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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

紅白が決定した高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」、ビルボードジャパンで強くない理由を考える

先週、11月から大晦日までの地上波音楽特番のラインナップについて、ブログエントリーにまとめました。

後に『ミュージックステーション』(テレビ朝日)においてはKing Gnuが同日解禁の「逆夢」を披露し、また『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)では様々な企画や追加歌手の発表が行われています。紅白においては年内にあらためて掲載する予定ですが、今回はこの中で興味深い曲について採り上げます。

高橋洋子残酷な天使のテーゼ」(1995)はビルボードジャパンソングスチャートの構成指標において、カラオケ指標が常時20位以内にランクインしています。

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上記は「残酷な天使のテーゼ」の最新12月22日公開(12月27日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおける、直近60週分のCHART insight。緑の折れ線がカラオケ指標を示します。同指標は2019年度にスタートし、2020年度前半には新型コロナウイルスの流行拡大に対する緊急事態宣言が発令されたことで一時集計対象から外れますが、この曲はカラオケ指標の開始以降一度も20位を下回っていません。

つまり、他指標も上昇すれば総合ソングスチャートで100位以内に進出できる可能性を十分持ち合わせていると言えるでしょう。しかしながら「残酷な天使のテーゼ」が総合100位以内に到達したのは2018年6月27日公開(7月2日付)における97位、ただ一度きりなのです(同日付ソングスチャートはこちらで確認できます)。

 

残酷な天使のテーゼ」のCHART insightを探っていくと、総合ソングスチャート100位以内へ到達しうる可能性は十分あったと考えられます。

CHART insightで他指標の動きがみられた週を確認すると、まず今年の3月31日公開分(4月5日付 集計期間:3月22-28日)でダウンロード指標が80位に入っています。これは集計期間とは厳密に異なりますが、3月8日に『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されたことが影響していると思われます。

また2020年9月16日公開(9月21日付 集計期間:9月7-13日)ではダウンロード指標が64位にランクインし、その前週にはTwitter指標が47位に急浮上しています。これは9月6日に『国民13万人がガチ投票! アニメソング総選挙』(テレビ朝日)が放送され、そこで「残酷な天使のテーゼ」が首位を獲得したことに伴うものです。

(なおTwitterとダウンロードでタイムラグがあるのは、ビルボードジャパンソングスチャートの区切りが日曜/月曜であることや、Twitter指標はリアルタイム実況が反映されやすい一方でダウンロードは少し時間をおいて行われるというそれぞれの指標の性質に基づくゆえと思われます。)

そして「残酷な天使のテーゼ」が唯一総合ソングスチャート100位以内に到達した2018年6月27日公開(7月2日付 集計期間:6月18-24日)においてはCDのリリースが大きく影響、またリリースされた6月20日にはミュージックビデオも公開され、動画再生指標も加算されています(フィジカルセールス指標35位、動画再生指標59位にそれぞれランクイン)。

 

総合ソングスチャート100位以内に唯一到達した要因がフィジカルセールスにあると考えれば、「残酷な天使のテーゼ」の再度100位以内到達はその再発がない限り厳しいという見方も生まれそうですが、個人的にはサブスク等の再生回数に基づくストリーミング、およびYouTubeGYAO!の再生回数に基づく動画再生といった接触指標群が強くないことが、総合100位以内且つ常時高位置につけない原因と捉えています。

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先程掲載した「残酷な天使のテーゼ」の最新ソングスチャートにおける直近60週分のCHART insightから、ストリーミング(青の折れ線で表示)および動画再生(赤)のみ抜き出したものを上記に。「残酷な天使のテーゼ」はサブスクもミュージックビデオも解禁されていますが、この1年強では映画公開のタイミングでストリーミングが1週、動画再生が2週のランクインにとどまっているのです(各指標300位以内がポイント加算対象)。

(なおYouTubeにおけるミュージックビデオには年齢制限が設けられていますので、リンク先のみ掲載します→こちら。)

 

 

NHK紅白歌合戦』で高橋洋子さんが「残酷な天使のテーゼ」を披露したタイミングでTwitterが盛り上がること、またダウンロードが上昇する可能性は十分考えられます。ただしビルボードジャパンソングスチャートでは他の紅白披露曲も上昇する傾向にあり、それらの作品に埋もれる可能性も考えられます。

残酷な天使のテーゼ」が総合100位以内に到達するには、接触指標群の上昇が重要と言えます。個人的にはLINE MUSIC再生キャンペーン(LINE MUSIC再生回数キャンペーン)は好ましいと感じていませんが、ともすればサブスク解禁済であることを存じ上げない方が少なくないだろうことも踏まえ、認知浸透の意味も込めてキャンペーンを行うこともひとつの策かもしれません。同曲の年末年始の動向に注目していきましょう。