イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

RABラジオの良質洋楽番組がこの秋の改編で時間半減という事態に

ラジオ局の改編情報は時に、改編時期(10月1日、もしくは10月に入ってからの最初の月曜)を過ぎても更新されないことが多いのが実情です。

さて、そんな中で地元青森県の県域放送局、RABラジオの改編は一足早く先月下旬に発表されていました。そして正直、強いショックを受けました。

f:id:face_urbansoul:20171003202344p:image

なおタイムテーブルが”9月から”と記載されているのは、上記タイムテーブルを本来10月から発表するはずが、『オールナイトニッポンMUSIC10』(月-木曜22時)から斉藤由貴さんが(一時的に?)抜けたため彼女の名前を消さざるを得なかったゆえの前倒し、でしょう。斉藤さんの休業については、周囲の圧力が強過ぎでは?と個人的には思うのですがここではこれ以上は言及しないでおきます。

 

で、驚いたのは火-金曜、いわゆるナイターオフシーズンに放送される21時台の局アナウンサー枠。ここ数年は全曜日1時間(もしくは21時50分までの50分)枠だったのが、吉崎ちひろ猪俣南両アナウンサーの起用により4曜日6枠へ。その結果、”RABラジオ唯一の洋楽専門番組”と謳う、上野由加里アナウンサー担当の『Yuka-Rhythm』が30分に時間が半減となってしまったのです。これまでこの番組を高く評価した身には、本当に残念に思います。

 

これまで21時台を担当していた各アナウンサーは若手グループと言うべき2005年~2013年入社組。そこに2014年入社の吉崎アナウンサー、2015年入社の猪俣アナウンサーが加わった形ですが、とはいえ全ての若手が揃っているわけではなく、2013年入社の上野比呂企アナウンサーは含まれていません(上野比呂企アナウンサーは土曜18時05分からの『RAB SPORTS WAVE』を担当しており、録音番組を持っているとは言えるのですが)。全ての若手アナウンサーが21時台に揃っていないことに加え、火・水曜が30分×2番組、木・金曜が1時間番組一本というのは横軸(曜日毎)のゾーニングがきちんとしておらず、この点においても中途半端さが拭えません。その上、これまで米ビルボードソングスチャートを基準に独自のチャートを作成、ゴシップ記事を紹介したりリクエストにも応える『Yuka-Rhythm』が、ただでさえ情報量や音楽愛に溢れ、1時間ではとても足りないと思っていたのに、それを時間半減させることに強い疑問を抱いてしまうのです。

ならばこういうのはどうでしょう。『Yuka-Rhythm』がチャート紹介番組であるという特性を踏まえ、ナイターオフではなく通年でOA出来るよう別枠を設け、同じく若手ながら21時台ではベテランといえる菅原厚アナウンサー共々21時枠から卒業し別時間に移動させる案を提案します。そうすれば若手4名で21時台を各1時間ずつ担当することになり横軸のゾーニングも徹底、万事解決だと思うのですが。

 

曜日という横軸におけるゾーニングについては後日あらためて書こうと思っていますが、それを無視した編成等によって、結果的に良質な番組が窮地に陥ると言っても過言ではない状況は非常に残念です。しかも今月からワイドFMがはじまり、RABラジオをより良い音で聴くことが出来る機会が生まれたゆえ尚の事。今回の短縮をひどく残念に思ったのは自分だけではないでしょう。

 

 

そんな不安と不満を抱きながら、先週放送の新シーズンの初回を聴いたのですが。

厳密にはトップ5については”1番OA”付。非常に巧くまとめられており、県のラジオ局制作の音楽番組では一二を争う程の高レベルだと思います。ここまで充実しレベルが高いとなると、やはり以前のシーズン同様の尺がほしかったよなあと思わざるを得ませんね。

日米ゴスペル音楽界の朗報に触れる

まずは一安心です。

自分が以前所属していたゴスペルクワイアが年一で行っている大きなライブに、小坂忠さんがゲスト出演されたことがありました。そのあたりについては以前記載していますのでよかったら。

(なお、上記で触れた『ONEBODY』は、残念ながら既に終了しています。)

小坂さんが日本におけるゴスペルの第一人者と言っても過言ではない存在であり(また、日本において聖俗を行き来する歌手の先駆けともいえるかも)、一度じっくりと小坂さんの音に触れ、心を洗われたいと思っていたものです。今回退院の報に嬉しくなり、いつか元気になった姿を観に行きたいと考えています。

小坂忠さんについては、今年ビルボード・ジャパンが特集記事を組んでいますのでそちらも是非。

上記記事でも紹介されている昨年のカバーアルバムの試聴動画。「Amazing Grace」の解釈の独特さ、そして味わい深さたるや。

 

 

一方、海外では新たなゴスペルの萌芽が。あのラッパーのスヌープ・ドッグがゴスペルに進出したのです。

クリーン”じゃない”ほうのバージョンも存在…というのはスヌープらしいかもしれませんし、客演するB・スレイドの影響もあるでしょう。スヌープ・ドッグのゴスペル制作が本当だったと知り驚きましたが、何ら違和感がないというのが実感です。B・スレイドについても含めて、下記bmrの記事を是非参照してください。

スヌープ・ドッグは昨年、ギャングスタラップ回帰とされるアルバム『Coolaid』をリリースしていましたが、2013年以降のインタビューを元に構築された記事(スヌープ・ドッグがどのように過去を乗り越え、皆に慕われる人になったか。2PacやEazy-Eとの関係から考察 | Playatuner(1月8日付))を読むと、今回のゴスペル曲発表の真意も伝わってきますし、一方ではトラップやGファンクといったジャンル違いの新曲も発表しており(いずれも上記bmrの記事にて聴取可能)、彼の中には様々な考えがあり、それを多様なジャンルで表現しようとしているのかもしれません。

 

 

ベテランが復活、そして開眼...ゴスペルが今、そしてこれから熱くなるのかもしれません。

クミコ with 風街レビュー「恋に落ちる」の美しさと関連曲

ああなぜこの曲に気付き忘れたままだったのか...と果てしなく後悔するほどに、この一週間で大好きな一曲に。

・クミコ with 風街レビュー「恋に落ちる」

先月リリースされた、クミコ with 風街レビュー『デラシネ deracine』の収録曲。アルバムについては下記に。

松本隆作詞、冨田恵一編曲という布陣で、提供曲(作曲のみ)をクミコさんが歌い上げるという形のユニットが、クミコ with 風街レビュー。その中でもこの曲は、コーラスとしても参加する永積崇さん(ハナレグミ)が紡ぐメロディの美しき寄り添い方、いかにも冨田恵一氏らしい世界観に溢れたアレンジ、松本隆氏による詞の力、そしてシャンソン歌手のクミコさんならではの、ドラマティックになりすぎないのに受け手に詞の世界を真っ直ぐに提示し、行間を読ませようとする歌唱...見事に相俟った作品といえます。クミコさんの最後の微笑みが特に素晴らしすぎます。

実はこの曲、昨年には既に先行シングルとして発表されていたんですよね。

昨年のインタビュー記事。ダブルAサイドシングルとして、秦基博さん作詞による「さみしいときは恋歌を歌って」と共に発表されており、「さみしいときは…」がテレビ番組で披露されるのは観たものの(秦さん、そして松本隆氏も登場する場面も)、自分の記憶の範囲内では「恋に落ちる」はなかった気がします。ただ、今の自分にとっては正直、「恋に落ちる」のほうがより素晴らしいなと思うゆえ、こちらのほうも披露してほしかったなと強く思うのです。

 

 

この「恋に落ちる」を聴いて想起した曲を下記に。もしこれらの曲が好きならば、「恋に落ちる」は聴いてみて損はないと断言します。

 

サザンオールスターズTSUNAMI」(2000)

公式動画がないのが非常に残念なのですが。「恋に落ちる」の歌詞に、そのことの例えとして”墜落”、”きりもみ”という言葉が出てきます。いわば亡くなる可能性を持ち合わせた言葉たちですがそれを敢えて用いるのは、松本隆氏の手腕かもしれませんね。サザンオールスターズTSUNAMI」における登場人物の心の動きを”津波”と例えたのもまさにこの方式かと。

 

畠山美由紀「愛にメロディ」(2005)

数少ないとみられる永積崇さん提供曲のひとつ(作詞はクラムボン原田郁子さん)。「恋に落ちる」に近い、ドラマティックさを押さえながら恋の喜びが溢れ出ん様子を表現した、メロディラインの美しさたるや。

 

畠山美由紀「罌粟」(2003)

この曲については以前、畠山美由紀を知るための5曲(2015年5月26日付)でも触れています。松本隆作詞、冨田恵一編曲という布陣は「恋に落ちる」と同様。そして1番の冒頭に”毒薬”、2番でははじまってすぐに”溺れてもいいよ”という、こちらも命にかかわる言葉が出て来るのもまた松本隆流ラブソングの妙。

 

 

これらは自分の中でエバーグリーンな輝きを放っています。クミコ with 風街レビュー「恋に落ちる」もこの先、自分の中で大切な曲になる予感がします。

米ダンスクラブソングスチャート今年唯一の記録保持曲が日本でも大記録達成中

主に週後半、アダルトR&Bソングスチャートやゴスペルソングスチャートなど、米ビルボードチャートの中からこれはと思ったものを紹介していますが、ダンスクラブソングスチャートもその中のひとつ。

このチャートは実際に全米のクラブでかかった曲をベースにしたものであり、ゆえに流行り廃りが激しいのです。とりわけ、曲の人気がピークに達するやいなや”その曲はもう古い”として翌週には急にかからなくなり前週1位から10位近くにまで後退という例も少なくありません。リアーナ「Desperado」が首位に上り詰めた最新10月14日付のダンスクラブソングスチャートにおいて前週1位だったハイファイ・ショーン feat. クリスタル・ウォーターズ「Testify!」が8位に急降下したのはまさにクラブならではの特性といえます。

 

で、流行り廃りが激しい同チャートにおいて、2017年度(2016年12月3日付以降)、唯一2週連続で1位を獲得した曲があるのです。それはなんと。

今年米ビルボードソングスチャートで12週もの1位を獲得したエド・シーラン「Shape Of You」。まさかと言ったら失礼ですが、ダンスクラブソングスチャートまでに入り込むとは驚きです。3月18日付25日付で1位となり、翌4月1日付では首位の座を明け渡すものの4位に留まったというのですから、如何にこの曲がジャンルを越えて浸透したかが分かろうというものですね。

 

しかもこの曲、日本でも快挙達成中。

これはビルボード・ジャパンの先週10月2日付の洋楽チャート。最新10月9日付同チャートも制しており、これで20週目の首位に到達したというのですから驚きです。同日付の総合ソングスチャートでも「Shape Of You」は6位にランクインし、日本でも猛威を振るい続けています。最新総合ソングスチャートの解説は下記に。

ストリーミングの好調、ミュージックビデオでの日本人元力士の出演等、この曲の人気には様々な要因がありそうですが、ここまで勢いが続くのは驚きです。しかも10月下旬から翌月頭にかけては来日公演もあるということで、チャート上では11月中旬にかけてさらに勢いが増すものと思われます。

 

もしかしたらこの曲、世界中の総合チャートはもちろん、米ダンスクラブソングスチャートや日本の総合ソングスチャートでも大記録を打ち立てるかもしれませんね。

追悼 トム・ペティ

自分が洋楽を深く聴くようになったのは1993~94年頃、近くの美容院で流れていた有線での米ビルボードソングスチャート上位20曲プラスアルファの2時間枠にハマったのがきっかけ。1994年、大学生になりバイトを始め、貯めたお金の全てを当時弘前市ビブレ(現さくら野)3階のCD店でトップ40全曲の音源購入に充てていました。当時はR&Bもハウスも、ロックもカントリーも関係なく。そのうち全曲の音源購入を止め、R&B中心の音楽生活にシフトしていくのですがそれでも、今に至るまでふとサビが頭をよぎる曲のひとつがトム・ペティ「You Don't Know How It Feels」だったのです。アルバム『Wildflowers』(1994)からの先行シングルで全米最高13位を記録したナンバー。

ロックをそんなに得意としない自分なので、フォーキーな音に惹かれたのかそれともメロディラインに心動かされたか...ともかくこの曲が妙に心に残ったのはサビでの、突き放したかのようなそれとも自虐するかのような、いろんな受け取り方が出来る表情を魅せていたからかもしれません。恥ずかしながらミュージックビデオは今回初見だったのですが、この長回しの演出の妙!そしてこのトムの色気...今の自分の年齢と大差ないのにこんなに格好いいのか!と。

 

恥ずかしながらこの曲以外きちんと聴かないままで、この訃報に接してしまいました。トムのご冥福を祈ると共に、彼が遺した音楽を深く聴き込むことが彼への弔いではないかと考えています。

彼の生涯ラストとなったライブでの最後の2曲...まさに彼が人前で最後に歌ったときの映像が上記リンク先に残されていますのでよかったら。

米ソングスチャート、カーディ・Bが首位キープし上位は凪のまま

ビルボードソングスチャートを定点観測。

現地時間の10月2日月曜に発表された、10月14日付最新チャート。先週初の頂点に上り詰めたカーディ・B「Bodak Yellow (Money Moves)」が首位をキープ。上位6曲が凪の状態の中、デミ・ロヴァート「Sorry Not Sorry」が10位にランクインしました。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

 

2週目の首位を獲得した「Bodak Yellow (Money Moves)」はストリーミングが前週比3%上昇し同指標で首位の座に返り咲いたほか、前週iTunes Storeでの安価販売およびコダック・ブラックを招聘した新たなリミックスの投入を行ったことの反動でデジタルダウンロードが急激に落ち込むのでは?という予想を覆し、同指標では前週比わずか1%のダウンにとどめたことも首位キープの要因。ラジオエアプレイは堅調な伸びを示し前週比6%上昇。曲にはもう少し伸びしろがあると言えるでしょう。

先週2位に初登場を果たしたポスト・マローン feat. 21サヴェージ「Rockstar」も思ったより落ち込まなかった印象。デジタルダウンロードはさすがに前週比46%の大幅減となりましたがストリーミングは同3%ダウンと小幅にとどめ、他方ラジオエアプレイでは同240%大幅アップを果たしました。一方、デジタルダウンロードが伸びたのがテイラー・スウィフト「Look What You Made Me Do」。前週比12%上昇したその要因はiTunes Storeでの安価販売が功を奏したため。いや、逆に安価販売を仕掛けても12%しか伸びなかったとも言えるかもしれず、またストリーミングは同19%ダウンと二桁台ものダウンとなっていることから次週トップ3を死守出来るかは微妙なところです。

 

ポルトガル・ザ・マン「Feel It Still」が徐々に勢いを増しています。先週の10位から3ランクアップし7位につけたこの曲はラジオエアプレイで前週比12%上昇し1億回目前に迫っています。この曲、イマジン・ドラゴンズ「Believer」(今週8位)を総合チャートで上回ったのみならず、ロックソングスチャートでも「Believer」を破って首位に到達。もし「Feel It Still」が上回ってなかったならば、「Believer」はロックソングスチャートで30週目の首位となり、トゥエンティ・ワン・パイロッツ「Heathens」が昨年から今年にかけて記録した同チャートでの首位獲得週数記録に並ぶところだったのですが...しかしそのイマジン・ドラゴンズ、次のシングル「Thunder」が総合チャートで17位に上昇しグループとしての勢いは止まっていません。この伸び、マイクロソフト社のCMソングに同曲が起用されているため。

実はこの「Thunder」が今週デジタルダウンロード指標での首位を獲得(売り上げは65000)。彼らにとって同指標で初の1位になっただけではなく、ロック系での同指標首位はロード「Royals」以来およそ4年ぶりとのこと。ロック”バンド”との括りになると、トレイン「Hey, Soul Sister」以来7年半ぶりという快挙。ロック系がデジタル部門に強くない中でイマジン・ドラゴンズの存在は実に大きいですね(ちなみに「Believer」および「Radioactive」(2013)は同指標最高2位)。なお、最新”ではない”曲がデジタルダウンロードでトップに立った例では、プリンス&ザ・レヴォルーション「Purple Rain」が昨年、プリンスの死去に伴い昨年春に2週1位を獲得したということを書き添えておきます(ビルボードの記事でも分けて記載されています)。

 

10位にランクインしたのはデミ・ロヴァート「Sorry Not Sorry」。

デジタルダウンロード6位、ストリーミング12位、ラジオエアプレイ20位といずれの指標もバランスがよいのがこの曲。デミにとってはジョー・ジョナスとの「This Is Me」(2008 最高9位)、「Skyscraper」(2011 10位)、「Heart Attack」(2013 10位)に次ぐ4曲目のトップ10入り。この曲をオープニングに据えたオリジナルアルバム『Tell Me You Love Me』が先月末にリリースされ次週のアルバムチャートにランクインすることから、この曲は次週、デジタルダウンロードは下がることが予想される(アルバム全体を購入した場合加算対象外)一方、ラジオエアプレイは伸びることが予想され、デミにとってソングスチャートでのキャリア最高位を更新する可能性もあります。

 

なおここまで書いていませんでしたが、ラジオエアプレイ指標での首位は今週デミ・ロヴァートと入れ替わりトップ10落ちしたチャーリー・プース「Attention」(総合11位)。同指標で4週目の首位を獲得したもののその数値は1億1600万回。自分がソングスチャート速報を書きはじめて以降、1億2000万回割れというのはあまり見たことがありません。デジタルダウンロードもトップが10万割れであることを踏まえればちょっと全体的に数字が低めといえるかもしれず、この凪の状態にちょっとした嵐が巻き起こればすぐにでもチャートは大きく動くかもしれません。個人的にはポルトガル・ザ・マンがかき回してくれることを期待したいのですが、ストリーミングがあまりにも弱く同指標35位、前週比1%しか伸びていないのが気掛かり。ロック系のデジタル部門、とりわけストリーミングの弱さが同ジャンル全体の課題と言えるでしょう。

安室奈美恵ベストアルバム『Finally』に宿る”不完全燃焼”感

安室奈美恵さんの引退は正直残念です。このブログでも彼女の楽曲を幾度となく取り上げ、私的年間邦楽ベストにも選出したことがあるので尚の事です。

しかしながら今回のベストアルバム、厳しい物言いを承知で書くならば、不完全燃焼感が否めないのです。というか、このアルバムからキャリア総括するのは難しいと考えています。

11月8日にリリースするベストアルバム「Finally」の収録内容も明らかに。1992年発売のデビュー曲「ミスターU.S.A.」から最新シングル曲「Just You and I」までの45曲に加え、パッケージ初収録となる「Christmas Wish」、新曲全6曲を含む全52曲入りとなる予定だ。なお「ミスターU.S.A.」から「TSUKI」までの39曲は新録音源となる。

安室奈美恵が5大ドーム&アジア公演開催、セットリストはファン投票で - 音楽ナタリー(10月2日付)

自分が考えるベストアルバムの定義は以前記載しました。

シングル集に近いようで、実は多数の収録見送りがあるベストアルバム。そして「TSUKI」までの楽曲は新録されるとのこと。以前バラードセレクションアルバム『Ballada』(2014)でも同様の措置がなされた曲がありましたが、小室哲哉氏プロデュース時代の大ヒット曲において小室氏のコーラスを省いた新録バージョンは、すっきりしたと言えますが同時にあの時代らしさが消えたことに複雑な心境を抱いたものです。

ちなみに今回ベストアルバム収録を見送られたシングル曲は下記の通り。

「恋のキュート・ビート」(1992)

「DANCING JUNK」(1993)

「Stop the music」(1995)

Dreaming I was dreaming」(1997)

「toi et moi」(1999)

「SOMETHING 'BOUT THE KISS」(1999)

LOVE 2000」(2000)

「PLEASE SMILE AGAIN」(2000)

「think of me」「no more tears」(2001 ダブルAサイド)

「Wishing On The Same Star」(2002)

「shine more」(2003)

「Put 'Em Up」(2003)

「Come」(2003 「SO CRAZY」とのダブルAサイド)

「ALARM」(2004)

「ALL FOR YOU」(2004)

「the SPEED STAR」(2004 「GIRL TALK」とのダブルAサイド)

「White Light」「Violet Sauce」(2005 ダブルAサイド)

「人魚」(2006 「CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK」とのダブルAサイド)

「WILD」(2009 「Dr.」とのダブルAサイド)

「NAKED」(2011 「Fight Together」「Tempest」とのトリプルAサイド)

「Go Round」「YEAH-OH」(2012 ダブルAサイド)

「Beautiful」(2013 「Big Boys Cry」とのダブルAサイド)

「BRIGHTER DAY」(2014)

他方、配信限定収録曲においては「Damage」(2012)、「Comtrail」(2013)およびセブン-イレブン限定プレゼントだった「Christmas Wish」(2016)が今回収録されたものの、「Neonlight Lipstick」「Ballerina」(2013 いずれも「TSUKI」カップリングとして収録)は収録を見送られています。配信限定分で収録が見送られる2曲を含めると、実に28曲(CDにして2枚分)もの漏れが生じるのです。

さすがにシングル曲全てを網羅するのは難しかったかもしれませんし、シングルコレクションとはっきり銘打っているわけではないものの、本日公式サイトで発表されたベストアルバム詳細において、『1992年発売のデビュー曲「ミスターU.S.A.」から、2017年発売の最新シングル曲「Just You and I」までの全45曲』とあり、”全45曲”という表現があたかもシングル全集と思わせかねないのでは?という疑念を抱いています。そう解釈するほうが間違っていると言われればそれまでですが。それゆえ、音楽ナタリーの記事において”全”の一文字を抜いているところに良心のようなものを感じた次第。

というか、収録漏れの2枚組分にアルバムからのリードトラック等を含めてCD3~4枚分のベストアルバム第二弾が出たら間違いなく買います!と断言したいところ。というのもTKプロデュース期からR&B期へ、そして現代に至る先鋭性へのターニングポイントとなった(と個人的に考えている)下記の曲が『Finally』には収録されていないゆえ。これら楽曲が見送られたことで、彼女のキャリア総括がこのベストアルバムだけでは十分に行えないいう意味において勿体無い!と強く思う自分がいます。

後者においては音楽ジャーナリストの高橋芳朗氏も『現在の安室奈美恵さんのスタイルの布石』のひとつだとして、先月の『ジェーン・スー 生活は踊る』(TBSラジオ 月-金曜11時)の中で紹介しています。

 

ベストアルバムリリースのタイミングで、担当ラジオ番組で彼女の特集をやりたいと考えています。ひねくれているかもしれませんが、ベストアルバム未収録曲のみで特集を組めたなら、と。今回のベストアルバム収録見送りシングル群、そして高いレベルで放たれ続けたオリジナルアルバムにも光を当てることが出来たなら...と画策中です。