毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。
最新9月7日公開分(9月12日付)ビルボードジャパンソングスチャートではAdo「新時代」が2週ぶり、通算3週目となる首位を獲得しました。
【ビルボード】Ado「新時代」、乃木坂46とTOMORROW X TOGETHERを抑え総合首位奪還、V3達成 https://t.co/vFFgAqy0TT pic.twitter.com/MBee7UibYK
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) September 7, 2022
注目は今回のトップ3。2位の乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」、そして3位のTOMORROW X TOGETHER「Good Boy Gone Bad」はフィジカル関連指標初加算且つ双方とも50万枚以上のセールスを記録し共に1万ポイント超えを達成しながら、Ado「新時代」に追いつくことができませんでした。
2曲が「新時代」に敗れた理由は、CHART insightにおける8指標の順位やポイントの指標構成を見ればよく解ります。
・Ado「新時代」(2→1位 フィジカルシングル未リリース)
・乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」(47→2位 フィジカルセールス720,302枚)
・TOMORROW X TOGETHER「Good Boy Gone Bad」
(300位圏外→3位 フィジカルセールス501,323枚)
(上記ミュージックビデオは日本語バージョン。)
(TOMORROW X TOGETHER「Good Boy Gone Bad」のオリジナルバージョンは5月にリリースされ、今回のフィジカルシングルには日本語バージョンが収録。ビルボードジャパンでは言語のみが異なるバージョンは合算するというチャートポリシーを採用しています。)
CHART insightにて黄色で表示されるフィジカルセールス指標は乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」がポイント全体のおよそ4分の3を、TOMORROW X TOGETHER「Good Boy Gone Bad」においてはおよそ8割を占めています。他方、Ado「新時代」において6割以上を占めているのがストリーミング(青)であり、動画再生(赤)を加えると接触指標でポイント全体の4分の3を占めることに。これが3曲における差となりました。
上位5曲におけるCHART insightを上記に。8指標を比較すると、乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」やTOMORROW X TOGETHER「Good Boy Gone Bad」がAdoさんの3曲と大きく異なることが解ります。2曲とも1万ポイント超えは1週間の記録としてはかなり大きく、Ado「新時代」が強すぎると言われればそれまでですが、しかし首位を獲得できるチャンスはあったはずです。
乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」は、フィジカルセールス指標初加算週に総合首位の座を遂に逃してしまいました。ビルボードジャパンでは2017年度以降、一定以上の売上枚数に対し係数を適用することで、デジタルヒットの可視化等を図っています。その係数適用枚数は30万→10万→5万枚(推定)とダウンしていますが、70万を超える売上は今でも週間1位の可能性を十分持ち合わせているものです。
CHART insightを再掲する形となりますが、乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」はフィジカルセールス初加算週にラジオ(黄緑で表示)やTwitter(水色)も上昇しながら、ストリーミングや動画再生といった接触指標が上昇できていません。動画再生はフィジカルシングル発売週にもかかわらずであり、ライト層への訴求が至れているかに疑問が生じます。接触指標群はライト層の人気が大きく、且つ長く影響するためです。
ストリーミングは獲得ポイント全体のおよそ5%を占めていますが、同指標は100位に達していません(300位圏内につきポイント加算対象)。仮にライト層の支持も獲得しデジタルも人気となったならば、Ado「新時代」との555ポイント差は十分覆すことができたはずです。フィジカルセールスは前作「Actually...」からおよそ16万枚伸びてはいますが、コアファンとライト層との乖離がみられる形となりました。
TOMORROW X TOGETHER「Good Boy Gone Bad」はフィジカルシングルにおける前作「DRAMA」の初週110,286枚を大きく上回りハーフミリオンに達しましたが、ユニバーサルミュージックのホームページをみると今作の急上昇の理由がみえてくるものと思われます(ストアページはこちら。下記はその一部をキャプチャしたもの。なお前作は2年前の作品であり、2年を経て彼らの人気自体が上昇しているとも考えられます)。
言語違いを合算するビルボードジャパンのチャートポリシーを活用してこのフィジカルシングルをもう少し早くリリースすれば、オリジナルバージョンが上乗せできたことでしょう。また「Good Boy Gone Bad」の日本語バージョンはLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲となったことでストリーミング246万回(同指標40位)の原動力となっていますが、他のサブスクサービスが強くないため次週以降失速する可能性が考えられます。
乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」、そしてTOMORROW X TOGETHER「Good Boy Gone Bad」は共に接触指標群を少しでも多く獲得できていたならば総合首位の座は十分考えられたはずです。たとえば動画再生指標においてダンスバージョンやメンバー特化のバージョン等、複数コンテンツを用意することも効果的だったことでしょう。
#乃木坂46 の総合首位未達は大きいと捉えています。ただ、運営側がビルボードジャパンによる複合指標チャートをどれだけ重要視しているのかが気になっています。アイドル等においては特に、フィジカルセールス(≒オリコン)をより重視する傾向が未だあるかもしれません。 https://t.co/MdRaiLdFST
— Kei (@Kei_radio) September 7, 2022
チャート分析に長けたあささんのツイートに引用リツイートした内容にもあるように、今回の総合首位未達はフィジカルセールス主体の歌手にとってそこまで問題視していないのではと懸念する自分がいます。ビルボードジャパンがミスを減らす等も相俟って信頼を得られるようになれば、フィジカル一辺倒に近い状況が見直され音楽業界がより好くなる可能性も考えられますが、まだそこまで至っていないのではとも思っています。
なお前週はINI「Password」がAdo「新時代」に競り勝ちました。
フィジカルセールス73万枚超え、そしてLINE MUSIC再生キャンペーンの実施が総合首位獲得の大きな要因となったINI「Password」。今週総合首位未達となった乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」やTOMORROW X TOGETHER「Good Boy Gone Bad」の双方をかけ合わせたチャートアクションとも言えました。
そのINI「Password」は今週トップ10落ち。集計期間前半にLINE MUSIC再生キャンペーンが終了したこともありストリーミングは31位に後退、そしてダウンロードは100位圏外に急落しています。アイドルやダンスボーカルグループは瞬発力という面で優れ、リリーススケジュールに長けたグループも出てきていますが、ならばライト層にどうリーチさせるか、ロングヒットの武器となる接触指標群を伸ばすかが今後の課題です。