イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) DISH//「猫」は実は大ヒット曲? 2バージョンのチャート推移をまとめ、ビルボードジャパンの複数バージョン合算化を希望する

昨日のブログエントリーでも紹介しましたが、DISH//「猫」が9月28日付ビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標において、再生回数が前週比125%を記録しています。この上昇の要因となったのは集計期間2日前に放送された『THE MUSIC DAY』(日本テレビ)において、2017年リリースのオリジナルバージョン(シングル「僕たちがやりました」のカップリングとして収録)を披露したことでした。

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「猫」(→CHART insight)の直近30週分のチャート推移を上記に。2017年7月24日付で一度総合100位未満ながら300位以内に入っていたため、今年に入ってリエントリーした形です。この「猫」がチャートを駆け上がった理由はなんといっても、ソニーが運営していると推測されるYouTubeチャンネル、THE FIRST TAKEへの登場。ここで披露され後に音源化された「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」(→ CHART insight)が、しばらくはオリジナルバージョンを上回るヒットとなっていました。

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このふたつのバージョンを共に確認するに至ったのは、前週自分のTwitterタイムラインで『NHK紅白歌合戦』の今年の出場者予想ブログが紹介されていたため。調べてみると「猫」は2バージョン共にビルボードジャパンソングスチャートでトップ10入りは果たしていないものの、実は大ヒットに至っていることが判ります。

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ビルボードジャパンソングスチャートは米ビルボードのように、オリジナルバージョンとリミックス等別バージョンは合算されませんが、仮に合算すると「猫」はこれまでに通算11週トップ10入りを果たしたことになり、また13週連続で6千ポイント台と安定したヒットとなるのです。またポイント判明分(総合チャート50位以内は確認可能)だけで108035ポイントを獲得しており、チャート分析や予想を行うあささんによる下記ツイートを踏まえれば、「猫」は年間20位相当となります。

これを踏まえれば、DISH//「猫」は『NHK紅白歌合戦』に出場できる資格を得たと考えて好いのではないでしょうか。

 

 

さて、先程のCHART insightからはいくつか疑問が浮かんできます。

 

ひとつは「猫」オリジナルバージョンにおいて、7月27日以降にCD関連指標(シングルCDセールスおよびルックアップ)が加算されていること。CHART insightでは黄色の折れ線グラフがシングルCDセールスを、オレンジがルックアップを指します。

先述したように「猫」は「僕たちがやりました」のカップリングであり、ダブルAサイド扱いではありません(所属レコード会社のDISH//のディスコグラフィーにて確認可能)。たしかに「猫」はCDではこのシングルでしか手に入れられないため追加注文があると想定され、またレンタル店では「僕たちがやりました」の在庫を今夏以降確認していますが、シングルCDのカップリングで且つダブルAサイドではない曲がCD関連指標の加算対象となるのは個人的には聞いたことがありません。加えて、CDの表題曲となる「僕たちがやりました」は「猫」にCD関連指標が加算される前週、7月20日付までシングルCDセールスおよびルックアップ指標が加算されていたのです(→CHART insight)。

たとえばAKB48の代表曲のひとつで5年前にリリースされた朝ドラ主題歌の「365日の紙飛行機」(→CHART insight)はシングル「唇にBe My Baby」(→CHART insight)のカップリングのため現在までCD関連指標は加算されていません。最近の例では、Official髭男dism『HELLO EP』はシングルとして扱われ、実質的な表題曲である「HELLO」(→CHART insight)にCD関連指標が加算、「Laughter」(→CHART insight)は未加算に。こちらは2曲とも大型タイアップが付いていますが、現在まで「HELLO」のみがCD関連指標の加算対象となります。カップリング曲のほうが知名度が上昇した場合、レコードが主流だった時代ではA面とB面を途中から入れ替える措置を採ることで注目を集めることにつなげていましたが、果たして今のチャートポリシーにおいて、カップリング曲の注目度がシングルCD表題曲よりも高い場合にCD関連指標が加算されることになったのか、その場合いつからチャートポリシーが変更になったのかビルボードジャパンに伺ってみたいところです。

 

もうひとつは動画再生指標における不可解な点。今朝の時点で5070万再生を突破した「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」の動画ですが、動画再生指標は8月17日付が最後の加算となり、その後途絶えているのです。この指標はCHART insightでは赤の折れ線グラフで示されます。

他方、オリジナルバージョンの関連動画はいくつか存在。”関連”と書いたのはそれぞれライブバージョンでありオリジナルバージョンの音源と厳密には異なるため。これらはいずれもDISH//の公式YouTubeチャンネルから発信されています。”2020”と題した動画のアップロードが8月15日であり、動画再生指標に初めて加算されるのは8月24日付。「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」の動画再生指標が途絶えるタイミングとは偶然ではありますが重なります。

ビルボードジャパンの動画再生指標はYouTubeGYAO!の動画がカウントの対象となりますが、9月7日付よりYouTube内のデータを区別するチャートポリシー変更を実施。そしてそのタイミングで、ビルボードジャパンはポッドキャストにてYouTubeの詳細な区分について紹介しています。

オフィシャルコンテンツの4条件を決めるのが、またそもそも動画再生指標のカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)を付番するのがビルボードジャパンではなく動画の発し手である歌手側もしくはレコード会社側だろうと考えれば、8月24日付ビルボードジャパンソングスチャート以降でオフィシャルコンテンツのISRCを全てオリジナルバージョンに統一させたのではと考えたのですが、さすがにこの推測は邪推の域を出ません(ただ、仮にこの推測が当たっているならば、そしてその目的がビルボードジャパンソングスチャート対策という意味を持っていたならば極めて問題と考えます)。

一方で、上記3つの動画にクレジットされた”この動画の音楽”欄は、THE FIRST TAKEバージョンとオリジナルとで分けられています。仮にYouTubeから提供されるデータが8月24日付以降混ぜられたとして、これらの動画クレジットも踏まえれば、チェックの段階でビルボードジャパン側がおかしなことに気づくべきではないかと思うのです。さらに、「猫」のオリジナルバージョンで紹介した2つの動画はライブバージョンであり厳密にはオリジナルバージョンと異なるわけで、これらが動画再生指標の加算対象となるのであれば、”オリジナルバージョンとリミックス等別バージョンは合算しない”というビルボードジャパンの大本のチャートポリシーと矛盾するのではないでしょうか。

 

この動画再生における諸問題についてもビルボードジャパン側に尋ねたいところですが、それよりも前向きな解決策を提示するならば、動画再生指標における矛盾や邪推を解消する手段は、米ビルボードに倣ってオリジナルバージョンとリミックス等別バージョンを合算することだと考えます(し、それが唯一の案だと思うのです)。合算するというチャートポリシー変更は、たとえばTwitter指標における「猫」の圧倒的なオリジナルバージョンの強さからも必要なことと言えます。テレビ番組で「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」が披露された際、そのリアクションにおいてきちんと”THE FIRST TAKE”を併記する方がどれくらいいらっしゃるでしょうか。この矛盾を解消する意味でも、ビルボードジャパンは合算を検討してほしいと強く思います。

 

 

仮にビルボードジャパンが様々なバージョンを合算するチャートポリシーを敷いていたならば、週間トップ10入りが確実であり年間トップ20入りもあり得るかもしれないDISH//「猫」。個人的にはテレビ番組への露出増加、また他の芸能事務所に所属する男性アイドル(グループ)との共演が積極的ではなかったジャニーズ事務所所属歌手との共演が複数見られるようになったことで、『NHK紅白歌合戦』出場が現実味を帯びたと考えます。また「猫」の楽曲提供者で昨年不出場だったあいみょんさんが、「裸の心」のヒット(こちらについては昨日のブログエントリー参照)やアルバムリリースに伴い復活出場を果たすとも考えられます。あいみょんさんはシングル「今夜このまま」のカップリングに「猫」のライブバージョンを収録していたこともあり、大晦日に両者が共演するならば…と願ってやみません。

 

 

※ 追記(10月7日7時56分)

今回の表で記載したポイントについて、ビルボードジャパンが後日訂正を実施しています。「猫」のオリジナルバージョンはシングルCD表題曲ではないため本来はシングルCDセールスおよびルックアップは加算対象外のはずでしたが、誤って加算されていた模様であり、訂正後CD関連指標が除外されています。訂正後のポイント、および今回の訂正を踏まえたビルボードジャパンへの願いについて、後日ブログに記載しています。