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【海外ビルボード】米&Global 200で「Paint The Town Red」が初制覇、Global Excl. U.S.ではKing Gnuがトップ10入り

現地時間の9月11日月曜に発表された、最新9月16日付米ビルボードソングチャート(集計期間:9月1~7日)。前週初登場にて首位に到達したザック・ブライアン feat. ケイシー・マスグレイヴス「I Remember Everything」は2位に後退、ドージャ・キャット「Paint The Town Red」が同曲初の首位を獲得しました。

ビルボード65年の歴史において1,155曲目の首位を獲得したドージャ・キャット「Paint The Town Red」は、ストリーミングが前週比10%アップの2770万(同指標2位)、ダウンロードが同32%アップの8,000(同指標5位)、ラジオが同14%アップの3210万(同指標15位)を記録。ストリーミングを除く2指標では最高位に到達し、またトップストリーミングゲイナーおよびトップセールスゲイナーを獲得しています。

ドージャ・キャットは2020年にニッキー・ミナージュをフィーチャーした「Say So」に次ぐ2曲目の首位を獲得。「Paint The Town Red」はTikTokでバイラルヒットとなり、2週前に初のトップ10入りを果たしていました(ドージャにとってトップ10入りは7曲目)。この曲は9月22日にリリースされるドージャの4枚目のアルバム『Scarlet』に収録されます。

 

「Paint The Town Red」はラップソング(米ビルボードによるホットラップソングチャートにランクインしている、もしくはランクインの可能性があることがラップソングの定義となります)において、ニッキー・ミナージュ「Super Freaky Girl」以来の首位に。「Super Freaky Girl」は2022年8月27日付でこの座に就いており、今回の「Paint The Town Red」の首位到達までに54週もの空白が生まれています。なおこの間、ドレイク & 21サヴェージ「Rich Flex」、ドレイク「Search & Rescue」およびリル・ダーク feat. J. コール「All My Life」が2位に到達していました。

この54週もの空白は、ウィル・スミス feat. ドゥルー・ヒル & クール・モー・ディー「Wild Wild West」(1999年7月 1週首位)からシャギー feat. リカルド ”リック・ロック” ドゥーセント「It Wasn't Me」(2001年2月 2週首位)までの79週に次ぐもので、当時の1年半以上の空白の間にはヒップホップ以外の作品が22曲、首位に到達していました。

「Super Freaky Girl」から「Paint The Town Red」までの54週においては、15曲の首位獲得作品が誕生。そのジャンルはポップからR&B、カントリーそしてロック/オルタナティブとなっています。なお今回の長きに渡るヒップホップの首位曲不在については、先月末に米ビルボードがこのようなコラムをアップしています。

 

ドージャ・キャット「Paint The Town Red」は6週連続で首位を獲得していたカントリージャンルからその座を奪取しています。前週はザック・ブライアン feat. ケイシー・マスグレイヴス「I Remember Everything」が初登場で首位に立ち、その前はオリヴァー・アンソニー・ミュージック「Rich Men North Of Richmond」(8月26日付~9月2日付)が、さらにその前はモーガン・ウォレン「Last Night」(8月12日付~8月19日付)、そしてジェイソン・アルディーン「Try That In A Small Town」(8月5日付)が首位の座に就いていました。

「Paint The Town Red」は登場5週目にして首位の座に到達していますが、初登場以外での首位獲得は今年においてはレアケースと言えます。この曲は8月19日付にて15位に初登場していますが、この2ヶ月においては先述した「Last Night」および「Try That In A Small Town」以外の2曲(「I Remember Everything」および「Rich Men North Of Richmond」)、またジョングク feat. ラトー「Seven」(7月29日付)、さらに遡ればオリヴィア・ロドリゴ「Vampire」(7月15日付)が初登場で首位を獲得しています。

「Vampire」の首位獲得前、モーガン・ウォレン「Last Night」以外ではシザ「Kill Bill」が登場19週目にして初の首位を獲得しています(4月29日付)。これは今回首位を獲得したドージャ・キャットによる客演参加版リミックスが寄与したためですが、リミックスよりもオリジナルのほうが曲全体のポイントにおいてマジョリティだったためクレジットはシザ単体となっています。

 

「Paint The Town Red」ではディオンヌ・ワーウィック「Walk On By」をサンプリングで使用。1964年にソングチャートで6位を記録した「Walk On By」のソングライトを手掛けたバート・バカラックおよびハル・デヴィッドは、ツイスタ feat. カニエ・ウェストジェイミー・フォックス「Slow Jamz」(2004)以来となるソングライターとしての首位獲得となりました。なお「Slow Jamz」でディオンヌ・ワーウィックによる1964年作品のルーサー・ヴァンドロスによるカバー版「A House Is Not A Home」が使用されています。

バート・バカラックは今年2月8日に死去。今回の「Paint The Town Red」によりナンバーワンヒットは8曲となり、5つのディケイド(1960、1970、1980、2000および2020年代)で首位を獲得。初の首位獲得から最新までのスパンは55年となりました。

バート・バカラック ソングライターとしての米ビルボードソングチャート首位獲得曲>

・ドージャ・キャット「Paint The Town Red」(2023年9月16日付 1週)

・ツイスタ feat. カニエ・ウェストジェイミー・フォックス「Slow Jamz」(2004年2月21日付 1週)

・ディオンヌ & フレンズ (エルトン・ジョン、グラディス・ナイト & スティーヴィー・ワンダー)「That's What Friends Are For」(1986年1月18日付以降 4週)

パティ・ラベルマイケル・マクドナルド「On My Own」(1986年6月14日付以降 3週)

クリストファー・クロス「Arthur's Theme (Best That You Can Do)」(1981年10月17日付以降 3週)

カーペンターズ「(They Long To Be) Close To You」(1970年7月25日付以降 4週)

・B.J.トーマス「Raindrops Keep Fallin' On My Head」(1970年1月3日付以降 4週)

ハーブ・アルパート「This Guy's In Love With You」(1968年6月22日付以降 4週)

2012年に亡くなったハル・デヴィッドにとっては今回が5曲目の首位獲得となり、4つのディケイド(1960、1970、2000および2020年代)で首位に。いずれもバート・バカラックと共作となっています。

<ハル・デヴィッド ソングライターとしての米ビルボードソングチャート首位獲得曲>

・ドージャ・キャット「Paint The Town Red」(2023年9月16日付 1週)

・ツイスタ feat. カニエ・ウェストジェイミー・フォックス「Slow Jamz」(2004年2月21日付 1週)

カーペンターズ「(They Long To Be) Close To You」(1970年7月25日付以降 4週)

・B.J.トーマス「Raindrops Keep Fallin' On My Head」(1970年1月3日付以降 4週)

ハーブ・アルパート「This Guy's In Love With You」(1968年6月22日付以降 4週)

ドージャ・キャット「Paint The Town Red」では冒頭にてサンプリングされたディオンヌ・ワーウィックの声が配されています。ディオンヌの歌声が首位を飾ったのは自身とフレンズ名義での「That's What Friends Are For」(1986)以来であり、また同曲はザ・スピナーズとの「Then Came You」(1974 1週)に次ぐ首位獲得曲となります。

 

ドージャ・キャット「Paint The Town Red」の曲名に倣い、”Paint" ”Town”および”Red”が入った曲による首位獲得は以下の通り。”Paint”はザ・ローリング・ストーンズ「Paint It, Black」(1966)以来2曲目。”Town”はペトゥラ・クラーク「Downtown」(1965)、ジョニー・リヴァース「Poor Side Of Town」(1966)、イーグルス「New Kid In Town」(1977)、リップス・インク「Funkytown」(1980)、マーク・ロンソン feat. ブルーノ・マーズ「Uptown Funk!」(2015)、リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」(2019)、ジェイソン・アルディーン「Try That In A Small Town」(2023)以来8曲目。そして”Red”ではボビー・ヴィントン「Roses Are Red (My Love)」(1962)、UB40「Red Red Wine」(1988)に続く3曲目となります。

 

「Paint The Town Red」はホットR&B/ヒップホップソングチャートおよびホットラップソングチャートで共に3週目の首位を獲得。前者では「Say So」以来2曲目、後者はドージャ・キャットにとって初の首位作品となっています。

 

前週初登場で首位を獲得したザック・ブライアン feat. ケイシー・マスグレイヴス「I Remember Everything」は2位に後退。ストリーミングは前週比6%ダウンの3170万となり、同指標首位を獲得しています。「I Remember Everything」はホットカントリーソングチャート、ホットロック&オルタナティブソングチャートおよびホットロックソングチャートで2週目の首位となり、また同曲を収録した『Zach Bryan』は2週連続で米ビルボードアルバムチャートを制しています。アルバムチャートの記事翻訳版は下記ポスト(ツイート)内リンク先にて確認できます。

 

ルーク・コムズによるトレイシー・チャップマンのカバー、「Fast Car」は3位に後退。ラジオは前週比1%ダウンの7780万を記録し、同指標2週目の首位に立っています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (3位) ドージャ・キャット「Paint The Town Red」

2位 (1位) ザック・ブライアン feat. ケイシー・マスグレイヴス「I Remember Everything」

3位 (2位) ルーク・コムズ「Fast Car」

4位 (5位) テイラー・スウィフト「Cruel Summer」

5位 (4位) モーガン・ウォレン「Last Night」

6位 (9位) デュア・リパ「Dance The Night」

7位 (7位) シザ「Snooze」

8位 (10位) ガンナ「Fukumean」

9位 (12位) オリヴィア・ロドリゴ「Vampire」

10位 (11位) レマ & セレーナ・ゴメス「Calm Down」

 

 

ビルボードが一昨年新設したグローバルチャートもチェック。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。9月16日付ではGlobal 200においてドージャ・キャット「Paint The Town Red」が初の首位を獲得、Global 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.ではジョングク feat. ラトー「Seven」が初登場から8連覇を達成しています。

ドージャ・キャット「Paint The Town Red」はGlobal 200初制覇。ストリーミングは前週比31%アップの8400万、ダウンロードは同37%アップの12,000を記録しています。ドージャ・キャットはグローバルチャートが2020年9月に新設されて以来このチャートで初の首位を獲得(トップ10入りは今作を含め6曲)。またラップソングの首位獲得は今年初となり、ドレイク & 21サヴェージ「Rich Flex」(2022年11月19日付)以来となります。なおGlobal Excl. U.S.においては「Paint The Town Red」が2位に立っています。

Global Excl. U.S.ではジョングク feat. ラトー「Seven」が初登場から8連覇を達成(Global 200では2位に後退)。ストリーミングは前週比5%ダウンの8380万、ダウンロードは同58%ダウンの3,000を記録しています。

(上記は「SPECIALZ」が使用されたテレビアニメ『呪術廻戦』のノンクレジットオープニングムービー。現時点で歌手側による公式動画はありません。)

Global Excl. U.S.ではKing Gnu「SPECIALZ」が8位に初登場。ストリーミング1590万、ダウンロード30,000を記録しています。King Gnuはこのチャートにおけるトップ40入りが4曲目、これまでの最高位は「カメレオン」の26位(2020年3月)となります。