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【米ビルボード】アデル「Easy On Me」が圧倒的な強さで首位到達…ラジオ等で様々な記録を樹立

毎週火曜は最新米ビルボードの速報をお伝えします。

現地時間の10月25日月曜に発表された最新10月30日付米ビルボードソングスチャート(Hot 100)。前週68位に初登場したアデル「Easy On Me」が初の首位を獲得しました。

 

ビルボードソングスチャート63年の歴史の中で1131曲目の首位となったアデル「Easy On Me」は、ストリーミングが5390万(同指標1位)、ダウンロードが74000(同指標1位)、ラジオが6500万(同指標4位)を記録しています。

「Easy On Me」はイギリスにおいて10月15日金曜に解禁され、米では東部時間の14日19時にリリース。前週10月23日付ではわずか5時間でストリーミング310万、ダウンロード14800およびラジオ310万を獲得し68位につけていました。今週は1週間フル加算され首位に躍り出た形です。

「Easy On Me」の68→1位という推移は、首位獲得時の大ジャンプ記録において歴代8位。過去最高はケリー・クラークソン「My Life Would Suck Without You」における97→1位(2009年2月7日付)。以下ブリトニー・スピアーズ「Womanizer」(2008年10月25日付 96→1位)、T.I. feat. リアーナ「Live Your Life」(2008年10月18日付 80→1位)、エミネムドクター・ドレー & 50セント「Crack A Bottle」(2009年2月21日付 78→1位)、テイラー・スウィフト「Look What You Made Me Do」(2017年9月16日付 77→1位)、テイラー・スウィフト「We Are Never Ever Getting Back Together」(2012年9月1日付 72→1位)、T.I.「Whatever You Like」(2008年9月6日付 71→1位)と続きます。

「Easy On Me」はアデルにとって、「Rollling In The Deep」(2011年5月21日付以降7週)、「Someone Like You」(2011年9月17日付以降5週)、「Set Fire To The Rain」(2012年2月4日付以降2週)、「Hello」(2015年11月14日付以降10週)に続く5曲目の首位獲得曲に。また「Skyfall」(2012年10月 8位)、「Send My Love (To Your New Lover)」(2016年9月 8位)を含めるとトップ10入りは7曲目、トップ40入りは11曲目となります。

 

アデルはイギリスのロンドン生まれ。イギリス出身のソロ歌手が米ビルボードソングスチャートで5曲以上制したのは6組目となり、女性歌手ではオリヴィア・ニュートン・ジョンとタイに。エルトン・ジョンおよびポール・マッカートニーの9曲が最多となり、以下ジョージ・マイケルの8曲、フィル・コリンズの7曲と続きます。

また3週前にはイギリス出身のコールドプレイがBTSとのコラボレーションによる「My Universe」で首位を獲得しており、同じ月にイギリス出身の歌手による2曲が米ビルボードソングスチャートを制しました。これはジョージ・マイケルエルトン・ジョン「Don't Let The Sun Go Down On Me」が1992年2月1日付、ライト・セッド・フレッド「I'm Too Sexy」がその翌週に首位を獲得して以来となります。

 

「Easy On Me」は11月19日にリリースされる4枚目のアルバム『30』のリード曲。アルバムからのリード曲が首位を獲得したのは「Rollling In The Deep」(『21』収録)、「Hello」(『25』収録)に次ぐ3曲目に。なお『21』は通算24週、『25』は通算10週首位を記録し、『21』は米ビルボードアルバムチャートにおいて歴代1位を獲得しています。なお、デビュー・アルバム『19』(2008)は2012年3月に最高4位に至っています。

 

チャートを構成する3指標のうちラジオは4位に到達。前週は50位以内に届かなかったため今回同指標初登場となりますが、この4位初登場はレディー・ガガ「Born This Way」が2011年2月に6位でデビューしたのを上回り、1998年12月以降で初登場における最高位を更新しました。

(ちなみにラジオ指標において、1990年12月から1998年11月まではポップのジャンルが大きなウエイトを占めていたこともあり、同期間においてはマドンナ「Erotica」が1992年10月に2位、マライア・キャリー「I'll Be There」が同年5月に4位、ジャネット・ジャクソン「That's The Way Love Goes」が1993年5月に4位に、それぞれ初登場を果たしています。)

またストリーミングにおいて、今年5000万を超えたのは「Easy On Me」が5曲目*1。オリヴィア・ロドリゴ「Drivers License」が1月23日付で7610万を獲得したのが最高となり、同曲の1月30日付における5970万、ドレイク feat. フューチャー & ヤング・サグ「Way 2 Sexy」(9月18日付 6730万)、オリヴィア・ロドリゴ「Good 4 U」(6月5日付 6270万)、ポロG「Rapstar」(4月24日付 5360万)に続く記録となります。

「Easy On Me」はストリーミングおよびダウンロードの2指標を制しました。これは前週のリル・ナズ・X feat. ジャック・ハーロウ「Industry Baby」に次ぐ記録となりますが、その前は今年2月6日付におけるオリヴィア・ロドリゴ「Drivers License」まで遡ることになります。なおいずれの曲もストリーミングおよびダウンロードを制しています。

(「Drivers License」から「Industry Baby」「Easy On Me」に至るまで複数の指標でトップを獲得した曲がなかったことについて、米ビルボードはストリーミングおよびダウンロードとラジオとの乖離が拡大し、前者(2指標)においてはリスナー(ユーザー)に因る即時的な行動が反映されていると紹介しています。)

 

今回首位に立ったアデル「Easy On Me」はポイントにおいて2位のザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」に2倍以上もの大差をつけています(なおポイント自体については記事未記載となっています)。2位に2倍以上の差をつけて首位を獲得した曲は、1991年11月以降ではオリヴィア・ロドリゴ「Drivers License」に続く25曲目となります。以下にそのリストが掲載されています。

 

タイトルに"Easy"が付く曲の首位獲得は「Easy On Me」が初。これまでの最高位はフィリップ・ベイリー with フィル・コリンズ「Easy Lover」(1985)の2位が最高でした。以下、コモドアーズ「Easy」(1977 4位)、リンゴ・スター「It Don't Come Easy」(1971 4位)、スリー・ドッグ・ナイト「Easy To Be Hard」(1969 4位)、リンダ・ロンシュタット「It's So Easy」(1977 5位)と続きます。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (68位) アデル「Easy On Me」

2位 (2位) ザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」

3位 (1位) リル・ナズ・X & ジャック・ハーロウ「Industry Baby」

4位 (3位) ウォーカー・ヘイズ「Fancy Like」

5位 (4位) エド・シーラン「Bad Habits」

6位 (5位) ドレイク feat. フューチャー & ヤング・サグ「Way 2 Sexy」

7位 (6位) オリヴィア・ロドリゴ「Good 4 U」

8位 (8位) デュア・リパ「Levitating」

9位 (10位) エド・シーラン「Shivers」

10位 (7位) ドージャ・キャット feat. シザ「Kiss Me More」 

デュア・リパ「Levitating」が8位をキープし、トップ10在籍が40週に到達しました。ポスト・マローン「Circles」(在籍期間 2019-2020)の39週を抜いて、ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」の57週(在籍期間 2020-2021)に次ぐ歴代単独2位に至っています。

ラジオの首位はザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」(総合2位)で、前週比3%アップの9090万を記録。そして上位3曲がすべてコロムビア・レコード発の作品で占められています。

同一レコード会社によるトップ3占拠には今年9月18日付におけるドレイク独占という例もありますが、異なる歌手によるトップ3占拠は2005年10月22日付におけるアイランド・デフ・ジャム・グループ(カニエ・ウェスト feat. ジェイミー・フォックスGold Digger」、ニッケルバック「Photograph」、マライア・キャリー「Shake It Off」の順)以来、16年ぶりとなります。

 

 

最後に。今週から定額制音楽配信サービス、Boomplay(ブームプレイ)のデータが米ビルボードのソングスチャート(Hot 100)、アルバムチャート(Billboard 200)、歌手別チャート(Artist 100)およびグローバルチャート(Global 200およびGlobal Excl. U.S.)に含まれることになりました。Boomplayにおけるサブスクリプション*2のオーディオストリーミングおよび広告支援ストリーミングの2種類が各種チャートに加算され、ふたつのデータのウエイトは異なります。

Boomplayはアフリカ大陸で最大の音楽ストリーミングサービスとのこと(2019年4月の上記記事参照)。グローバルチャートが昨秋ローンチされたこともあり、近年は世界中の曲がよりヒットする環境が醸成されています。Boomplayの集計開始がアフリカ勢のさらなるチャートヒットにつながることは間違いないでしょう。

*1:ただし、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」は今年1月2日付で5490万を記録し総合でも首位を獲得していますが、記事では表記されていません。

*2:おそらくは有料会員のことを記事では"サブスクリプション層"と記載しているものと思われます。