イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

クリーシェイ「Rush (Full Crew Mix)」

※訂正(1月11日)

歌手名表記、正式にはクールシャイではなくクリーシェイでしたので訂正しました。ご指摘いただいたu-knoさんに感謝申し上げます。

 

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CD好きで、過去の作品から良質なのを見つける自称”掘り師”としては、現在開催中のGEO店舗における【280円以下の中古CDが2枚で100円】というキャンペーンが非常に魅力的なのです。たしか今月末までと記憶していますし、もしかしたら全国的なものではないかもしれませんが、稀にこれが50円?というお宝もあるので足繁く通うことをお勧めします。

で、昨日購入したこの作品が当たりだったのでここにご報告。

オリジナルアルバムではありませんが侮ることなかれ。2枚組38曲という大ボリュームゆえ、たとえばメアリー・J・ブライジ「All That I Can Say」のイントロが半分程度に割愛されるという萎えポイントはありますが、このイギリス発のコンピレーションの嬉しい点は、当時流行のUS産に対して良質と言われていたUK産R&Bが多く収録されていたり、また残念ながらアルバム発売に至れなかった歌手も収録されているという点にあります。特に気に入ったのはこちら。

・クリーシェイ(Kleshay)「Rush (Full Crew Mix)」(1998 (1999?))

シングル「Reasons」(→YouTube)と「Rush」を残し、終ぞアルバムリリースに至れなかった女性3人組。その後3人は個々に活動し、リア・チャールズ・キングは現在テレビ番組等で活躍しているとか。そのリアが自身のバイオグラフィーできちんとクリーシェイ時代に触れている他、彼女のYouTubeアカウントでは「Rush」(のオリジナル版)を紹介しています。

オリジナル版がクールな仕上がりなのに対し、フル・クルーによるリミックスはウワモノの使い方が完全フロア仕様に。大サビでは当時大ヒットしたブランディ&モニカ「The Boy Is Mine」よろしくハープ的な音をまぶし、心地よい(いい意味であざとい?)感じに仕上がっています。こういう曲、少し大袈裟かもしれませんがクラブの流れを変えたり爆発させるという意味では持っていて重宝するんじゃないかと思いますね。

フル・クルーは当時リミックスでその名をよく見かけており、たとえば2ステップの女性歌手、ロミーナ・ジョンソンによる「Never Do」のリミックス(feat. KO)ではブギー・ダウン・プロダクションズの大ネタ「South Bronx」をサンプリングするなど、ネタのセレクトが大胆ではあるのですがそれでもやらしすぎないのが心憎いなあと当時から思っていたものでした。

その他フル・クルーによるミックスはこちらでチェック出来ます。

 

また面白いのは、「Rush」のソングライター陣が凄いということ。その名を連ねるのはバリー・イーストモンド(ディスコグラフィーこちら)、そしてゴードン・チェンバース(同じくこちら)、など。バリーとゴードンが共同で手掛けたアニタ・ベイカー「I Apologize」(1994)はグラミー賞を獲得し、ブランデー、タミア、グラディス・ナイト&チャカ・カーンという豪華メンバーによる「Missing You」(1996)という美しいバラードも生まれました(共にプロデュースはバリーの単独名義)。

 

つまりは制作陣も豪華、そしてフロア向けに良質リミキサーもついていた(「Reasons」にもフル・クルーが関与してました)…にもかかわらず、残念なことにクリーシェイはアルバム発売すら出来なかったのです。理由は解りませんが、如何にこの業界が世知辛いかと痛感させられます。イギリスではスマッシュヒットしたのですけどね。

そこに手を差し伸べてくれたのが今回見つけたアルバム『Sisters Of Swing 99』と言えるかもしれません。クリーシェイが遺した音源が収録される形で救われたことにより、わずかでもR&Bファンには”クリーシェイ”の名が記憶に刻まれたわけですから。少なくとも自分はこの良質リミックスをいずれラジオなどで使いたいなと思った次第です。