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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン2017年上半期ソングスチャートを分析~「恋」の強さ、AKB<坂道、シングルCDセールス比重の低下?

一昨日、ビルボードジャパンの今年上半期のソングスチャートが発表されました。

星野源さんはトップアーティスト部門も制覇しています。下記リンク先にはトップアーティスト、ソングスチャート(HOT 100)、アルバムチャート(HOT ALBUMS)およびアニメソングスチャート(HOT ANIMATION)、以上4つのチャートのトップ10が掲載されています。

 

ソングスチャートに話を戻すと、トップ10は以下の順。

【2017年上半期JAPAN HOT100】

1位:「恋」星野源

2位:「二人セゾン」欅坂46

3位:「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」ピコ太郎

4位:「不協和音」欅坂46

5位:「インフルエンサー乃木坂46

6位:「前前前世RADWIMPS

7位:「サイレントマジョリティー」欅坂46

8位:「TOKYO GIRL」Perfume

9位:「シュートサイン」AKB48

10位:「ダーティ・ワーク」オースティン・マホーン

「恋」は『シングル以外のダウンロード、ストリーミング、ラジオ、Twitter、ルックアップ、動画再生の6指標で首位となっており、2位以下に大差をつけた』(上記双方の記事より)とあるのですが、どのくらい大差なのか、ポイントが掲載されていなかったため調べてみました。

(なお、上半期の計測期間は2016年11月28日~2017年5月28日とあるのですがちょっと分かりにくいかもしれません。11月28日から12月4日までの計測期間は12月12日付チャートとして反映されることから、計測期間を言い換えれば、上半期は2016年12月12日付~2017年6月5日付、となります。各週の総合ポイント数(1~50位に掲載)を集計したものを下記に。なお51位以下は総合ポイント数が未表示のため、50位の数値を参考として記載し、また総合ポイント数の合計には含めていません。 またチャートインしながら100位圏外のものも合算されていません。)

ビルボードジャパン上半期総合ポイント表 

日付 計測最終日 1位:恋 2位:二人 3位:PPAP 4位:不協和音 5位:インフル 9位:シュート
2016/12/12 2016/12/4 28904 37014 8037      
2016/12/19 2016/12/11 27933 7907 7631      
2016/12/26 2016/12/18 28107 5323 7018      
2017/1/2 2016/12/25 35534 4000 6681      
2017/1/9 2017/1/1 34644 4134 7545      
2017/1/16 2017/1/8 21396 4165 6741      
2017/1/23 2017/1/15 18108 3710 4655      
2017/1/30 2017/1/22 13787 4530 4525      
2017/2/6 2017/1/29 13202 3292 4437      
2017/2/13 2017/2/5 11590 2581 2693     100位圏外
2017/2/20 2017/2/12 11367 2009 2874      
2017/2/27 2017/2/19 9049 1969 2278     100位圏外
2017/3/6 2017/2/26 9047 2162 2021   100位圏外 100位圏外
2017/3/13 2017/3/5 7301 1524 1676   2274 70位(1300未満)
2017/3/20 2017/3/12 6432 1498 1920 100位圏外 2042 100位圏外
2017/3/27 2017/3/19 6559 1315 1821 1579 5291 45819
2017/4/3 2017/3/26 6248 1442 1933 2616 39010 3744
2017/4/10 2017/4/2 5687 1623 1564 2948 9401 1872
2017/4/17 2017/4/9 4594 1792 1389 40595 4842 1337
2017/4/24 2017/4/16 3761 1385 1110 12349 3376 56位(876未満)
2017/5/1 2017/4/23 3910 1254 1018 6146 3006 90位(898未満)
2017/5/8 2017/4/30 3864 52位(1105未満) 67位(1105未満) 4948 2458 100位圏外
2017/5/15 2017/5/7 4828 1229 1176 3931 3565 100位圏外
2017/5/22 2017/5/14 3555 66位(1193未満) 69位(1193未満) 3080 1760 100位圏外
2017/5/29 2017/5/21 3287 66位(1209未満) 74位(1209未満) 2319 1802 100位圏外
2017/6/5 2017/5/28 3125 73位(1142未満) 81位(1142未満) 2012 1915 100位圏外
上半期合計   325819

95858

80743 82523 80742 52772

2位の「二人セゾン」、3位の「PPAP」が上半期全週にチャートインしていますが51位以下の週があるため、上半期の総合ポイント数はもう少し上乗せされます。これは9位のAKB48「シュートサイン」におけるCDリリース前等の100位圏外分も同様です。とはいえ、仮に「二人セゾン」の51位以下のポイントを1週あたり1000としても合計は10万弱であり、「恋」の3分の1未満となるわけですから、如何に「恋」が強いかはこの表を見ても明らかでしょう。

 

また、AKBグループと坂道グループにおける差もはっきりしてきたように思います。いずれも今年リリースしたシングルがトップ10入りしていますが、総合ポイント数の推移は3点において驚くほど異なります。それは【CDセールス加算前の動向】【CDセールス週の翌週における前週比】【CDセールス週から何週で100位圏外に達するか】。特に2つ目においては、翌週の総合ポイント数が「不協和音」は前週比30.4%、「インフルエンサー」が24.1%に対し「シュートサイン」は8.2%と大きく異なります。セールスが抜きん出ていても他指標が伸びない限り年間チャート等で上位に至れないという何よりの証拠であり。上記記事での分析を、今回の数値がきちんと物語っています。

 

 

さて、昨年の年間チャートの首位はそのAKB48「翼はいらない」だったのですが、その件について”CDセールスの比重が高過ぎるのでは?”と苦言を呈させていただきました。

上記エントリーの最後に、ビルボードジャパンのポリシー変更についても掲載しました。昨年末のポリシー変更はストリーミングデータの拡充等であり、ソングスチャートにおけるシングルCDセールスの比重には一切触れられていませんでした。ですが今回、毎週のチャートを調べるうちに、比重変更があったのではと考えるように。それは、昨年度末にリリースされたAKB48「ハイテンション」と、今年度上半期9位の「シュートサイン」を比べれば一目瞭然。「ハイテンション」は昨年11月28日付チャートにおいて、151236という驚異的な総合ポイント数を叩き出しているのです。仮に今年度上半期のチャートに照らし合わせるならば2位となるほどの大ヒットといえます。しかし次のシングル「シュートサイン」のCDリリース週の総合ポイント数は45819と大幅に下がっているのです。しかも、2作品のセールスはそこまで大きな差が見られません。ビルボードジャパンが公表しているシングルCD枚数と比較してみると。

・「ハイテンション」

   初週セールス1438469枚総合ポイント数151236

・「シュートサイン」

   初週セールス1292597枚総合ポイント数45819

CDセールスは前作比89.9%に対し総合ポイント数の前作比は30.3%。これは比重においてもポリシーが変更されたと考えるのが自然ではないかと。

既にアナウンスされていて自分が見逃しただけなのかもしれませんが、チャートを構成する指標の比重はアメリカでもその都度、各指標の社会的影響度等を勘案して変更していますので、ビルボードジャパンでもきちんと発表していただきたいと切に願います。

ギャラクシー賞受賞作品を”後追い”出来るようにしてほしい

俳優、小出恵介さんの問題によるメディアの”差し替え”が伝えられる度、差し替えの是非はともかく、今回の出来事の大きさが理解出来ます。

そんな中、NHKが明日からの新ドラマ、差し替え後の作品を発表しました。

NHKは、小出主演で10日スタート予定の土曜ドラマ「神様からひと言 ~なにわ お客様相談室物語~」(全6回)の放送中止を決定。(中略) 10日の放送分はBSプレミアムで1月10日から放送された「幕末グルメ ブシメシ!」に変更する。

小出出演ドラマで各局対応 NHKは放送中止 日テレは降板発表 (スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース(6月8日付)より

今朝の段階では、NHKの番組表で『幕末グルメ ブシメシ!』が全6回と記載されていたため、6月17日以降もこのドラマが放送されるものと思われます。

 

 

出来事についての私見を述べることは控えるとして、差し替えについて一言申し上げるならば、以前の自分のツイートを踏まえて『トットてれび』にしていただきたかった、と思うのです。この作品に主演した満島ひかりさんは、第54回ギャラクシー賞で個人賞を受賞。ギャラクシー賞は6月1日に発表され、特にDJパーソナリティ賞を受賞した星野源さんのコメントが報じられたり、マイベストTV賞を『逃げるは恥だが役に立つ』が受賞する等注目が集まり、翌日のメディアも賑わせました。だからこそ、今あらためてそれら作品を再放送していただきたい...という上での『トットてれび』推し、だったのです。

第54回ギャラクシー賞については以前ここで取り上げましたのでご確認ください。

先程のツイートは、受賞作品を”配信で観る”ことを念頭に置いたものですが、授賞式報道の直後は受賞作品への興味が増すというもの。ましてギャラクシー賞は”質の高さ”に対する評価なわけですから、内容は保証されているわけです。ならば見聞き出来ないのは機会損失を生むのではないかと。そういえばRHYMESTER宇多丸さんが、同じくギャラクシー賞で大賞に選ばれた作品が気になるというようなことを言っていたのも印象的で、ならばやはりギャラクシー賞授賞式前後、出来ればノミネーション発表のタイミングで後追い出来るサービスがあれば嬉しい、と考えた次第。宇多丸さんがギャラクシー賞について語った模様は下記に、文字起こしのリンク先を紹介させていただきます。

 

実はこのタイミングで、星野源さんが出演した『逃げるは恥だが役に立つ』が一挙に放送されます。

地上波ではなくCSのTBSチャンネル1だから出来ることだと言われればそれまでですが、ギャラクシー賞が発表されて間もないタイミングでの放送は実に嬉しい限り。TBS側がギャラクシー賞を考慮して放送を決めたかは定かではありませんが、逆にギャラクシー賞側は先述した”機会損失”を起こさないようにすべく、受賞およびノミネートされた番組の再放送を、局側に積極的に呼びかけていいと思います。またはオンデマンド配信を行っているところには一時的にでも無料にしていただくよう説得するか、もしくは有料でもギャラクシー賞受賞作品一覧のページを用意するのでリンク貼付の許可をもらう...それだけでも間違いなく観る人は増えると思います。あくまで個人的な希望ですが、メディアには数(視聴率等)より質にこだわるようになってほしいと思いますし、質の良さを上手く訴求することで数の上昇にもつながる(それこそ昨年の”逃げ恥”の視聴率の上昇はまさにその典型だったと思います)、というのを実感できれば、今以上に良い作品がどんどん生まれていくと思います。ギャラクシー賞の後追い視聴のサポートは、そういう風潮を生み出す源流にもなるのではないでしょうか。是非とも考えていただきたいところです。

 

 

最後に。今回の差し替えはあくまでひとつの出来事が大本にあるのは承知しています。また、その出来事をあたかもネタに使うなとの指摘があるかもしれません。出来事自体、そして差し替えの是非については思うところがありますが今回その点について私見は述べません。この出来事がきっかけとなってギャラクシー賞受賞作品の後追いについて述べないといけない、という思いが生まれたのでエントリーさせていただきました。

ランニングと雨とキリンジと

ムラはありつつ、ランニングに勤しんでいます。こんなふうに聴きながら。

最近のBGMは『フリー・ソウルキリンジ』(2014)。間違いなく、先日の人間交差点の影響です。とはいえ現在のKIRINJIではなく兄弟時代のほうなのですが。

橋本徹氏のセレクトは、それまでのベスト盤に未収録だった「十四時過ぎのカゲロウ」を収めてくれただけでも素晴らしいのですが、曲順もまた魅力的で、「Drifter」~「エイリアンズ」~「スウィートソウル」なんて、ファンにとってはベタかもですがやはり抗えないんですよね。

そして、「朝焼けは雨のきざし」(→ミュージックビデオ)からこの曲への”雨”つながりもまた絶品。

自分は早朝ランニングを基本としているため、特に雨の日は「朝焼けは雨のきざし」に励まされつつ、「雨は毛布のように」に背中を押される...そう思ってランニングに勤しんでいます。さすがに「雨は毛布のように」の歌詞のような土砂降りではランニングを控えざるを得ませんが、軽い雨だとこの2曲を聴きながら動くのって本当に気持ちがいいものです。

 

 

 

それにしても、キリンジの歌詞はよくよく聴くとちょっとどころかとんでもなくエロティックだったりするので、ランニング中、時間的に不釣り合い過ぎて苦笑いすることもしばし。同じ雨つながりで『フリー・ソウルキリンジ』にも収録された「雨を見くびるな」もまさにそう(特に2番の歌詞)。CMソングになっている「エイリアンズ」で彼らを知った方がキリンジの裏の顔(?)に触れたならどう思うだろう...とハラハラしつつもニヤニヤしている自分がいます。

あのオースティン・マホーンによる大胆過ぎるリメイクが全米のクラブで大ヒット

こんな曲があったのか!と今頃になって知った自分を悔やみつつ掲載。

 

 

今年上半期、日本で最も流行った洋楽は?と問われるならば、おそらく最も多くの方がこの曲を挙げるはずですよね。

先週の段階で、ビルボードジャパンの洋楽チャートでは通算13週目の首位に。間違いなく今年を代表する1曲であり、ブルゾンちえみさんの選曲センスの好さたるや、と感心します。

 

さてオースティン・マホーンですが、「Dirty Work」は配信こそされど、この曲を含むオリジナルアルバムは未だリリースされていない状況。おそらくは海外でヒットに恵まれない限りアルバムが出ないままでは?と推測するのですが。

しかしここに来てクラブバンガーな曲が誕生しました。リリース自体は昨年末なのですが、ミックステープ『ForMe + You』(2016)からのシングルで、お祭り番長ことピットブルをフィーチャーした「Lady」が、先週6月10日付の米ビルボード、ダンスクラブソングスチャートを制したのです(尚、最新週では8位に後退)。

ダンスクラブソングスチャートとは、実際に全米のクラブでかかった曲を集計してはじき出されるものゆえ、いわばオースティン・マホーンは”今一番クラブでかかっている”称号を「Lady」で得た、ということに。総合ではないものの、日本のみならずアメリカでもチャート1位を掴んだことになります。

で、その「Lady」。

サビの部分、そしてトラック自体、個人的にも大好きな曲を大胆に引用しているんですよね。それがパリ出身のモジョ(Modjo)による「Lady (Hear Me Tonight)」(2000)。

どちらかといえばバンド的アプローチなモジョ(実際にメンバーの『ロマンとヤンはともにギター、ベース、キーボードをすべてこなし』た、とあります(『』内はBIOGRAPHY - MODJO | モジョ - UNIVERSAL MUSIC JAPANより))に対し、リメイク版はより強めにフィルターをかけるなどでクラブ映えする曲になっている印象。しかもピットブルを客演に迎えることでクラブDJからの信頼を得たのではないかと。ちなみに【大胆リメイク + ピットブル】といえば、「ランバダ」使いのこの曲もそうですよね。

勿論というべきか、「On The Floor」も米ビルボードダンスクラブソングスチャートを制覇しています。

 

オースティン・マホーン、先述したミックステープから今月1日、新たに「Better With You」のミュージックビデオも公開しました。

徐々に海外でも火がつきつつあるゆえ、いよいよオリジナルアルバムのリリースの機運は高まったと思うのですが...というか、激しく期待したいところ。ミックステープやEPからの注目曲は後のオリジナルアルバムに収録される傾向があるので、来るべきオリジナルアルバムには「Dirty Work」も「Lady」も収録...そう考えるとワクワクします。

米ソングスチャート、トップ10は凪過ぎる状態に

ビルボードソングスチャートを定点観測。

現地時間の6月5日月曜(日本時間の火曜早朝)に発表された、6月17日付最新チャート。先週首位に立ったルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」が4週目の首位に立ち、独走態勢に入っています。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

 

なんと1位から9位までが前週と変わらずという状況の中、新たにトップ10入りを果たしたのがポスト・マローン feat. クエヴォ「Congratulations」。

昨年12月にリリースしたデビューアルバム『Stoney』収録曲。ストリーミングで7位を記録した他、デジタルダウンロードにおいてはiTunes Storeでの69セント安価販売が功を奏し(同指標で前週比13%アップ)、ポスト・マローンにとって初のトップ10入りを果たしました。彼にとってこれまでの最高位は「White Iverson」の14位。この「White Iverson」は現段階でなんと3億回以上の再生回数を記録しており、彼への注目の高さが伺えます。

両曲とも収録された『Stoney』は昨年12月に米ビルボードアルバム・チャートで6位に初登場を果たし、最新では13位にランクイン。現在までずっと25位以内に留まっているというのですから彼の高い人気が解るというもの。ちなみにアルバムにはジャスティン・ビーバー参加曲「Deja Vu」もあり、ジャスティンの客演としての人気の高さもまた解りますね。

 

 

”凪”の上位9作品をみると、やはり強いのが「Despacito」。ラジオエアプレイ以外は伸び率が10%を切ったとはいえ未だ全指標が上昇中。しかもストリーミングは6960万という驚異的な数値を叩き出しました。これは同部門が設立された2013年3月以降、歴代2位となる記録であり、バウアー「Harlem Shake」の1億300万に次ぐもの。今年度でいえばケンドリック・ラマー「Hamble.」(今週総合4位)が5月6日付で叩き出した6740万を抜いて今年最高となっています。デジタルダウンロードでは購入分の80%がジャスティン・ビーバー参加バージョン(リミックス)となっており、まさにジャスティンさまさまですね。

また、今週6位のフューチャー「Mask Off」はストリーミングで前週比13%上昇し、デジタルダウンロードでも9%アップ。ここにきての上昇は、5月25日にケンドリック・ラマー参加のリミックスが発表されたゆえ。リミックス版の存在は、オリジナルバージョンに合算されるためにチャート上の立ち位置が安定するという効果をもたらしています。

 

先週触れたジュリア・マイケルズやイマジン・ドラゴンズがトップ10入りを逃す中、以前ブログで取り上げたチャイルディッシュ・ガンビーノ「Redbone」が5ランクアップし17位に上昇してきました。ミュージックビデオが公開されたならばもっと駆け上がるかもしれません。こういう直球ファンクがチャートに登場するのって、なんだかすごく面白いですね。

昭和歌謡感漂う、平成の”虫の歌”三撰

昨日の『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時 サイマル放送で全国どこからでも聴くことが出来ます)、お聴きくださった皆さん、ありがとうございます。6月4日が”ムシ”という語呂合わせから、音楽特集では単純明快、虫もしくは虫の名前が入った曲をお送りしました。

リクエストいただいたチェリッシュ「てんとう虫のサンバ」は昭和の結婚式の定番曲でしたが、昨日おかけした曲の中には”昭和の匂いのするJ-Pop”も少なくなかったので、備忘録の意味を込めて紹介します。

 

 

森山直太朗「よく虫が死んでいる」(2013)

ベストアルバム『大傑作撰』(2016)、初回限定盤ボーナスディスク”土盤”収録。Apple Musicのリンクは下記に。

世間が彼に対して最も強く抱いているであろう正統派な名曲を紡ぐ者としてのイメージ(「さくら(独唱)」「夏の終わり」等)とは一線を画するこういう歌詞世界、加えるならばベストアルバム未収録の「うんこ」のような曲もまた彼の真骨頂なのではと。面白いのは、「よく虫が死んでいる」がアリス「チャンピオン」+渡辺真知子かもめが翔んだ日」という昭和歌謡の大名曲群を彷彿とさせる点。それも、結構はっきりと意識出来るのになんだか許せてしまうのは、歌詞の脱力感の高さゆえ、でしょう。

ちなみに【よく虫が死んでいる Wiki】でYahoo!検索するとカメムシ、擬死、ケラ...の順に登場します(いずれもWikipediaページ)。曲の情報よりも、よく死骸を見かける虫が優先して登場するということなんですね。

 

・ベッド・イン「消えちゃうパープルバタフライ」(2015)

シングル「♂×♀×ポーカーゲーム/消えちゃうパープルバタフライ」収録。Apple Musicのリンクは下記に。

今や飛ぶ鳥と男共を手玉に取るベッド・インによる、インディーズ時代のシングル曲(メジャーデビューアルバム『RICH』には「消えちゃうパープルバタフライ」は未収録)。レーベルのホームページには『アナログシンセ感満載の切ない音にWink風のボーカルアレンジが涙と笑いを誘う』とありますが、エロ面白いことやっていてもオケが(たとえチープでも)しっかりしていれば実に格好いいという好例。Winkと例えるだけあって、昭和後期(というか平成はじめ頃)を思い出させますね。

 

米米CLUB「虫の息」(1995)

アルバム『SORRY MUSIC ENTERTAINMENT』収録。Apple Musicのリンクは下記に。

イントロからして溢れ出る昭和歌謡感、歌詞に出てくるフォークソングの曲名や有名曲の歌詞の(おそらく勝手な?)引用...森山直太朗さんのときにも書きましたが、「君がいるだけで」や「愛はふしぎさ」「浪漫飛行」という世間が最も強く抱いているであろうイメージではない、こういうコミックソング的要素こそ彼らの真骨頂ですよね。それにしても歌詞の終わりに北の国名が出てくるとは(そしてその国との関係が当時も今も変わっていない、もしくは更に悪化しているのには苦笑いしきり、なのですが)...そして今にも呼吸が絶えるかもしれないという意味なのに、あまりにも力強く連呼される”虫の息”というフレーズにはスタッフ一同笑ってしまいました。昨日は番組が終わってもずっと、虫の息の連呼が脳内ループしていたのは言うまでもありません。

 

 

そんな変な?曲達を今回セレクトしたのはメインセレクターであるフレッシュフグササキさん。ササキさん曰く、”世界一変な選曲をする番組です!”とのことなので、それを自負に今後も楽しんでお送りしていきます。よろしくお願いします。

ここにもミーゴス化? クリスチャン/ゴスペルラッパー、レクレーの最新ヒット「Blessings」

最新6月10日付、米ビルボードクリスチャンソングスチャートで2位に到達したのが、クリスチャン / ゴスペルラッパーのレクレーによる「Blessings」。R&Bシンガーのタイ・ダラー・サインをフィーチャーしたこの曲、ライムのクリスチャン的な部分を気にしないのであれば(という言い方は誤解を招きかねませんが、”聖的”なライムやリリックが悪い意味で引っ掛かる人はいらっしゃいます)、非常に格好いいのではないでしょうか。

この曲は、ビルボード総合アルバムチャートを制した『Anomaly』(2014)以来となるアルバムからの先行シングルという位置付けでしょう。ちなみに『Anomaly』からは、クリスチャンソングスチャートで1曲、ゴスペルソングスチャートで3曲の1位を輩出しています。双方のチャートを制した「All I Need Is You」は下記に。

この3年の進化?かもしれませんが、「Blessings」ではまさに今流行中の手法を取り入れています。「Bad And Boujee」で今年総合ソングスチャートを制したラッパー、ミーゴスが得意とする”二拍三連”というのがそれ。ミーゴスが二拍三連を取り入れた最初期の作品は「Versace」(2013)と言われています。

二拍三連とは、そしてミーゴスとは。

ミーゴスはトラップの隙間が多いトラックに乗せるために最適なラップのスタイルを爆発的に流行させた。それが二拍三連のフロウと呼ばれるもので、二拍の中に3つの音節で言葉を入れることで、独特のシンコペーションを生む彼らのスタイルは、2013年に発表されたシングル“ヴェルサーチ”がヒットすると、瞬く間に他のラッパー達に模倣され、最新のラップ・フロウとして広まっていった。

(中略)

二拍三連のフロウも、ダブも、本当のオリジネイターが誰なのかは諸説あるようだが、少なくともミーゴスがいなければ今ほど爆発的に流行ってはいなかったはず。

Migos / CULTURE | ミーゴス | The Sign Magazine(2017年3月16日付)より

引用した記事では『リル・ヨッティー(シカゴ)、リル・ウージー・ヴァート(フィラデルフィア)、レイ・シュリマー(ミシシッピ)、デザイナー(NYブルックリン)、フェティ・ワップ(ニュージャージー)といった新鋭ラッパー (中略) それらの新世代は、程度の差はあれど、全員がミーゴスの影響下にあると言っていい』と断言していますが、新世代ではなくとも2004年にデビューしたレクレーが、それも聖俗の壁を越えて柔軟に取り入れているわけですから、如何にミーゴスが大きな影響を及ぼしているか理解出来ますし、聖の方向へシフトさせた曲を作りチャートアクションも良好というのですから、レクレーも流石だと言えます。

 

レクレーのアルバムはしばらく先かもしれませんが、最近ではレイラ・ハサウェイの新曲「Don't Give Up」にも参加しており、もしかしたらアルバムリリースが近いゆえか露出を増やしてきているのかもしれませんね。しばらくは彼の動向に注目したいと思います。