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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン上半期チャートが発表…数値および記事の表現が促すストリーミング等デジタル解禁への期待

ビルボードジャパンの2019年度上半期各チャートが今朝発表されました。

各部門のトップを獲得したあいみょんさん、米津玄師さんおよび星野源さんのコメント/インタビューが掲載された次のページに、各チャートおよび歌手別チャート(トップアーティスト)が紹介されています。

 

チャートの内容および解説は上記リンク先をお読みいただきたいのですが、ストリーミングがチャート全体に波及する強さが証明された楽曲ならびに歌手別チャートにおいて、記事がストリーミング、もしくはそもそもデジタルを未解禁でいる歌手に対して示唆しているの面白いというか、刺さるものがあったので紹介。その示唆の仕方、実に優しいんですよね。

今回の首位獲得を機に、ストリーミングが主流となりつつある今日において、あいみょんは国内音楽シーンのロールモデルのひとつとなった。

(省略)

一方、昨年度の年間首位となった米津玄師もまた、ストリーミング・ポイントが非解禁のためゼロであるにも関わらず、今年度上半期において、ダウンロード、ルックアップ、動画再生、カラオケで4冠を獲得、総合2位となった。(中略) とはいえ、“動画”ストリーミング指標とも言い換えられるYouTubeGYAO!合算の動画再生指標では、合計456,294,308回で1位となり、2位のあいみょんの305,889,824回との差は約1.5億回で、“オーディオ”ストリーミングが解禁となったときの強さは容易に予想できる。

・ 【ビルボード 2019年上半期TOP ARTISTS】ストリーミングで圧倒、あいみょん堂々の総合首位獲得(コメントあり) | Daily News | Billboard JAPAN(6月7日付)より

歌手別チャート上位20組の各構成毎のチャートはこちらに。2位の米津玄師さん、7位の星野源さんがストリーミング未解禁ゆえ同指標100位以内に登場していないことがひと目で解ります(ちなみに12位のAKB48も同指標100位未満ですが、AKB48の作品はストリーミング解禁済です)。米津玄師さんは4指標を制しまたラジオエアプレイおよびTwitterが10位以内に入っているゆえ尚の事、ストリーミング100位未満というのが悪目立ちするように思うのですが、『“オーディオ”ストリーミングが解禁となったときの強さは容易に予想できる』という一文は、仮に解禁していればあいみょんさんを逆転出来たはず…ということを示し、解禁したら面白いことになると提案しているようにみえます。

 

デジタル自体未解禁については、ソングスチャート発表の際にこのような表記が。

米津玄師はダウンロード、あいみょんはストリーミングと、それぞれ牽引指標は異なるが、両指標ともデジタル領域でのパフォーマンスを測るデータであり、一方の国内マーケットで大きなシェアを占めるCDシングルでは何が起きているか詳しく見てみよう。今年度上半期と昨年度上半期でのセールスを比べてみると、今年度上半期シングル総売上枚数は約1,946.7万枚(対前期:255.8万枚減)で、リリース・タイトル数は51,748タイトル(対前期:71タイトル増)となり、売上全体数が落ちている。またシングル・セールスを牽引するジャニーズとAKB、坂道グループの上半期シングル売上枚数合計は約885.4万枚(対前期:20.9万枚減)、タイトル合計数は760タイトル(対前期:34タイトル増)と、こちらもタイトル数は増えているものの、全体売上枚数は下落している。上半期でのAKBグループの売上枚数は昨年上半期よりも約124.7万枚増えており、むしろジャニーズと坂道グループのシングル売上枚数の減少が目立つ。それでも、坂道グループはデジタル領域でのセールスが堅調でフィジカルの減少を補える立場といえるが、一方のデジタル領域におけるジャニーズ勢の今後にかけられる期待は大きい。このことからもフィジカルからデジタルへヒットの萌芽が完全に移行したことが分かる結果となった。

【ビルボード 2019年上半期HOT 100】米津玄師「Lemon」2018年年間に続いて総合首位獲得 あいみょん 「マリーゴールド」が続く(コメントあり) | Daily News | Billboard JAPAN(6月7日付)より

坂道グループがいずれもシングルCD(フィジカル)のみならずデジタルダウンロードやストリーミング、動画再生指標が強いことでAKBグループを逆転していることは弊ブログでも以前から示してきましたが、今年AKB48選抜総選挙を開催しないことを決定し(AKB48選抜総選挙につきまして | AKB48 Official Blog 〜1830mから~ Powered by Ameba(3月13日付)参照)、投票シリアルナンバーが封入されたCDもリリースしないだろうことを踏まえると、年間ソングスチャートではシングルCDセールスでも失速し坂道グループとの差がさらに開くことが予想されます。となるとフィジカルに頼らず、”所有(購入/売上)”以上に”接触”の増加が必要であり、そのためにはシングルCDを確実に購入するコアなファンのみならずいわば”ライト層”を如何に取り込むかが重要というのは自明。NGT48の問題をきちんと解決することを含め、信頼を回復しライト層候補者が積極的に触れたいと思える環境、関係性を築き上げることが重要と思われます。記事の記載内容はそこまで言及してはいませんのでこれは私見に因るところが大きいのですが。

同時に記事では、ジャニーズ事務所所属歌手のデジタル自体未解禁についても語られていますが、『一方のデジタル領域におけるジャニーズ勢の今後にかけられる期待は大きい』とあり、デジタル解禁は(シングルCDセールスの減少を補う上で)必須ですよということを、”期待”という言葉を用いて背中を押そうとしています。なぜ解禁しないの?という表現ではないその前向きさは、ビルボードジャパンの下記のポリシーからも透けて見えるかのようです。

ストリーミング・サービスの売上が順調に拡大を続けるにつれ、ストリーミングがアーティストの新たな収益源としても確立しつつある現在において、フィジカルからデジタルへの移行が確定した2018年から、ダウンロードからストリーミングへの移行が本格化した2019年へと変容を続けるユーザー動向を、ビルボードは引き続き様々なデータを組み合わせて描出していく。

【ビルボード 2019年上半期TOP ARTISTS】ストリーミングで圧倒、あいみょん堂々の総合首位獲得(コメントあり) | Daily News | Billboard JAPAN(6月7日付)より

ジャニーズ事務所所属歌手では嵐が今月ベストアルバムをリリースすることで、今年度の年間歌手別チャートにも入ってくるでしょうが、他方シングルCDリリースの予定は今のところない模様。昨年はKing & Princeが「シンデレラガール」を年間ソングスチャート12位にランクインさせましたが今年は上半期上位20曲にジャニーズ事務所所属歌手の作品はなく、先述した嵐の動向も踏まえれば年間チャート上位登場は難しいものと思われます。だからこそ接触を主体に他指標も活用(補充)することが必要だと思うのですがいかがでしょう。CDレンタルの解禁を遅らせて接触をさらに減らす手段(6月3日付ビルボードジャパンソングスチャート首位曲からはじまる、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCDの展開手法を疑問に思う(5月30日付)参照)を採るよりも前向きな改革を行ってほしいと個人的には提示していますが、ビルボードジャパンの表現は至極前向きな提案であり、その思いが届くことを願ってやみません。