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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

7月15日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック、そしてCDセールスが強い曲が真のヒットかどうかを見極める方法とは

7月1~7日を集計期間とする、7月15日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートはBTS「Lights」が制しました。

『自身の前作『Fake Love』の初週売上526,274枚を約24万枚上回っており』(上記記事より)、圧倒的な強さを誇った今作。シングルCDセールス初加算週の37,087ポイントは、AKB48や坂道グループに近い記録となります。

ただ、気になるのは次週の動向。というのも、シングルCDセールスが牽引し前週ソングスチャートを制したIZ*ONE「Buenos Aires」が今週32位へ急落しているため、同様の流れをなぞる可能性はゼロではありません。

日本デビューシングル「好きと言わせたい」(2019)はシングルCDセールス初加算週の2位から9位にダウン、ポイント前週比は11.1%。今作は前作以上に落ち込んでいることが分かります。前週の段階で、シングルCDセールス指標がチャート構成比の95%近くを占めることやシングルCDセールスとルックアップの乖離が著しいことを踏まえ急落を予想はしていたのですが、ここまでとは…と驚きです。初週のシングルCDセールスは前作より2万弱伸びているとはいえ、その中身をよくみないといけない事例といえます。

 

アルバムチャートでもCDセールスに長けた作品が頂点に到達しました。嵐のベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』が、2010年代で最高の初動セールスを記録した前週に続き今週も首位をキープ。こちらはルックアップも1位となっています。

ただ、ルックアップについては気になる文言が。

特筆すべきはルックアップで、こちらも1位を手堅くキープ、そのポイント増減率は前週から約2%減と微小なのだが、万単位のセールス規模を誇る作品に関して、リリース初週と2週目のルックアップ増減率がほぼ横ばいに留まるケースは非常に稀。例えばback numberはルックアップ指標が“強いアーティスト”の代表格で、当週ルックアップ3位の最新作『MAGIC』は、14週連続で同指標トップ3内を維持しているが、初週から2週目までのポイント増減率はおよそ半減。これを踏まえると、『5×20 All the BEST!! 1999-2019』のルックアップ指標における根強さは白眉であり…(以下略)。

ルックアップとはパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされた数のこと。レンタル解禁に伴い増える傾向にあるのですが、上記ビルボードジャパンの解説で嵐のベストアルバムのルックアップが堅調に推移していることを”根強い”と記載しているのがどうも引っかかるのです。

 

嵐のベストアルバムは1週目1,360,635枚、2週目118,701枚の売上があり、2週目の売上は前週の8.7%。それに対しルックアップは『前週から約2%減』であり、この数値をもって『ルックアップ指標における根強さは白眉』としていますが、逆に1週目に購入された方の取り込み数が異様に低いのではと想像出来ます。仮定ですが、2週目のルックアップが同週の販売枚数分のみ全て取り込まれ、前週より2%ダウンしたとするならば、ルックアップの推移は121,123→118,701となり、1週目の売上枚数に対するルックアップ(取込率)は8.9%ということに。他方、記事で比較されたback number『MAGIC』(2019)は売上推移が1週目170,956枚、2週目が42,189枚。同様の仮定(2週目のルックアップが同週の販売枚数分のみ全て取り込まれ、前週より50%ダウン)を施すならばルックアップの推移は84,378→42,189、1週目の売上枚数に対するルックアップ(取込率)は49.4%となり、取込率では嵐を断然上回るわけです。無論この仮定は極端なものかもしれませんがしかし、嵐のルックアップを”白眉”とするのは間違っている、むしろ売上枚数に対して取り込まれなさすぎでは…というのが自分なりの結論です。ユニークユーザー数が多くなかった(ひとりが複数枚購入していた)等、ルックアップ率の高くなさには様々な原因があるでしょう。

 

 

CDが売れることはレコード会社にとっては、また歌手側にとっても好いことであることは間違いありません。しかしながらその売れ方、実情はよくみないといけないと強く思います。嵐のベストアルバムはIZ*ONE「Buenos Aires」のようなCDセールスとルックアップの順位的な乖離はありませんでしたが、しかしながら”数値的な乖離”はみられたわけです。ルックアップの実数等は判らないゆえビルボードジャパンのチャート詳報から情報を得るしかありませんが、CDセールスが強い作品においては先述したような【CDセールス指標がチャート構成比のほどんどを占めるか】【CDセールスとルックアップの順位的乖離が著しいか】に加え【CDセールスとルックアップの数値的乖離が大きいか】ことも気にする必要があるでしょう(これはなかなか調べにくいことですが)。そして【シングルCDセールス2週目のポイントが大きく落ち込んでいないか】ことも重要な点であり、これらをクリアした曲こそ、シングルCDセールスと社会的認知度の高さが比例した真のヒット曲と言えるかもしれません。

次週のBTS「Lights」の動向に注目です。