イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードソングスチャート、ミュージックビデオ解禁効果でエド・シーラン「Shape Of You」が再度トップに

ビルボードソングスチャートを定点観測。

日本時間の火曜早朝に発表された、2月18日付最新チャート。アルバムチャートで今週初登場首位を獲得したミーゴスによる、リル・ウージー・ヴァートをフィーチャーした「Bad and Boujee」がソングスチャートでは陥落。替わって3週ぶりにエド・シーラン「Shape Of You」が返り咲きました。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

前週のチャートにて次週は4つ巴の争い?と書きましたがまさしくその通りの展開。首位に立った「Shape Of You」とゼイン&テイラー・スウィフト「I Don't Wanna Live Forever (Fifty Shades Darker)」(3位)は共にミュージックビデオ公開に伴うストリーミングの上昇が大きく、それが他指標を牽引する形に。

「Shape…」はストリーミングで前週比19%、デジタルダウンロードで11%、ラジオエアプレイで24%いずれも上昇しています(ただしいずれの部門でも首位には至れず、一指標も首位にならずに総合で首位という記録が誕生。これはシーア feat. ショーン・ポール「Cheap Thrills」が昨年8月13日付で記録して以来半年ぶりとなります)。

「I Don't…」は登場8週目でトップ3入り。ストリーミングでは前週比58%の大幅アップ、ラジオエアプレイでも15%上昇していますが、ストリーミング以上に大きく上昇したのがデジタルダウンロードで前週比124%もの上昇。これは集計週にiTunes Storeにて同曲を69セントの安価で販売したことが功を奏しており、タイミングの重要性を実感します。この曲は映画『Fifty Shades Darker』サウンドトラックに収められ、映画公開およびサウンドトラック発売が今週であることから、再来週のチャートでさらなる上昇が期待出来そうです。

 

前週4つ巴と紹介したうちの残り2曲…マシン・ガン・ケリー&カミラ・カベロ「Bad Things」は「I Don't…」に追い抜かれる形で4位どまり。各指標の上昇幅も0~3%と小幅なものとなり失速の可能性も。一方、エド・シーランに首位を明け渡した「Bad and Boujee」(2位)は再浮上もあり得るかもしれません。というのもストリーミングが未だ8%上昇し同部門で6週目の首位を獲得したのみならず、ラジオエアプレイでも19%上昇し同部門トップ20入り。それぞれがデジタルダウンロードの落ち込みを補完しています。ラジオエアプレイのヒットによりロングヒットの兆しも見えており、次週「Shape…」のストリーミングの落ち着き次第では再度入れ替わる可能性も、もしかしたらあるかもしれません。

 

そして注目は今週5位のザ・チェインスモーカーズ feat. ホールジー「Closer」。

初登場から27週連続でトップ10入りを果たしているこの曲ですが、トップ5内でみると今回が25週目。これは米ビルボードソングスチャート58年の歴史において下記2曲と最長タイとなりました。

リアン・ライムス「How Do I Live」は1997年年間9位、翌98年5位。マーク・ロンソン feat. ブルーノ・マーズ「Uptown Funk」は2015年年間1位とそれぞれ大ヒット。「Closer」も昨年の年間チャートで10位を記録していますが、ザ・チェインスモーカーズが日本時間で来週月曜に開催される第59回グラミー賞において最優秀新人賞を含む3部門にノミネートされていることから、もしかしたら次週以降もトップ5入りするのではないか、そして「Closer」が今年の年間チャートでも上位に食い込むのではと予想します。

 

 

”もうすぐトップ10”にはそのザ・チェインスモーカーズ「Paris」が11位に再浮上(初登場は7位)したほか、ザ・ウィークエンド feat. ダフト・パンク「I Feel It Coming」が16位、アルバムチャートを制したミーゴス「T-Shirt」が19位にそれぞれ上昇。また前週とは変わらなかったものの今週10位にランクインしたアレッシア・カーラ「Scars To Your Beautiful」は、今月4日の『サタデー・ナイト・ライブ』で披露したことを機に次週のチャートで上昇が見込まれると報じられています。

 

次週はおそらく上位3強の争いになるでしょう。日本時間の昨日行われたスーパーボウル、ハーフタイムショーでのパフォーマンスによりレディ・ガガの作品が次週のチャートでどこまで上昇するかにも注目したいところです。そのパフォーマンス動画、きちんと公式としてアップされているのは素晴らしいですね。

Da-iCEボーカル陣の実力が堪能出来るディズニーアニメのカバー曲

昨日に続き、1月25日発売作品について。

 

購入したもののひとつ、Da-iCE『NEXT PHASE』は余裕で平均点を超えてきているのですが、自分の中で”これぞ!”という曲はここ2作に比べると少なかった気がします。いわゆるJ-Popでは昨年ベストにあげた「恋ごころ」(→YouTube)という素晴らしい楽曲があるのですが(昨年の私的年間ベストにも選出したほど)、J-Popの枠からはみ出た、それでいてしっかり邦楽として成立している曲が少なかった…というのが厳しいながら自分の見方だったり。ニュージャックスウィングを意識した「Chocolate Sympathy」はあるのですがBメロ以降がJ-Popっぽいメロディラインゆえ、徹頭徹尾ニュージャックスウィングでもよかったんじゃないかなと思うのです。とはいえそれでも、冒頭で述べたようにほぼ総じて高品質だと言えます。まあ自分の場合、彼らの中で一番好きなのは前にブログでも触れた「Noise」だったりして、彼らのファンの中でも変にマニアックなのは自認するところではあるのですが。

 

今回のアルバムは6形態あり、うちDVDが同梱されない3種についてはボーナストラックがそれぞれ異なるため、その売り方について首をかしげる部分は否定できないのですが今はおいときましょう。その中で自分は【Da-iCE ver.】を購入。本来の目的はアリアナ・グランデ「Into You」のカバーを手に入れるためでしたが、実はもう一曲のカバーにより強く惹かれてしまったのをここに報告します。それがディズニーアニメ映画『アラジン』の主題歌、「A Whole New World」なのです。このバージョンのアルバムはApple Musicでも聴くことが出来ます。元々はシングル「WATCH OUT」(2016)のiTunes Store先行配信EPにて初出。

元来はソウルシンガーのピーボ・ブライソンとレジーナ・ベルによる、全米1位を獲得した男女デュエットの名曲です。

ピーボのパートを大野雄大さんが、レジーナを花村想太さんが務めるという男性同士のデュエットゆえ、もしかしたら変に揶揄する声が出てくるのかもしれませんが、この曲の説得力の前にはただただひれ伏すしかないと断言します。とにかく想太さんの流麗な声と美しいファルセット、そして雄大さんによるピーボを彷彿とさせるようなふくよかで包み込む歌声が見事。しかもアレンジが非常にシンプルゆえ歌声への注目度がより高まる中でのこの完成度の高さ…ボーカリストとしても一級品ですね。

 

この素晴らしいカバーを聴いて思ったのは、今後それぞれの声がより活きるジャンルにも積極的に挑戦してみてはどうかということ。想太さんはEDM、雄大さんはR&Bというように。そこでどちらかがほぼメインを務めつつ、今回のアルバムであまり聴かれなかったハーモニーを積極的に取り入れた(サブに徹した側がここぞと言うタイミングでハーモニーを奏でる)ならば嬉しいなと。個人的な希望ですが、そういう作品の登場を願っています。

それと、これだけの実力およびセールス面での実績も伴っているならば、やはり『ミュージックステーション』への出演は是非ともお願いしたいところ。以前からここで書いてきたことですが、”オトナの事情”というのはもはやネットではバレていることなので通用しませんよ?とメディア等には問いたいものです。

ぼくのりりっくのぼうよみと自分が好きな吟遊詩人がつながっていた

1月25日にリリースされたアルバムに興味深いものが多く、また聴いてみたらこれが良作ばかりなのです。土岐麻子『PINK』、Suchmos『THE KIDS』そして、ぼくのりりっくのぼうよみ『Noar's Ark』。これに1月18日リリースのSKY-HI『OLIVE』も含めれば相当な豊作となり、財布面では嬉しい悲鳴が…という事態。Da-iCE『NEXT PHASE』も購入したのですが、こちらについては後日書ければなと。

 

その中で今日紹介するのは、ぼくのりりっくのぼうよみ『Noar's Ark』。2月2日放送の『SONGS』(NHK総合)で地上波に初登場しており、知名度は徐々に高まることでしょう。番組で披露し、アルバムの冒頭を飾る「Be Noble」は映画『3月のライオン 前編』(3月18日公開)の主題歌として後日シングルカットも決定。映画のヒット次第ではブレイクも期待出来ます。というかしてほしいと強く願うばかり。

ラッパーでシンガーという肩書きのようですが、アルバムで時折見せるポエトリーリーディング的な側面が個人的にはとりわけ好みで、18歳とは思えない声の深みと説得力に痺れるばかり、なのです。アルバムのトレーラーは下記に。

で、そのポエトリーリーディングや声の良さから、個人的には”吟遊詩人”の小林大吾さんを想起したのです。小林さんについては以前、タケウチカズタケさんをフィーチャーした「処方箋/sounds like a lovesong」を弊ブログにて紹介しました。

勝手ながらふたりに共通点があるのではないか(いや、あってほしい)と思い、Yahoo!で二人の名前を入力して検索したところ、最上位になんと…!

しかもこのつぶやきの後には自身のライブにて、キーボーディストのタケウチカズタケさんを迎え、さらにデザイナーでもある小林大吾さんにグッズデザインをお願いしていたとのこと。

つながりが生まれていたことにただただ嬉しくなりました。

ちなみにタケウチカズタケさんが参加した、ぼくのりりっくのぼうよみ「noiseful world」のライブ映像(上記ライブとは別日)もアップされていて、タケウチさんが動画を紹介がてら、その日の模様を振り返っています。

ぼくのりりっくのぼうよみ noiseful world ライブ映像 - Kaztake 42 music(2016年8月20日付)

 

こうなったら、近いうちに是非とも、ぼくのりりっくのぼうよみ小林大吾さんとの共演が実現してほしいと強く思うのですが如何でしょう。そして、小林大吾さんをスタジオライブアクトとして呼ぶのみならず番組グッズもお願いしている『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ 土曜22時)つながりで、ぼくのりりっくのぼうよみもゲストとして呼んでほしいですし、レコード会社が同じよしみでRHYMESTER主催の音楽フェス【人間交差点】(5月14日開催)に、その二組を招聘してほしい!…なんて夢ものがたりを考えたりもしています。

薬物報道ガイドラインの記者会見を報じるメディアの少なさを憂う

今日もラジオの話。

 

定期的に追いかけていこうと思っているのが、『荻上チキ Session-22』(TBSラジオ 月-金曜22時)で生まれた【薬物報道ガイドライン】。このガイドラインの作成の理由等については以前ここでも触れています。

そのラジオ番組で推敲された【薬物報道ガイドライン】を1月31日、霞が関にある厚生労働記者クラブにて発表、荻上チキさんなどが会見を行っています。

会見上では、会見する側から集まったメディアに対し来場の御礼を申し上げ深く一礼したとのこと。その様子を、これまでの会見ではなかったことだと荻上さんは話していました。たしかにこのガイドラインの作成の最終的な到達点はメディア自身が常に省みるようになる、いわゆる"反芻"が出来るようになることであり、ゆえにメディアを敵視するわけにはいかないのですが。

 

とはいえ、あくまで個人的にと強く念押しした上で書くならば、この【薬物報道ガイドライン】会見を報じるメディアの少なさには疑問や、はっきり言って哀しみすら禁じ得ないのです。

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Yahoo!JAPANのニュースにて"薬物報道 ガイドライン"で調べた結果、今朝の段階で出て来る記事がわずか4件。うちアゴラの記事は会見した側の田中氏自身によるものであり、実質的に報じたのは弁護士ドットコム、BuzzFeed JapanおよびAbemaTIMESの3件にとどまるのみ。新聞紙上での掲載や今後の雑誌等での掲載は不明ですが、ネット上でわずか3件しかないものが、テレビや新聞という市井により強く影響を与えるであろうメディアで報じられていないだろうことは容易に想像がつきます。会見した側の思いとは裏腹に、至極個人的な意見と何度も書くようで申し訳ないのですが、メディア側には反芻する気概がないということを如実に証明してしまった気がしてなりません。

 

 

実は2月2日にYahoo!JAPANに登場していた個人発信による記事において、自分が抱くメディアの"反芻する気概がないのでは"という疑念をより深めることとなりました。

 メディアの仕事にも関心がある彼女は、テレビ局の取材班とは違って、最初はカメラなしでSさんと言葉を交わし、礼を尽くして数回通って信頼を得て、そこから撮影を開始している。

 しかし取材が職業であるはずのテレビ局の取材班は、だいたいアポなしでいきなりSさんが犬たちと住む場所を撮影するという乱暴な取材を繰り返し、決まって「迷惑行為」だという姿勢で伝えるだけだった。

 相手がホームレスで法令違反をしている、という一点を口実に勝手に人間が居住している空間に侵入する。勝手に撮影する。

(上記記事より)

記事に"!"等を用いることも煽りメディアと変わらないと思うと苦言を呈しつつ…とはいえこの取材の方法、メディアに都合の良い切り取り方はまさに、【薬物報道ガイドライン】を生むきっかけとなった、薬物からの更生施設を運営する上岡氏が『Session-22』で話したメディアのアプローチと同一だと実感しています。この日の書き起こしは下記に。先述した田中氏も出席しています。

 

2件の例をもってすべてと決めつけるのは早計でしょうが、しかしながらたとえば基礎/不起訴が確定した有名人のヘリコプターによる追跡等の取材方法の気味悪さは多くの視聴者が感じているでしょうから、やはり以前弊ブログで書き記した"メディアへの罰則"の用意も必要だと思うのですが如何でしょう。

ホームレスの方へのヘイト放送だと水島氏が指摘した番組はTBSテレビ制作によるもの。ラジオとテレビは異なれど同じ建物内にあるのならば、一度是非『荻上チキ Session-22』に担当者を呼び、"報道番組の現状とは何か?" "なぜ過剰な演出を施さないといけないのか?"を掘り起こしていただきたいところです。それによって見えてくるものはきっとあると思いますし、同様にTBSテレビ側に、"現行の報道番組が【薬物報道ガイドライン】を受け入れないように見えるその理由は何か"を探ってみるのもいいかもしれません。

 

 

メディアに変わっていただきたいと願う気持ちは『Session-22』サイドと同様ですが、このままでは【薬物報道ガイドライン】のみならずすべての"メディアへの提言"が突っぱねられ跳ね返されるばかりだと悲観しています。

胡散臭いですか?と問いかける商品の真の問題とは何か

毎週金曜はラジオの話。

 

今週のスマートフォン版のYahoo!JAPANトップページに、"スピードラーニングはうさんくさい?"というトピックがありました。ニュース項目の中に織り込ませた広告で正直紛らわしいと思うのですが、リンク先(下記)の内容には胡散臭さは感じていません。ニュース項目に紛れ込ませるYahoo!側の手法には首を傾げつつも。

スピードラーニング・デジタル

 

英語を見聴きすれば覚えていけるという点は自分も納得しています。最近では弊ブログで取り上げている米ビルボードの記事を大分理解できるようになりました。ただ、このスピードラーニングにおいて、非常に残念な点はラジオCMの違和感にあります。実は昨年も一度提示したのですが。

そのCM概要が変わることないまま、今年流れたCMには唖然としました。"耳を疑う"とはまさにこのこと。

(勝手ながら引用させていただきました。問題があれば削除させていただきます。)

白井?白石?と思ったのですが、上記エスプリラインのリンク先に出てくる方と同一人物だとしたら白石さんで間違いないはず。つまりは進行役の男性があまりに滑舌が悪いため、白井と白石の判別が付かないのです。にもかかわらずこのCMは何事もなかったかのように進行していきます。違和感があるCMは記憶に残りやすいとはいいますが、今回の違和感はとても気持ちの良いものとはいえません。

 

 

スピードラーニングの胡散臭さは商品の中身ではありません。それを紹介する際の"悪い意味での違和感"が問題なのです。ラジオCMがBGMも流れず、またあたかもそれを内包するラジオ番組と地続きであるかのように、且つ長尺(3~5分程度)で流れると、元の番組を聴いていた方には大なり小なり裏切られた感が芽生え、その時間にチャンネルを変えられる可能性すらあるわけです。そうなるとラジオ局にとってはマイナスだと思うのですが。とはいえ、仮に局側がスポットCM枠が売れれば好いとだけ考えているならば、リスナーを後回しにしたそのやり方には不快感を抱きます。

 

もしかしたらスピードラーニングは、Yahoo!JAPANの広告で用いた"うさんくさい?"を宣伝文句にして、実際使った際のイメージ向上度合いをより高めようとしている、いわば良い意味でのギャップを作ろうとしているのでは?と思うのは考え過ぎでしょうか。仮にそうだとしたら、このようなタイプのCMを今後も続けるでしょう。そうなればスポットCM枠を売る側のラジオ局がスピードラーニング側へ、言うべきことをきちんと言うことこそ必要だと考えます。これは別にスピードラーニングのみにとどまらず、すべてのCMやラジオショッピングで同じことが言えるはずで、局がスポンサーの従属で終わってしまうことは、リスナーの局に対するイメージ悪化を招きかねません。言いにくいとは解るもののきちんと意見を言うことでよりCMの好感度を磨き上げ、CMも楽しいから常時耳が離せないという状況を作ることがラジオ局に求められる使命だと思うのですがいかがでしょう。無論、その方が商品への好感度も上がり、いわゆるWin-Winの関係を築けるはずです。

 

 

実は1年半前にも同種の提案を記載したのですが、ほぼまったく改善されていないような気がします。ならばこちらも言い続けていきます。

発表5ヶ月後になって盛り上がるジェイムス・アーサー「Say You Won't Let Go」への個人的違和感

ビルボードジャパンのソングスチャート(JAPAN Hot100)を定点観測。というか、個人的に気になる部分をピックアップしていきます。

 

昨日発表された、2月6日付最新チャートはこちら。詳細については下記のチャートトピックスを参照してください。

トップから陥落し3位に交代した星野源「恋」ですが、総合ポイント数は600弱のみの減少にとどまっているため、次週再びトップに立つ可能性もあるでしょう。

 

今週個人的に注目するのは、前週から14ランクアップしてトップ20内にランクインしたジェイムス・アーサー「Say You Won't Let Go」(今週18位)。

昨年9月9日に発売されたこの曲はイギリスで首位を記録。年間チャートでも19位を記録するヒットとなっており、11月に発売されたイギリス版『Now 95』ディスク1の冒頭に配されたことからもこの曲のヒット具合やインパクトの強さは解るかと(『Now 95』については今月発売、イギリス版『Now 95』 トラックリスト(2016年11月11日付)に記載)。

にもかかわらず、日本では遅ればせながら今になってヒットの兆しというタイムラグに驚いていたのですが。

"日本版"ミュージックビデオの公開は1月23日。メイクを施さないりゅうちぇるさんのギャップが(別のニュースも含め)メディアやネットで取り上げられたからか、ジェイムス・アーサーの曲に注目が集まっているといえるのかもしれません。上記動画のコメント欄にも、りゅうちぇるさん見たさにアクセスしたら「Say…」にハマったという意見が散見されます。

 

無論それはそれでいいとは思いますし、好い曲が拡がっていくのに手段は関係ない(後にその人の心に残る曲になるならばきっかけはどれでもいい)とは思うものの…ただ、日本のラジオ業界の"遅きに失した盛り上がり"には正直がっかりしました。この曲、チャートを構成する要素のひとつ、【全国のAM/FMラジオ放送回数】において最新2月6日付で首位に立っています。

2017年2月6日付 Billboard Japan Radio Songs | Charts | Billboard JAPAN

が、先述したとおりこの曲のリリースは9月9日、またこの曲が収録されたアルバム『Back From The Edge』(全英週間1位 年間30位)の発売は10月28日であり、日本でタイムラグがあり過ぎる気がしてなりません。海外で売れたからといって日本で浸透するとか限りませんが、少なくともアメリカおよびイギリスのヒット動向はマメにチェックしているであろうラジオ業界の中の人(弊ブログでいうところの"ラジオ人")が、この曲の海外でのヒット時ではなく今になってかけまくるのはどうなのかなと。国内盤発売が1月25日だからといって仮にそれに併せてのエアプレイ増強だとしたら、レコード会社に過剰におもねいているか、もしくはラジオ人の海外のヒットの動向を知る嗅覚が薄れた、あるいは同じくいい曲をとにかくどこよりも早く紹介してヒットさせたいという気概がなくなったか…いずれにせよ、ラジオ人のプライドがなくなってきているという気がしてなりません。実際この意見は前も書いたことですが、あらためて述べさせていただきます。

 

 

厳しい意見はラジオへの愛ゆえ。ラジオに好い音楽を紹介する意義を失ってほしくないゆえのことです。プライドがなくなってきているからこそ、チャート構成要素として『TwitterYouTubeは分かりますがラジオを合算する意図は何ですか』(ビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANより)と、FAQとはいえども書かれてしまうわけで、それだけラジオの存在意義が理解出来ない人が増えてきているのだと思います。ラジオ人にはしっかりしていただきたい!と強く感じるのです。

アニタ・ベイカーの新作がお蔵入りになるかもしれない、それどころか…な問題

アニタ・ベイカーの名曲をカバーした、レイラ・ハサウェイによる「Angel」に新たなバージョンが登場しました。BJ・ザ・シカゴ・キッドをパートナーに迎えたデュエット。これもまた麗しいのです。

ビルボード、アダルトR&Bソングスチャートを制したソロバージョンについては以前取り上げています。

 

この美しさがアニタに届き、彼女が踏みとどまるきっかけになれば幸い…と思い今日のエントリーを書いた次第。というのも、アニタ・ベイカーは先月半ばに"引退を示唆"するツイートを行っていました。音楽評論家、吉岡正晴さんのツイートを引用させていただきます。

予定されていたアルバムからの先行曲で、俳優としても活躍するタイリースのカバー、「Lately」はリリースされていたのですが…そんなことを実は以前弊ブログで記載していました。

2004年の『My Everything』(傑作!)から7年ぶりにニューアルバム『Only Forever』をリリースする予定だったアニタ・ベイカー。しかしながら新譜は延期に延期を重ね来年に(元来、『21th Century Love』という名前で2010年のリリース予定だったわけですが)。

アニタからのクリスマス&新譜はいつ?(2012年12月25日付)より

(彼女の米版Wikipedia内ディスコグラフィーによれば、リリース予定とされていたアルバム名は『Only Forever』となっています。)

アルバムからは「Sweetest Dreams」という、いかにもアニタらしいサビが展開される曲も先行で公開されていたのですが。

結局『Only Forever』ごと、これらシングル曲もお蔵入りになってしまうのでしょうか、日本のiTunes StoreAmazonでは(当時購入出来たかもしれませんが現在は)先行曲を購入出来ず。アメリカのAmazonでは「Lately」が売られているのみ。なんだか寂しすぎます。

 

アニタの引退を調べていくうちに、実はR&Bシンガーで90年代に多くのヒットを放ったトニ・ブラクストンの引退を思いとどまらせた"貢献者"のひとりがアニタだということを知りました。

この記事は3年半ほど前のもの。後にトニは、恩師であるベイビーフェイスとのデュエット作『Love, Marriage & Divorce』(2014)をリリースし、翌2015年のグラミー賞、ベストR&Bアルバム部門を受賞。見事な復活を果たしたのです。

 

もしかしたらアニタの引退示唆を受けて、今度はトニが思いとどまらせるよう立ち上がっているかもしれません。それだけアニタの歌声は唯一無二、且つ時代を超えて愛される…まさに"Only Forever"そのものといえるだけに、活動再開およびアルバムの無事リリースを願わずにはいられません。冒頭で触れた「Angel」の美しさ共々、アニタに届いてほしいものです。