イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

サブスクリプションサービスの新たなヒットの形…著名人のプレイリストは楽曲躍進の原動力になることが証明される

嵐がCDデビュー20周年に当たる11月3日に全シングル曲および新曲をデジタルで解禁したことのインパクトの大きさは、解禁からわずか5時間でデジタル限定シングル「Turning Up」がビルボードジャパンソングスチャートトップ10入りを果たしたことから明らかです。そのことについて、Real Soundに寄稿した内容が昨日公開されています。

嵐がSNS上で注目を集めている証拠に、SNSでシェアされた回数に基づくSpotifyのバイラルチャートでは、先行解禁された「A・RA・SHI」などの5曲が11月5日、6日とトップ5を独占。「Turning Up」等が未ランクインなのは不思議なのですが、嵐は日本を代表するアイドルなんだよなあと感じずにはいられません。

そんな嵐独占の最中にあって、上昇を続ける洋楽がいくつか。その中のひとつがゴスペル歌手のカーク・フランクリンによる「Road Trip」。

2015年リリースのアルバム『Losing My Religion』収録の、しかし地元アメリカではシングル化されなかったこの曲ですが、11月6日付の日本のSpotifyバイラルチャートで10位に上昇。また、チャンス・ザ・ラッパーにグラミー賞最優秀新人賞をもたらしたミックステープ『Coloring Book』(2016)から、同じくカーク・フランクリンが客演のひとりとしてクレジットされている「Finish Line / Drown」も5日、6日と続けてトップ50入りを果たしています。

「Finish Line / Drown」については、音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんがラジオ番組『ジェーン・スー 生活は踊る』(TBSラジオ 月-金曜11時)の中で今月、カニエ・ウェストによる初のゴスペルアルバム『Jesus Is King』に関連したゴスペル特集時に紹介されており、カニエの以前のアルバムにはカーク・フランクリンも参加していたことから、いよいよゴスペルが注目されはじめたのか!?と思っていました。

ただ、カニエ・ウェスト『Jesus Is King』収録曲で最も勢いのある「Follow God」は日本のSpotifyデイリーチャートで最高82位止まり。ゴスペル曲がここまで高い位置に来たこと自体実は凄いことなのですが、どうも今回の動きとは関連性が高くないと考え、あらためて調べてみるとこれらの曲の推薦者が見つかったのです。その方とは、星野源さん。

【so sad so happy】と名付けられたSpotifyのプレイリスト(そういえば、高橋芳朗さんが以前担当していたTBSラジオの番組名は『HAPPY SAD』でしたね)には、最新EP『Same Thing』収録曲を含む自身の楽曲も含まれていますが、これまで星野さんがラジオ番組『星野源オールナイトニッポン』(ニッポン放送 火曜25時)やテレビの特番『おげんさんといっしょ』(NHK総合)などで紹介した作品が網羅されています。そういえば今年、星野さんがサブスクリプションサービスにて自身の楽曲を解禁した際にApple Music内のラジオ番組、Beats 1 Radioにて『Pop Virus Radio』を担当していましたが、その中で紹介していたのがカーク・フランクリン「Road Trip」だったわけで、同曲の収録に合点がいった次第。さらには『おげんさんといっしょ』第1弾で紹介したマイケル・ジャクソンがボーカルを務めるThe Jacksons「Blame It On The Boogie」と、歌詞にマイケルへのオマージュを忍ばせた星野さん自身の「SUN」を共に入れるなど、選曲は本当に気が利いています。ラジオ番組やテレビのファン、星野さんのファンのみならず音楽通の方をも満足させるであろうこのプレイリストが再生回数を増やすことで、公開翌日以降のバイラルチャートで大量エントリーを果たしたというわけです。

 

プレイリスト収録曲がヒットに至ることについては、以前ブログにてエド・シーラン「Shape Of You」のロングヒットを取り上げた際に記載し、多くの反応をいただいています。リリースからまもなく3年になるこの曲は現在も、全世界のSpotifyデイリーチャートで未だ100位前後、日本では50位前後を推移しているのですが、Spotifyで歌手名+曲名で検索すると100を余裕で超えるプレイリストが登場しており、ヒットの条件はプレイリストへの引用にありと断言していいでしょう。

今回の星野源さんによる【so sad so happy】プレイリストは、楽曲をプレイリストに取り込むのがサブスクリプションサービスのユーザーではなく星野源さんというところに違いがありますが、収録曲は実際にチャートを駆け上がっており、人気者によるリコメンドが多くの人に伝播することが今回証明されたと言えます。星野さんのラジオなどからは純粋な音楽愛が伝わってくるわけで、星野さんのプレイリストは間違いない!と多くの方が捉えているだろうことが、プレイリストが支持を集める理由ではないでしょうか。ちなみに星野さんがSpotifyでプレイリストを作成、公開した理由は今週放送の『星野源オールナイトニッポン』で紹介されていますので、みやーんさんによる文字起こしを勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

ヒップホップからゴスペル、Ovallから松任谷由実さんに至るまで、多様なジャンルを網羅したプレイリストは、純粋に好き!という星野源さんの姿勢が如実に表れており、また彼の作品も何ら違和感なく混ざり合っています。こうして少しでも多くの人に新しい音楽との出会いが、またジャンルに関係なく聴く習慣が生まれるならば最高ですね。

個人的には、以前ブログで紹介したレ・シンズが取り上げられているのも嬉しいのですが(ブログエントリーはこちら)、R&Bながらポジティブな歌詞や、繰り返しまくる転調がまさしくゴスペルライクなビヨンセ「Love On Top」が入っているのが実に嬉しいのです。今週はもう1件、ゴスペル関連の大きなリリースがあったこともあり、ゴスペルが浸透していくならばこれほど嬉しいことはありません。

近年、「Shape Of You」のように多数のプレイリストに採り入れられることがヒットの新たな図式となっていますが、これからは歌手がプレイリストを制作することもヒットの新たな形になっていきそうです。

11月1日、マライア・キャリーの季節到来…あの定番曲が早くもチャート上昇中

”It's time...Woh!”と叫んでいるのはマライア・キャリー。そうです、マライアの季節が来たのです。

もはやクリスマスシーズンに耳にしない人はいないであろう、マライア・キャリーのクリスマス定番曲「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」。日本ではドラマ『29歳のクリスマス』(フジテレビ)の主題歌に起用されミリオンセラーを記録したこの曲は、サブスクリプションサービス等に基づくストリーミング時代に突入した現在、毎年のように世界中でチャートを駆け上がるのです。アメリカでは昨年末を集計期間とする今年1月5日付米ビルボードソングスチャートでストリーミング指標首位、総合でも3位を獲得しています。

「All I Want For Christmas Is You」のリリースから四半世紀経った今年11月1日、マライア・キャリークリスマスアルバム『Merry Christmas』(1994)の25周年記念盤をリリース。冒頭のマライアのツイートにおけるアイシャドウ強めのメイクは前日のハロウィンでの仮装によるもの(→ツイート)。日付が変わると…25周年記念盤の発売日でもあった、というわけです。”It's time...Woh!”はここにもかかっていると言えます。

 

とはいえまだまだクリスマスの雰囲気は薄いよと思う方も少なくないでしょうが、今年は既に「All I Want For Christmas Is You」が上昇気流に。

Spotifyでは25周年記念盤がリリースされた11月1日付デイリーチャートで、グローバルでは180位に、アメリカでは115位に再登場。その後少しずつ順位を上げ、最新11月6日付ではグローバル147位、アメリカ109位となっています。日本では今月に入ってまだ200位以内に入ってはいませんが、もしかしたら今年はいつもの年より早く上昇するのではないかと予想されます。

 

日本でも、ビルボードジャパンソングスチャートではクリスマスソングが上昇する傾向にありますが、昨年の動向をみるにストリーミング指標よりもラジオエアプレイがより盛り上がる傾向にあるものと感じていました。

しかしながら、サブスクリプションサービスの浸透(再生回数の増加等)、同サービスへの解禁増加等もあり、今年のチャートにおけるストリーミング指標には昨年以上に注目しないといけません。厳密にはクリスマスソングではないものの、解禁されて間もない嵐による「WISH」(2005)等も伸びてくるのではないかと考えています。今年のクリスマスソングはいつもより早めに流行する…そんな感じがします。

嵐「Turning Up」がトップ10入り、そして次週のチャートからいよいよSpotifyが加算へ…11月11日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。今週のソングスチャートを制したのは=LOVE「ズルいよ ズルいね」でした。

=LOVEは自身初となる首位を獲得。しかしながらチャート構成比に占めるシングルCDセールスが9割を超えること、前作「探せ ダイヤモンドリリー」が2→40位と推移したことを考えるに、次週どこまで踏みとどまれるかが気掛かりです。一方、前週首位を記録したSexy Zone麒麟の子」については。

ジャニーズ事務所所属歌手としては平均的な前週比となりましたが、やはりシングルCDセールスが極端に強い作品がヒットを維持出来ない傾向にあることは間違いなく、Official髭男dism「Pretender」(シングルCDセールス指標は4週連続で100位未満)との差を実感させられます。とはいえ「麒麟の子」は今週になってダウンロード指標が加算されていることに注目。おそらくはレコチョクでフル尺のダウンロードが出来るようになったこと(→こちら)が影響しているのかもしれません。

 

そのダウンロード指標を制したのは、嵐「Turning Up」でした。

デビュー20周年記念日を迎え、11月3日の日曜日にデジタル解禁を発表した嵐。ダウンロードが解禁されたのは、同日の19時で、月曜から日曜を集計期間とする“JAPAN HOT 100”では苦戦が予想されたが、なんと残りの5時間で初めてのデジタル・シングルである新曲「Turning Up」が29,599DLをマークし、ダウンロード指標で1位を獲得した。「Turning Up」は他指標ではTwitter 7位のみポイントを獲得して総合10位となり、訴求力の高い“国民的アイドル”の名にふさわしい結果を叩き出した。

【ビルボード】177,296枚を売り上げた=LOVE「ズルいよ ズルいね」初の総合首位獲得 デジタル解禁の嵐の新曲「Turning Up」わずか5時間で週間ダウンロード1位 | Daily News | Billboard JAPAN(11月6日付)より

仮に11月4日月曜にリリースされたならば、シングルCDセールスがなくともチャートを制した可能性も高かったかもしれませんが、ミュージックビデオをYouTubeプレミア公開しファンと共に祝うなど、CDデビュー20周年記念日を盛り上げることを優先した結果このタイミングでの発表となったと捉えていいでしょう。個人的にはサブスクリプションサービスの再生回数等に基づくストリーミング、および動画再生の2指標で300位以内に入らなかったことが意外でしたが、この2指標は次週加算されるはず。Spotifyデイリーチャートでは11月4日、そして5日付で「Turning Up」が3位に入りOfficial髭男dismが長らく続けてきたトップ3独占を阻むことに成功しています。

 

そのSpotifyですが、遂にビルボードジャパンのストリーミング指標に加算されることになりました。

これは自分が以前、ビルボードジャパンソングスチャート構成8指標について見直しを提案した際に取り上げたこと。

今回のチャートポリシー変更により、ストリーミング指標へ加算されないサブスクリプションサービスはAmazon Prime Musicのみとなりました(ただしAmazon Music Unlimitedは加算対象)。尤もSpotifyには有償と無償のサービスがあるため、米ビルボードソングスチャートのように両者でウェイトに差をつけるかどうかは不明ですが、今回の発表には差をつける云々の文言がないため、おそらくウェイトは同じと考えていいでしょう。

 

今年度のチャートはまもなく終了。自分が提案した各構成指標の内容や指標毎のウェイト変更が叶うかは不明ですが、ひとつはっきり言えるのはストリーミング指標(サブスクリプションサービス)の存在がますます大きくなったということ。Spotifyの加算の意義は非常に大きいと思います。

嵐がデジタル解禁した全シングル表題曲および新曲、2日間の動向を追う

今週日曜、嵐が全シングルCDの表題曲および新曲「Turning Up」をデジタルリリースしたことへの世間のリアクションは大きいように思われます。実際、自分も急遽翌日に取り上げました。

今日発表されるビルボードジャパンソングスチャートに先駆けて、オリコンではダウンロードランキングにて「Turning Up」が首位を獲得したとアナウンスしています。

週間売上は2.8万。集計期間が日曜〆のため、解禁から数時間での成績となります。

 

一方、サブスクリプションサービスでの嵐の動向をみると、「Turning Up」が11月3日の解禁日に7位、そして翌4日月曜には3位に上昇。デイリーではOfficial髭男dismのトップ3独占を阻んでいます。

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そして「Turning Up」以外も躍進。

ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標のひとつである、サブスクリプションサービスの再生回数等に基づくストリーミング指標においてSpotifyは加算対象外となりますが、おそらく他サービスでも似た順位(「Turning Up」、「A・RA・SHI」等先行5曲、今回初解禁された楽曲の順)となっているものと思われます。日曜までの1週間好調をキープすれば、ビルボードジャパンのストリーミングソングスチャート(指標)において100位以内に20曲以上を送り込み、嵐が新記録を達成する可能性は高いかもしれません。

一方で、YouTubeでのミュージックビデオ解禁は新曲を含め公開曲数が限られているため、ストリーミング指標が好調でも動画再生指標を稼げないとなれば総合ソングスチャートで高位置に登場するかは微妙なところ。新曲「Turning Up」については今日発表のビルボードジャパンソングスチャートを、そして新曲を含め解禁された全ての曲の動向は次週のチャートをチェックして判断することを勧めます。

セレーナ・ゴメス初制覇、リゾはアリアナの助太刀でトップ10入り、そしてカニエも…11月9日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の11月4日月曜に発表された、11月9日付最新ソングスチャート。前週初の首位に立ったルイス・キャパルディ「Someone You Loved」は2位に。新たに首位の座に就いたのはセレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」でした。

10月23日水曜にリリースされた「Lose You To Love Me」は集計期間わずか2日(ラジオは5日間)で前週のソングスチャート15位に初登場。今週はストリーミングが3880万、ダウンロードが39000を獲得し2指標でトップを獲得したほか、ラジオエアプレイは2420万で同指標41位に初登場。エイサップ・ロッキーをフィーチャーした「Good For You」(2015)および客演なしの「Same Old Love」(2016)の5位を上回り、自己最高記録を更新し初の首位に輝きました。一方、翌日リリースされた「Look At Her Now」は27位に初登場。ダウンロードは14000(同指標6位)、ストリーミングは1880万(同指標18位)を記録していますが、「Lose You To Love Me」とは大差が生じています。

2曲投入しながら大差が生じたことを失敗と捉えるのは早計というのが私見。2曲を(ほぼ)同時に切ることで歌手そのものに注目させ、よりリアクションの良いものに集中させる方法は、エド・シーラン「Shape Of You」(2017)やドレイク「God's Plan」(2018)をなぞっているものと考えます。

前週チャートを制したルイス・キャパルディ「Someone You Loved」は2位に後退。ラジオエアプレイは1億120万を獲得し初の首位を獲得しますが前週比4%ダウン。ストリーミングは同2%ダウンの2480万(同指標11位)、ダウンロードは同47%ダウンの13000(同8位)。前週のチャートではテレビ番組で用いられた効果で特にダウンロードが伸びたのですが、その反動が生じてしまいました。

 

以前首位を獲得したリゾ「Truth Hurts」が今週5位にランクインしているリゾは、続く6位に「Good As Hell」を初のトップ10内に送り込みました。

ストリーミングは前週比24%アップの1730万(同指標21位)、ダウンロードは同110%アップの29000(同2位)、ラジオエアプレイは同28%アップの6700万(同9位)。いずれも二桁成長となったその理由は、アリアナ・グランデを迎えたリミックスが10月25日金曜にリリースされたため。

Truth Hurts」が初の首位に輝いた際も、同曲に2つのリミックスが追加されたことが引き金となっており(とりわけダベイビー参加の効果は大きかった)、リゾはリミックスで仕掛けることの重要性をよく解っていると言えます。

(ちなみにリミックス版がオリジナルバージョンをトータルで上回っていないため、米ビルボードソングスチャートにおける「Good As Hell」のクレジットにはアリアナ・グランデの名はありません。)

「Good As Hell」は元々リゾのデビューEP『Coconut Oil』(2016)に収録された曲であり、今年リリースのアルバム『Cuz I Love You』には未収録。しかしMTVビデオ・ミュージック・アワードで「Truth Hurts」とメドレー形式で披露されたことで次のシングルに据えられた形です。

 

7位にはカニエ・ウェスト「Follow God」が初登場。

10月25日にリリースされたアルバム『Jesus Is King』は最新の米ビルボードアルバムチャートで初登場1位を獲得。

そのアルバムで最もストリーミングが好調だったのが「Follow God」でした。ストリーミングは3400万を獲得し同指標2位、ダウンロードは8000で同13位を獲得しています。しかしトップ10入りはこの「Follow God」のみであり、前週のチャート紹介時に”次週席巻?”と予想していたのは当たっていなかったと言っていいでしょう。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (15位) セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」

2位 (1位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

3位 (4位) ポスト・マローン「Circles」

4位 (3位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

5位 (2位) リゾ「Truth Hurts

6位 (14位) リゾ「Good As Hell」

7位 (初登場) カニエ・ウェスト「Follow God」

8位 (5位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

9位 (6位) リル・ナズ・X「Panini」

10位 (9位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

次週初登場で上位が見込まれる新譜は少ないものと見込まれます。他方ストリーミングではポスト・マローン「Circles」が俄然好調であり、同曲は今週最高位を更新、もしかしたら次週トップを狙えるかもしれません。また今週トップ10落ちしたもののトラヴィス・スコット「Highest In The Room」もストリーミング好調でありトップ10再浮上も考えられます。その他、Spotifyではアリゾナ・ザルバス「Roxanne」がアメリカにおける11月3日付デイリーチャートで5位に浮上していることから、次のトップ10入り候補と言えるでしょう。

 

嵐、全シングルのダウンロードおよびサブスクリプションサービス解禁…今後のチャートの注目点をまとめてみる

嵐の全シングル曲デジタル解禁、それも5曲先行時には行わなかったダウンロードも実施し且つ新曲「Turning Up」をデジタルのみで発表するという状況は、ファンのみならず好事家にも衝撃を持って迎えられたように思われます。

この一報を受けてまもなくつぶやいた雑感(関ジャニ∞のCDの件来年同時デビューする2組の件など)を今朝まとめようとしたのですが、【WASTE OF POPS 80s-90s)】のO.D.A.さんがわかりやすく且つ読みやすくまとめられています。文章の巧さや絶妙なさばき方は本当に素晴らしいそのブログエントリーを勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

 

嵐の今後の動向について、弊ブログではチャート面から押さえてみます。まずは「Turning Up」について。当初このようにつぶやきました。

「Turning Up」は今日からの1週間を集計期間とする11月18日付ビルボードジャパンソングスチャートで最上位に来る可能性を考えていたのですが、昨夜のミュージックビデオ公開がトレンド入りし公開から半日を待たずに300万回再生を突破したことや、アイドル作品がフラゲ日に瞬間最大風速となるセールスを記録することが常であることを踏まえれば、公開日が集計期間最終日となる11月11日付ソングスチャート(今週水曜公開)でトップ10入りする可能性も出てきたかもしれません。ただ、全ての嵐ファンのインターネット環境が整っているとは言い難いかもしれず、昨日のうちに購入出来なかった方もいるだろうことを踏まえれば、2週分のチャートをチェックする必要がありそうです。

その際、特に注目したいのは「Turning Up」のダウンロードセールス。アイドルのシングルCDについては特に、店舗毎の特典や封入特典を目当てとした複数買いが行われていました。しかしダウンロードにおいては特典がつきにくく(購入履歴をキャプチャしてプレゼント応募という企画はありますが、それは芸能事務所側のキャンペーンであることが多いと思われます)、またダウンロードは基本的に一度買えば済むことになりますので、今回のデジタル限定シングルの動向から嵐のコアなファンの数が推測出来、またこれまでのシングルCDセールス等におけるユニークユーザー数がみえてくるものと考えます。

(ただ、山下智久「CHANGE」のダウンロード好調の件を以前紹介したのですが(ビルボードジャパンソングスチャートを制した山下智久「CHANGE」の勝因はダウンロード配信にあり…ジャニーズ初の動きに注目(6月28日付)参照)、その後Twitterのリアクションをみると”ダウンロード活動”的なものを発見。複数のダウンロードサービス全てで購入するというのが活動の内容。嵐の場合も同様の事態が起こるかもしれません。)

 

その他、嵐のシングル作品におけるデジタル解禁について思ったことを。

④については以前、5曲がサブスクリプションサービスおよびミュージックビデオをデジタル解禁した直後の10月19日付ビルボードジャパンソングスチャートが参考になりそうです。

同日付における、サブスクリプションサービスの再生回数を主体としたストリーミング指標は「Love so sweet」の29位を筆頭に、「Happiness」が59位、「Monster」が63位、「A・RA・SHI」が70位、そして「truth」が71位にランクイン。昨日の解禁において、この5曲以外のミュージックビデオはYouTubeでスタートしていません(ゆえに動画再生指標には登場しません)がダウンロードでは解禁されていることから、ストリーミング指標そして総合ソングスチャートでも過去曲がどこまで上昇し、100位以内で嵐が何曲を占めるか注目したいところです。

 

 

一点、違和感を表明するならば今回のデジタル解禁にオリジナルアルバムはさることながら、ベストアルバムが含まれていないこと。アルバムCDはシングルよりも廃盤になりにくいこと、またベストアルバムの売れ行きが好調であることを考えれば、ダウンロードは解禁されても1曲250円の価格設定を高いと思い、ならばベストアルバムを買ったほうが得として購入に至らせる心理誘導が今回の施策の根本にあるかもしれません。そう考えれば、全シングル曲をダウンロードおよびサブスクリプションサービスで解禁しながらYouTubeで未解禁のままなのも、リリースされて間もないミュージックビデオ集への誘導と思えば合点がいきます。

 

 

昨日の嵐の一連のアナウンスは、世間一般には好意的に受け止められているように思われます。ただ、嵐や彼らの所属事務所が特にそうでしたが、よくよく考えれば日本の音楽業界全体がデジタルへの取組に遅かったこと、アンフレンドリーな状況は世界からすれば異様と思われておかしくありません。世界にJ-Popを売り込むならばもっと根本的なところから見直しをかけないといけないと思います。ただそれは音楽の発し手もさることながら、受け手の意識も同様ではないかと。先月末に公開されたアンケート(下記リンク先参照)において、サブスクリプションサービスを利用したくない理由の一番最初に出てくるのは『きちんと一曲ごとに、著作権者にお金を支払いたい』というものでした。しかし、たとえ無料サービスであったとしても1再生における歌手側への著作権料はわずかながら発生するはずであり、広く市井が認識を刷新する必要があると思ったのです。無論、自戒を込めてですが。

同時に、先述した1曲あたり250円というダウンロード料金の是非を含め、インターネット時代における音楽コンテンツの価格設定や、そもそもの著作権の見直しも必要です。今の法律がネット時代においてあたかも違法建築的に直されたと捉えており、フレキシブルに対応出来ているとは思えないゆえ尚の事。音楽の発し手、受け手、そして両者を結ぶ際に用いられる権利関係の三者全てが適宜見直しをかけていかないと、J-Popの衰退は目に見えて明らかだと思います。

2019年、アメリカのハロウィンで最も流れたのはマイケル・ジャクソンではなかった?

ハロウィンの季節に流れる曲といえば、おそらく真っ先に浮かぶのはマイケル・ジャクソン「Thriller」ではないでしょうか。コスプレの参考として、そしてなにより長編ミュージックビデオの代表作としてお馴染みであり、ストリーミング指標が採り入れられて以降の米ビルボードソングスチャートでも幾度となくリエントリーを果たしています。昨年も同チャートで31位に再登場しました。

無論今年も、ハロウィン当日の10月31日木曜を集計期間に含む11月9日付米ソングスチャート(日本時間の明後日に発表)でリエントリーすることが予想されるのですが、ストリーミングおよびダウンロードの集計期間は木曜までであることや、カニエ・ウェストの大量エントリーも予定されるため、順位は昨年に及ばないかもしれません。しかし、ハロウィンといえばマイケル・ジャクソン「Thriller」が真っ先に浮かぶのはアメリカも同様といえます。

 

それが、今年に関しては異変が。

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米ソングスチャートを構成するストリーミング指標に含まれる、Spotifyの10月31日付デイリーチャートをみると、リエントリーを表す青丸がついた曲で最上位に登場したのは「Thriller」(15位)でも、またレイ・パーカーJr.「Ghostbusters」(17位)でもありません。ボビー・”ボリス”・ピケット&ザ・クリプト・キッカーズ「Monster Mash」(13位)なのです。

この「Monster Mash」誕生の経緯、そして歌っているボビー・”ボリス”・ピケットについては非常に面白いコラムがあるので下記リンク先を是非チェックしていただきたいと思います。

(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

「Monster Mash」が今年人気を博した理由は、あのブーツィー・コリンズがカバーしたことも影響しているかもしれません。

ミュージックビデオから漂うB級感は、「Monster Mash」オリジナル版誕生の経緯に最大限の敬意を払っているかのようです。

 

先に紹介したアメリカにおける10月31日付Spotifyデイリーチャート(→こちら)トップ200には「Monster Mash」は13位に加えて121位にも別バージョン?が登場。一方で15位に登場したマイケル・ジャクソン「Thriller」は2003年バージョンが125位に登場していますが、仮に両曲共他のバージョンがなければSpotifyにおいては「Monster Mash」が「Thriller」に勝ることになります。明後日発表の米ビルボードソングスチャートがどうなるか、非常に楽しみです。