※ 追記 (11月13日20時17分):加筆修正を行いました。
※ 追記 (2018年9月16日7時8分):リンクの再貼付等を行いました。
※ 追記 (2019年1月20日21時45分):リンクの再貼付を行いました。
昨日はラジオ番組、『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時 サイマル放送で全国各地にて聴取可能です)の放送日。先週に引き続き安室奈美恵さん特集をお送りしました。先週の内容は下記に。
今回は自分が選曲を担当し、初週ミリオンセールス確実と言われる『Finally』(2017)未収録曲群をメインに、彼女の音楽的変遷(と彼女がカリスマ性を放ち続けた理由)を伝えることに徹しました。一緒に喋り手を担当したのが弘前大学ラジオサークルの大学生3名、皆彼女のデビュー後に生まれ、安室奈美恵さんといえば小室哲哉さんとのタッグをかろうじて知る程度ゆえ、喋りたいことは山ほどあったけれど音楽面に要点を絞って伝えることに。
さて、今回のベストアルバム発売においてはそのフラゲ日以降、このブログへのアクセスが急増しています。ほとんどの方がたどり着いているのが下記エントリー。
曲目リストは上記に。おそらくはCDを手に取って、もしくはベストアルバムと聞いた段階でリストをチェックしないまま予約しそれが届いてはじめて”これは...?”とモヤモヤした感覚を抱き検索した結果ではないかと。で、曲目リストと新録とを知ったタイミングで”違和感”と当初書いたのですが、エントリーをアップした後、自分の中でこの『Finally』に関してはスタンスの変化というか、捉え方が変わってきています。
自分はあのエントリーを書いた、”不完全燃焼”と書いた数日後から、あれはあれで良かったんだと思えるようになりました。ステージでは常に生歌で、そしてボーカルもより巧くなっていくわけで、”今の安室奈美恵”を示すためには新録は自然なことだよなと
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
とはいえ、まさかオケまで変わってるとは!というのが正直なところで。というのもどうやら彼女の前所属事務所が原盤権を持っており、オリジナル音源を使えない模様。ゆえにいくらアレンジを再現したとしても”ここが違う!”と思うところ多く...この原盤権問題は芸能界の大きな課題だと痛感した次第です
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
なので今回の『Finally』は、”『_genic』以降のシングルと今回初収録となる新曲、全13曲というアルバム1枚相当分の曲群を楽しもう!”という思いで聴いています
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
原盤権については下記サイトが分かり易いので勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。
原盤権においては安室奈美恵さん側と前所属事務所との折り合いがつかなかったものと考えられますし、また両者の関係性が今も悪化したままと考えるならば、仮に安室奈美恵さん側が『NHK紅白歌合戦』出場に前向きな姿勢を示したとしても、その事務所から今年三浦大知さんと荻野目洋子さんが出るだろうかもしれないことを踏まえれば(現に今日このような報道が。あくまで”関係者”発言ゆえ正式発表ではありませんが)、所属歌手がいくら安室奈美恵さんへの尊敬の念を抱きまたそれを引退発表を聞いて表に出したとしても、前所属事務所の上層部の姿勢により出られないか、もしくは彼らに配慮して出演を控えることも考えられます。これら、いわゆる圧力や忖度が今の芸能界の闇であり(変えないといけないと痛感しています)、安室奈美恵さんに(引退日までまだ日はありますが)最後の紅白に出てほしいと思う自分には、『Finally』の新録と同様に紅白出演という近い将来においてもモヤモヤ感を抱いています。いつか原盤権が彼女側に渡される等の措置が採られることを願うと共に、ネット時代においては(100%断定は出来ないものの)こういう闇については可視化されているわけですから芸能界には自浄作用を持っていただきたいと切に願うばかりです(ちなみにこの問題は芸能界全体の問題であるゆえ、どんな芸能事務所やレコード会社にも発生しうるものです)。
ゆえに”新録曲”以降の楽曲を楽しもうとは書きましたが、『Finally』は前所属事務所時代の曲が新録でありこれらの原盤権は彼女側にあるだろうことを踏まえれば、買えば買うほど安室奈美恵さん側の支援(という表現は大袈裟かもですが)になりますので是非手に取ってほしいところ。そして、(仮に前所属事務所側に利益が入るとしても)彼女の素晴らしさはオリジナルアルバムの濃密な完成度に宿ることを踏まえれば、『Finally』をきっかけに是非過去の作品群に触れてほしいと切に願います。なんせ、彼女が『GENIUS 2000』(2000)以来オリジナルアルバムで週間CDセールスランキング首位(オリコンより)を獲得した『PLAY』(2007)以降、アルバムはベスト等を含めすべて週間1位を獲得。年間チャートにおいても『PLAY』(15位)→ベストアルバム『BEST FICTION』(2008 2位)→『PAST<FUTURE』(2009 2010年度6位)→コラボレーションアルバム『Checkmate!』(2011 6位)→『Uncontrolled』(2012 11位)→『FEEL』(2013 6位)→バラードセレクション『Ballada』(2014 4位)→『_genic』(2015 16位)といずれも上位にランクイン。『_genic』においてはシングル曲無しで構成されているためか順位は他に比べれば高くないかもしれませんが素晴らしい成績であることに変わりありませんし、年間チャートの他の作品は半分程度がベストアルバムで占められていることを踏まえれば、オリジナルアルバムがここまで安定した成績を保っているのはその完成度の高さ故と言っていいでしょう。そしてライブでは常にダンスしながら生歌でピッチをキープ、ストイックな姿勢を追求するわけですからまさしくアーティストの鑑といえるのではないでしょうか。
前置きが長くなり過ぎましたが、それら考えを踏まえ、実際に番組中にツイートした内容を用いて、昨日放送のラインアップを振り返ります。
番組1曲目「Showtime」。2017年のベストアルバム『Finally』収録、ドラマ『監獄のお姫さま』主題歌。疾走感溢れる、そして3分ちょっとの短い時間にタイトにまとめ上げる格好良さたるや #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
番組2曲目は「I HAVE NEVER SEEN」。1998年のシングル。結婚、出産を経てのカムバック曲は前シングルを流れを汲むと共に今後の方向性を図る上でも大きな意味をR&B。ベストアルバム『Finally』にはアレンジおよびボーカルを新録の上収録 #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
ツイート訂正。”大きな意味を持つ”、でした。活動休止前のシングル、「Dreaming I was dreaming」(1997)と対をなすよう曲のような気がしますし、この2曲で大人な方向性、R&Bへの移行が強く示されたように思います。
特集オープニング「toi et moi」。1999年のシングルで映画『劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕』エンディング曲。彼女のアルバムには一切収録されていない。ルギアが『ポケモンGO』で今夏のレアキャラとして登場した流れで紹介 #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
オリジナルアルバム未収録となるとやはり手に入れたいと思う方は多いはず。その点においても、シングル全曲を網羅したベストアルバムの必要性について先日書いた次第。
特集1曲目「Don't wanna cry」1996年のシングル。「Chase the Chance」から一転、R&Bを意識した仕上がりに。以降彼女がR&Bへシフトする導入と言える作品であり、その後小室哲哉氏プロデュース曲で垣間見られるゴスペルコーラスが導入されている #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
当初は特集コーナー内は全曲自分セレクト且つ『Finally』未収録曲のみでいきます、と告知したのですが、ラジオスタッフサイドのミスで先週の放送前に届いていたリクエストが先週紹介出来なかったためこのタイミングで。この曲のみならず、「SWEET 19 BLUES」(1996)や「RESPECT the POWER OF LOVE」(1999)のゴスペルクワイア(コーラスの意)、また「CAN YOU CELEBRATE?」(1997)大サビ時のゴスペルクワイアと思しきメンバーのソロのフェイクをみるに、小室哲哉氏がR&Bやゴスペルを取り込んだというよりは、その後の曲群を踏まえれば、R&Bやゴスペルは安室奈美恵さん側の提案ではないかと思うのです。そして特にゴスペル要素においては、2000年代中盤で”結実”、特集4、5曲目で紹介します。
特集2曲目「SOMETHING 'BOUT THE KISS」(1999)。TLCの全米1位曲「Creep」で知られるダラス・オースティンとの初タッグ作。同時期に流行ったミッシー・エリオット作の702「Where My Girls At?」の如きR&Bで新境地を開拓。後にTLCのセルフカバー版「Waterfalls」に参加することに #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
音楽ジャーナリストの高橋芳朗氏も現在のスタイルの布石として取り上げた曲がこちら。
702については下記に。引退発表直前に書いたエントリーでした。
1990年代、雨後の筍の如く飛び出した女性R&B界にあって突出した人気を放ったTLC。ダラスがプロデュースし全米1位を獲得した「Creep」(1994)は下記に。
そのTLCの代表曲のひとつ、「Waterfalls」のセルフカバー版に参加した安室奈美恵さんは、「Hands On Me」(アルバム『FEEL』収録)のミュージックビデオにてTLCを招聘しています。
特集3曲目、ZEEBRA feat. AI, 安室奈美恵 & Mummy-D「Do What U Gotta Do」。2011年のコラボ集『Checkmate!』収録(初出は2006年)。自身の名を用いず純国産R&Bを極め好事家の支持を得たSUITE CHIC時代を経て、その時の仲間が再集結&D氏参加。個人的にはRHYMESTERとの共演もあればなと… #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
SUITE CHIC時代(アルバム『WHEN POP HITS THE FAN』は2003年リリース)があったからこそその後のR&B群へのシフトしたのは間違いないはず。2000年代前半はセールス的に落ち込む時期ではありますが、だからといってイコール低迷期とするのはあまりにも早計。礎を築いた極めて大事な時期なのです。
ちなみに個人的には、彼女の音楽的変遷は4つの時期に大別されると考えています。【デビューからユーロビート時期】【小室哲哉氏(TK)によるプロデュース時期】【(TKプロデュースと一時期被りますが)R&B時期】そして『BEST FICTION』でR&B時期が浸透、結実して以降の【様々なダンスミュージックを取り入れた”安室奈美恵というジャンル”確立時期】の4つ。SUITE CHICは第2期の中間地点にあって、ダラス・オースティンから取り入れた本場の空気感を日本のR&Bクリエイター陣と共有し、彼女のクオリティはもとより国産R&B全体のレベル向上に寄与したのではないかと思うのです。
ちなみに、安室奈美恵さんについはRHYMESTERの宇多丸さんがラジオ番組、『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ 土曜22時)でその思いを語っています。音楽的変遷については自分の考えよりも細分化されていますが、非常に面白い視点だなあと感心させられます。この熱量、思いの深さだからこそ、RHYMESTERと安室奈美恵さんとでタッグを組んでほしかった...!と願わずにはいられないのです。ラジオの書き起こしについては、みやーんさんのサイトを勝手ながら引用させていただきます。
特集4曲目「WoWa」。2005年のアルバム『Queen of Hip-Pop』収録。2000年代中盤のR&B期に特に大きな支えとなったプロデューサーのひとり、Nao'ymt氏による、かわいさと格好良さが同居したR&B。次に紹介するプロデューサーチームとの2組で半分ずつ担当した次作『PLAY』は個人的最高傑作 #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
特集5曲目「Should I Love Him?」。2007年のアルバム『PLAY』収録。「GIRL TALK」等を手掛けるT.Kura&michico夫妻のプロデューサーチーム、GIANT SWING作。TKプロデュースでも垣間見えた”黒さ”を極めた作品で、Nao'ymt氏による「Pink Key」とは別アプローチながら共にゴスペル曲を提供 #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
両プロデューサーの作品群について、Nao'ymt氏はこちら、GIANT SWINGについてはT.Kura氏のサイト内”discography”を参照してください。また放送で触れたNao'ymt氏による「Pink Key」については以前言及しています。
一方、GIANT SWINGにおいて、「SHOULD I LOVE HIM?」は歌詞こそゴスペルではないもののその荘厳な空気感(そしてそれを作り出すコーラスワーク)はまさしくゴスペルのそれではないかと。なおGIANT SWINGのリーダー作『GIANT SWING DELI』(2007)、そのラスト2曲は歌詞の面においてもゴスペルで、特にMICHICO氏(ツイート、すべて小文字表記してしまいました。失礼しました)による「CAN'T LIVE WITHOUT YOU」の説得力には圧倒させられます。
Nao'ymt氏、そしてGIANT SWINGの両プロデューサーは安室奈美恵さんの代表曲を手掛けてきた方(特にNao'ymt氏は『Queen of Hip-Pop』(2005)にてデュエット相手も担当)。その二組が腕を競い合った『PLAY』における「Pink Key」「SHOULD I LOVE HIM?」という2曲のゴスペルアプローチは、R&B時期における最高の輝きではないかと。自分が『PLAY』リリースの前年までゴスペルクワイアに所属していたゆえ主観が強く働いていると言われればそれまでですが、ゴスペルは歌唱力、表現力の高さも求められるジャンルであり、それを見事にこなした彼女の実力の高さに唸らされるのです。昨日の放送で「SHOULD I LOVE HIM?」の大サビ後にトークを再開したのですが、この大サビを聴く度に心が揺さぶられ、一瞬喋ることが出来なくなりそうになりました。圧巻です。
特集6曲目「Heaven」。2013年のアルバム『FEEL』収録。2010年代、楽曲毎に制作陣を変えることでR&Bからダンスミュージックへ、大きく言えば”安室奈美恵というジャンル”へシフトした彼女が起用したのがゼッド。現在世界的EDMプロデューサーの彼をブレイク前後にいち早く選んだ嗅覚たるや #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
ゼッドの世界的な最初のヒットは日本独自でヒットした、マシュー・コーマをフィーチャーした「Spectrum」と、フォクシーズを招いた「Clarity」。いずれもアルバム『Clarity』(2012)収録で、後者は全米8位を記録。そしてこの曲が全米チャート100位以内への初のチャートインとなります。
「Heaven」の後、2014年にはアリアナ・グランデへの客演として(実際はゼットとマックス・マーティンによる共同プロデュース)参加した「Break Free」が全米4位を記録。そしてEDMから方針転換したと思しき、アレッシア・カーラをフィーチャーした「Stay」が今年全米8位とコンスタントにヒットを放っています。
こうしてゼッドは世界的な人気を博すようになるのですが、その初期の段階で彼を起用した安室奈美恵さん側の凄さを感じていただきたいと思います。
特集7曲目「Golden Touch」。2015年、現段階で最新のオリジナルアルバム『_genic』収録。スマホ時代の画面サイズを考慮しミュージックビデオをタッチするトリック、彼女らしいポップさとキャッチーさに溢れ、それでいてそれらを3分台の短さに収めたのはさすがの一言。まさに黄金の輝き #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
この曲について、カバーの存在を知りつい最近ブログに上げました。
今では”スマートフォンでミュージックビデオを視聴する”というスタイルが確立されつつありますが、それをうまく、そしていち早く利用したアイデアは見事。こういう遊び心をこの先どんどん見せてくれるんだろうなあと思っていただけに今回の引退は寂しい限り、なのです。
特集後の1曲はリクエストにお答えして「Mint」。2016年のシングル。ロックテイストなダンスミュージックは安室奈美恵さんの真骨頂と言える。木村佳乃さんの怪演が話題になったテレビドラマ『僕のヤバイ妻』主題歌 #わがままWAVE
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2017年11月12日
この曲も大好きな作品。ベストアルバム『Finally』に収録されています。彼女の作品にはドラマや映画主題歌が多かったように思いますが、特に『PLAY』以降のそれらはいずれも素晴らしく、ドラマ制作陣が売上や知名度から彼女を起用したのではなく、”安室奈美恵さんならドラマに相応しい曲を提供してくださるはず”という信頼と、それに応える安室奈美恵さん側との結晶なのではないかと思うのです。
そんなわけで、昨日のラインアップはこのような形になりました。放送で伝えた内容に補完する形で書いたためあまりにも長文になりました(し、書かないといけないと思ったため原盤権についても触れた次第です)。まずはとにかく『Finally』を手に取り、そこからオリジナルアルバムの素晴らしさに触れて(掘り下げて)いただきたいと願うばかり。そして安室奈美恵さんに興味を持った方がその掘り下げを十分に行える環境整備を、レコード会社や所属事務所(新旧を問わず)はきちんと行っていただきたいと強く思います。
来年9月まで走り抜ける安室奈美恵さんを、心から応援します。