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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードで相次いだチャート発表の不備…問題は誤りそのもの以上に態度に在る

ビルボードの異常事態、きちんと指摘しなければなりません。この2週間、米ビルボードはソングスチャート発表で不備を発生し続けています。

 

最新5月22日付米ビルボードソングスチャートは日本時間の水曜遅く(日付の変わる直前)に発表。本来は日本時間の火曜早朝に発表されなければいけないはずが、大幅に時間がずれてしまった形です。

 

実は最新チャートの不備については前週、いわば予兆と呼べるものがありました。

発表から数時間後の日本時間5月11日火曜昼過ぎ、米ビルボードはソングスチャートの記事を訂正。ダウンロードの数値がその理由です。しかし、訂正のアナウンスは記事最後に『UPDATE: The Hot 100 dated May 15 has been updated with new numbers.』と記されたのみで、何が問題だったのかを具体的に述べていません。また記事訂正をTwitterでアナウンスしておらず、あたかも"しれっと差し替えた"と捉えられてもおかしくありません。これにより順位に変動が生じた以上、きちんとした説明が必要だったと考えます。

 

このような問題があったばかりの米ビルボードが、最新5月22日付ソングスチャートで再び問題を発生したのは先述の通りです。

日本時間の5月18日火曜午前9時前になってようやく、米ビルボードは発表を1日遅らせるとアナウンスしましたが、その理由には一切触れず延期のみを伝える形に戸惑いを抱いた次第。そして日本時間の19日昼過ぎまでにソングスチャートは発表されないまま(米ビルボードは現地時間で5月18日に発表すると表明していたのですが)、さらに12時間近く経過してようやく発表に至ったというのが最新チャートにおける一連の流れとなります。

(なお、日本時間の火曜早朝にトップ10速報記事が、同日夕方に100位までの全容が発表されるのが通常ですが、今回は水曜夜にトップ10記事と全容が同時に発表されています。)

 

 

最新5月22日付米ビルボードソングスチャートにおける遅延の理由を、米ビルボードは次のように記しています。

The announcement of this week's Hot 100 was delayed by approximately 48 hours while Billboard and MRC Data conducted standard audits on reported data, working with data partners to recognize and resolve anomalies.

(今週のHot100の発表は、ビルボードとMRCデータが報告されたデータに対して標準監査を実施し、データパートナーと協力して異常を認識して解決する間、約48時間遅れました。)

(※Google翻訳を使用し翻訳しています。)

異常があったならば、遅延発表の段階で述べたほうが心配や誤解を招かず済むのではないでしょうか。

そしてこの最新チャートが、今度は別の問題を引き起こしているのです。それは、デュア・リパ feat. ダベイビー「Levitating」が首位を逃してしまったということ。実は最新5月22日付米ビルボードソングスチャートでは「Levitating」が、そしてデュア・リパがキャリア史上初の首位を獲るものと予想されていました。

主要なチャート予想担当者は、MRCデータから「Levitating」のセールスが4千以上少なく訂正されたことで、最終的にシルク・ソニック「Leave The Door Open」が勝ったと記載しています。

おそらくはこの調査に米ビルボードは時間がかかったものと考えるのは自然ですが、その説明がないことには疑問を抱きます。尤も、予想担当者による「Levitating」首位があくまで予想の範囲に過ぎないと言われればそれまでですが、しかしデータ提供元が少なく訂正したこと、また複数の方から指摘があったとなれば、公式機関として説明責任を果たさないといけないのではないでしょうか。しかしこの訂正について、米ビルボードは詳細を公表していません。

 

そしてそれ以前に、前週(5月15日付)米ビルボードソングスチャートにおけるダウンロード訂正はTwitterでは紹介せず、最新5月22日付の遅延アナウンスは米ビルボード本体のTwitterアカウント(billboard (@billboard))ではなくチャート専用アカウント(billboard charts (@billboardcharts))のみで表示されていることにも、強い疑念を抱かずにはいられません。

公式機関としての態度の軽さもさることながら、米ビルボード主催の音楽賞(2021ビルボードミュージック・アワード)が日本時間の明日開催されるタイミングで不備を連発することは、極めて危うい事態と言えます。

同賞では最多ノミネートとなりパフォーマンスも行うザ・ウィークエンドに最も注目が集まるでしょうが、このザ・ウィークエンドはグラミー賞を強く問題視し、同賞への今後一切のボイコットを表明しています。グラミー賞の選考等不信感が背景にあると考えれば、同種の不信感を米ビルボードが、それもチャートというデータを扱う機関が抱かせることは絶対にあってはならないのです。

 

 

誤りは誰でも起こします。それを誠意ある態度で対応するか、それとも逃げる(と思われてもおかしくない態度をとる)かで信頼度は大きく変わります。代替の効かない機関はチャートであれ行政であれ、逃げは絶対にあってはならないのです。

 

自分はあくまでチャートを享受し伝える立場ではありますが、問題点の改善を求め、きちんと指摘し続けていきます。