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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アルバムからのリード曲は絞ったほうがいい? THE YELLOW MONKEYのソングスチャート動向から考える

THE YELLOW MONKEY、およそ19年ぶりのニューアルバム『9999』がヒット中です。4月17日に発売され、4月29日付ビルボードジャパンアルバムチャートでは初登場3位。デジタルダウンロードでは首位を獲得し、2週目となる今週は総合7位となっています。デジタルダウンロードの強さは、初週売上分でBTS『Map Of The Soul: Persona』の2週分を突破、同週リリースの乃木坂46『今が思い出になるまで』を大きく上回る等人気となっています。

アルバムはストリーミングも解禁されています。

アルバムは好調に推移している一方、個人的には、アルバムの売上をさらに伸ばすことが出来たのではないかと感じています。

 

アルバムがリリースされると収録曲がソングスチャート100位以内にもランクインする傾向が日本でも見られるのですが、THE YELLOW MONKEYについては前週および今週もランクインしていません。デジタルダウンロードが強い場合、曲単位でも購入される傾向があるのですが…そう思い、アルバムからの先行曲でリード曲と成っている可能性のあるものを調べてみると。

・「砂の塔」(2016年デジタル先行、同年10月19日シングルCDリリース)

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・「天道虫」(2018年11月9日デジタルリリース)

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・「I don't know」(2019年1月25日デジタルリリース) 

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実は先行曲の3曲共に直近のソングスチャートで300位以内にはランクインしているのですが、100位以内には入っていません。「天道虫」および「I don't know」はラジオエアプレイが楽曲を牽引する一方、前者は2週前、後者は2週前および今週デジタルダウンロード指標が300位以内には入っていますが100位以内には達していません。また「砂の塔」が前週になって再浮上したのは4月19日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)で同曲が披露されたことが契機となっていますが、番組の影響でTwitter指標79位、ラジオエアプレイ300位以上(100位未満)に上昇したものの、デジタルダウンロードは未カウントのままです。さらに、ストリーミングはどの曲も300位以内に到達していません。

この状況を見て、いやいやアルバム購入に流れたのですよという声はあるでしょう。が、興味はありながらもアルバムを(全曲単位で)購入するのを金銭面等を理由に躊躇う方もいらっしゃるはずで、そのような方々がデジタルダウンロードに流れると思ったゆえこのチャートアクションは意外でした。さらに、ストリーミング解禁されていながら上記3曲はストリーミング指標未カウントであり、且つ動画再生指標も同様。作品を確実に購入するコアなファンとは対照的に、ライト層の動きが弱いように思えて勿体無い気がします。

 

この動き、おそらくは【アルバムからのリード曲を統一するか複数用意するか】の作戦が影響していると考えます。アルバムリリースに先駆けて「天道虫」および「I don't know」をデジタルリリースしたのは(そしてシングルCD化しなかったのは)アルバムへの布石だと思われますし、ラジオではこの2曲が強いのですが(おそらくはラジオ局としてリード曲を2曲だと捉えていたように思われます)、このリード曲をどちらかひとつに絞れば、ラジオエアプレイ指標のみでソングスチャート100位以内に入った可能性もあるでしょう。そして『ミュージックステーション』で披露したのがそのラジオエアプレイ好調な2曲ではなく「砂の塔」だったことも、3曲のポイントを分散させた可能性が高いと言えそうです。

リード曲を絞るというのは、アルバムからの”顔を作る”ということではないでしょうか。仮に先述した3曲のうちどれかにリード曲を絞り集中的にメディアで展開するか、もしくは『9999』リリースの1ヶ月前くらいに別のリード曲を用意しその曲をガッツリ推していけば、その楽曲経由でアルバムに興味を持った方が調べてみて(または店頭で手にとって)他の先行曲も入っているから買おうという動きが出てくるかもしれません。また強力なリード曲がソングスチャートにランクインしたことで、同チャートをチェックした方がTHE YELLOW MONKEYに興味を持ちアルバムに…という動きも生まれたかもしれません。そういう意味で、リード曲を絞ることが出来たならばさらにアルバムの勢いが高まったかもしれないと思うのです。無論、「砂の塔」「天道虫」および「I don't know」はいずれも強力な楽曲ではあるのですが。

 

このリード曲については、あいみょんさんの動向が参考になるでしょう。アルバム『瞬間的シックスセンス』が初登場した週、アルバム収録曲から9曲、合計13曲をソングスチャート100位以内にランクインさせました。楽曲を押し上げたのは主にストリーミングに因るところが大きいのですが。

アルバムからのリード曲としての位置付けとなったのは、最後にシングルCD化された「今夜このまま」ではなく、昨夏発売の「マリーゴールド」でした。「マリーゴールド」は『NHK紅白歌合戦』(NHK総合他)で披露されたことで、リード曲としての位置付けを確立したものと考えていいでしょう。

以来「マリーゴールド」は1月14日付ソングスチャート以降常時5位以内、『瞬間的シックスセンス』は11週連続でアルバムチャート10位以内をキープしています。紅白という大きなトピックを味方につけたことがあるにせよ、この戦略は当たったと断言します。