一昨日のブログでは、2月11日付ビルボードジャパンソングスチャートにおける"怪"を紹介しました。ダイナソーJr.「Over Your Shoulder」をはじめ複数の楽曲が、ほぼ動画再生指標のポイントだけでチャートに登場したのです。とりわけ「Over Your Shoulder」はリアクションが大きく、18位にジャンプアップしています。
ビルボードジャパンも首を傾げたこの不思議。実はこのブログをアップした後、アメリカの音楽メディアであるピッチフォークが、日本時間の昨日未明にこの"怪"を紹介。そしてなんと、当の本人もリアクションしていました。
🤷🏻♂️ https://t.co/O2ap10JfI0
— Dinosaur Jr (@dinosaurjr) February 8, 2019
この直後に状況は一変。「Over Your Shoulder」をはじめとする上昇曲の多くが【ガチンコファイトクラブ】で使われていた…という反応がSNSで多数出ていたのです(歌手の公式アカウントや大手メディアのちからの大きさたるや、ですね)。
ガチンコファイトクラブは、TOKIO出演のバラエティ番組『ガチンコ!』(1999-2003 TBS)内のドキュメンタリー的コーナー。その中ではどうやら「Over Your Shoulder」をはじめ、マッチボックス・トゥエンティ「If You're Gone」、アズテック・カメラ「The Belle Of The Ball」、U2「Staring At The Sun」も用いられていたと、SNSやYahoo!知恵袋等経由で知ることが出来ました。で、そのガチンコファイトクラブが盛り上がった理由として、2月6日放送の『TOKIOカケル』(フジテレビ)でその話が出てきたとのこと。多くの視聴者がリアクションしていました。
2月6日(水)のTOKIOカケルは!
— 【公式】TOKIOカケル (@tokioxinfo) February 5, 2019
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とはいえ冒頭で紹介した2月11日付ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間は1月28日から2月3日までであり、番組で生まれた反応は次回のチャートに表れることに。1月30日放送分の次回予告でガチンコファイトクラブに触れていたならばまだ理解出来るのですが、しかしそれだけでここまで動画再生回数は増えるでしょうか。
一昨日のブログエントリーでは『公式アカウント発の動画の現段階の再生回数はなんと1200回未満。"Dinosaur Jr. Over Your Shoulder"で検索し、最上位に登場且つ動画の詳細に著作権管理団体のライセンス所持者がクレジットされているこちらでも現段階で28000強という数字』と書きました。しかしこれらはあくまで、ダイナソーJr.と曲名を検索して上位に出てきたものであり、もしかして"ガチンコファイトクラブ"でYouTube検索すれば何か解るのでは…と思い確認したところ。
ひとつのYouTubeアカウントが(現状で確認出来る限りは)1月27日以降、ガチンコファイトクラブについて順次アップしていたことが判りました。上記キャプチャは昨日夜の段階で確認出来たものですが、注目したいのは音楽のクレジット部分。この動画に関しては「Over Your Shoulder」および「If You're Gone」が記載され、複数の楽曲著作権管理団体がライセンス所持者として登録されています。そして他の動画でも同様の登録がなされているのです。これにより、動画の使用曲がビルボードジャパンソングスチャートにおける動画再生指標のカウント対象となったのではないでしょうか。
おそらくは複数アップされた動画を観た方が多くいらっしゃることで、ダイナソーJr.「Over Your Shoulder」をはじめとするガチンコファイトクラブ使用曲が動画再生指標を伸ばしたものと推測されます。これにより公式アカウント発の動画で感じていた再生回数の少なさについては解決します。またこのYouTubeアカウントが以前アップした動画の中には削除されたものもあり、その削除分を含めれば累計で数百万もの再生回数があったかもしれず、それにより「Over Your Shoulder」が動画再生指標首位に躍り出たという仮説が成立すると言えます。
実は、歌手の公式YouTubeアカウントが発信するミュージックビデオ以外にも、ビルボードジャパンソングスチャートにおいて動画再生指標を伸ばす方法があります。
YouTubeについて
①YouTubeでの動画再生回数はどのように集計していますか。
日本レコード協会が発行および管理を行っている国際標準コード「ISRC」が付番されたレコーディング(オーディオレコーディングおよび音楽ビデオレコーディング)を使用した動画を集計対象として、その国内週間再生回数を米国ニールセン経由で集計しています。権利者の許諾を受けていれば、「恋」や「ダンシング・ヒーロー」などで見られた、オフィシャル音源を使用したユーザー生成コンテンツ(UGC)も集計対象となります。
・【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANより
今回動画再生指標が急伸したガチンコファイトクラブ使用曲が、"権利者の許諾を受けて"集計対象とされたのかは解りかねますが、カウントされた原理はこちらと同じですね。
ということで、100%の正解ではないかもしれませんが、これでダイナソーJr.「Over Your Shoulder」をはじめとするいくつかの楽曲の動画再生指標急伸の理由が判りました。カウントされた動画自体は違法アップロードとみられ、本来は言及すべきではなかったかもしれませんが、チャートの動向や仕組みを伝える意味で、キャプチャも含め紹介した次第です。問題があればキャプチャを削除させていただきます。
こういう形でのヒットは今後も出てくるかもしれません。また今回の例を受けて、ヒットを狙ったアップロードも出てくることでしょう。動画の違法性の問題視は勿論必要なことですが、コンテンツを持つ側が著作権をきちんとクリアにした上でYouTubeにアップすることも今後求められるかもしれません。