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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『フォートナイト』で初披露、ロケットスタートを切ったトラヴィス・スコットの新曲は米ビルボードソングスチャートを制するか

『フォートナイト』×トラヴィス・スコット、凄いことになっています。アンコールも含めて計5回開催されたバーチャルライブ、"Astronomical"についてはその開催前にブログにて紹介しました。

このバーチャルライブ、初回開催時に驚くべき数値を叩き出したのです。

前回、昨年2月に開催されたマシュメロのライブも驚異的でしたが、その時をさらに上回っています。

 

多くの方が熱狂したそのAstronomicalにおいてトラヴィス・スコットが初披露した、キッド・カディとのザ・スコッツ名義による新曲「The Scotts」が金曜にリリース、映像も公開されました。

『フォートナイト』の映像が用いられている「The Scotts」。実際にゲームを体験していない方も、今回のAstronomicalの凄さを実感出来るのではないでしょうか。なお、日本時間の今日午前7時に最後のAstronomicalが開催され、バーチャルライブは幕を閉じました。

 

チャート面からみると、日本時間の5月5日火曜に発表予定の5月9日付米ビルボードソングスチャートで、「The Scotts」が初登場で首位を獲得する可能性が出てきたと言えるでしょう。

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現段階で最新となる4月24日付Spotify米デイリーチャートでは「The Scotts」が初登場で首位をマーク。330万を超える再生回数は、4月3日にリリースされ4月18日付米ビルボードソングスチャートで初登場首位を獲得したドレイク「Toosie Slide」が、リリース日に米Spotifyで再生された分のおよそ1.5倍にあたります。さらにAstronomicalで披露されたケンドリック・ラマーとの「Goosebumps」(2016)、ノンクレジットながらドレイクがフィーチャーされた「Sicko Mode」(2018)、および「Highest In The Room」が8~10位に並んで登場していることから、米ビルボードソングスチャートにおいても再浮上が見込まれます。

不安材料があるとすれば、昨年10月19日付米ビルボードソングスチャートで初登場首位を成し遂げた「Highest In The Room」(同日付チャート速報はこちら)が10月4日付でSpotify米ソングスチャートに初登場したときよりも、今回の「The Scotts」は再生回数がおよそ60万もダウンしていること。しかしAstronomicalがアンコール含め5回開催されたことを踏まえれば、4月25日以降もSpotifyをはじめとするサブスクリプションサービス等で再生回数が極端に落ちるとは考えにくく、また昨年2月のマシュメロの成功例(上記ブログエントリーを参照)を考慮してラジオ局がAstronomicalを積極的に取り上げることで、ヒップホップの弱点であるラジオエアプレイでも数値を稼げるものと考えます。ライバルは最新週において首位に返り咲いたザ・ウィークエンド「Blinding Lights」をはじめ、ドレイク「Toosie Slide」、さらに亡くなった後も高い人気を誇るジュース・ワールドの新曲「Righteous」等。5月9日付米ビルボードソングスチャート、要注目です。

(追記あり) 一発録りシリーズ初の商業化、DISH//「猫 ~THE FIRST TAKE Ver.~」はオリジナルバージョンに合算されない? そのチャート動向に注目

気になる動きが出てきました。

元々は2017年のシングル「僕たちがやりました」のカップリングに収録されたあいみょんさん提供曲。オリジナルアルバムには未収録ですが、一発録り動画企画を機に注目を集めています。

THE FIRST TAKEバージョンの「猫」は『3月20日の公開から1カ月足らずで1000万回再生を突破』(上記記事より)。好評を受けて4月29日にこのバージョンを配信リリースするに至ったということでしょう。実は、オリジナルバージョンの「猫」は前週発表された4月20日ビルボードジャパンソングスチャートで99位に初登場し今週も同位置につけていることから、THE FIRST TAKEバージョンが少なからず影響を与えていることが読み取れます。最新週、4月27日付ソングスチャートは下記に。

ちなみにSpotifyにて"THE FIRST TAKE Ver."と入力すると該当無し、iTunes Storeでも該当する作品が引っ掛からなかったことから、おそらく今回がTHE FIRST TAKEシリーズ初の商業化作品ではないでしょうか。

 

そうなると気になるのはチャートの扱いですが、「猫」と「猫 ~THE FIRST TAKE Ver.~」は別物としてカウントされるでしょう。というのも、ビルボードジャパンソングスチャートには合算の概念が基本的にないため。2年半前に合算について問い合わせたその内容は下記リンク先に記載していますが、現在も変わっていないと考えます。

合算されないだろうと考える理由はLiSA「紅蓮華」の扱いからも解ります。THE FIRST TAKEシリーズにおいて最も有名だろうこのバージョン、再生回数は現段階で3000万を突破しています。

「紅蓮華」THE FIRST TAKEバージョンの動画が投稿された日が集計期間に含まれる2019年12月16日付ビルボードジャパンソングスチャートでは、動画が他指標の上昇に貢献したものの動画再生指標はほぼ上昇せず。バージョンが違えば合算されないということが解ります。

このバージョンが商業化されたりラジオ番組で解禁されていないためにチャートに反映されなかったのではとも思うのですが(それこそ、星野源「うちで踊ろう」はラジオでOAされるようになったことでビルボードジャパンソングスチャートのカウント対象となったのではないかと捉えている、と以前記載しました→こちら)、仮に商業化や解禁されていたとして、「紅蓮華」と「紅蓮華 ~THE FIRST TAKE Ver.~」はあくまで別物としてカウントされ、THE FIRST TAKEバージョンの動画は後者に加算されていたことでしょう。

 

今回、DISH//が「猫 ~THE FIRST TAKE Ver.~」を商業化することはとても大きなことです。THE FIRST TAKEという企画自体にさらなる注目が集まり、その動画の再生回数がTHE FIRST TAKEバージョンの動画再生指標に加算されるだろうことを踏まえれば、動画再生とデジタル解禁効果で「猫 ~THE FIRST TAKE Ver.~」がビルボードジャパンソングスチャートにチャートインすることが予想されます。そしてオリジナルバージョンと別にカウントされたならば、チャートをチェックする方やファンの方から"合算にはならないのか?"という疑問が浮かび多くの方にその意識が共有されることで、最終的にビルボードジャパンがチャートポリシーを変更するに至るかもしれません。

 

この合算という考え方については、ビルボードジャパンと米ビルボードで完全に異なります。米の動向についてはこのブログで幾度となく記載していますが、ポッドキャストでも後日紹介する予定です。

 

※追記(4月26日5時45分):米ビルボードソングスチャートにおける"合算"について、昨日ポッドキャストをアップしました。Appleポッドキャストこちら

ビルボードジャパンソングスチャートにおけるTwitter指標は偏ってきていないか? 最新動向を提示し、ビルボードジャパンに議論を求める

ひさしぶりに、ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標のひとつであるTwitterについて取り上げます。

 

Twitter指標のカウント方法は、一部例外を除いて下記の通り。

「アーティスト名」と「曲名」の両方をつぶやかれているツイートを計測しています。ハッシュタグの有無は影響しません。また、リツイートやリプライも集計の対象です。ツイート内で集計対象となるキーワード数に上限はありませんので、1つのツイート内に複数の「アーティスト名」および「曲名」が記載されている場合、すべて集計対象となります。

【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANより

この指標を用いた歌手の活動については星野源さんを、ファン活動については三浦大知「Blizzard」を例にこのブログにて提示してきました。しかしながら、徐々にTwitter指標が偏りつつあること、その点に危惧していることについて、下記エントリーにて記載しています。

上記エントリーでは、「Blizzard」が最高位となる2位を獲得した2018年12月31日付以降、毎月最終週のソングスチャートにおけるTwitter指標上位20曲の歌手を2019年6月分まで紹介したのですが、ではその後どうなっているのかをまとめてみました。

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女性歌手より男性歌手が多い傾向は変わらず、そして今年に入ってからは男性アイドルの占有率が急上昇しています。これはSixTONESSnow Manというジャニーズ事務所所属歌手の2組、さらにはJO1がデビューしたことにより、シングルCD表題曲やカップリング曲が上昇。上で述べた加算条件において複数の曲名が入っていてもすべて対象とあることから、ひとつのツイートに推しの歌手名とCD収録曲名のすべてを記載するファンが多いことが、とりわけファンが積極的に行っているTwitter活動から察することが出来ます。

アイドルやK-Popアクト、アニメ系やLDHグループ等がTwitter指標を徐々に占拠するようになったことで、個人的に強い疑問が浮かんでいます。

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Twitter指標の上位陣から、Snow Man「D.D.」(Twitter1位 総合19位)、SixTONES「Imitation Rain」(Twitter3位 総合26位)、『あんさんぶるスターズ!!』内ユニット、√AtoZによる「デートプランA to Z」(Twitter7位 総合28位)およびJO1「無限大」(Twitter9位 総合68位)の最新4月27日付ソングスチャートのCHART insightをチェックすると、チャート構成比に占めるTwitterの占有率がいずれも6割を超えています。たとえばSnow Man「D.D.」はおよそ7割を占めるTwitter指標だけで1800ポイント以上を獲得しており、男性アイドルの場合はシングルCDセールスおよびルックアップ指標が加算されないカップリング曲がTwitter指標だけで50位以内に登場することも目立っているのです。

Twitter指標の導入理由については、チャート・ディレクターを務める礒崎誠二氏が述べており、先に貼付したブログエントリーにて紹介しています。たしかにTwitter指標が"楽曲の話題性を図る指標という位置付け"であるとすれば、星野源「うちで踊ろう」がチャートインしたのはビルボードジャパンの考えが的確に反映されたゆえと言えるでしょう。下記は最新週における「うちで踊ろう」のCHART insight。

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「うちで躍ろう」について星野源さんファンがどれだけ積極的につぶやいているかは解りかねますが、現在Twitter指標で20位以内に入っているものの大半はアイドル等所有指標に長けた歌手であり、彼らのファンがTwitter活動を積極的に、時に活動名を付けるなどして行っていることが散見され、さらにはその例となる活動をファン同士で共有する際に敢えてその歌手名を伏せる等して例示した曲をカウントさせないやり方を採っているのを見ると尚の事、Twitterは曲の話題性を図る指標とは言い難いと思うのですが如何でしょうか。

 

とはいえ難しいのは、Twitter指標をソングスチャートの集計対象から外して米ビルボードのSocial 50(歌手名がつぶやかれた回数に伴うチャート)のように別途用意するとなれば、先述した星野源「うちで踊ろう」や、サブスク解禁等よりも前にラジオ番組がきっかけで再浮上したaiko「カブトムシ」(今週デジタル解禁したaiko、既にビルボードジャパンソングスチャートで「カブトムシ」が再浮上している理由は(2月28日付)参照)のような、実際にSNSや社会で話題になった曲が反映されにくくなってしまうということ。ただ、現状のTwitter指標が総合ソングスチャート、いわば社会的なヒット曲と乖離してきたり、音源が未だ解禁されなくとも新曲のタイトルが発表されただけでランクインするという"曲を誰も見聞きしていないのにランクインする矛盾を孕んでいる"ことも踏まえれば、Twitter指標を見直すことは必須だと思うのです。

思いつく限りでは、シングルCDセールスのように【一定数を上回った場合係数をかける】ことや、【チャート構成比におけるTwitter指標を最大5割とする】、もしくは【音源がどこにも解禁されていない場合はチャートに登場させない】などがあります。ビルボードジャパンには一度議論のテーブルを用意してほしいと強く願います。

シングルCDセールスの落ち込み、"うちで踊る"ムーブメントがチャートにも…4月27日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

4月13~19日を集計期間とする4月27日付ビルボードジャパンソングスチャートはOfficial髭男dism「I LOVE...」が2週連続、通算5週目の首位を獲得し、「Pretender」とのワンツーフィニッシュを達成しました。

「I LOVE...」のポイント前週比は97.1%と微減にとどまっていますがその内訳をみると、ストリーミング指標の基となるサブスク再生回数が前週比93.6%、動画再生が同100.2%、ダウンロードが同107.1%といずれも好調に推移。主題歌に起用されたドラマ『恋はつづくよどこまでも』のスペシャルダイジェストが放送された影響と言えます。しかしながら、ダウンロードと共に所有指標であるシングルCDセールスは前週比84.4%と1割以上ダウン。これは新型コロナウイルス対策として緊急事態宣言が発令されたことに伴い、CDショップが前週土曜以降全国的に営業を自粛したことが影響していると言えます。ちなみに今週月曜の段階で、CDショップの営業動向をブログにまとめています。

次週、4月20日からの1週間を集計期間とする5月4日付ソングスチャートでは期間中ずっとCDショップが大量閉店となることから、シングルCDセールス指標が大きく影響を受けることは必至。上記エントリーではシングルCDセールス指標10位および50位の枚数をグラフにしたものを提示しましたが、最新4月27日付では50位の売上枚数が今年度の最低記録を更新してしまいました。

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次週はHKT48「3-2」がシングルCDセールスでトップに立つことが確実視されていますが、全体的にはさらなる落ち込みが予想されます。

 

新型コロナウイルス対策として自宅にいる機会が増えることが、シングルCDセールスの減少以外にも曲に影響をもたらしています。そのうちのひとつが以前からヒットしている星野源「うちで踊ろう」(この曲における"うち"とは"inside"の意味ですが)。今回の集計期間中にフリーダウンロードとして公開されたことでダウンロードおよびストリーミング指標は未カウントに。ラジオエアプレイが5→41位、動画再生が16→38位と急落していますがTwitterでは2位となり初登場から3週連続で同指標2位以内をキープ、総合では9ランクのダウンにとどまり22位に入っています。

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そしてもうひとつ注目したいのはフィッツ&ザ・タントラムズ「HandClap」。今週45位に入り、およそ半年以内にトップ50に返り咲きを果たしています。

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「HandClap」は動画再生(5位)のみで総合45位に入っていますが、最初のピーク時に上昇したそのきっかけは、韓国のYouTuberがTikTok等でアップした”2週間で10キロ痩せるダンス”にこの曲が用いられたこと。今回の再燃はおそらく、家にこもることが増えた方が自宅でのエクササイズとして2週間で10キロ痩せるダンスに挑戦しようと、「HandClap」を再生したからかもしれません。

「HandClap」については、曲のチャートイン初期にブログに記載しました。

Yahoo!リアルタイム検索で【2週間で10キロ痩せる】と入力し(→こちら)、30日間での推移を分析グラフで見てみると、4月21日に127件を記録し3桁を達成。新型コロナウイルスの影響等でNintendo Switch『リングフィット アドベンチャー』が売り切れ、また屋内フィットネスグッズの人気が高まっている状況ですが(外出自粛・リモートワークで自宅フィットネス需要が急拡大 任天堂Switchが世界的な品薄に(土橋克寿) - 個人 - Yahoo!ニュース(3月27日付)参照)、YouTubeを使ったエクササイズの需要も上昇していると言えるでしょう。チャートの端々にこのようなムーブメントが表れるのが複合指標で構成されるビルボードジャパンソングスチャートの面白いところだと思います。無論、ムーブメントのきっかけとなった新型コロナウイルスの早期の収束を望むばかりです。

 

 

最後に、今週の米ビルボード、そしてビルボードジャパンのソングスチャートについての解説ポッドキャストをアップしました。最新チャートの解説は毎週木曜午前に更新予定ですので、是非ともよろしくお願いいたします。

『フォートナイト』で開催されるトラヴィス・スコットのライブ、チャート面から注目する理由

音楽業界で今週末大きな話題になりそうなのがこちら。

全世界で1億を超えるユーザーが存在すると言われるゲーム、『フォートナイト』については公式ページをご参照ください。

その中でバーチャルライブを行うのがあのトラヴィス・スコットなのです。

ラヴィス・スコットは「Sicko Mode」(2018 ノンクレジットながらドレイクが参加。ミュージックビデオには記載有)と「Highest In The Room」(2019)の2曲が米ビルボードソングスチャートを制し、「Sicko Mode」を収録したアルバム『Astroworld』(2018)が2年連続で米ビルボードアルバムチャート年間トップ10入り。さらに主催するレーベルのコンピレーションアルバム『Jackboys』(2019)もアルバムチャートを制しており、今最も注目される歌手のバーチャルライブ参戦に心躍る方は多いはず。

しかも今回のイベント名"Astronomical"は、トラヴィス・スコットの地元ヒュートンにかつて存在した遊園地をインスパイア源とし、その遊園地再開を願う意味で作られたアルバム『Astroworld』に由来するのは自明。昨年ヒューストン市長から遊園地再オープンの確約を得ていますが(トラヴィス・スコット、遊園地再建の願い叶う | MTV Japan(2019年2月18日付)参照)、そのトラヴィスの夢が『フォートナイト』の中でいち早く叶うと言っても過言ではないかもしれません。

 

このブログで『フォートナイト』のバーチャルライブに注目するのは、チャートにおいてもバーチャルライブが実績を挙げているため。昨年2月にこのゲームの中でライブを行ったマシュメロは、披露した曲が大きく順位を伸ばしているのです。

バーチャルライブ内で披露した、バスティルをフィーチャーした「Happier」(2018)は2019年2月16日付米ビルボードソングスチャートで前週から6ランクアップし2位につけ、マシュメロそしてバスティル共に自己最高位を更新しました。チャートを構成する3つの指標のうち、最もピークに達するのが遅いラジオエアプレイでも下降に入った時期にバーチャルライブが行われたことで、カンフル剤の役割を果たしたと言えます。同日付の米ビルボードソングスチャートは下記リンク先をご参照ください。

この動きはアメリカにとどまらず、日本でも似た現象が起きています。2019年2月18日付のビルボードジャパンソングスチャートでは「Alone」(2016)が39位、「Happier」が44位と2曲が総合100位以内に登場。特に動画再生指標で急伸しています。

ゆえに、トラヴィス・スコットについても似た現象が起きると思うのですが、今回のバーチャルライブでトラヴィスの新曲初公開がアナウンスされているため、既発曲以上に新曲が、特に米ビルボードソングスチャートにおいて上位に初登場することが予想されます。

5回に渡って行われるバーチャルライブ、その初回はアメリカで今週木曜(日本時間の翌金曜8時)開始され、そこから【バーチャルライブで新曲解禁→米で金曜にダウンロードおよびサブスク解禁(ミュージックビデオ公開も?)→バーチャルライブの映像が公式に公開】という流れを予想します。所有・接触の両面から支持を集めるだろうのみならず、マシュメロの実績を踏まえればラジオ局でもこのイベントを無視出来ないとして紹介するでしょうから、ソングスチャートにおいて最も立ち上がりが遅いラジオエアプレイ指標でも好調なスタートを切るかもしれず、そうなれば初登場1位という事態もあり得ると思うのです。トラヴィス・スコットは、主宰レーベルのコンピレーションアルバム『Jackboys』を来月1日にフィジカル化するとのことで、そちらのセールスにも期待がかかります。バーチャルライブ、そしてチャートに注目しましょう。

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が首位を奪還、その理由は合算施策?…4月25日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の4月20日月曜に発表された4月25日付最新ソングスチャート。前週初登場で首位を獲得したドレイク「Toosie Slide」からザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が首位の座を奪取、通算3週目となる首位達成です。

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」はストリーミングが前週比6%ダウンの2540万(同指標3位)、ダウンロードが同1%ダウンの21000(同指標1位)、ラジオエアプレイが同4%アップの1億860万(同指標1位)をマーク。対するドレイク「Toosie Slide」はストリーミングが前週比33%ダウンの3720万(同指標1位)、ダウンロードが同37%ダウンの16000(同指標2位)、ラジオエアプレイが同38%アップの4780万(同14位)という結果に。「Toosie Slide」はデジタル加算2週目となり、ストリーミングとダウンロードの大幅減少をラジオエアプレイの上昇で補完しきれなかったのが首位の座を明け渡した要因と言えます。一方で「Blinding Lights」には新たな施策が。

DJ/プロデューサーのメジャー・レイザーが手掛けた「Blinding Lights」のリミックスが4月15日水曜にリリース。ストリーミングおよびダウンロードは16日木曜、ラジオエアプレイは19日日曜までが集計期間となるため、このリミックス分が上乗せ(合算)されたことでデジタル2指標の落ち込みを抑えることが出来たのも、「Blinding Lights」の首位返り咲きに貢献しているものと思われます。

 

ポスト・マローン「Circles」が33週目のトップ10入り、在籍週数で歴代トップタイとなりました。

ポスト・マローン自身がスウェイ・リーと組んだ「Sunflower (Spider-Man: Into the Spider-Verse)」(2018-2019)、マルーン5 feat. カーディ・B「Girls Like You」(2018-2019)およびエド・シーラン「Shape Of You」(2017)に並んだ「Circles」。次週単独最長記録を狙います。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

2位 (1位) ドレイク「Toosie Slide」

3位 (3位) ロディ・リッチ「The Box」

4位 (4位) デュア・リパ「Don't Start Now」

5位 (8位) ドージャ・キャット「Say So」

6位 (7位) ハリー・スタイルズ「Adore You」

7位 (6位) ポスト・マローン「Circles」

8位 (5位) フューチャー feat. ドレイク「Life Is Good」

9位 (9位) ジャスティン・ビーバー feat. クエイヴォ「Intentions」

10位 (10位) ビリー・アイリッシュ「Everything I Wanted」

11位以下で上昇曲をみると。

・カミラ・カベロ feat. ダベイビー「My Oh My」(13→12位)

・リル・モジー「Blueberry Faygo」(18→16位)

・ギャビー・バレット「I Hope」(20→17位)

・ブレイク・シェルトン & グウェン・ステファニー「Nobody But You」(24→18位)

注目は16位に上昇したリル・モジー「Blueberry Faygo」。レモネードのマークで解るように、現在のヒップホップを牽引すると言っても過言ではないメディア、リリカルレモネードの起業者であるコール・ベネットがミュージックビデオを手掛けています。しかし、このビデオが公開される前から「Blueberry Faygo」は既にTikTokで大ヒットを記録。

この楽曲「Blueberry Faygo」はリリース前にリークしてしまい、その音源をファンがTikTokに勝手にアップするとまたたくまにトレンド入り。それを受けてYouTubeSpotifyにも数多くの音源が違法にアップロードされ、それが逆にバズを起こしました。今年2月に正式リリースされると世界中のチャートを急上昇し、Spotifyグローバルチャート8位を記録(4月2日)。TikTokでは「Blueberry Faygo ダンス」が流行し、この楽曲を使った動画は、4月7日時点で210万もアップされています。

それを踏まえてか、ミュージックビデオはTikTokインフルエンサーが共同生活する家で行われたとのこと。リークは問題ながら、まさに今のヒットの方程式をなぞった曲と言えますが、それでいてサンプリングされているのがジョニー・ギル「My My My」(1990 最高10位)というR&Bクラシックなのですから、全方位的に注目を集めているとも言えますし、1990年代R&Bリバイバルの一端と言えるかもしれません。

ドレイクやスチャ&ライムスの新曲、そして"One World: Together At Home"から、マイケル・ジャクソンが生きていたならば…と思わずにはいられない

日本時間の昨日、レディー・ガガの呼びかけにより行われたイベント、【One World: Together At Home】。

Twitter上でも話題になった今回のイベントからは様々な思いを抱いた次弟。素晴らしいパフォーマンスを示した歌手やテレビ局の垣根を超えて参加したホストへの賛辞、このような素晴らしいイベントを主催してくださったレディー・ガガやWHO、そして医療関係者等への感謝など。他方、自身の対応遅れの問題から責任逃れを行うかの如くWHO非難に勤しむトランプ大統領や同種の攻撃的姿勢を貫く日本の一部市井への疑問、果たして日本ではこのような結束が行えるだろうかという海外と日本のエンタテインメントの社会や政治参加という志の違いといった(ネガティブな)見方も自分の中に生まれています。そして、もしマイケル・ジャクソンが生きていたならば彼が真っ先に呼びかけたのかもしれない、とも。これはチャリティ企画の金字塔としてマイケルが手掛けた「We Are The World」(1985)を思い出さずにはいられなかったということもありますが、ここ最近立て続けにリリースされた曲にマイケル・ジャクソンの名があることが、この思いの元となっています。

 

4月3日にリリースされ、最新4月18日付米ビルボードソングスチャートで初登場首位を成し遂げたドレイク「Toosie Slide」ではサビに"I could dance like Michael Jackson"というフレーズが登場し(コーラスには"Who's bad?"とも。リリックはこちら)、ミュージックビデオではマイケル独特の股間に手を添えるあのポーズも披露。

 

今年デビュー30周年を迎えたスチャダラパーRHYMESTERとコラボレーションし今月1日に解禁された「Forever Young」(スチャダラパーのアルバム『シン・スチャダラ大作戦』に収録。上記ミュージックビデオはショートバージョン)では、サビとMummy-Dさんパートにマイケルの名が登場。特にMummy-Dさんパートでは"見ててくれ天国のマイケル"とあることから、2009年に急逝したマイケル・ジャクソンについて歌っていることは明らかではないかと(リリックはこちら)。

 

マイケルが歌詞に示された例は、星野源「SUN」における"J"も同様。

同じく「SUN」の歌詞における"スネア"も「Rock With You」を想起させるに十分。そしてこの「SUN」のみならず、マイケル・ジャクソンへのオマージュが様々な曲に表れています。ドレイクがマイケルの未発表曲を用いた「Don't Matter To Me」という例も含め、音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが紹介しています。

このムーブメントが2020年も続き、ドレイクそしてスチャダラパーからのライムスターという同時期のリリースに至ったと言えるでしょう。

 

今もエンタテインメント業界にはマイケルへのリスペクトが溢れ、彼の思いやる心が海外ではチャリティなどの形に表れている気がします。Mummy-Dさんのリリックを借りれば"見ててくれ天国のマイケル"と誇らしく言えるような素晴らしい態度を示していかないといけないなと、エンタテインメント業界の末端にいる自分も強く感じていますし、日本でもそれを形にしないといけないのではないかと痛感するところです。