用されともすれば古臭さが拭えませんが、姐さん(親しみを込めて)が言うと本当にそうだよなあと思い知らされます。ポジティブに行こうという姿勢、そして大袈裟かもですが多様性の尊重(これ、それこそ『アナと雪の女王』のテーマとも聞きます)という今年の世界のトレンドをいち早く伝搬した意味でも重要ではないかと。PUSHIMの黒いグルーヴに身も心も委ねてみる(1月17日付)にて記載。

 

03. 三浦大知「Cry & Fight」

三浦大知の『Mステ』出演を祝う(5月7日付)などで触れているのですが、番組出演(今年3度も!)により一気に知名度を増した彼による今年第1弾シングル。盟友UTA氏と、初参加のSeiho氏との制作で生まれた(Seihoの「Plastic」な音がダンスシーンを変えんとしている (6月6日付)より)のはこれまでにないタイプの楽曲…洋楽でもこういうの味わったこと無い気がします。いつ何時聴いてもフレッシュでドープ。来年は是非紅白を狙って欲しいというか狙える位置にいると思います。

 

04. METAFIVE「Don't Move」

日本にグラミー賞があるならば彼らは”新人”扱いなんでしょうか? だとしたらいい意味でずるい。理屈抜きで格好いい大人のダンスミュージック。変拍子に聴こえるようでずっと同じリズムも、ダサいようで格好いいシンセのアタック音も癖にならずにはいられません。

 

05. モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!

”ズッキ”こと鈴木香音さんの卒業曲にして今年最高の”動”のアイドルソングハロプロ×ディスコティークが最高の相性であることは以前から証明済でしたが、この曲を作ったのがつんく♂さんではなく赤い公園津野米咲さんというのに感嘆(モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」のソングライターに唸る(5月12日付)より)。今後彼女の名前は覚えていて絶対損はないはずです。

 

06. Negicco「矛盾、はじめました。」

「泡沫…」が”動”ならこちらは”静”の最高アイドルソング土岐麻子さん×さかいゆうさんという「How Beautiful」(土岐麻子さんの楽曲。作詞には他に川口大輔さんもクレジット)コンビによる楽曲が非常に沁みる…というか、このアレンジが個人的に大好きな、松任谷由実「届かないセレナーデ」(アルバム『LOVE WARS』(1989)収録)を彷彿とさせ、刹那さの中で動き出す女性の感情を見事に表しているように思うのです。

 

07. レキシ feat. 森の石松さん「最後の将軍」

レキシネーム”森の石松さん”こと松たか子さんの歌声は本当に真っ直ぐで混じり気がなく、だからこそ主人公の将軍の背中をポンと押してくれているように感じます。そして自分はやはり三連リズムが大好きなんだなあ、と。『Vキシ』の三連リズムに惹かれる(6月27日付)にて記載。

 

08. 宇多田ヒカル花束を君に

今年の邦楽界、最大のトピックの一つは彼女の復帰。アルバムはCDが売れないとされるこの時代にあって(しかもオリジナルアルバムなら尚更)、現在までに70万枚近い売上を叩き出し、さらには音楽評論家やジャーナリストがこぞって絶賛。しかも内容は”死”や”同性愛”など、これまでの邦楽で扱ってこなかったようなタイプの詞…それを堅苦しくないポップスに仕上げる宇多田ヒカルさんの才能はただただ見事でした。こういうテーマを選ぶことも邦楽の多様化な気がします。アウトロの長尺は聴き手の感情を増幅させ揺らすのに非常に効果的…ということは「花束を君に」から思い出す楽曲群(9月18日付)で記載しています。

 

09. 桑田佳祐「ヨシ子さん」

上半期/下半期ベストに唯一選ばなかった曲。流行りに管を巻く歌詞なのに(それこそ後述するEDMとか)、実はアレンジ面で最先端の流行を押さえ(「ヨシ子さん」は音楽の流行を捉えている?(7月20日付)より)、桑田さん自身が若いミュージシャンの才能をきちんと評価している("音楽業界の今"を桑田・長渕両氏はどう受け止めたか(12月24日付)より)という姿勢に感銘を受けここに選出した次第。流行りを吸収しながら、それでいて完全な桑田節というのですから参りました。

 

10. KIRINJI feat. RHYMESTER「The Great Journey」

歌詞のダブルテーマ、完璧な演奏、堀込高樹さんの”まんしーつ!”の強烈なインパクト、そしてなによりKIRINJIとRHYMESTERの相性の素晴らしさは、1+1=2どころかまさにグレートな作品に。RHYMESTER主催フェス【人間交差点】第3弾があるならばぜひKIRINJIを呼んで欲しい!と切に願います。KIRINJI、初のコラボレーションで生まれた圧倒的大作「The Great Journey」(6月16日付)にて記載。

 

11. 早見優「溶けるようにkiss me」

21年ぶりの(ミニ)アルバムは、プロデューサーを務める藤井隆さんのレーベルから。日本語と英語がシームレスな歌詞、カイリー・ミノーグを彷彿とさせるきらびやかなアレンジ、基本一種類のメロディのリズムパターンなのに何ら飽きさせないメロディの細かな起伏の付け方など、聴いていて非常に面白いのです(早見優21年ぶりの新作が格好良すぎた(8月24日付)より)。そして青森県平内町で開催された音楽フェス【夏の魔物】で観た彼女は本当にキラキラしていて永遠のアイドル!と実感。藤井隆さんのパフォーマンスも見事でした(【夏の魔物】観戦記&雑感(10月9日付)より)。それにしても今年大活躍をみせた藤井隆さんのポテンシャルの高さには驚かされます。

 

12. DAOKO「BANG!」

ファレル・ウィリアムス「Happy」の流れにあり、自分的には大好物、抗うほうが無理というものです。「Happy」から生まれたと思しき邦楽については「Happy」×「Shake It Off」?なDAOKO「BANG!」がかわいすぎる(8月18日付)にて記載しています。

 

13. 中田ヤスタカ feat. 米津玄師「NANIMONO」

世界的な潮流でありもはやジャンルを確立した感のあるEDMですが、こと邦楽の世界において、洋楽をそのまま取り入れたようなものはあれど、”和”の匂いのするものはほとんどなかったように思います。その点でこの曲は秀逸。中田ヤスタカさんのプロデュースながら近年のPerfumeのようなバッキバキな感じがないのは、米津玄師さんの曲の推進力ゆえなのかもしれません。

 

14. bonobos「Cruisin' Cruisin'」

R&B好きな自分としてはこの曲はドストライクでした。bonobos、東京23区を駆け巡る「Cruisin' Cruisin'」(9月19日付)でも書きましたが、「NANIMONO」に続きこの曲のテイストもまた”和”な感じがして、聴くたびに郷愁を感じるところもあります。

 

15. 向井太一「SLOW DOWN」

最近のR&Bの流行であるアンビエントを取り入れながら聴き手を選ばせる(ふるいにかける)ことなく、乾きと潤い、シンプルと芳醇の双方を感じさせるという不思議な楽曲。この曲を歌う向井太一さんの魅力って、一言では表しきれないような気がしますね。”スローダウン”な音楽集(11月23日付)にて記載。

 

16. Da-iCE「恋ごころ」

今年もコンスタントに良曲を発信し続けたDa-iCE。シングルの中では一番J-Popな楽曲ながら、大サビ後の”届かない”における花村想太さんの心からの声が本当に刺さりました。ボーカリストとしての実力もどんどん高まっていますね。

 

17. Kan Sano feat. 七尾旅人「C'est la vie」

優雅で美しい曲。前向きな感じにも聴こえながらその実決して明るくはないという矛盾を、七尾旅人さんのボーカルが見事に表現。アルバム『k is s』における客演陣の人選、Sanoさんのボーカル自体も好く、ラジオでかかりまくっているのもうなずけます。

 

18. 星野源「恋」

もしも日本にグラミー賞があるならば、最優秀アルバム賞は宇多田ヒカルさんと星野源さんとが争ったのでは?と思うくらいに『YELLOW DANCER』は素晴らしかったのですが、アルバム後の初シングルは、そのアルバムの流れを更に加速させた、ソウルミュージックの邦楽踏襲の最高峰。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)での用いられ方も”恋ダンス”も最高の次元でいわばバズりまくった、今年を代表する邦楽。また、この曲が謳う”多様性の尊重”というテーマもまた見事でした。星野源と藤井隆と多様性とエイリアンズと(12月14日付)にて記載。

 

 

 

今年は自分の中で音楽フェスに初参戦したり、担当のラジオ番組は裏方が増えた分責任をより強く実感したり…と新たな挑戦をした一年でした。とはいえまだまだ浮沈激しく、冒頭の2曲はまさに今の自分へのエール的な意味での選出でもあるのですが。来年は良いところを更に伸ばし、他方反省点は省みても後悔に至ることないようにして、進んでいこうと思います。あとは結構表現に刃があるので気をつけねばなと。

 

あらためて、今年のリストを。 

2016 JP Songs Best (20161228)

 

01. NakamuraEmi「YAMABIKO」

02. PUSHIM「Feel It」

03. 三浦大知「Cry & Fight」

04. METAFIVE「Don't Move」

05. モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」

06. Negicco「矛盾、はじめました。」

07. レキシ feat. 森の石松さん「最後の将軍」

08. 宇多田ヒカル花束を君に

09. 桑田佳祐「ヨシ子さん」

10. KIRINJI feat. RHYMESTER「The Great Journey」

11. 早見優「溶けるようにkiss me」

12. DAOKO「BANG!」

13. 中田ヤスタカ feat. 米津玄師「NANIMONO」

14. bonobos「Cruisin' Cruisin'」

15. 向井太一「SLOW DOWN」

16. Da-iCE「恋ごころ」

17. Kan Sano feat. 七尾旅人「C'est la vie」

18. 星野源「恋」

 

Total Time:1:19:01

 

来年も素晴らしい音楽とたくさん出逢えることを願って。