イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

星野源と藤井隆と多様性とエイリアンズと

今年の漢字一文字が【金】に決まった今週月曜日。前日の『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)でDJ陣が実はこの【金】を予想していたので、月曜日はとても驚いたものです。とはいえ、PPAPの服装に絡めてというのは予想だにしなかったですし、パラリンピックでは金メダルゼロだったんですよね…パラリンピックの選手の皆さんの頑張りは素晴らしかったですが、金メダルゼロだと認識している方がどのくらいいるのか、気になってしまいます。

さて、今年自分が社会を見渡してみて考えた今年の漢字一文字は、ネガティブなものばかり浮かんでしまうので割愛しますが、その一つを敢えて晒すならば【単】でしょうか。アメリカの次期大統領、トランプ氏および共和党の政策が白人以外の多様な人種や移民を排除するだろうやり方は”単一民族偏重”であり、彼らの考えは酷い物言いですが”単細胞”だと思うのです。その真逆である”多様性”…それこそリオデジャネイロオリンピックパラリンピックのテーマとなった考え方が踏みにじられそうで、今後の世界情勢に恐怖を抱いているというのが、大袈裟かもしれませんが正直な思いです。

 

 

そんな2016年にあって、単細胞ならぬ、多様性を謳う曲が大ヒットしたのは、本当に喜ばしい出来事でした。

2016年度ビルボードジャパン年間シングルチャートで3位を記録。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系 火曜22時)やドラマ内でも見られる”恋ダンス”もブームとなっており…というのは多くの方が知るところでしょう。

さて、そんな「恋」の歌詞における、音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんの解説が個人的にはとても腑に落ちたのです。この曲が”多様性”を謳っていることが発見でした。

ドラマでも、個人的に特に深く感心したのが、古田新太さん演じるゲイの同僚に対して、”ゲイ”に抱きがちな凝り固まったイメージを持ち合わせていたことに気づいて反省する星野源さん演じる平匡さんの対応。それを観た瞬間、この作品が様々な立場の人の生き方を丁寧に、そして肯定して描いていることを実感したのですが、「恋」にもそのテーマが通底していて嬉しくなったものです。

 

その星野源さんと、『逃げ恥』および『真田丸』(NHK総合 日曜20時)で共演している藤井隆さんが、12月12日深夜の『星野源オールナイトニッポン』(ニッポン放送 月曜25時)でカラオケパーティーを開催。その際に披露したのがなんと、キリンジ「エイリアンズ」だったのです。

放送の模様は下記で聴くことが出来ます。

(引用させていただいたツイート主であるみやーんさんはラジオ等の文字起こし職人。先に引用した『ジェーン・スー 相談は踊る』(TBSラジオ 月-金曜11時)も手掛けています。また上記ツイートのリンク先はradikoニッポン放送タイムシフト聴取先となっており、放送後1週間限定で聴取可能です。radikoプレミアム未加入の場合、お住いの地域の放送局で『…オールナイトニッポン』が流れていれば、一週間限定で無料にて聴取することが出来ます。)

 

実はこの曲、様々な解釈が出来るのです。そしてその解釈から生まれた多様な愛の形こそ ”多様性”と言えるでしょう。たとえばこのようなものが。

キリンジのエイリアンズの歌詞は最高だ | yonosuke不如意音楽室

 (勝手ながら掲載させていただきました。問題があれば削除させていただきます。)

 

「エイリアンズ」の歌詞はこちらに。自分はこの歌詞から、先述したLGBTの恋愛を想起したことがあります。男が”ダーリン”と呼ぶ様子や、そして”該当に沿って歩けば (中略) 新世界のようさ”というフレーズが堂々とデート出来ない主人公たちの解放された思いを示しているようで…さすがに安易な発想と言われるのは必至で、でもそういう考えもアリだと思えるくらい。懐の深い歌詞だと言えるでしょう。実際にこの曲に背中を押されたり勇気をもらった人も少なくないのではないかと考えます。

 

このキリンジ「エイリアンズ」を番組で披露した星野源さんと藤井隆さん。星野さんは「恋」で多様性を謳い、また藤井さんは、風営法でクラブが厳しく取り締まられていた時期にそのしがらみからの開放を求めるムーブメントのアンセムになった(と聞く)、tofubeats「ディスコの神様」のボーカルを務めていました。「ディスコの神様」が夜遊びの多様性を求める象徴になっていた…というのは言い過ぎでしょうか。

 

多様性という考えが急激に窮地に立たされそうな時代の中で、多様性讃歌の生みの親であるふたりが、多様性を謳う愛の歌を紡いだこと、そしてその瞬間に立ち会えたことは、本当に感動的な出来事だと思うのです。