一昨日の『NHK紅白歌合戦』、個人的には非常に楽しめました。椎名林檎さん、郷ひろみさん、星野源さん等の高いパフォーマンス力、MISIAさん、島津亜矢さん、今井美樹さん等の”聴かせる”力など。アニメ紅白の中だるみ感、TOKIO演奏時の音声トラブル、細川たかしさんの他歌手演奏中の雑談問題等細かな疑問点はあったのですが、それでも良質な番組であったことに変わりありません。
ただ、紅白歌合戦で用意されたウラトークチャンネルでの”一時中断問題”は酷い、とはっきり断言させていただきます。
一時中断した時間帯は、TOKIOや関ジャニ∞のメンバーがウラトークチャンネルのブースにゲスト出演した部分であり、いわゆるジャニーズ事務所のネットへのアンフレンドリーな姿勢が理由にあることは間違いないでしょう。その姿勢は、日本人なら違和感を覚えども納得せざるを得ないところかもしれませんが、それまでバナナマンが盛り上げてきたウラトークチャンネルの雰囲気を、はっきり言ってぶち壊すNHKの姿勢は看過出来ません。そこまでして一事務所を必要以上に”立てる”べきなのか、と思ってしまいます。
波風を立てないのが大人のやり方であることは百歩譲って飲み込んだとしても、ならばそもそもウラトークチャンネルにその事務所所属歌手を迎えなければいいと思うのですが、一時中断の時間帯にテレビではウラトークチャンネルのブースとのやり取りを設けていたので、迎えることは演出上仕方なかったのかもしれません。しかし他の時間帯が基本的にOKだったことを考えれば、一事務所の必要以上のネット嫌い(と言い換えても過言ではないその姿勢)がNHKを押さえ込んだのかもしれませんし、それ以前にNHK側は”慣例”として速やかに応じたのだろうとも考えられます。
とはいえ…観ていて本当に悲しくなりました。先に”日本人なら違和感を覚え共納得せざるを得ない”と書きましたが、それは日本人の多くがその事務所がネット嫌いであることを頭の何処かで薄々解っているゆえにむりくりにでも納得出来るから。ならば事情を知らない人たち…たとえば日本に興味を示した外国人などがこれを観たらどう思うでしょう。音楽チャートの画像、YouTube、配信やストリーミング…日本人の曲に興味を示してもこれらネットを介してその事務所所属歌手の作品に触れることが出来ないのは今の時代に逆行しておりアンフレンドリーの最たるもの。『紅白』は昨年、【ザッツ、日本! ザッツ、紅白!】というテーマを掲げましたが、その事務所の(権利と称した)あまりに横暴な姿勢とその圧力に屈したもしくはおもねいたNHKサイドという、不可解がまかり通ることを”大人の事情”とグレー化してしまう事態のことを【ザッツ、日本!(これが日本らしさなのね)】と捉えてしまったならば、そんな日本は世界から笑い者にされるだけだと思うのです。そして十分な環境での発信が許されない日本の音楽、芸能はさらなるガラパゴス化を迎えてしまうのではないかと危惧せざるを得ません。
ジャニーズ事務所は良質なエンターテイナーが揃っているだけに(井ノ原さんの司会もきちんと抑揚や楽しさがあって好かったと思っていますし、各年の邦楽ベストに選んでもいます。決して所属歌手を嫌っていることではありません)、その事務所の姿勢は本当に残念です。そして、こういう一事務所の不可解なやり方を一番打破出来る立場にいるのは、利害関係や視聴率を本来あまり考慮しなくてもよいはずのNHKなのではないでしょうか。
個人的には、メディア・レコード会社・芸能事務所が集まってネットとの向き合い方についてきちんと話し合うこと、著作権等の時代に即した改善、そして市井への”ネットと権利”についての道徳教育が必要だと思っています。そのどれもが実現性に乏しいだろうことは承知の上で、それでもそれを行わないといつまで経っても事態は好くならず、先述したガラパゴス化は加速の一途だと思ってしまいます。