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【海外ビルボード】米はオリヴァー・アンソニー・ミュージックが2連覇、グローバルは「Seven」が6連覇達成

現地時間の8月28日月曜に発表された、最新9月2日付米ビルボードソングチャート(集計期間:8月18~24日)。前週初登場で首位を獲得したオリヴァー・アンソニー・ミュージック「Rich Men North Of Richmond」が連覇を達成しました。

オリヴァー・アンソニー・ミュージック「Rich Men North Of Richmond」はストリーミングが前週比31%アップの2290万(同指標首位)、ダウンロードが同20%ダウンの117,000(同指標首位)、ラジオが同310%アップの230万(同指標50位未満)を、それぞれ記録しています。

「Rich Men North Of Richmond」は前週、オリヴァー・アンソニー・ミュージックにとってソングチャートを含む米ビルボードの各種チャートに初エントリーを果たした作品ですが、ソングチャートで首位に初登場を果たした曲の中でその翌週(登場2週目)にストリーミングが伸びるのは異例であり、2020年代に初登場首位を記録した34曲の中ではオリヴィア・ロドリゴ「Good 4 U」以来2曲目となります。「Good 4 U」は2021年5月29日付の総合首位初登場時に4320万だったストリーミングが、翌週には6270万に増加。これは同曲を収録した『Sour』が米ビルボードアルバムチャートで首位に初登場したことにも伴います。

 

「Rich Men North Of Richmond」は労働者の怒りを歌った作品であり、右派からの称賛と左派からの反対というリアクションがみられていることや、ミュージックビデオが公開される前からTikTok等ネットで話題になっていたことについては前週お伝えした通りですが(→こちら)、今回の集計期間中である8月23日に行われた共和党の大統領予備選第一回討論会の冒頭にてこの曲が取り上げられています。一方でオリヴァー・アンソニー・ミュージックは取り上げられたことについて、YouTubeにて不快感を表明しています。

 

「Rich Men North Of Richmond」はソングチャートと集計方法を同一とするホットカントリーソングチャートでも連覇を達成しています。

「Rich Men North Of Richmond」の首位獲得についてはチャートファンからも新たな記録達成等に関する指摘がなされています。"Music"を含む歌手のナンバーワンヒットはオリヴァー・アンソニー・ミュージックがC+C ミュージック・ファクトリー「Gonna Make You Sweat (Everybody Dance Now)」(1991)以来2例目であること(曲名ではワイルド・チェリー「Play That Funky Music」(1976)およびマドンナ「Music」(2000)が挙げられること)、そしてアメリカの都市名がタイトルに付いた曲での首位獲得は1985年以来、通算8作品目となることも紹介されています。

アメリカの都市名がタイトルに付いた曲の首位獲得一覧>

・オリヴァー・アンソニー・ミュージック「Rich Men North Of Richmond」(2023)

ヤン・ハマー「Miami Vice Theme」(1985)

エルトン・ジョンPhiladelphia Freedom」(1975)

・ペーパー・レース「The Night Chicago Died」(1974)

MFSB「T.S.O.P. (The Sound Of Philadelphia)」(1974)

マーティ・ロビンス「El Paso」(1960)

・ジョニー・ホートン「The Battle Of New Orleans」(1959)

・ウィルバート・ハリソン「Kansas City」(1959)

(なお、1966年に首位を獲得したザ・モンキーズ「Last Train To Clarksville」はリストに含まれていません。チャートファンの方によれば、作詞を手掛けたボビー・ハートが、テネシー州クラークスヴィルという実在の都市ではなく架空の街について書いた曲と主張しているため、リストに入れなかったとのこと。またバウアー「Harlem Shake」(2013)については、ハーレムがニューヨークの一地区であることから、同じく含まれていません。なお「Rich Men North Of Richmond」の前にはカミラ・カベロ feat. ヤング・サグ「Havana」が2018年に首位を獲得していますが、ハバナキューバの首都となります。)

 

ルーク・コムズ「Fast Car」は七度目の2位、また通算16週首位を獲得したモーガン・ウォレン「Last Night」は3位となり、上位3曲の順位は前週と変わっていません。オリヴァー・アンソニー・ミュージック「Rich Men North Of Richmond」も含め、(ホットカントリーソングチャートにランクインしている)カントリージャンルの作品が総合ソングチャートでトップ3を独占したのは前週に続き三度目となります。この記録が初めて生まれたのは8月5日付であり、その際は「Last Night」が2位、「Fast Car」が3位、そしてジェイソン・アルディーン「Try That In A Small Town」が首位を獲得していました。

なお「Last Night」は米ビルボードによる今年度のソング・オブ・ザ・サマーチャート(Songs Of The Summer)において、開始から13週連続で首位に立っています。

 

ドージャ・キャット「Paint The Town Red」が15→5位に上昇し、同曲初のトップ10位入り。ストリーミングは前週比49%アップの2110万、ダウンロードは同81%アップの5,000、ラジオは同37%アップの2260万を記録し、トップストリーミングゲイナーおよびトップセールスゲイナーを獲得しています。

2週前に15位に初登場を果たした「Paint The Town Red」は、その後TikTokでブレイクし登場3週目にトップ10入り。これによりドージャ・キャットは、ニッキー・ミナージュが客演参加したことで首位を獲得した「Say So」(2020年5月 1週首位)、シザを迎えた「Kiss Me More」(2021年7月 3位)、「Need To Know」(2021年11月 8位)、「Woman」(2022年5月 7位)、ポスト・マローンへの客演参加曲「I Like You (A Happier Song)」(2022年10月 3位)、「Vegas」(2022年10月 10位)に続く7曲目のトップ10ヒットを獲得しています。

「Paint The Town Red」ではディオンヌ・ワーウィック「Walk On By」をサンプリングで用いています。1964年にソングチャートで6位を記録した「Walk On By」のソングライトを手掛けたバート・バカラックおよびハル・デヴィッドは、ツイスタ feat. カニエ・ウェストジェイミー・フォックス「Slow Jamz」(2004)以来となるソングライターでのトップ10入りを果たしています。なお「Slow Jamz」でディオンヌ・ワーウィックによる1964年作品のルーサー・ヴァンドロスによるカバー版「A House Is Not A Home」が使用されています。

バート・バカラックは今年2月8日に死去。これまで7曲のナンバーワンヒットを手掛け、四つのディケイド(1960、1970、1980および2000年代)で首位を獲得しています。ハル・デヴィッドは2012年に亡くなっています。

ドージャ・キャット「Paint The Town Red」はホットR&B/ヒップホップソングチャートで5→1位、ホットラップソングチャートで4→1位に上昇。前者では「Say So」以来2曲目、後者では初の首位に至っています。

 

レマ & セレーナ・ゴメス「Calm Down」は1ランクダウンし6位となりましたが、ラジオ指標では10週目の首位に(前週比3%ダウンの8350万を記録)。昨年4月に始まったU.S.アフロビートソングチャートでは52週目の首位となり、同チャートにおける最長首位獲得記録を更新しています。

映画『バービー』サウンドトラックからは2曲がトップ10入り。デュア・リパ「Dance The Night」が8→9位、ニッキー・ミナージュ & アイス・スパイス with アクア「Barbie World」が9→10位となっています。「Dance The Night」はラジオにおいて前週比16%アップの5770万を記録し、トップエアプレイゲイナーを獲得しています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) オリヴァー・アンソニー・ミュージック「Rich Men North Of Richmond」

2位 (2位) ルーク・コムズ「Fast Car」

3位 (3位) モーガン・ウォレン「Last Night」

4位 (4位) テイラー・スウィフト「Cruel Summer」

5位 (15位) ドージャ・キャット「Paint The Town Red」

6位 (5位) レマ & セレーナ・ゴメス「Calm Down」

7位 (7位) ガンナ「Fukumean」

8位 (6位) オリヴィア・ロドリゴ「Vampire」

9位 (8位) デュア・リパ「Dance The Night」

10位 (9位) ニッキー・ミナージュ & アイス・スパイス with アクア「Barbie World」

 

 

ビルボードが一昨年新設したグローバルチャートもチェック。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。9月2日付ではGlobal 200、Global Excl. U.S.共に、ジョングク feat. ラトー「Seven」が初登場から6連覇を達成しています。

ジョングク feat. ラトー「Seven」はGlobal 200においてストリーミングが前週比10%ダウンの9410万、ダウンロードが同45%ダウンの2,000を、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.ではストリーミングが前週比10%ダウンの8580万、ダウンロードが同26%ダウンの2,000を、それぞれ記録しています。

初登場で首位を獲得し、その週を含め6週その座をキープしているのはマイリー・サイラス「Flowers」(2023年1月以降 初登場から6週連続で双方のチャートを制覇)以来、「Seven」が今年2曲目となります。

 

ビルボードソングチャートを制したオリヴァー・アンソニー・ミュージック「Rich Men North Of Richmond」はGlobal 200で2位をキープ。ストリーミングは前週比41%アップの2850万、ダウンロードは同19%ダウンの127,000を、それぞれ記録しています。またGlobal Excl. U.S.においてはストリーミングが前週比110%アップの580万、ダウンロードが同9%アップの10,000となり、117位に初登場を果たしました。なお「Rich Men North Of Richmond」における米でのポイント獲得分はストリーミングが80%(前週は88%)、ダウンロードが92%(前週は95%)となります。

 

ドージャ・キャット「Paint The Town Red」がGlobal 200で17→3位、Global Excl. U.S.では27→7位に上昇し、双方のチャート共に初のトップ10入り。Global 200ではストリーミングが前週比53%アップの4960万、ダウンロードが同71%アップの6,000を、Global Excl. U.S.ではストリーミングが前週比55%アップの2930万、ダウンロードが同44%アップの1,000を、それぞれ記録しています。ドージャ・キャットはGlobal 200では4曲目、Global Excl. U.S.では3曲目のトップ10ヒットとなり、前者ではシザ「Kiss Me More」が2021年5月に記録したキャリア最高位に今回並びました。

Global Excl. U.S.ではテイラー・スウィフト「Cruel Summer」が7→5位となり、同曲の最高位を更新。同曲はテイラーにとって7曲目となるトップ5ヒットとなり(トップ10ヒットは11曲)、2023年においては初となります。