イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) JO1「OH-EH-OH」と三浦春馬「Night Diver」の勝敗を分けたものとは? YouTubeのチャートポリシー変更でチャートは大きく変容?…9月7日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

(※追記 (9月3日19時25分):昨日ビルボードジャパンが発表したダウンロード指標、および総合チャートが本日一部訂正されたため、キャプチャや表を差替しています。)

 

 

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

8月24~30日を集計期間とする9月7日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。JO1「OH-EH-OH」と三浦春馬「Night Diver」の首位争いは「OH-EH-OH」に軍配が上がりました。

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三浦春馬「Night Diver」はJO1「OH-EH-OH」をいくつかの指標で上回りながら、『シングル・セールス差の約10万枚を覆すには至らず』に2位となりました(『』内は上記記事より)。

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2曲のチャート推移(CHART insight)および今週の総合5位までの各指標の順位から動向を確認しましょう。「Night Diver」については直近11週分のCHART insightを用意しています。

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これをみると「Night Diver」がデジタルに強く、「OH-EH-OH」がCDセールスおよびTwitterといったいわばアイドルが強い指標に長けていることが判ります。特にTwitterにおいては、JO1「STARGAZER」(「OH-EH-OH」等を収録したセカンドシングルCD)に収録された6曲がTwitter指標で7位までに入っていることから、ファンによるつぶやき活動の成果が大きく反映されたと言えるでしょう。この活動については下記ブログエントリーで取り上げています。

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最も気になったのはルックアップ。この指標はJO1「OH-EH-OH」、三浦春馬「Night Diver」それぞれチャート構成比のおよそ5%程度を占めており、前者が1400ポイント以上、後者が1260ポイント程度を獲得していると推測されます。しかし20万以上売り上げた両曲はこの指標でトップに立てませんでした。

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ルックアップを制したのは今週もOfficial髭男dism「HELLO」(総合9位)。当週のシングルCDセールスは「Night Diver」の2.5%、「OH-EH-OH」を収録した「STARGAZER」の1.7%でしかありません。にもかかわらず「HELLO」がルックアップを制したのは集計期間中に『FNS歌謡祭』(フジテレビ)で披露した等によりレンタルが好調に推移したことが主な理由であると考えられます。これは前週指摘したのと同じ動きです。

シングルCDセールスとルックアップの順位が乖離する場合、ルックアップが極端に低いほどユニークユーザー数(実際の購入者数)が少なくコアなファンが売上を支えている、逆に後者が極端に高いほどレンタルが好調であると捉えることができるでしょう。あいみょん「裸の心」やLiSA「紅蓮華」も後者の傾向にあるのです。つまり、より多くの方へ浸透しているか、興味を持たれているかが【シングルCDセールス<ルックアップ】に表れるものと考えます。

(ただし、嵐「カイト」については、ビルボードジャパンでは今週カウントされなかった(であろう)ファンクラブ限定盤の追加出荷分がオリコンでは反映された模様で、その売上によりオリコンでは”シングルで初のミリオン達成”とアナウンスされました。当週のシングルCDセールス(23位)とルックアップ(4位)の乖離は、「カイト」においては追加出荷分の取り込みも大きいと言えるでしょう。)

この【シングルCDセールス<ルックアップ】において、JO1「OH-EH-OH」と三浦春馬「Night Diver」の予想の際にも申し上げたのですが、「Night Diver」が前作とは異なりレンタル解禁をアルバム同様CDリリースの17日後に設定したのは、厳しい表現かもしれませんが大きな誤算だったと言えるかもしれません。仮にレンタル同日解禁でも「OH-EH-OH」を逆転するに至れたかは難しいところですが、追悼の意を込めて元来購入すると決めていた方が多く、一方で作品自体は2週連続4位に入っていたという注目度の高さから察するに、レンタルが解禁されたら手にしたいと思っていた方もまた多いはずです。解禁の事実を知らずとも、レンタル店で解禁を知って接触から所有に行動を変える方もいらっしゃったかもしれません。今作においてはレンタル同時解禁でも売上を大きく落とすことはなかっただろうと考えれば、またレンタル店でも在庫数を複数用意するであろうとも想像できたため、デビューシングルとは異なりレンタルを同時解禁しなかったためにルックアップの大量獲得につながらなかったことは至極勿体ないと思っています。

 

 

さて今週から、ビルボードジャパンはYouTubeの取扱を変更しました。いわゆるチャートポリシー変更です。

ビデオストリーミングとオーディオとに分け、また有料会員と無料会員とで1再生あたりのウェイトを変えるという細分化は、多くの曲に影響を与えています。定点観測している総合50位のポイントは前週まで3週連続で増加していたものの、今週は(2429→)2190ポイントと大きく落としています。そして今週トップ50入りした楽曲のポイント前週比もはっきりとした傾向が見られるのです。

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8月31日付では、その前の週がお盆の時期であり主にストリーミングが伸びて全体のポイントを底上げした、その反動がポイント前週比に表れたと捉えていますが、今週はその8月31日付からさらにポイントを落としている曲が大半。そして最も大きく落とした曲のひとつがYOASOBI「夜に駆ける」(今週4位)でした。

大きく落とした原因のひとつには、YOASOBIがゲスト出演し大きくフィーチャーされた8月16日放送『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日)の反動が挙げられます。同じく取り上げられたヨルシカ「花に亡霊」(今週40位)がポイント前週比77.9%、yama「春を告げる」(今週28位)が同70.6%と下落幅が大きいのはその影響もありそうです。とはいえYOASOBI「夜に駆ける」がとりわけ大きくポイントを落としたのは、動画再生が群を抜いた分その反動が大きかったゆえと考えます。

 

ロングヒット曲が残りやすいビルボードジャパンソングスチャートにおいて、ロングヒットの要となるのが接触指標群であり、ストリーミング指標がおよそ5割、動画再生指標が2割以上を占めればロングヒットに当たるのではということを以前指摘しました。しかし今回のチャートポリシー変更に伴い、その数値は大きく変わりそうです。この点については定点観測を行い、あらためて私見をまとめてみようと思います。