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【米ビルボード】テイラー・スウィフト「All Too Well (Taylor's Version)」、アデル「Easy On Me」を抑え初登場首位獲得

毎週火曜は最新米ビルボードの速報をお伝えします。

現地時間の11月22日月曜に発表された最新11月27日付米ビルボードソングスチャート(Hot 100)。前週まで4連覇を達成していたアデル「Easy On Me」を抑え、テイラー・スウィフト「All Too Well (Taylor's Version)」が初登場で首位を獲得しました。

(上記はショート・フィルムとなります。)

テイラー・スウィフト「All Too Well (Taylor's Version)」は11月12日にリリースされたアルバム『Red (Taylor's Version)』収録曲。こちらには5分29秒バージョン、および”10 Minute Version"と称した10分13秒バージョンの2種類が存在。9年前の『Red』収録となるオリジナルバージョンは合算されませんが、この2バージョンは合算対象となります。

ビルボードソングスチャート63年の歴史において1132曲目の首位獲得、また58曲目となる初登場での首位登場となった「All Too Well (Taylor's Version)」はストリーミングが5440万、ダウンロードが57800、ラジオが286000を獲得。ストリーミングおよびダウンロードを制し、ストリーミングは5曲目の首位獲得でカーディ・Bを抜き女性歌手で最多に、そしてダウンロードでは同じく女性歌手での最多記録を23曲に伸ばしています。

今回の2バージョンにおいて、集計期間中のストリーミングおよびダウンロードは共に長尺版が多数派となっており、ストリーミングは62%、ダウンロードは78%を占めています。

 

2バージョンは当初ダウンロードで安価販売が実施。また長尺版にはクリーンバージョンおよびアコースティックバージョンが用意されたほか、9分58秒の”Sad Girl Autumn Version – Recorded at Long Pond Studios”が用意され、いずれも合算対象となっています。

(上記は”Sad Girl Autumn Version – Recorded at Long Pond Studios”。)

また「All Too Well (Taylor's Version)」にはショート・フィルムも登場。テイラー・スウィフトが監督し、テイラー自身に加えてディラン・オブライエンやセイディー・シンクが出演したこの作品は11月12日に公開。さらに翌日は『サタデー・ナイト・ライブ』(NBC)に出演し、長尺版を披露しています。

 

 

これら施策の結果、首位を獲得したテイラー・スウィフト。では今回誕生した様々な記録を見ていきましょう。

 

テイラー・スウィフトは「We Are Never Ever Getting Back Together」(2012 3週)、「Shake It Off」(2014 4週)、「Blank Space」(2014 7週)、「Bad Blood (feat. ケンドリック・ラマー)」(2015 1週)、「Look What You Made Me Do」(2017 3週)、「Cardigan」(2020 1週)、「Willow」(2020 1週)に続く8曲目の首位を「All Too Well (Taylor's Version)」で達成。8曲以上の首位獲得は20組目となり、ソロ女性歌手では7組目。ザ・ビートルズの20曲が最も多く、女性歌手ではマライア・キャリーの19曲が最高となります。

テイラー・スウィフトは「All Too Well (Taylor's Version)」で通算30曲目となるトップ10入りを達成。これはドレイク(54曲)、マドンナ(38曲)、ザ・ビートルズ(34曲)、リアーナ(31曲)に続く5位となり、マイケル・ジャクソンに並びました。

 

テイラー・スウィフトは最新11月27日付米ビルボードアルバムチャートで『Red (Taylor's Version)』が首位を獲得。『Folklore』と「Cardigan」(2020年8月8日付)、『Evermore』と「Willow」(2020年12月26日付)に続き、3回目となる初登場でのソングス/アルバムチャート同時制覇を達成。BTSジャスティン・ビーバーおよびドレイクの2回を抜き最多記録を更新しています。

また「All Too Well (Taylor's Version)」はソングスチャート63年の歴史、1132曲目の首位獲得曲の中で最も尺が長い作品に。これまではドン・マクリーン「American Pie (Parts I & II)」(1972)が8分37秒で最も長く、今回半世紀ぶりの更新となりました。

テイラー・スウィフトは現在、以前のレコード会社からリリースしていたアルバムを”Taylor's Version”としてセルフカバーするプロジェクトを実行中。オリジナルバージョンとなる『Red』(2012)に収録された「All Too Well」は同年、80位にランクインしています。オリジナルバージョンが100位以内にランクインした曲のカバー(セルフカバーを含む)で首位を獲得したのはラベルのカバーとなる「Lady Marmalade」以来。オリジナルは1975年に首位を獲得していますが、クリスティーナ・アギレラリル・キム、マイヤそしてピンクによるカバーバージョンは2001年にチャートを制覇。「All Too Well」は20年ぶりの記録達成となります。

セルフカバー曲の首位獲得となるとエルトン・ジョン「Candle In The Wind」以来。オリジナルバージョンは1973年にリリースされ、ライブバージョンが1988年に6位を記録していますが、「Candle In The Wind 1997」と称したバージョンが「Something About The Way You Look Tonight」とのダブルAサイドとして1997年から翌年にかけて14週首位を達成しています。エルトンは「Don't Let The Sun Go Down On Me」も同様に、オリジナルバージョンが1974年に2位を記録し、ジョージ・マイケルとのライブでのカバー版で1992年に首位を記録しています。

 

なお合算の集計対象外となった2012年のオリジナル版「All Too Well」は今週、ストリーミングが前週比23%ダウンの260万、ダウンロードが同195%アップのおよそ700を記録。一方で米ビルボードが登録している1300以上のラジオ局(ラジオ指標の集計対象局)ではオリジナルバージョンの再生が確認されていません。なおこのオリジナルバージョンは評論家やファンから高い支持を集めており、これまでにストリーミングでは1億4550万、ダウンロードでは304000、ラジオでは160万を獲得しています。

 

テイラー・スウィフトは今回のアルバム『Red (Taylor's Version)』から26曲をソングスチャート100位以内に送り込んでいます。そしてそのすべてが初登場となっています。

26曲もの100位以内エントリーは、ドレイクが2018年7月14日付で記録した27曲に次ぐ歴代2位となります。また、初登場曲数では最多記録となります。

今回のチャートアクションにより、テイラー・スウィフトはソングスチャート100位以内に164曲エントリーを果たしたことに。ドレイクの259曲、グリー・キャストの207曲、リル・ウェインの178曲に続く歴代4位となりました。

 

テイラー・スウィフト『Red (Taylor's Version)』とリリース日が被ったこともあり最新11月27日付米ビルボードアルバムチャートで2位初登場となったのがシルク・ソニック『An Evening With Silk Sonic』。そこから1週間先行でリリースされた「Smokin Out The Window」が3ランクアップし5位に。ストリーミングは前週比13%アップの2380万、ラジオは同135%アップの1370万を記録しています(なおダウンロードについては記事未記載)。

『An Evening With Silk Sonic』からは7曲がソングスチャート100位以内にエントリー。そしてサンダーキャットと共に「After Last Night」に参加したブーツィー・コリンズは、今回がソングスチャート100位以内初登場となりました。

 

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) テイラー・スウィフト「All Too Well (Taylor's Version)」

2位 (1位) アデル「Easy On Me」

3位 (2位) ザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」

4位 (3位) リル・ナズ・X & ジャック・ハーロウ「Industry Baby」

5位 (8位) シルク・ソニック「Smokin Out The Window」

6位 (4位) エド・シーラン「Bad Habits」

7位 (5位) エド・シーラン「Shivers」

8位 (10位) グラス・アニマルズ「Heat Waves

9位 (9位) ドージャ・キャット「Need To Know」

10位 (7位) ウォーカー・ヘイズ「Fancy Like」

ラジオの首位はザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」(総合3位)。前週比3%ダウンの8690万を記録し同指標10週目の首位を獲得しましたが、アデル「Easy On Me」(総合2位)が猛追。「Easy On Me」はストリーミングが前週比2%アップの2410万(同指標3位)、ダウンロードが同70%アップの24800(同指標2位)、ラジオが同9%アップの8480万(同指標2位)を記録しています。

 

 

 

最後に私見を記載します。

次週はアルバム『30』初登場に伴い、アデルが「Easy On Me」で首位へのカムバックを果たすことが見込まれ、また収録曲の大量エントリーも考えられます。その一方で、テイラー・スウィフト「All Too Well (Taylor's Version)」の次週の動向が個人的には気掛かりです。先述した「Willow」が登場2週目となる2021年1月2日付で38位に急落したという経緯があるため、尚の事です。

この時はクリスマスソングの大量エントリーの影響もありますが、米ビルボードは記事にて”greatest fall"と表現していました。そして今回の「All Too Well (Taylor's Version)」においてはこのような指摘があります。

ビルボードの予想等を行うアカウントにて指摘された内容は、いわゆるストリーミング時代以降に総合首位を獲得した「All Too Well (Taylor's Version)」がラジオにおいて初めて30万を下回った、というもの。長尺版はOAしにくいとはいえ短尺版も存在するわけで、この状況でロングヒットに欠かせないラジオ指標がここまで弱いとなれば次週の急落が十分想像できるのです。

テイラー・スウィフトはその「Willow」においても施策を徹底。また昨年秋にその効果が実質無効化されたフィジカル施策についても採り入れる等、チャートアクションの最大化を徹底して行っているという印象があります。

しかしながら重要なのはロングヒットし、曲が長きに渡って愛されることではないでしょうか。その点においてこれら施策は短期的には有効であれどもチャート首位という称号の形骸化を招きかねず、米ビルボードが今後チャートポリシー変更を行う可能性もあり得ます。そうなれば中長期的にはむしろ逆効果とすら言えるかもしれないのです。

テイラー・スウィフトのようにファンが多い、そして注目度が高い歌手は今後も、ソングスチャートの初登場首位やアルバムチャートとの同時初登場首位を成し遂げていくことでしょう。作品の評判はよく耳にします。ならばその作品を、如何に長く愛してもらうかについて心を傾けてほしいというのが私見です。

 

年間ソングスチャートはもうすぐ発表される模様です。「Willow」の年間ソングスチャート順位を踏まえ、この点については総括の際にあらためて記載します。