イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンのサービス、CHART insightの個人的な見方を記す

先日、自分のツイートで小さなバズが発生しました。

こちらの画像は、下記ブログエントリーの補完として作成したものです。画像は後にブログに追記しています。

NEWSファンのみならず、KinKi KidsKAT-TUNといった、今月以降新曲が用意されるジャニーズ事務所所属歌手のファンの方々からのリアクションが多く、ビルボードジャパンの存在、そしてどの指標がとりわけ重要かが知られるようになってきたと実感しています。個人的には、日本人歌手が総じてデジタルに前向きになることを願うばかり。フィジカルを制作せずとも海外に進出できるわけですから、尚の事です。

 

 

表においてポイントやフィジカル売上枚数を除く、総合チャートおよび構成8指標の動向については、ビルボードジャパンが用意する【CHART insight】サービスにて確認できます。

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上記は最新7月7日公開(7月12日付)におけるビルボードジャパンソングスチャートの1-5位、および首位を獲得したBTS「Butter」のCHART insight。曲毎のCHART insightにおける右上のチャート構成比は、最新週のものとなっています。

今回は簡単に、CHART insightについての自分の見方を記してみます。

 

 

ソングスチャートを構成する8つの指標とはフィジカルセールス(黄色で表示)、ダウンロード(紫)、ストリーミング(青)、ラジオ(黄緑)、ルックアップ(オレンジ)、Twitter(水色)、動画再生(赤)およびカラオケ(緑)となり、各指標300位以内に入ればポイント加算対象となります。それぞれの指標については、About Chartsをご参照ください。

(なお、CHART insightにてピンクで表示されるのは、ハイブリッド指標と呼ばれる3指標の組み合わせ。BUZZ、CONTACTおよびSALESの3つがあり、切り替えが可能です。)

チャートにおいて、特に問い合わせの多い質問についてはビルボードジャパンが回答集を用意しています。

8つの指標、それぞれの大まかな特徴は以下の通り。

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多くの曲が上記のような動向を辿ります(が、例外もあります)。ルックアップはCDをパソコン等にインポートした際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を示し、購入/レンタルどちらのCDも対象となるため所有接触の両方として記しています。またラジオについては初登場時に低位置にいる曲も少なくありません。

 

昨日、とある記事に対し大きな違和感を抱き以下のようなツイートを記したのですが、特にストリーミングのウェイトが大きいビルボードジャパンソングスチャートではロングヒット曲が長期安定するために一見代わり映えしないように見えることについて、きちんと説明してほしかったと感じています。

 

さて、これらを踏まえた上で、CHART insightについてどう見るかを解説します。CHART insightは基本的に水曜12時台に更新されるため、その更新タイミングでまずはどこを見るか、ざっくり書いていきます。フィジカル(CD等)でのリリースがない場合は同指標およびルックアップが対象外となり、6指標で挑むことになります。

 

 

① 構成指標の大半(もしくはすべて)がランクインしているか

最新チャートにおいて、フィジカルリリースのないBTS「Butter」は6指標すべてが100位以内に入り、ダウンロード、ストリーミングおよび動画再生は常時10位以内をキープ。ストリーミングや動画再生といった接触指標群はずっと首位の座に就いています。さらにカラオケでも100位以内に登場していますが、洋楽で同指標が加算対象となるのは珍しく、その点からも広く世間に浸透した大ヒット曲と言えます。

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米津玄師「Pale Blue」についても、構成8指標すべてが100位以内に登場。所有指標はフィジカルセールス初加算週にチャート構成比の5割近くを占めましたが(ダウンロード含む)、徐々に接触指標が高まっている状況です。遅れて上昇気流に乗るカラオケにおいて最新チャートにて順位を落としているのは気掛かりですが、ロングヒットの様相を呈しています。

加算対象指標がすべて100位以内に入っている曲は、幅広い角度から支持されていると言えます。

 

 

② フィジカル関連指標の初加算週においてチャート構成比に占める割合は

③ フィジカルセールスとルックアップの順位に乖離はないか

④ フィジカルセールス初加算週、接触指標群は十分ポイントを獲得しているか

フィジカルセールスに強い歌手が総合でも上位に進出することはよくあります。下半期に入り、ビルボードジャパンはフィジカルセールスのウェイトを引き下げる措置を採ったことで最上位への進出が厳しくなりましたが、それでもトップ10入りはしやすい状況です。

(フィジカルセールスのウェイト減少とは、係数処理対象となるセールスを30万から10万に引き下げた措置のこと。ただしビルボードジャパンでは設定枚数は公言しておらず、当該枚数はチャート分析に長けた方々の判断に伴うものです。)

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前週6月30日公開(7月5日付)で総合5位に登場したNGT48「Awesome」を例にとると、フィジカルセールスが3位となり総合でも躍進した要因であることはチャート構成比からも解りますが、一方でルックアップは28位と大きく異なります。

ルックアップはレンタルCDの取り込みも含むため、レンタル需要が推測できる指標であり、また売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)も予測できるものです。サブスクも解禁している「Awesome」ですが、主にコアなファンに支えられていると読み取ることが可能であり、ファンによる購入が一段落するとチャートは急降下する傾向にあります。実際、翌週は総合100位未満(300位圏内)に急落しました。

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フィジカル初加算週においては所有指標が強くなりますが、翌週はフィジカルセールスが急落する分を他指標で補完できなければポイントおよび順位の急落は免れません。特に接触指標群の動向をみて、次週の予測をすることがある程度可能です。またフィジカルセールスに強い曲は同指標加算2週目における総合での動向から、真に社会的ヒットに至れているかを判断する必要があります。

 

 

⑤ ブレイクが期待できる曲は、ラジオとカラオケが追い風になり始めたか

コロナ禍において初の緊急事態宣言下となった昨年上半期、自宅待機の影響でTikTokYouTubeの需要が拡大し、動画発のヒットが数多く生まれました。動画再生指標は勿論のことストリーミングにも波及し、メディアが取り上げることで総合的に大ヒットにつながるのが主な形です。

そのようなヒットの形の筆頭に上げられるのが瑛人「香水」そしてYOASOBI「夜に駆ける」。ですが、この2曲ともラジオやカラオケのブレイクは遅れているというのがデータで解ります。

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総合チャート300位以内初登場からの30週分におけるCHART insightを上記に。2曲共に、ラジオが上昇気流に乗るのは総合チャートでのブレイクから1~2ヶ月遅れ、カラオケに至っては2~3ヶ月経過しています。尤も現在においてはラジオやカラオケ業界が動画発のヒットに敏感になったと思われるため、以前ほど時間がかかることはなくなったと考えられます。一方、この動きを思わせる曲は現在も登場しています。

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P丸様。「シル・ヴ・プレジデント」は3月リリースのアルバム『Sunny!!』収録曲で、ビルボードジャパンが金曜に発表するTikTok HOT SONG Weekly Rankingでは4月5~11日集計週で10位に初登場すると、最新チャートでは3週連続、通算6週目の首位を獲得。また最新7月7日公開(7月12日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいても最高位および最高ポイントを更新しています(ポイントについてはHeatseekers Songsチャートで確認可能)。

ネット音楽(と一括りに表現するのは正しくないかもしれませんが、ここではそのように表現します)についてはそのバズが当初ストリーミングに表れにくいこともあり、「シル・ヴ・プレジデント」もそのひとつながら同指標は上昇傾向に。そしてカラオケも、前週初めて100位以内に達すると最新週では65位に上昇しています。ここから、「シル・ヴ・プレジデント」は社会的流行のフェーズに入りつつあると捉えています。

「シル・ヴ・プレジデント」はストリーミングやダウンロードを高める必要があると感じますが、まずカラオケという追い風を手に入れました。メディアでの紹介等がさらなる後押しになる可能性も秘めていますが、このようにCHART insightからブレイク候補曲を予測することも可能です。

 

 

 

以上5点紹介しました。チャート分析や見る楽しみの一助になれるならば幸いです。