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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新7月29日付ビルボードジャパンソングスチャート、Official髭男dism「Pretender」から見えてくるチャート構成8指標の特徴

7月15~21日を集計期間とする、7月29日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートは日向坂46「ドレミソラシド」がトップに立ちました。

トップ10は7曲が入れ替わる大波乱。米津玄師「Lemon」が先週からポイントを伸ばしながらも、昨年2月26日付で2位に登場して以来はじめてトップ10から陥落しました。ただトップ3がいずれもチャート構成比におけるシングルCDセールス指標が高く(日向坂46は8割、TWICEは8割以上、祭nine.に至っては9割以上)、次週どこまでとどまるかは微妙な状況といえ、次週「Lemon」のトップ10返り咲きは十分有り得るでしょう。

 

さて今回はOfficial髭男dism「Pretender」の動きをあらためて確認。

「Pretender」は前週、史上初となるストリーミング500万回再生を突破しましたが、今週はさらに数値を伸ばしています。

前週、週間ストリーミング数500万回を突破したOfficial髭男dismの「Pretender」は、前週5,087,110回から5,383,336再生へと増加、ダウンロードも14,272DLから14,518DLと増加し、ストリーミングが牽引するその勢いは衰えを見せず。当週発売開始タイトルに押されて総合順位を3位から5位に落としたが、まだまだ上位を維持する見込みだ。

その結果、「Pretender」は過去2番目に高いポイントをマーク。

3週以上7000ポイントを超えれば大ヒット、と以前書きましたが、「Pretender」はそれを大きくクリアしています。

シングルCDセールス加算前週の段階で既にトップ10入りを果たしていましたが、シングルCDセールス指標が加算されてから10週間で74000ポイント程を稼いでいる「Pretender」。ではストリーミングも含め、チャートを構成する8つの指標はどう動いているのでしょう。

※各指標について

 ・ポイント:総合ポイント

 ・ポイント前週比:前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は※で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

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  順位 P 前週比 CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/3/25 -  

          79    
2019/4/1                    
2019/4/8 -             -    
2019/4/15                    
2019/4/22 -         4   -    
2019/4/29 26 1595   16 54 4   56    
2019/5/6 21 1821 114.2%   19 20 5   87    
2019/5/13 20 1827 100.3%   20 18 3   94    
2019/5/20 8 3494 191.2%   13 8 2   42 82  
2019/5/27 3 7986 228.6% 9 2 2 1 6 21 11 -
2019/6/3 2 7267 91.0% 29 2 1 2 5 24 5 86
2019/6/10 4 7490 103.1% 40 3 1 4 6 44 5 47
2019/6/17 4 7669 102.4% 33 4 1 8 7 23 6 14
2019/6/24 6 7430 96.9% 33 5 1 6 6 46 8 12
2019/7/1 4 7254 97.6% 28 8 1 22 5 40 6 10
2019/7/8 3 6684 92.1% 44 8 1 22 11 50 4 8
2019/7/15 3 6874 102.8% 55 8 1 47 8 45 4 3
2019/7/22 3 7524 109.5% 84 6 1 34 8 39 4 3
2019/7/29 5 7806 103.7% 80 8 1 64 7 27 4 3

8つの指標の特徴が、実によく解る動きとなっています。

【シングルCDセールス】は初登場時に9位を記録しながらもトップ10入りはわずかに1週、最新では80位にダウンしており、この指標だけでヒットを判断するのが如何にリアリティのないことかが解ります。一方、シングルCDをパソコン等にインポートした際にインターネットデータベースにアクセスした数を示す【ルックアップ】は一度だけトップ10から漏れたものの最新では7位。映画やドラマのタイアップ作品はCDレンタルされることが多いため、売上順位との乖離が高くなる傾向があります。ルックアップは【ダウンロード】に近い動きをしていますが、ダウンロードの(シングルCDセールス加算以降での)序盤の順位は高く、シングルCDセールスとルックアップを合わせた動きに近いかもしれません。

【ストリーミング】はシングルCD発売、且つタイアップ先の映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』公開日が集計期間に含まれる5月27日付で2位となり、その翌週から9週連続で1位をキープ。タイアップ先の浸透度や口コミの影響力が高い再生回数を維持した一方、前週再生回数で記録を更新したのは次のシングル「宿命」がさらなる刺激を与えたから…ということは前週ブログで記しています。

ストリーミングでは票割れが起きない一方、【ラジオエアプレイ】は調査する放送局が固定され総放送時間も一定のため、票割れがどうしても発生します。次のシングルの登場で代替され(それも「宿命」は総合で7位に初登場を果たす前週の段階で同指標首位を獲得)、流行をいち早く紹介したいという特性もあることから、好位置で登場したとしても早々に落ちていく傾向にあるのです。

【動画再生】はフルバージョン効果により高い順位で推移し、こちらはストリーミングと似た動きをしています。接触を示す指標は口コミにより広がり、タイアップや楽曲の力で長く愛されていく傾向にあるといえます(その点でいえば、ルックアップも接触の意味合いが大きいことが解ります)。【カラオケ】も同様ですが、配信開始のタイミングや楽曲の浸透度が影響するため上昇度合いは他の接触指標より鈍くなっています。

最後に、口コミ的な指標である【Twitter】については順位がどうしても安定しません。アイドル等特定のジャンルに属する歌手が大半を占めるようになり、彼らのメディア露出や新曲情報解禁等により上位に多数流入/流出することで不安定な動きにつながっています。

そんな中でも50位以内を保っているのは曲の力と言えるかもしれませんし、逆に言えば今後テレビ露出があればより伸びる可能性はあります。これまではツアーを行っていた関係で露出が少なく、大きく浮上する機会は少なかったかもしれませんが、安定したチャートアクションにさらなる刺激を与えるならばこの指標をどうするかが大事になってきます。

 

ちなみに「Pretender」は先行解禁を行っていますが、シングルCDセールスの加算開始に伴いダウンロード、ストリーミングそして動画再生が大きく伸びているのが解ります。シングルCDをリリースするのであればCDセールスが他指標を加速させることを見越して配信の先行解禁等を行い、またシングルCDをリリースするしないに関わらず各指標の動きを見据えたスケジュールを策定することをレコード会社や芸能事務所には勧めます。Official髭男dismの場合、人気作品のタイアップ効果で大ブレイクの波に乗ったのは間違いないでしょうが、先行解禁や「宿命」の登場タイミングの巧さによりその波を自ら作ったと言えるわけで、彼らのマーケティング力は実に素晴らしいと思うのです。

ライジングプロダクションがミュージックビデオ公開をショートバージョンに戻した事態を強く疑問に思う

先週末から事態が急転し、芸能界を震撼させ続けているのが吉本興業の問題。一方で同じく先週”圧力疑惑”が報じられながら、ジャニー喜多川氏の訃報に大幅な時間を割いたのとは対象的に先週末のワイドショーでほぼ報じられることのなかったジャニーズ事務所の件は風化させてはならない(きちんと考えないといけない、という意味で)と思い、月曜に下記エントリーを記載しました。

ちなみに吉本興業の問題については、社長と所属タレントの関係性が大なり小なりどこの組織でも当てはまるだろうことを踏まえるに、最善の解決策が社会で共有され、悪い意味での”オトナ”が減ることを願うばかりです。同時に、この件は実は大きな問題を孕んでいます。映画評論家の町山智浩さんが昨日放送のTBSラジオ『たまむすび』で語った内容が解りやすいので、多くの方に知っていただきたいと思います。

 

さて、ジャニーズ事務所の圧力、そしてそれ以上にあったであろうメディアの過度な忖度によって同事務所から離れた方、ならびに同事務所がライバル視する男性アイドルグループが”干される”という憂き目に遭っています。後者における代表格がライジングプロダクションだとして月曜に記載し、w-inds.を大きく取り上げました。その際、YouTubeで公開されたニューシングル「Get Down」のミュージックビデオがショートバージョン(短尺版)だったことを記載したのですが、どうやら同事務所のショートバージョン化はw-inds.にとどまらない模様で。

DA PUMPの次のシングルもショートバージョン化してきました。w-inds.ポニーキャニオン発なのに対しDA PUMPavexから…それゆえ、両者が所属するライジングプロダクションがショートバージョン化にシフトしたのではと考えるに至りました。

では同事務所所属の他の歌手はどうなのか、前作と比較しつつ確認してみます。発売日はシングルCDとしてのリリース日を指します。

 

DA PUMP「P.A.R.T.Y. ~ユニバース・フェスティバル~」(8月7日発売)

(前作) 「桜」(3月6日発売)

 

w-inds.「Get Down」(7月31日発売)

(前作) 「Dirty Talk」(2018年3月14日発売)

 

三浦大知「片隅」(6月12日発売)

(前作) 「Blizzard」(2018年12月19日発売)

 

・Lead「Summer Vacation」(7月23日発売)

(前作) 「Be the NAKED」(1月30日発売)

 

・フェアリーズ「Metropolis ~メトロポリス~」(7月17日発売)

(前作) 「HEY HEY 〜Light Me Up〜」(2018年2月28日発売)

 

・MAX「パルテノン」(6月26日発売)

(前作) 「#SELFIE 〜ONNA Now〜」(2015年7月22日発売)

フェアリーズおよびMAXの場合は前作もショートバージョンでしたが、6~7月に新作をリリースする(した)歌手の作品は全てショートバージョンでの公開となりました。たとえば三浦大知さんについて、「Blizzard」のひとつ前のシングル「Be Myself」までは基本的にショートバージョンでの公開だったことは以前記載していますし、それが実力や内容とチャートアクションとの乖離を招く一因だと断言しました。

一方、「Blizzard」はビルボードジャパンソングスチャートで長期エントリーを果たし今年度の年間トップ40入りが見込めるヒットとなりましたが、ミュージックビデオがフルバージョンとなっていたこともヒットの要因になったことがCHART insightから読み取ることが出来ます。

ちなみにDA PUMPの昨夏の大ヒット曲「U.S.A.」も実はショートバージョンでの公開でしたので、ライジングプロダクション所属歌手の作品は昨年終盤あたりまでショートバージョンでの公開が主体だったものと思われます。

となると、ライジングプロダクションが新曲をYouTubeでアップする際にフルバージョンで公開したのは昨年終盤からおよそ半年間と推測出来ます。いや、月曜のエントリーでも紹介したw-inds.の名曲「We Don't Need To Talk Anymore」(2017)等はフルバージョンで上がっており、歌手によって戦略等に差を設けていたのかもしれません。w-inds.の場合はそのフルバージョン化のおかげで好事家を中心に曲の良さに気付いた方が増え、音楽面の高さに注目が集まったように思います。

そのw-inds.ですらミュージックビデオをショートバージョンに”せざるを得なくなったのでは”と思うと、至極残念に感じる自分がいます。

 

ショートバージョン化の理由…これは邪推の域を超えませんが、フルバージョン化した半年間が異例の措置だったこと(実験期間等)もあるでしょうし、ミュージックビデオは本来CDに同梱される映像盤で観てほしい、すなわち”商品”として売られるものを無料でアップするのは違うという考えがあるのかもしれません。「U.S.A.」「Blizzard」のヒットでCDとしてのセールスが増えただろうことも後者の考えを加速させているのかもしれません。しかし、ショートバージョンとフルバージョンでCDセールスに大差がないことは、(曲のタイアップや内容を精査する必要もあれど)たとえばMrs.GREEN APPLEの件で証明されているように思います。

そしてコアなファンは確実にCDを購入する(ことに加えて先行配信分も買う)だろうことを踏まえ、以前このように記載しました。

むしろその歌手のファンというわけではない、曲に興味はあるが迷っている等の”ライト層”はCDやデジタルダウンロードでの購入以外にも単曲のダウンロードやストリーミング、CDレンタル等幅広い手段(そして所有のみならず接触も)が選択肢にあるはずで、ミュージックビデオのフルバージョンを収録した映像盤を同梱したCD購入一択ではないはずです。コアなファンからの支持を受け続けていくことも大事ですが、ライト層をどう取り込むか、そしてCDを売ることが利益や成績面で第一義という考えからどう変えていくか…海外展開等も踏まえればレコード会社や歌手側の意識の速やかな変革は必須だと考えます。

YouTubeではショートバージョンしかアップされていないからCDを買ってフルバージョンをチェックしようという考えよりも、なぜショートバージョンしか存在していないのか、しかも前の曲はフルバージョンだったのに…という不満のほうがライト層に噴出するものと考えます。ミュージックビデオのフルバージョンでの公開は動画再生やストリーミングの再生回数増加のみならずダウンロード、もしくは映像盤を同梱したCDの購入にもつながっていく可能性があるゆえ、ショートバージョンでの公開はそれらの流れを断ちかねないと思うのです。

 

ショートバージョンによる売上やチャートアクションの差異については、上記ショートバージョン疑問視エントリーでも触れた三浦大知「片隅」にひとつの解を見いだせるかもしれません。

上記ブログエントリーではビルボードジャパンソングスチャート6月24日付までの動向を記載していますが、シングルCDセールス指標が初加算された週に22位を記録した翌週、「片隅」は100位圏外(300位以内)に急落しています。また動画再生指標は射甘mで一度も300位以内に登場していません(片隅 / 三浦大知 | CHART insight | Billboard JAPANを参照)。こちらについてはテレビ出演の遅れ等もあるでしょうが、動画再生指標が再び弱い状況に戻っていることはショートバージョンでの公開が大きく関わっていると言えるでしょう。

ライジングプロダクションはこの曲のみならず、今回のブログエントリーで新曲として紹介した楽曲と前作とをきちんと比較しチャートアクションが伸び悩むならば、またCDセールスが良くならないならば、フルバージョンに戻すことを強く願います。

 

最後に、三浦大知「片隅」について、改善策を考えるエントリーへの反響としてソングライトを担当したKokiさんへの疑問が一部に見られたことに違和感を覚えています。

内容で評価するならばともかく、人物が嫌いという穿った感情をそのまま曲につなげてしまうのは至極悲しいことですし、吐き捨てる物言いを平気で出来る人がいることも残念に思います。

リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が最長首位獲得記録史上1位タイ、次週新記録樹立は確実?…7月27日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の7月22日月曜に発表された、7月27日付最新ソングスチャート。ジャスティン・ビーバー参加による新たなバージョンを発表したビリー・アイリッシュ「Bad Guy」の追撃を振り切り、リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が最長首位獲得記録で史上1位タイとなる16週目の首位に輝きました。

ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」(2017)およびマライア・キャリーボーイズIIメン「One Sweet Day」(1995-1996)が持つ16週1位の記録に、「Old Town Road」は遂に並びました。

「Old Town Road」の首位を阻止すべく、最新チャートのデジタル2指標(ストリーミングおよびダウンロード)の集計期間直前となる11日木曜午後、前週2位のビリー・アイリッシュが「Bad Guy」のニューバージョンをドロップ。彼女が憧れていたジャスティン・ビーバーとの共演バージョンを新たに公開したことで、1位争いは熾烈を極めるものと考えていました。

新バージョンを加えた「Bad Guy」はストリーミングで前週比39%アップの5570万(同指標2位)、ダウンロードで同64%アップの33000(同2位)、ラジオエアプレイで同7%アップの8500万(同5位)と全指標が上昇。全体で32%もの大幅アップとなりました。

しかしながら「Old Town Road」も負けじと新たにヤング・サグおよびメイソン・ラムジーを新たに招いたリミックスを投入。

集計期間の後半にはエリア51を題材にしたアニメバージョンも公開。

この施策が功を奏したのでしょう、前週は全指標がダウンに転じたものの今週はストリーミングで前週比22%アップの8620万(同指標1位)、ダウンロードは同4%アップの45000(同1位)、ラジオエアプレイは同18%ダウンの5350万(同10位)となり、ストリーミングが持ち直したことで全体で13%アップに。

これにより両者のポイント差は、「Bad Guy」を1とすれば「Old Town Road」は1.3。1.9→1.5→1.3とさらに縮まったのですが、それでも予想以上の開きが生まれたように思います。というのも。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」

2位 (2位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

3位 (6位) エド・シーラン & ジャスティン・ビーバー「I Don't Care」

4位 (5位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

5位 (4位) カリード「Talk

 

6位 (7位) リゾ「Truth Hurts

7位 (3位) ポスト・マローン feat. ヤング・サグ「Goodbyes」

8位 (8位) ジョナス・ブラザーズ「Sucker」

9位 (9位) ポスト・マローン & スウェイ・リー「Sunflower (Spider-Man: Into the Spider-Verse)」

10位 (12位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

今回の最上位2曲については、新たなリミックスに参加した歌手がクレジットされていません。実際はそれらリミックスも加算されているのですが、たとえば「Old Town Road」における追加リミックスのストリーミングは全体の15%弱、「Bad Guy」における追加リミックスのストリーミングは全体の3分の1、ダウンロードは半分弱となっており、元のバージョンを超える再生回数やセールスを記録していません。このことからリミックスの投入は効果はあれども、「Old Town Road」が首位獲得2週目以降にビリー・レイ・サイラスがクレジットされたような”オリジナルを凌駕するリミックス”となっていないことが解ります。「Bad Guy」にジャスティン・ビーバーがクレジットされるくらいにリミックスが爆発的にヒットしたならば、状況は変わっていたのかもしれません。

 

さて、次週の注目はなんといっても「Old Town Road」が前人未到の17週目の首位を獲得するかどうか。これまでに16週首位を記録した2曲の動向をみると、「Despacito」は16週目において2位のDJキャレド feat. リアーナ & ブライソン・ティラー「Wild Thoughts」との差が1.3:1ながら翌週テイラー・スウィフト「Look What You Made Me Do」がデジタル2指標の初動効果で76ランク上昇し首位を奪取、「One Sweet Day」は16週目において2位のブランディ「Sittin' Up In My Room」と1.2:1ながら翌週セリーヌ・ディオン「Because You Loved Me」が4ランクアップし首位の座を射止めています。「Old Town Road」の場合、テイラーのような急上昇もしくは初登場が見込める作品、もしくはトップ10の中で勢いのある曲が見当たらず、また今週リミックス効果で勢いを増した「Bad Guy」が反動で失速する可能性を踏まえれば、「Old Town Road」の記録達成は十分可能ではないかと考えます。ちなみにその「Old Town Road」、先週中盤に”17週バージョン”を新たにYouTubeにドロップしており、最長記録達成への手を緩めていません。

最新チャートは日本時間の来週火曜早朝に発表予定。注目しましょう。

圧力と忖度が見えた今だからこそ、w-inds.がきちんと評価され出演機会が与えられないといけないと強く思う

ジャニーズ事務所公正取引委員会が注意した件について。

圧力の証拠はないとしても”現在物的証拠たるものは存在しない”だけではないかと捉えています。文書等で示されたものが以前はあり、それをメディアが過度に忖度し続け圧力と忖度が慣習化した結果、物的証拠はなくともその風潮が出来上がり、結果新しい地図の3名が憂き目にあう状態になったといえるでしょう。能年玲奈さん(今はその名も名乗れず、のんさんとして活動)等も同様と言えますし、元KAT-TUN赤西仁さんもこのタイミングでツイートしています。

この圧力と忖度についてはジャニーズ事務所を辞めた方に対してのみならず、同事務所所属タレントのライバルになりかねない男性アイドルグループもまた標的にされてしまっている…と以前から弊ブログで書いてきたのですが、それは間違いなかったと確証を得たように思います。そこには、これら圧力と忖度の関係性を薄々察していながらだんまりを決め込む、それどころか消えた干されたというゴシップにして勝手に消化する市井もまた問題だと思います。

問題は事務所だけのものではないですよね。圧力に屈して、または今後の事務所との良好関係を維持することで自社出演を最優先事項に出来るという事情のために事務所に盲目的に従うメディアも問題ですし、またそういう漠然とした事情を暗に”仕方ないよね”と飲み込み、あわよくば”干された”という非情な言葉を平気で持ち出す市井だって問題でしょう。きちんと今の活動を見ず、ポテンシャルの高さを知ろうとせずに干されたとか、果ては”終わった”などと持ち出す市井の言葉の軽さにも否と唱えたいんですよね。

今回の公正取引委員会の動きを押し上げたのは元SMAPファンの長年の懇願があったかもしれませんが、ファン以外も声に出すことの重要性を感じます。世間の厳しい目が監視という形になり、圧力をかけたおよび忖度した側が説明責任を果たさないといけなくなる状況を作り上げることも可能だからです。

 

先に引用したヴィジョンファクトリーの例で言えば、(ブログエントリーを掲載した後)2016年に三浦大知さんが、昨年にはDA PUMPが『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)に登場しています。無論他の番組にも出始めるようになりましたが、毎週ジャニーズ事務所所属歌手を、メジャーデビュー以前にも関わらず1枠以上出すこの番組に出ることには大きな意義があります。しかし、もう一組忘れてはいけないグループがあります。それがw-inds.

2年前のシングル「We Don't Need To Talk Anymore」で当時流行のEDMを取り入れ自己流に昇華したこと、またメンバーの橘慶太さんによるセルフプロデュースであったことに大きな反響がありました。無論自分も大好きな曲です。

好事家の支持を集め音楽性への注目が俄然高まった彼らはその後もセルフプロデュースの道を極め、『INVISIBLE』(2017)、『100』(2018)と立て続けにアルバムをリリース。今年に入り橘慶太さんがソロで12ヶ月連続新曲リリースという凄い企画をはじめていましたが、グループとしての久々のシングルが遂に登場。

w-inds.「Get Down」

音の格好良さは相変わらず。ですがここ最近当たり前になっていたはずのミュージックビデオがフルバージョンではなく短尺版になっていたのは極めて残念です。シングルCDを購入してほしいという意思の表れかもしれませんが、アイドルの枠を超えて訴求出来る高い音楽性を持ち合わせているだけに、今回の措置には疑問を抱きます。

それでも、動画のコメント欄には今回のジャニーズ事務所問題を機に来ただろう方々による賞賛が多数記載されています。自分も『ミュージックステーション』にリクエストしてみますが、仮に実力のある者を呼ばないならば音楽業界全体の機会損失になりかねませんし(無論好い曲を享受出来ない視聴者にとっても同様)、圧力と忖度の自浄作用はないと示すことにもつながるでしょう。シングルCDセールスチャートでは悪くない成績を収め続けているだけに出演資格は十分だと考えます。

メディアには変わることを願い続けます。

”選ぶのはキミだ”という歌を何度でも唱える

7月15日付ビルボードジャパンソングスチャート、総合100位圏内は逃していますがラジオエアプレイ指標では15位にRHYMESTER「予定は未定で。」がランクインしました。最新7月22日付では同指標58位にダウンしていますが、この夏ラジオを中心に夏を彩る曲になってほしいと思っています。ビルボードジャパンにおける「予定は未定で。」のCHART insightはこちらに。

印象的なフレーズ、”ダララレイ”については以前記載しています。

 

RHYMESTERで、且つこの時期…夏ではなく選挙期間といえば、「The Choice Is Yours」(2012)を真っ先に想起します。

選挙の度にこの曲を紹介していますが、7年前に書いたその理由を再掲します(上記ブログエントリーのリンク先にも記載)。

彼らが歌う曲にはきちんと、”自分たちにも責任がある”ということが明確化 されているのです。これまでの曲に散見された、自分たちは絶対的被害者 / 政府や電力会社は絶対的加害者…という単純な構図ではないんだ、想像できたはずの事態をここまで無視してきた自分たちだって責任はあるのだからその責任を自覚してまずは自身を律して動き出すべき…そう歌う彼らの姿に、これまでの多くの曲とは違う説得力を実感したのです。アレンジもひたすら格好良く、「I Believe In Miracles」、それもジャクソン・シスターズ(The Jackson Sisters)のヴァージョンではなくマーク・キャパニ(Mark Capanni)のオリジナル版をサンプリングという引用の仕方が巧いんですよね。

選挙に行きましょうという声は少しずつ聞かれるようになってきましたが、逆に半数近くの人が投票に行かないは至極勿体無いですね。前向きな自問自答のこの曲を聴いて、考えてほしいと切に願います。投じれば選挙速報番組への、そして政治への見方が確実に変わります。

ビルボードジャパンソングスチャートで使用曲がヒットの兆し、”2週間で10キロ痩せるダンス”ブームの源流から思いを巡らす

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する8つの指標のうち、動画再生においては時折、”なぜ今この曲が上昇中?”と疑問に思う動きがあります…という書き出しは昨日のイエス「Roundabout」でも用いたのですが。

最新の7月22日付ビルボードジャパンソングスチャートでは総合で100位以内に入らなかったものの、イエス同様に動画再生指標で5→12位と2週連続で上位20位以内に入っている曲があり、気になっていました。

・フィッツ & ザ・タントラムズ (Fitz and the Tantrums)「HandClap」(2016)

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アメリカでは最高53位を記録したこの曲ですが、日本では6月24日付になって総合100位未満(300位以内)に登場し、前週遂に82位に浮上。今週チャート構成比の9割程度を占めるのは動画再生指標なのですが、その理由はおそらくこちら。

韓国のYouTuberがTikTok等でアップした”2週間で10キロ痩せるダンス”に「HandClap」が用いられ、日本でもここ最近知られてきたことが再生回数増加の理由とみられます。この動画には「HandClap」がきちんとクレジットされており、フィッツ & ザ・タントラムズの公式アカウント発信ではないものの、ユーザー生成コンテンツ(UGC)として日本で再生されればビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標にカウント。一昨日にはYouTuberの2すとりーとによる「HandClap」動画もアップされており、着実に人気が広がっているといえます。

Yahoo!リアルタイム検索での【2週間で10キロ痩せる】の30日間での推移を分析グラフで見てみると、7月1日に104件を記録し以降は連日3桁となっています。最新チャートの集計期間は7月8~14日でしたが、翌15日には前日の9倍以上に跳ね、16日には2000件近くに達しています。そのため、次週7月29日付ソングスチャートでは「HandClap」は動画再生指標でも、そして総合でも最高位を更新するかもしれません。また今週になって「HandClap」は、Twitterおよびダウンロード指標が100位未満ながら初のランクインを果たしており、口コミの広がりを予感させると共に、動画が見られない場所でもダウンロードした楽曲を流して運動しようという動きも出始めているように思います。

 

 

それにしても、日本と韓国が政治の面で近年最悪と言える状況の中で、好いものは素直に取り入れる人が多いことに安堵した次第。素直に取り入れる姿勢は、BTSのチャートアクションを分析した際にも感じていたものです。

しかし韓国に対し平然と叩く者は少なくなく、それを本来なだめるはずの政府が率先しているだろうことには強い疑問を覚えます。また、今週発生した事件を使って韓国へのヘイトをばらまく行為が見られましたが、これも看過出来ません。

アクセス増のためにヘイトの記載を厭わないという姿勢は自己都合甚だしく、それに乗っかり溜飲を下げたいだけの人も同じだと思います。そういう方の改心を望む一方で、日々生まれるヘイトと十分な対応を施さない政治に絶望視することも多々あります。

 

今日のエントリーの最後に、今週水曜の『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)でライブを披露していたMoment Joonさんの言葉に刺激を受けたので紹介します。

個人的にはこういう尖った言葉での主張をどうなのかと思うところがこれまであったのですが、ヒップホップとして極めて格好いいこと、その主張が鋭く且つ的を射ていること、日本の中からもっと声が上がらないことに違和感を覚えたこと…これらの理由から紹介に至りました。彼の言葉が少しでも多くの方に届くことを願うばかりです。

タイムフリーは7月24日水曜深夜29時(25日木曜5時)までですので、是非チェックしてください。

ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標で8位まで上昇したイエス「Roundabout」、流行の理由はアプリからだった

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する8つの指標のうち、動画再生においては時折、”なぜ今この曲が上昇中?”と疑問に思う動きがあります。今週動画再生指標で自己最高となる8位を記録したこの曲については、以前から疑問を抱き続けていました。

・イエス「Roundabout」(1971)

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動画再生指標が牽引し、総合チャートでも100位未満ながらランクインを続けているこの曲、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 1st Season』(2012-2013 TOKYO MXほか)のエンディングテーマに用いられたことで人気が再燃していたそう。

とはいえ続編では用いられていないようで、ならばなぜ今人気なのかを調べてみると、『ジョジョの奇妙な冒険 1st Season』でイエス「Roundabout」を使って表現されていた”To Be Continued (次回へ続く)”という演出手法をネタとして用いる動きが広まっているため。このような解説もあります。

YouTubeにて”To Be Continued Roundabout”で検索すると、イエス公式アカウントによるリマスターバージョン(上記に貼付)よりも再生回数を伸ばしているのがこちらのネタ集。

現段階で1500万回近く再生され、この動画には音楽としてイエス「Roundabout」がライブバージョンですがクレジットされています。そのためイエスの公式アカウント発信ではないものの、ユーザー生成コンテンツ(UGC)として日本で再生されればビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標にカウントされるというわけです(ただ、先述したようにライブバージョンでのクレジットのため、オリジナル版には未加算となる可能性は否定出来ません)。UGC、最近ではaiko「ストロー」の”踊ってみた”動画も該当します。

しかしながら、上記ネタ集の投稿は今から2年近く前。またイエス「Roundabout」は昨年以前も動画再生指標で300位以内に登場しています。それが連続してチャートインするようになったのは今年4月15日付以降であり、日本では今になって「Roundabout」が広まったということになるのです。

 

調べてみると、その広まりにはアプリの存在があることが解りました。To Be Continuedネタを簡単に作成出来るアプリがここ最近人気となっているそう。

To Be Continued Maker

To Be Continued Maker

  • Maruf Nebil Ogunc
  • エンターテインメント
  • 無料

作成された動画がYouTubeで投稿される際にイエス「Roundabout」がクレジットされるかは不明ですが、どうやって動画を作るかの参考として先に紹介したようなネタ集や元の楽曲をチェックした方が多いだろうことが想像出来、それがここ最近の動画再生指標の上昇につながった…というのが今回の自分なりの結論です。下記まとめサイトではアプリの説明がありますが、まとめサイトのアップ日が先週の今日であり、アプリの人気が最近高まっていることが解ります。

(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

 

エス「Roundabout」のチャート上昇において、当初『ジョジョの奇妙な冒険 1st Season』がYouTubeに違法アップデートされながら人気となり、その動画に楽曲がクレジットされたがためにユーザー生成コンテンツ(UGC)のカウント対象となった…今年はじめに見られた『ガチンコ』とダイナソーJr.「Over Your Shoulder」の関係性が今回も?と思っていました。

今回はこの種の違法アップデートではありませんでしたが、一方でTo Be Continued Makerがイエス「Roundabout」の著作権を侵害してはいないだろうかという疑問も生じています。ゆえにグレーゾーンだなあと思ってしまうこともあるのですが、しかしながらダイナソーJr.もイエスも、ネット上の流行が楽曲のヒットにつながっているのは間違いありません。