最新4月22日付のビルボードジャパンソングスチャート。昨日はBLACKPINKに注目しました。
今日はKing & Prince「君を待ってる」について。
昨年「シンデレラガール」でデビューしたKing & Princeが圧倒的なチャートアクションを示したことは、同曲が年間12位にランクインし、ジャニーズ事務所所属歌手で最高位を記録したことからも明らか。続く「Memorial」も年間42位と高位置を獲得し、この好調な流れの中で今月リリースしたのが今年第1弾、通算3枚目のシングル「君を待ってる」です。
前週はシングルCDセールス指標初加算となり同指標の勢いもあって首位を獲得しましたが、今週11位に急落。シングルCDセールス加算2週目にしてトップ10落ちは今作がはじめてとなります。そして気になったのが。
#ビルボードジャパン最新チャート速報#KingandPrince のこれまでのシングル曲における、シングルCDセールス指標加算2週目の、1週目とのポイント比。「#シンデレラガール」が21.6%、「#Memorial」が14.1%に対し「#君を待ってる」は11.4%。所属事務所の他の歌手と同等か、少し低いのが気掛かりです
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) April 17, 2019
シングルCDの初週の売上枚数は40万を超え、前作比107.6%とアップしているのですが、総合ポイントでみると前作比95.0%。このダウンに関しては、この間にビルボードジャパンソングスチャートの各指標のウェイト付けが変わった可能性が高いと思われるほか、シングルCDの係数が2作で異なることも考えられます。しかしながらウェイト付け等が変わったとして、シングルCDセールス指標加算2週目の前週比が11%台というのはちょっと落ち込んではいないかというのが私見です。
この前週から今週にかけての落ち込みの大きさにはいくつかの理由が考えられます。ひとつはシングルCDセールスの前週比。「シンデレラガール」のシングルCDセールス2週目は初週の6.7%、「Memorial」は同6.6%に対し「君を待ってる」は同5.1%と前2作の1.5%以上ダウンとなっています。これは認知度の上昇に伴いファンが増え、シングルCD発売初週での購入者が増えたことも考えられます。
その他、シングルCDセールス指標加算初週および2週目における、8指標での推移を比較すると。
※各指標について
・ポイント:総合ポイント
・ポイント前週比:前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)
・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は※で表示
・各指標について
(詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)
CD:シングルCDセールス
DL:デジタルダウンロード
ST:ストリーミング
RA:ラジオエアプレイ
LU:ルックアップ
TW:Twitter
MV:動画再生
KA:カラオケ (2018年12月10日付より開始。2018年度以前は未表示)
・各指標毎順位における[-]はランク圏外(101~300位)、[ ](ブランク)はランクインせず。これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能です
シンデレラガール 総合
順位ポイ
ント前週
比CD DL ST RA LU TW MV KA 2018/6/4 1 34324 - 1 5 1 4 82 2018/6/11 4 7431 21.6% 4 22 1 7 - Memorial 総合
順位ポイ
ント前週
比CD DL ST RA LU TW MV KA 2018/10/22 1 32259 - 1 15 1 1 2018/10/29 6 4533 14.1% 5 37 1 8 君を待ってる 総合
順位ポイ
ント前週
比CD DL ST RA LU TW MV KA 2019/4/15 1 30649 - 1 4 1 1 2019/4/22 11 3482 11.4% 6 63 1 23 -
「シンデレラガール」では1分間のティーザー的ミュージックビデオが動画再生指標としてカウントされていましたが、「Memorial」以降はなし。この指標も気になりつつ、むしろ「君を待ってる」のラジオエアプレイが大きく落ち込んでいる点、そしてTwitter指標がトップ10落ちしている点が気になります。
実はTwitter指標において、King & Princeと同じ事務所所属で極めて強いグループがいます。それがA.B.C-Z。最新シングル「Black Sugar」は4月8日付でシングルCDセールス指標が初加算され総合6位に登場。翌週は30位に後退したのですがTwitter指標は1→4位。総合ポイントにおけるシングルCDセールス指標加算2週目の前週比は21.6%と、「君を待ってる」の倍近くとなりました。この"シングルCDセールス指標加算2週目における総合ポイント前週比20%超え"を果たしたのは先述した「シンデレラガール」以降のジャニーズ事務所所属歌手の作品ではKEN☆Tackey「逆転ラバーズ」(20.6%)、A.B.C-Z「JOYしたいキモチ」(26.2%)そして「Black Sugar」のみ。つまり4作品のうち半分をA.B.C-Zが占めているわけです。「JOYしたいキモチ」も総合順位は5→31位ながらTwitter指標では2→7位と推移し他指標以上に目立っていることから、少なくともA.B.C.-ZにおいてはTwitter指標が高水準をキープすることが総合ポイントに貢献していると言ってよく、他の歌手も取り入れることが出来る手法ではないかと思われます。
とはいえ、「JOYしたいキモチ」「Black Sugar」は、シングルCDセールス指標加算3週目にいずれも総合100位圏外となっているのは気掛かりです。
こちらは「Black Sugar」の4月22日付チャートにおけるCHART insight。円グラフのチャート構成比は最新週のそれであり、Twitter指標が全体のおよそ8割を占めています。ひとつの指標(特にシングルCDセールス指標)が全体の過半数を占めると偏りすぎとなり翌週以降のチャートアクションが気掛かり…というのはよく書いていることですが、この曲も同種の動きとなった可能性はあります。また、最新週において「Black Sugar」はTwitter指標22位のみならず、シングルCDセールス56位、ルックアップ42位と各指標の順位が決して悪くはないのですが、デジタルダウンロード、ストリーミングおよび動画再生)がカウントゼロという状況ゆえこれらデジタル指標群に頼れないこともまた、この曲が総合チャートで維持出来なかった原因と思われます。
Twitter指標においては、このブログでは幾度となく、三浦大知「Blizzard」が特筆すべきだと書いてきました。ファンによるTwitter活動(いわゆる"ブリ活")がロングヒットにつながり、現在も100位以内にランクインしています。ただ、「Blizzard」のロングヒットの理由はブリ活だけではありません。
最新3月25日付のCHART insightにおけるチャート構成比をみるとTwitter指標は3割強。他方、動画再生やストリーミング指標が2割前後を占めるなど、多くの指標でバランス良くポイントを獲得しています。Twitter指標だけに偏っていない、頼っていないこともまたロングヒットの条件を満たしていると言えます。
・三浦大知「Blizzard」がビルボードジャパンソングスチャートで成功を収めた、その5つの理由を探る(3月24日付)より
逆に言えば、Twitter指標の好調さは前週の勢いを出来る限り落とさずに済むことには有効であれど、他指標が伴わなければあまり意味を成さないということ。そしてTwitterは主にファンがつぶやくことでカウントされる、ファンの意識が高く反映された指標であれど、一方で動画再生やストリーミングは、ファンがミュージックビデオ収録のDVDを同梱したシングルCDを購入することを踏まえれば、どちらかといえば曲に興味を持ったものの購入までには至れないと考えているかもしれない、その曲や歌手のライトなファン(以下ライト層)が主に用いるものと言えるでしょう。そうなると、コアなファンのみならずライト層も触れる手段がある作品のほうが他指標も伸ばすことが出来、ロングヒットにつながるのではないかと思うのです。
ブリ活等、Twitterがチャートアクションに寄与した曲を紹介したブログエントリーに関しては、特にTwitter活動に積極的な(もしくはそれを目指していきたい)歌手のファンの方々が引用等してくださっていますし、事実ファンの活動が形になっているものと、データから客観的に捉えることも出来ます。ただ、たとえば今回例示したA.B.C-Zにおいては、デジタルに明るくない所属事務所の姿勢がどうしてもチャートアクションのネックになることが、三浦大知「Blizzard」と比較すると明らかだと思うのです。仮にチャートアクションで強くなってほしいと思うならば、ライト層(およびコアなファン)が接触可能なデジタル指標群を稼ぐべく、所属事務所側に提言してみてはいかがでしょうか。ファンの熱意で事務所が動き、日本のエンタテインメントが前進するならばものすごく格好いいことだと思うのです。デジタル解禁によりシングルCDセールスが落ちるものと上層部は捉えているのかもしれませんが、特にアイドルの場合コアなファンは確実にシングルCDを(グッズとしての意味合いも強いゆえ)購入するでしょうし、より広く聴かれたほうが芸能界で長く活動することが出来るのではと思うのですが。
話は大きくなってしまいましたが、しかしながら今回の件は"AKB48と坂道グループの差"にも当てはまるんですよね。
それぞれの楽曲の社会への浸透度(イコール社会的ヒットに至っているかどうか)を踏まえるに、"シングルCDセールス指標加算2週目における総合ポイント前週比"の高低は大きな尺度になるものと考えていますし、またAKB48はデジタル解禁しているものの坂道グループより低いことを踏まえれば、坂道グループはコアなファンのみならずライト層も支えていることが、以前のエントリーにおける一覧表から見えてきます。