イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

星野源「恋」がビルボードジャパンチャートでトップ10から陥落も再浮上するだろう理由

遅ればせながら取り上げるのですが、先週水曜に発表された、5月8日付のビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)において、星野源「恋」が12位に後退。遂にトップ10から陥落してしまいました。

「恋」のチャート推移は下記に。

8月29日付で一度登場し、その後9月19日付で再登場(いずれも100位圏外)。登場6週目となる10月3日付でトップ10入り(9位)を果たして以降、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の大ヒットや『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)等での披露も相俟って大ヒットに。都合31週もの間、それも連続でトップ10をキープしたことになります。

 

さて、この「恋」、再びトップ10内に浮上する可能性を十分に秘めています。それは先週木曜に放送された特番『おげんさんといっしょ』(NHK総合)でこの曲が披露されたゆえ。

記事というよりほぼ実況ではありますが解りやすいので紹介。Twitterでは番組開始前からタイトルが最上位にトレンド入りする等注目を集め、自分の周囲ではこの番組への称賛の声が多く発せられていました。現に、自分が関わるラジオ番組の大学生スタッフが放送直後に細野晴臣さんのCDを借りに行くほど、その影響力は大。となると、チャート構成指標である【ツイート】や【YouTubeの再生回数】、【販売やストリーミング】および【(購入やレンタルに基づく)CDのPCへの読み込み】が上昇し、結果として明後日発表される5月15日付チャートでトップ10への再浮上が期待出来るのではないかというのが私見です。

 

 

今回の特別番組についてはおそらくは偶然このタイミングでの放送だったゆえ、「恋」のランクアップを狙ったということはほとんど考えにくいでしょう。とはいえ、アメリカのビルボードチャートを調べると、"どのタイミングで仕掛けてくるか"が見えてきて非常に面白いのです。直近のチャートでブルーノ・マーズ「That's What I Like」が制したのはリミックスのリリースおよびストリーミング開始ゆえのこと。

また、同じく直近のチャートで5位のFuture「Mask Off」については先週金曜にミュージックビデオが公開。ストリーミングおよびデジタルダウンロードの対象期間は金曜から翌週木曜ゆえ、YouTubeでの再生に伴うストリーミングの上昇が1週間分丸々チャートに反映されるわけです。

ミュージックビデオは、最近のチャートイン曲では作られていない(用意が遅れている)ことが少なくないですが、おそらくヒットの速さにビデオ公開はおろか制作自体が追いついていないのかもしれません(ゆえに、リリックビデオの存在はメインのビデオを公開するまでの穴埋めとしても重宝されているのではないかと)。そして公開のタイミングを金曜にする等を施すことで、チャートにより高く影響するよう仕掛けているように思います。

他にもチャートへの仕掛けとしては【デジタルダウンロードを69セントで安価販売】などが挙げられますし、初登場時のインパクトをより大きくする場合には【有名音楽賞やスポーツイベントの中継の際のCMで初披露】や【突如デジタルダウンロードやストリーミングを解禁】といったものが挙げられます。これらはいずれも、売り出したい楽曲がより上位に行って欲しいという思い、動機ゆえの戦略であり、チャートがそれだけ世間の注目の、ヒットの鑑であることを意味しています。

 

翻って日本では...未だにチャートといえばビルボードジャパンよりオリコンという風潮があるでしょう。が、昨年の世間のヒット曲のアンケートを見ても、ヒットの鑑が【オリコンビルボードジャパン】であることは以前のエントリーで明確に示させていただいております。

今後メディアには、持ち合わせているであろうしがらみ(その一要素については最近のエントリー、極私的、"Mステに出て欲しい"男性歌手4組と出演の現実味(5月6日付)で示しています)を早く自らの手で脱し、ビルボードジャパンチャートを紹介するようにしてほしいと切に願います。ビルボードジャパンチャートの存在が浸透し、より信憑性があると認知されれば、米チャートと同様に日本でも今後は様々な"仕掛け"が出て来ることでしょう。その動きは、私達にとっても音楽業界やマーケティングを学ぶ良い教材となりますし、チャートを多角的に見る(診る)意味でも非常に面白いと思いますよ。