過去にゴスペルクワイアに所属した経験のある身としては、毎年楽しみにしていたゴスペルのヒット曲コンピレーションアルバム『WOW Gospel』シリーズの終焉が非常に残念でなりません。
上記の2019年版を最後に、『WOW Gospel』シリーズはどうやら終わりを告げた模様。通常ならば今月リリース予定の2020年版は、現段階でアナウンスがありません。
昨年のゴスペル界は、ヒップホップアクトとの共演も多いカーク・フランクリンの新譜の登場、そしてヒップホップ界からカニエ・ウェストの進出等、いつにもまして注目されたと思うのですが、その年のヒット曲を網羅した定番シリーズがないのは残念です。
昨年のCDに記載されたSNSアカウントを辿ると、Twitterにおいてはいわゆるツイ消しが行われていたようです。
インスタグラムもFacebookも、"@wowgospelmusic"という共通アカウント名で登録されているのですが、インスタグラムは3枚の投稿のみ、Facebookには別のアカウントの引用投稿はあれどそのアカウント自体からのものは見当たらず、やはり『WOW Gospel』シリーズは終了したものと考えられます。米ビルボードゴスペルアルバムチャートではヒットし続けていたシリーズゆえ、売れなくなったというわけではないと思うのですが、その理由が気になります。
先述したように昨年はゴスペルが注目を集めた1年でしたが、カニエ・ウェスト関連の2作もまたCD化されていませんし、されていたとしても一般流通には至っていません。
昨年のクリスマスに『Jesus Is Born』をリリースしたカニエ・ウェストのクワイアであるサンデー・サービス(・クワイア)のホームページ(→こちら)からカニエ・ウェストの通販サイトにつながり、カニエ自身の名義である『Jesus Is King』はCDやレコード、カセットテープといったフィジカルのほか、ダウンロードでも購入することは出来ます(→こちら)。しかし現段階でCDは一般流通されておらず、またクワイアによる『Jesus Is Born』はフィジカル化すらされていないようです。
この時勢にあってCDにこだわるのはもはや少数派かもしれず、自分の場合はラジオ番組を担当しており番組で用いたいという思いゆえというのは否定出来ません。しかし、今や音楽聴取の主体となったサブスクリプションサービスがしかしネットに不得手な方(年配層やネットの環境が芳しくない者等)に完全には浸透していないだろう状況を踏まえれば、CDとしての流通は必要かもしれないと思うのです。
仮に『WOW Gospel 2020』がリリースされ、そこにカニエ・ウェストの未CD化(一般流通されていない)アルバムから「Follow God」が収録されたならば年配層にも"ヒップホップ×ゴスペル"という音楽が届き、非常に面白いリアクションが生まれたのではないかと。現に『Jesus Is King』はチャート上でもヒットを記録しているゆえ、未CD化(および一般流通しない施策)は勿体無いと思ってしまいます。
『Jesus Is Born』については80分超えの作品ゆえ1枚のCDに収めることは厳しいでしょうが、クワイアのレベルも高くまたR&Bファンにとっても聴きどころ多い作品ゆえ、いつの日かCD化されることを願ってやみません。
『Jesus Is King』評はメディアで多く見られた一方、『Jesus Is Born』はリリースタイミングが年末だったことやヒップホップ好きにとって予想を遥かに超えるゴスペル作品ということもあってかレビューがほとんど見られないのが気になります。バンドが敢えてあの音(ミックス)にした理由とカニエ・ウェストの音作りの関連性等、ヒップホップの面からも語れることはあると思うのです。
出来るならば日本向けに、『Jesus Is King』と『Jesus Is Born』の2作品をひとまとめにして、解説や訳詞込みでCDリリースしていただけたならと思うのですが、いかがでしょう。