イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) アリアナ・グランデのシングルを機に浮かび上がる洋楽一年間レンタル禁止措置問題

ビルボードシングルチャートを定点観測。

 

日本時間の火曜早朝に発表された4月2日付最新チャート、リアーナ feat. ドレイク「Work」が5週連続で首位をキープしました。そして全体的に凪と言えるチャートの中でルーカス・グラハムの勢いは凄まじく、ついにトップ3入りを果たしました。最新チャートについての詳細は下記をご参照ください(トップ10カウントダウン動画もあります)。

先週トップ10入りしたマイク・ポスナーが陥落、メーガン・トレイナー(12位)やフィフス・ハーモニー feat. タイ・ダラー・サイン(13位)が足踏みする中、新たにトップ10入り(それも初登場で)を果たしたのがアリアナ・グランデ「Dangerous Woman」(10位)。5月20日に発売される3枚目のオリジナルアルバムからのタイトル曲はデジタル・ソングス・チャートで2位に。ミュージックビデオが公開されれば更に順位を上げることでしょう。今回の10位初登場によりアリアナは、【アルバムデビューから3作連続で、先行シングルを初登場でトップ10入りさせた初の歌手】に。集計方法や指標が変わり初登場で高位置につけることは昔より幾分易しくなったかもしれませんが、初登場でトップ10内に送り込むのはその歌手が強く支持され信頼を集めている証拠ゆえ、アリアナの記録はただただ素晴らしいの一言につきます。

…と、ここまで書いて、”あれ、「Focus」はアルバムからの先行シングルじゃなかったの?”、もしくは”アルバムタイトルって『Moonlight』じゃなかったっけ?”と思う方もいらっしゃるでしょう。たしかにシングル「Focus」は昨秋初登場7位を記録した曲ですし当初のアルバム名も『Moonlight』でしたが、アルバム名が変更になったことに加え、「Focus」は本編未収録という運びとなりました。後出しジャンケンみたいなことを書くようですが、「Focus」はイギー・アゼリアを客演に迎えた「Problem」に似ていましたから仕方ないかもしれません(両曲のプロデュースにマックス・マーティンが絡んでいるゆえ、でしょうが)。

 

さてこの「Focus」未収録で頭をかかえたのは国内盤を発売するユニバーサル・ミュージック・ジャパンだったのではないでしょうか。おそらくは『Moonlight』発売を見越してシングル「Focus」の国内盤をリリースしたのみならず、発売の12日後には同シングルをレンタル解禁させたのです。通常は”洋楽一年間レンタル禁止措置”という慣例があるのですが。

Ariana Grande | アリアナ・グランデ - UNIVERSAL MUSIC JAPAN(※音が出ます)

フォーカス/アリアナ・グランデ レンタルCD - TSUTAYA 店舗情報 - レンタル・販売 在庫検索

しかしアリアナの戦略等変更に伴い「Focus」はアルバムにすら入らないことが確定したため、同曲は『Dangerous Woman』の国内盤に収録させることで折り合いをつけ、「Focus」をなんとかアルバム購入への促進剤に据えることには成功したようです。ユニバーサル・ミュージック側は一応安堵したことと思います。

 

が、これで露呈したのは、アルバム購入を促すためなら(かどうかは断言出来ませんが)シングルは【”洋楽一年間レンタル禁止措置”の慣例を破ってよい】という考えがレコード会社にあるということです。ユニバーサル・ミュージックは実は以前も、レディー・ガガのアルバム『Artpop』(2013年11月発売)に先立ち、その前月に日本でリリースされたシングル「Applause」をレンタル解禁にした過去があります(解禁日は「Applause」のTSUTAYAページをご参照ください。一方で『Artpop』は慣例通り2014年11月のレンタル解禁となっています)。海外のレコード会社が許可を出したのかそれとも日本のレコード会社側が仕掛けたのかは判りかねますが、いずれにせよレコード会社の都合で慣例を破っていることは間違いないでしょう。

シングルが解禁に至ればアルバムもレンタルされると考えるのが自然なはずですが、それがアルバム未解禁のままでは消費者(ユーザー)の欲求は(基本的には)アルバムを買う以外に満たされないわけです。その心理に至らせることが戦略と言われればそれまでですが、自己都合のみで慣例を破るそのやり方はユーザーへの裏切り行為と言っても過言ではないでしょう。ならばシングルだけ解禁する措置を止めるか、もしくはシングルを解禁するならばアルバムも邦楽と同じ解禁期間にしていただきたいものです。以前ブログで書いたフィフス・ハーモニーの件といい(米ビルボードシングルチャートで高位置をつけたフィフス・ハーモニーに関する根強い疑問(3月8日付))、レコード会社への不信感は募るばかりです。尤もその不信感は、コピーコントロールCDの導入や輸入盤が入らなくなる可能性を孕んだ著作権法改正で音楽ファン中心に浸透してしまっている概念ですが、更に輪をかけてこのようなことをしなくても…と愕然としています。

 

※ 追記(3/23)

ユニバーサルは最近になって、一時期一年未満で解禁していた洋楽CDレンタルの措置を再び一年間禁止に戻しているのです。

それゆえ、特定のシングルだけ一年未満で解禁を認めたという今回の事態には、強い疑問を抱いて仕方ないのです。