イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンの更新乱れ問題の原因を推測し再発防止と求めると共に、チャート更新の改善策を提示する

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。が、今回はいつもと内容が異なります。

 

2月17~23日を集計期間とする3月2日付ビルボードジャパンソングスチャート、Official髭男dism「I LOVE...」の3連覇を阻んだのは日向坂46「ソンナコトナイヨ」でした。

シングルCD表題曲では4曲連続の首位を獲得しポイント数も過去最高となった日向坂「ソンナコトナイヨ」。シングルCDセールス指標がチャート構成比の4分の3を超えており1指標への偏りが目立ちますが、『フィジカル関連2指標以外の指標でもまずまずの高ポイントをあげ』ており次週は急落してもトップ10落ちは免れる可能性があります(『』内は上記記事より)。一方、Official髭男dism「I LOVE...」は2位に後退したもののシングルCDセールス加算2週目にしてポイント前週比は90.7%、1万ポイントを大きく上回っています。『ストリーミングでは前週7,023,425再生から当週7,088,189再生と微増、ダウンロードでは前週36,897DLから当週35,081DLへと微減、動画再生では前週4,621,488回から当週5,627,248回へ増加』しデジタル関連指標が安定しており、ロングヒットの可能性は十分です(『』は上記記事より)。

 

さて、この3月2日付ビルボードジャパンソングスチャートですが、一旦は更新されたCHART insightが撤回される事態が発生しました。集計の不備があり12時台に撤回されたのみならず、14時台にあらためて発表されたところ今度は表示に問題が。

通常ビルボードジャパンソングスチャートの日付は月曜なのですが、閏年計算がされていなかったままソングスチャート(Hot 100)を公開し火曜付となっていたことも、ビルボードジャパン側の混乱を示しています。

 

このチャート発表後の混乱、実はこのときだけではありません。今年は以前にも更新遅延の機会がありましたが、その際は更新後の訂正はありませんでした。しかしながら。

昨年12月23日付ソングスチャートについては、発表された12月18日の翌日に修正が入っています。実は弊ブログにて当該チャートを紹介する際、修正前の情報を掲載していました。

上記ブログエントリーで掲載した昨年12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートのCHART insightのキャプチャは修正前のもの。修正したものと比べると。

 ・修正前

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・修正後

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チャートを構成する8指標のうち、ラジオエアプレイ(CHART insightの黄緑で示された箇所)の順位が大きく異なります。これに気付いた後、昨年12月23日付チャートを用いた別のブログエントリーでは『昨年12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいてラジオエアプレイ指標に誤りがあり、ビルボードジャパンではチャート公表の翌日に同指標順位および総合ポイント(一部総合順位)が訂正されています』と追記し、断りを入れています(→こちら)。

今回、3月2日付のソングスチャートは発表された日のうちに訂正が入りましたが、それでも混乱したことは間違いありません。そしてその混乱の理由がラジオにあるのではというのが容易に想像出来るのです。

CHART insightのキャプチャからも解るように、昨年12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間は12月9~15日、最新チャートは2月17~23日であり、いずれも首都圏ラジオ局の聴取率調査週間にあたります。一部ラジオ局では聴取率獲得のために豪華ゲストやプレゼントを用意するスペシャルウイークとして放送しています(ゆえにそれがきちんと可視化された『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送 土曜25時)のツイートを引用した次第)。大きく訂正が入った2回とも、この聴取率調査週間(一部放送局におけるスペシャルウイーク)が集計期間と被っているのは偶然でしょうか。いや、偶然ではないのではというのがロングヒットしている曲のCHART insightからも解ります。

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Official髭男dism「Pretender」(今週3位)とKing Gnu「白日」(今週5位)のCHART insight、総合および8指標のもの(上)とラジオエアプレイのみ抽出したもの(下)をみると、ラジオエアプレイ指標は今週2曲とも急上昇していることが解ります。アルバムリリースのタイミングで伸びるならば解るのですがこの動きはイレギュラーと言えます。また「白日」においてここ最近で最も高いのが12月23日付の13位であり、同日付では「Pretender」も6位を記録。「Pretender」はさらに遡れば昨年10月21日付でも9位を記録しているのですが、同日付の集計期間(10月7~13日)もまた聴取率調査週間に当たるのです。

上記放送は台風情報により取りやめとなりましたが(放送休止についてはこちらに)、当該週がスペシャルウイークであることを示す証拠となるゆえ提示しています。

 

ラジオエアプレイは他の指標と異なり一押しの新曲や新人を紹介する傾向が強く、総合チャートとは順位が大きく乖離しているもののその独自性が面白い指標という印象があります。しかしながら、スペシャルウイークでは普段ラジオをあまり聴かない方にも聴いてもらうべく、ここ最近ヒットしている曲をより多くかける傾向があるのだろうということが「Pretender」や「白日」のチャートアクションから見て取れます。ラジオ局はどの曲を流したかをデータ送信するのですが、スペシャルウイーク終了直後でバタバタして送信が遅れるなどの不備が発生し、遂にはビルボードジャパンソングスチャートに支障をきたした…これがビルボードジャパンソングスチャートにおけるこの2回の混乱の元凶ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 

弊ブログでは年明けにこのような提案を書きました。

ラジオエアプレイはサンプル局数が少なく、またコミュニティFMを網羅出来ていません。聴取者数の規模の問題もあれど、協力可能な程の人材や機材の確保が十分ではなく、とりわけ突如解禁される音源(たとえば再集結した東京事変が昨日リリースした「選ばれざる国民」など)を確保する機材的もしくは財政面での余裕がないものと考えます。突如解禁の音源等を即座に利用出来るシステムをFM/AM/コミュニティFMで区別することなく導入し、OAしたタイミングで手動打ち込みではなく自動でOA曲を送信するシステムが生まれれば、ラジオ局の手間は格段に省かれることでしょう。そうすれば必然的にラジオエアプレイ指標の精度が上がるものと考えます(し、それによりラジオが今の音楽をきちんと追いかけられるメディアに成るのではないでしょうか)。

(中略)

ラジオエアプレイおよび動画再生指標は、ビルボードジャパンは情報提供元から情報を受け取る立場ゆえ、【情報提供元の集計方法の改善】を求めたいと思いますしビルボードジャパンはそれを促してほしいと思います。

これを書いた段階では昨年12月23日付ビルボードジャパンソングスチャートの混乱の理由を推測していなかったのですが、おそらくラジオエアプレイがチャート発表の大きな阻害要素となることが判ったならば、最悪の場合はラジオエアプレイ指標を外すことも視野に入れないといけないとすら思っています。それはさすがに無理なことでしょうが、ラジオ局の曲管理の杜撰さが浮き彫りとなり不信感が芽生えかねないのは事実。この点については各局各番組が省みてほしいと強く願います。

 

 

最後に。ビルボードジャパンについてはチャート更新について、時間を遅らせて好いので不備のない状態で発表してほしいということを今一度提言します。メディアへ取り上げられる頻度が高まったこと、ポッドキャストを始めたこと等は好感を持てる一方、あくまでチャート発表が基本であることを踏まえれば、やはりそこに度重なる不備があってはいけません。

これは提案ですが、たとえばTBSラジオで”空き時間”と呼ばれる火~金曜の17時50分からの10分枠を、ビルボードジャパン側がスポンサーとなり番組を持つというのはいかがでしょう。現在は『アフター6ジャンクション』(月-金曜18時)が月曜以外に実験的な企画を用意し穴埋めを行っていますが、その枠を使ってチャート紹介等を行うのです。水曜はこの番組をチャート第一報の位置付けとし、番組終了直後の18時に最新チャートの一斉更新と各チャートの記事を一斉公開すればチャートの祭り感が高まり注目を集めるはずです。チャートの注目点は木曜に、火曜は日本時間で同日朝発表される米ビルボードソングスチャートを紹介し、金曜は東京と大阪、そして新たに横浜に誕生するビルボードライブの新規公演紹介や直近のライブの招待企画などを行えばこれらライブハウスの宣伝にもなります。スポンサーの予算を用意するのは難しいのだとしたらビルボードライブの公式スポンサーやライブハウスを運営する阪神コンテンツリンクからの出資を…というのは流石に絵空事かもしれませんが、しかし自身がスポンサーとなることは自らのチャートにきちんと責任を負えるようになるという意味でも有効だと思います。さらにはTBSラジオでその10分枠を系列局に売り込めばある程度の収入も見込めるかもしれません。