イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

嵐、活動休止発表後のソングスチャートアクションは乏しかった? 引退や解散した国民的歌手と比較してみる

最新2月11日付ビルボードジャパンソングスチャートは1月28日月曜からの一週間が集計期間。1月27日に突如発表され同日会見が行われた、アイドルグループ 嵐の来年末での活動休止報告が、チャートに少なからず反映されると予想した方は少なくないはずです。

しかしその結果を見るに、あくまで私見と強く前置きして書くならば、ソングスチャートにおける反応は極めて小さかった、と考えます。

100位以内にランクインした2曲で比較すると、「感謝カンゲキ雨嵐」(2000)はTwitter指標が4位ながら、その他はラジオエアプレイ指標が101位未満300位以内に入ったのみ。一方「君のうた」(2018)はTwitterの14位もさることながら、シングルCDセールス指標で20位、ルックアップでは9位に上昇しています。

この両者の差はそれぞれのシングルCDの、現在の市場流通の差といえそうです。「感謝カンゲキ雨嵐」は廃盤となっており、実店舗/オンラインCDショップでは同曲の音源をほぼアルバムからでしか手に入れることが出来ません。また総在庫数に制限がある関係上、レンタル店でも古い作品をシングルとして借りることは極めて厳しいと言えます。他方「君のうた」は直近のシングルゆえ手に入れやすい状況だったわけです。同日付のシングルCDセールスチャートをみると、「君のうた」の20位を筆頭に、「夏疾風」(2018 33位)、「Find The Answer」(2018 50位)、「Doors~勇気の軌跡~」(2017 53位)、「Happiness」(2007 73位)、「Monster」(2010 77位)、「I seek / Daylight」(2016 82位)の7作品がトップ100入り。「Doors~勇気の軌跡~」までの上位4作品は直近のシングルから逆順で高位置に登場しています。が、これらの作品の中で総合ソングスチャートに登場したのはわずかに1曲という結果であり、これは寂しいと思うのです。

 

嵐の場合、活動休止会見後のパッケージセールスの動向を見ると【シングル<アルバム<映像作品】と言えるでしょう。アルバムはビルボードジャパンのチャート、トップ100に15作ランクインしています。

そして映像作品となると、これはオリコン調べですがDVDランキングでは100位以内に23作も送り込んでいるのです。

実に素晴らしいことですが、とはいえやはり、楽曲チャートに目立った動きがないのが気がかりです。それが理由かオリコンでも、シングルやアルバムの動向は上記記事の最下段に、心なしか抑えめに紹介しているように映ります。

 

 

嵐においてはビルボードジャパンソングスチャートに2曲がランクインしたのみでしたが、嵐と同じくらいの人気や知名度を誇る歌手が同様のショッキングな発表を行った場合、果たしてどんなチャートアクションを示したでしょう。これを読んだ方の多くが思い浮かべたでであろう歌手は安室奈美恵さんおよびSMAPだと思われますが、ビルボードジャパンソングスチャートでは両者とも、嵐以上に大きな動きを見せていたのです。

 

安室奈美恵さんの場合、2017年9月20日に引退を発表。

表明は水曜であり、さらにその2日後にベストアルバム『Finally』(2017)をリリースすることをアナウンスしていますが、ベストアルバムリリース前、引退表明直後からデジタルダウンロードが好調に推移したこともあり、引退表明のあった日を集計期間とする2017年10月2日付ビルボードジャパンソングスチャートには5位の「Hero」(2016)を筆頭に実に12曲もランクインを果たしています。実は同日付のシングルCDセールスチャートでは「Just You and I」(2017 31位)および「Hero」(41位)の2曲のみがランクインするにとどまっており、先述した嵐同様過去のシングルCDが市場から消えていただろうことが予想されるのですが、デジタルダウンロード指標では「Hero」の首位を皮切りにトップ20に7曲もランクイン。シングルCDセールス指標を補完するに十分な役割を果たし、総合ソングスチャートで100位以内12曲ランクインという記録を打ち立てました。

「Hero」のCHARTinsight - Billboard JAPAN

(ちなみにビルボードジャパンにおけるデジタルダウンロードソングスチャートは2017年10月9日付から確認可能ゆえ、同年10月2日付のデジタルダウンロード指標はCHARTinsightで表示週を2017年9月18~24日と設定して更新すると確認出来ます。なお、2017年10月9日付では「Hero」が首位を記録し、トップ100には13曲も登場しています。)

 

そしてSMAP。解散した日付は2016年12月31日でしたが、解散が発表されたのは同年8月14日日曜未明のこと。

2016年8月22日付のビルボードジャパンソングスチャートは8月8~14日を集計期間とするため、解散発表から24時間弱でのリアクションしかチャートには反映されませんが、それでも「ありがとう」が前週の26位から12位へ、「世界に一つだけの花」が同49位から15位へ躍進。同日付シングルCDセールスチャートでは「ありがとう」が43→30位、「世界に一つだけの花」が87→17位。そしてTwitter指標では「ありがとう」が1位、「世界に一つだけの花」が2位とワンツーフィニッシュを果たしているのです。

「ありがとう」のCHARTinsight - Billboard JAPAN

「世界に一つだけの花」のCHARTinsight - Billboard JAPAN

そして「世界に一つだけの花」においては、2016年1月18日月曜の『SMAP×SMAP』(フジテレビ)で、メンバーが生放送でコメントする直前からチャートで存在感を示していました。

2016年1月18日からの一週間を集計期間とする同年2月1日付ビルボードジャパンソングスチャートでは「世界に一つだけの花」(2003)が総合2位に(前週も2位に登場)。シングルCDセールスは同日付で3位となり、またTwitter1位、ラジオエアプレイ29位、ルックアップ34位という高水準が総合2位に至った理由ですが、これはSMAPを巡る動きに対するファンの行動があってのことと推測出来ます。「世界に一つだけの花」は当時(そして今も)廃盤になっていないこともあり、またSMAP最大のヒットゆえラジオエアプレイも含め一極集中したと考えられ、ゆえにデジタル未解禁ながら突出した成績を収めることが出来たのではないでしょうか。

 

安室奈美恵さんのトップ10以内1曲を含む12曲同時ランクイン、SMAPの2位到達に対し、嵐のソングスチャートにおけるチャートアクションはどこか寂しいものがあるというのが私見です。仮に先週放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に嵐が登場せずTwitter指標が盛り上がらなかったらば、「感謝カンゲキ雨嵐」はチャートインせず、「君のうた」が低い位置に登場したのみだったのではないかと考えると、あまりにも差があるように思います。しかも。

これを書いた後も、現段階までに10件前後しかつぶやかれておらず、嵐のファンの方々がチャートをどう捉えているのかが気になってしまうのです。

 

 

仮に嵐がデジタル解禁していたならば、安室奈美恵さんのようなチャートアクションを示したでしょう。ただこの(嵐のみならずジャニーズ事務所所属歌手全体の)デジタル解禁への願いについては以前から幾度となく記載しながら、終ぞ叶わないままです。

ファンの方々がチャートに爪痕を残したいと思っており、今回のチャートアクションが物足りないと捉えたならば、出来る範囲で何かしらの策を練る必要があります。今後も新曲リリースが考えられる(環境にある)ことからその曲を特大ヒットに至らせるというのも一案ですが、過去の楽曲を押し上げる施策も考える必要があったかもしれません。しかし、いい案がないと思うならば、デジタルについて前向きに考え、解禁を事務所側に提言しても好いのではないかと思うのですが、如何でしょうか。