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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

テイラー・スウィフト『Reputation』、初週大ヒットでも拭えぬ”フシン”

ビルボード、最新12月2日付アルバムチャートを制したのは、やはりテイラー・スウィフトでした。

ビルボード・ジャパンでも報じられています。

なおこの翻訳の元になるのは下記の記事であり、ここでは純粋な売上のみが記載されています。曲単位のデジタルダウンロードおよびストリーミング、それぞれのアルバム単位への換算分を含めれば123.8万ユニット(123.8万枚相当)となります。

売上において、『1週間でミリオンを突破した4作目のアルバム』『発売から1週間あまりでエド・シーラン『÷(ディバイド)』のトータル・セールス93.1万枚(11月16日までの集計)を抜き、今年全米で最も売れたアルバム』(上記記事より)ということで、テイラー・スウィフトが如何に強いかが解ります。

 

ただ、ここ最近自分が彼女に抱く”違和感”は、結果的に拭えずじまいなのです。その理由は3つ。

 

ひとつは米ビルボードの公式発表の”タイミングの遅さ”。上記ツイートの発信時間は日本時間の11月21日(火曜)10時40分となっているのですが、これはいつもに比べて遅いのです。通常は日本時間の月曜早朝にアルバムチャートトップ10、同火曜早朝にソングスチャートトップ10が速報で流れるのですが、なぜ今回はソングスチャートの後になって報じられたのか、疑問が残ります。おそらくは現地時間の日曜、日本時間の月曜午前に開催されたアメリカン・ミュージック・アワードについて詳報を発し続けているタイミングに、ミリオン達成の報道が紛れ込んでしまうことを避けた米ビルボード側の配慮なのかもしれませんが、だからといってアワードの存在が報道タイミングの慣例を変えていいという理由にはならないはずです。

2つ目は、セールスの”減少”。『これまでリリース初週に『1989』(2014年)が128.7万枚、『レッド』(2012年)が120.8万枚、『スピーク・ナウ』(2010年)が104.7万枚』(上記ビルボード・ジャパンの記事より)を売り上げているのですが、『1989』に比べておよそ7万枚売上が落ちています。ミリオン超えの売上に対し7万枚は微々たる数字かもしれませんが、『1989』がアルバムからの先行発表曲2曲だったのに対し、『Reputation』は倍の4曲。曲を気に入った人が多いほどアルバム購入につながることを意識しての矢継ぎ早な投入だったのかもしれませんが、それが結果につながっていないとみていいのかもしれません。

そして3つ目は、その先行曲の”チャートアクションが芳しくない”ということ。通常はアルバム初登場週に先行曲もランクアップする傾向があるのですが(最近では『The Thrill Of It All』が初登場1位となった11月25日付チャートにおいて、サム・スミス「Too Good At Goodbyes」が10→4位に躍進しています)、『Reputation』からの先行曲4曲の動向をみると、発表順に「Look What You Made Me Do」が37→31位、「...Ready For It?」が30→18位、「Gorgeous」が85→89位、「Call It What You Want」が27→73位。「Look...」および「...Ready...」が前週より伸びている一方で他2曲は失速しているのが気になります。これは『Reputation』が発売直前になってストリーミング同日配信を取り止めたという事情も影響していますが(ヒップホップで顕著なのですが、アルバム初登場週に先行曲のみならずアルバム収録曲のほぼすべてがストリーミングの上昇に伴いソングスチャートにランクイン、もしくは駆け上がる現象が多く見られます。たとえば5月6日付ソングスチャートでは、ケンドリック・ラマー『DAMN.』収録全曲がソングスチャートトップ100にランクインしました)、仮にストリーミングを同日解禁していたとして、「Gorgeous」等が伸びたのかが気になるところ。つまり、これぞという核となる曲がないためにソングスチャートトップ10に相次いで曲を送り込めない、もしくは1位を獲得したとはいえ早々の失速と今週の上昇幅の大きくなさをみるに少なくとも「Look What You Made Me Do」は”これじゃない”と思われている...というのが言えるのではないかと。

 

無論、最終的にはチャートアクションではなく中身を聴いて判断しないといけない部分はありますが、今作『Reputation』は初登場週こそ華々しくあれ、2週目以降の動向が正直気がかりです。自分が彼女に抱いていた懸念材料は、特に3つ目の理由により先行曲の”不振”面が拭えていないことに加え、下記エントリーの記載以降に出てきた(偶然だといえ)このような指摘も含めれば、”不信”という点も払拭出来ません。

それら”フシン”が、2週目以降のアルバムセールスを急激に落とす要因になるとしたら、テイラー・スウィフトの音楽面等での方針転換もあるかもしれません。