イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ラジオからビルボードジャパンソングスチャート紹介枠が消える? ならば個人的なラジオ番組案を提示してみる

(※追記(10時50分):一部文言を追加しました。)

 

以前から疑問視していたラジオ番組が終了します。

いや、むしろ疑問視していたのは、毎週更新されるチャートの属性を無視するかの如く先月から連続して休止させたニッポン放送の姿勢にあるのですが。この疑問については以前から幾度となく記しています。

同枠の新番組開始は11月。"一ヶ月の休養を経て"とのことで、仮に番組が続いていたとしてもプロ野球の日本シリーズ等が優先され結果的に休止したと想像出来ます。そして新しい番組からはチャート紹介要素が外れるとのこと。

ビルボードジャパン関連では、在阪放送局のFM COCOLOBillboard PREMIUM PLUS』(金曜23時)にも変更が。担当DJのKIYOMIさんが降板し、10月以降は八木早希さんが担当、時間帯も金曜22時台へ移行します。番組ではビルボードライブ大阪のライブ情報を発信しながら、時にチャート紹介も行っていたと伺っています。ただ、秋以降この番組がリニューアル等実施するかは不明であり、チャート紹介の縮小への懸念は拭えません。

 

この2つの番組にビルボードジャパンがどれだけ関わっていたのかは不明です。スポンサーとなっていたならばおそらく、前者においては局が番組を柔軟に休止出来る時間帯に据えることはなかったでしょう。しかし番組名に"ビルボード(ジャパン)"と記載されていれば、一聴してスポンサーだと思うリスナーは少なくないかもしれません。

 

10月以降のラジオ改編情報が出揃っていないゆえ断言は出来ませんが、ビルボードジャパンのチャートを追いかける番組を他に聞かないため、この秋以降はゼロかもしれません。テレビ番組では『ミュージックステーション』(テレビ番組 10月以降は金曜21時)や『めざましテレビ』(フジテレビ 月-金曜 5時25分)でも紹介されている一方、じっくりその中身をチェック出来るラジオ番組がないのは、ビルボードジャパンソングスチャートの認知度を高められない、そして社会的なヒット曲はどれか伝わりにくいという点で機会損失と言わざるを得ません。

 

あくまで個人的な希望を提案するならば、イレギュラーな放送に潰れることのない枠(それも聴取率にこだわらない局で)、出来るならばチャート更新時間の水曜正午前後にも枠を用意出来るところが好いでしょう。理想を申せば、NHK-FMの21時半もしくは16時40分枠の平日帯を金曜だけ(即時性を踏まえれば木曜のほうがより好い)ビルボードジャパンソングスチャート紹介番組とし、水曜12時30分枠の『ごごラジ!』はラジオ第1と同時放送のためFMだけを速報紹介枠とするのが最良かと。NHKでの放送ならば特番も少なく、ビルボードジャパンがスポンサーとして関わることもなく、NHKがチャートをきちんと追いかけていると訴求出来る点でもアリだと思うのです。同局の『NHK紅白歌合戦』がビルボードジャパンソングスチャートを強く意識した人選を行っていると思うゆえ尚の事。是非検討していただきたいと思います。

『凪のお暇』VS『これは経費で落ちません!』、今クール満足度2強対決は主題歌で大きな差が

一昨日最終回を迎えた連続ドラマ『凪のお暇』(TBS)は高い評判を集めており、今週火曜に発表される視聴率および後に出る総合視聴率が気になるところですが、実はこの『凪のお暇』の裏で、同様に高い評判を集めていたのが多部未華子さん主演による『これは経費で落ちません!』(NHK総合)。視聴率は『凪のお暇』に及ばないものの、コンフィデンス誌のドラマ満足度調査によると『凪のお暇』と『これは経費で落ちません!』が今クールの満足度2強とのこと。この2作品が別の時間に放送されていたならと思うのは贅沢な悩みでしょうか。

 

弊ブログでは以前、『凪のお暇』主題歌のmiwa「リブート」について、そのチャートアクションを紹介。

あれから2週間が経過、最新のCHART insightはこのようになっています。

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ビルボードジャパンソングスチャートは15→18位と推移。ストリーミングが安定し、且つレンタル解禁後のルックアップの伸びを踏まえるに、今日までを集計期間とする次回9月30日付チャートではこの位置をキープするか伸びる可能性もあるでしょう。

 

一方、『これは経費で落ちません!』主題歌、阿部真央「どうしますか、あなたなら」はどうでしょう。

7月26日金曜、ドラマ初回放送日にミュージックビデオフルバージョンが公開。同日深夜ラジオOA解禁、翌27日にはデジタル先行配信となり、8月21日にCDリリースおよびレンタル解禁されたこの曲。全方位抜かり無く訴求するこの曲のCHART insightをみると。

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シングルCDセールス初加算週となる9月2日付ソングスチャートで74位を記録したものの、100位以内のランクインはこの1週のみ。ラジオエアプレイも同日付で5位に達しているのですが他指標が伸びていない状況です。前のシングル「君の唄(キミノウタ)」(→CHART insight)は5月20日付で最高38位を記録したものの、この曲においても100位以内在籍はシングルCDセールスが初加算となったこの1週のみであり、実に勿体ないと思うのです。

元来NHKがタイアップ曲に対して宣伝をする局ではないという事情も影響しているのかもしれませんが、「君の唄(キミノウタ)」そして「どうしますか、あなたなら」に共通しているのはストリーミングおよび動画再生の両指標で一度も300位以内に入っていないということ。接触を示す指標が弱い状況は、発売と同日にレンタル解禁されていながらもルックアップが弱いことからも見て取れます(シングルCDセールス初加算週において、「君の唄(キミノウタ)」はシングルCDセールス33位に対しルックアップは77位、「どうしますか、あなたなら」は56位/97位)。ドラマ主題歌の影響でしょうか、「どうしますか、あなたなら」はダウンロードで4週連続100位以内をキープしており所有の側面では一定の水準に達しながらも接触指標群が弱すぎる状況を考えるに、阿部真央さんにおいてはライト層の拡大が重要なのかもしれません。

 

とはいえ、「どうしますか、あなたなら」は先週末の日本でのSpotifyバイラルチャートでmiwa「リブート」のひとつ下となる9位にランクイン。ドラマの影響でSNS等にてシェアされたことが如実に表れています。Spotifyの再生回数は現状においてビルボードジャパンソングスチャートにおけるストリーミング指標のカウント対象外ではありますが、今週放送の最終回が高い評判となればSpotify以外でも上昇し、接触指標群を稼いでふたたびソングスチャート100位以内へ浮上する可能性もあるでしょう。ライバルである『凪のお暇』の放送は既に最終回を迎えており、『これは経費で落ちません!』のドラマ自体への注目は高まるかもしれません。

9月21日の夜を覚えているかい?…アース名曲をはじめとするカーク・フランクリンのゴスペルカバー集

今日は9月21日。この日の夜を振り返る曲が、アース・ウインド&ファイアー「September」。

一昨日放送の『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)でtofubeatsさんがこの曲関連の縛りDJを披露していたのもあって、否が応でもこの曲が頭から離れません。

tofubeatsさんの当日のミックスでは多くのカバーやサンプリング曲が披露されていますが、個人的にはカーク・フランクリンによるゴスペルカバーが大好きなので今日はそちらを紹介。アース・ウインド&ファイアーのトリビュートアルバムでこの曲を担当したのがカーク・フランクリンというのは面白いですね。

カーク・フランクリンはビル・ウィザース「Lovely Day」もカバー。「September」共々、以前弊ブログにて紹介しています。

アレンジは原曲に(比較的)忠実でもきちんとゴスペルの要素を取り入れ、クワイアにより楽曲に希望を注入するのがカーク・フランクリンの特徴ですが、一昨年の映画『The Star』に収められたクリスマスキャロル「We Three King (邦題:われらはきたりぬ)」のカバーについては、原曲が1857年と古すぎるためか、自己流な解釈となっています。

出だしがほんの少し、ドクター・ドレー feat. スヌープ・ドッグ、コラプト&ネイト・ドッグ「The Next Episode」っぽく感じるのは自分だけでしょうか。カーク・フランクリン独特のゴスペル味付け、聴くときっと癖になることでしょう。なおカークは今日から3日間、ビルボードライブ東京でライブを開催。チケットはまだある模様なので時間等のある方は是非。

 

ちなみに、 カーク・フランクリンにカバーされたアース・ウインド&ファイアーは、5年前の冬にセプテンバーならぬ「December」としてセルフカバーしています。 

ここで振り返っているのは12月25日…つまり「December」はクリスマスソングになったという次第。

新曲のヒットが過去曲へ波及、シングルCDセールス加算2週目の総合ポイントが鍵…9月23日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

9月9~15日を集計期間とする、9月23日付のビルボードジャパンソングスチャートの上位2強、その"頂上決戦"については昨日記載しました。チャートの仕組み等も理解していただけるならば幸いです。

毎週木曜は前日に発表される最新ビルボードジャパンソングスチャートの上位陣をざっと、でも深く振り返るブログを書きますと先週宣言したばかりですが、今週木曜は頂上決戦を優先した次第。というわけで今週は一日遅れですが、ソングスチャートを押さえていきましょう。

 

・米津玄師「馬と鹿」が関連曲へ波及

とはいえ頂上決戦の影響は大きく、最新9月23日付ビルボードジャパンソングスチャートには米津玄師さんの楽曲および提供曲が多数ランクインしています。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) 米津玄師「馬と鹿」

9位 (9位) 米津玄師「Lemon」

10位 (12位) Foorin「パプリカ」

11位 (11位) 菅田将暉まちがいさがし

45位 (69位) 米津玄師「海の幽霊」

48位 (43位) DAOKO × 米津玄師「打上花火」

50位 (初登場) 米津玄師「でしょましょ」

54位 (40位) 米津玄師「パプリカ」

76位 (95位) 米津玄師「Flamingo」

80位 (78位) 米津玄師「アイネクライネ」

86位 (88位) 米津玄師 + 菅田将暉「灰色と青」

92位 (再登場) 米津玄師「LOSER」

米津玄師さんの作品が10曲、提供曲が2曲の計12曲がチャートイン。新曲が登場すると過去曲も牽引されるのはストリーミングが強い曲によく見られるのですが、ストリーミング未解禁(「打上花火」は除く)でこの状況というのは、米津玄師さんの作品がライト層に広まっているというより、ライト層がコアなファン化している証拠ではないでしょうか。また、「馬と鹿」のカップリングである「でしょましょ」が50位に初登場したことは、曲単位ではなくシングル全曲をデジタルで買おうとするユーザーが多いことが見て取れます。「でしょましょ」はダウンロード7位に入り、チャート構成比の全てがダウンロードで占められています。

 

Official髭男dism「イエスタデイ」が過去曲を牽引

総合13位ですがストリーミングは11位ととなりトップ10を逃しています。しかしこの曲の登場が功を奏したか、「Pretender」(総合3位)の総合ポイントが前週比101.1%と僅かながら上昇。「宿命」(総合7位)は夏の高校野球終了に伴ってか3週連続でダウンするも前週比93.4%となり前2週の80%台からは回復、新曲の登場により過去曲を聴くという流れが生まれているように思います。「Pretender」の再生回数も前週5670277回今週5725402回(リンク先はそれぞれビルボードジャパンの記事より)と増加しています。

 

乃木坂46、坂道グループの水準に回復

シングルCDセールス加算2週目の総合ポイント…それこそ昨日のブログエントリーで次週注視すべきと指摘した部分ですが、今作「夜明けまで強がらなくてもいい」は20%台に戻してきました。シングルCDセールスに係数が用いられるようになった2017年度以降の乃木坂46のチャートアクションは以下のエントリーでまとめていますが、坂道グループの水準と思しき20%をクリアしています。

それでも2作前のシングル「帰り道は遠回りしたくなる」(2018)と比べると、シングルCDセールス加算2週目の総合ポイント、ポイント前週比、総合および各指標順位、CD売上枚数およびCD売上前週比は全てダウン。今作でどこまで持ちこたえ次作へつなげるか注目です。

 

森口博子GUNDAM SONG COVERS』アルバムチャートトップ10返り咲き

こちらはアルバムチャート。

前週デジタル解禁されたことでトップ10へ返り咲きました。たとえばiTunes Storeでアルバム単位での購入が出来ないことは以前指摘したのですが。

今回、アルバムチャートを構成するダウンロード指標はきちんとカウントされています。今作のロングヒットを踏まえれば、アルバム第2弾の可能性もあるかもしれません。

ガンダム関連ではこちらも。

 

・手塚翔太「会いたいよ」、次週ランクダウンは必至?

ドラマ『あなたの番です』に主演した田中圭さんが役名の手塚翔太名義でリリースした「会いたいよ」。今週のチャートではドラマ最終回直後からの1週間ということもあり堅調に推移。総合チャートこそ10→19位とダウンするも前週がシングルCDセールス初加算週ゆえであり、総合ポイント前週比は65.8%でその反動は小さかったとみていいでしょう。CHART insightをみると、ソングスチャート上位20曲中8指標が全て100位以内なのはOfficial髭男dism「Pretender」「宿命」そしてこの「会いたいよ」のみであり、バランスよく獲得しています。

しかし来週のダウンは必至かと。ドラマの影響が薄れることもありますが、問題は動画再生指標。実は「会いたいよ」のミュージックビデオは期間限定であり、現在は削除されています。削除のタイミングは不明ながら、今週44位だった同指標が100位未満になる可能性は高いでしょう。ドラマや俳優との公開期間の取り決めもあったのかもしれませんが、もしかしたらソニー・ミュージックの戦略なのかなと考えてしまいます。

初回生産限定盤は「会いたいよ」のほかに”手塚翔太”が歌う新曲が2曲、合計3曲に加え、それぞれの楽曲のインスト音源も収録され、付属するDVDにはすでに公開されているMusic Video”ドラマ・スペシャルカットVer.”に加えて、その映像からドラマ映像を抜き、田中圭演じる手塚翔太のノーカット映像を収めたMusic Video”ノーカットVer.”や Music Videoのメイキング映像も収録される。

このイベントは既に終了済なのですが、残っているリンク先に貼られていた「会いたいよ」のドラマ・スペシャルカットバージョンは消えており、且つ形跡が残った状態。映像盤同梱CDの購入を促す目的もあるのでしょうが、ミュージックビデオの消去はあたかもそれがなかったことになってしまうようで寂しいですね。ソニー・ミュージックの…と書いたのは、Foorin「パプリカ」の動画再生指標未加算の件等今年幾度となく指摘しているからであり、チャートへの意識やユーザーフレンドリーな対応を願うばかりです。

 

今週のトップ10はこちら。

次週はAKB48サステナブル」の首位は堅いとみています。オリコンデイリーランキングではシングルCDセールスが前作「ジワるDAYS」の1割増となっており、「ジワるDAYS」がシングルCDセールス初加算週の42895ポイントを超える可能性も。とはいえ大事なのはシングルCDセールス加算2週目の総合ポイントであり、「センチメンタルトレイン」(2018)以降3作続けて2週目が3~4%台に落ち込んでいるAKB48にとっては、ここをどう改善するかが鍵。個人的には『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場資格獲得もこの点にかかっているように思います。

シングルCDセールス2位も総合で逆転、米津玄師「馬と鹿」が嵐「BRAVE」に勝った理由は? 9月23日付ビルボードジャパンソングスチャート"頂上決戦"をチェック

9月9~15日を集計期間とする、9月23日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表。ソングスチャートは米津玄師「馬と鹿」が制しました。

ビルボードジャパンのツイートから想像出来るように、今週は嵐「BRAVE」との接戦が予想されていました。個人的には前週のチャート振り返りの際、嵐に軍配が上がるものと思っていたのですが、蓋を開けてみると42603ポイント対35762ポイントと予想以上の差が生まれていました。

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(※「BRAVE」は昨年のテレビ番組で既に披露されていたため、昨年の段階でTwitter指標が盛り上がっていたものと推測されます。)

 

ではなぜ、米津玄師「馬と鹿」の逆転劇が生まれたのでしょう。昨日はこのようなことをツイートしました。

一部のファンが納得しないと書いた理由は、CD販売手法について互いの一部(だろう)ファンが相手を非難したのを目にしたこと、また9月23日付オリコン週間合算ランキングでは嵐「BRAVE」が勝っているためにそのような見方をする方がいらっしゃるのではないかと考えたため。しかしながらオリコン週間合算ランキングは所有、とりわけCDにこだわる点でビルボードジャパンソングスチャートよりも社会の流行の鑑になりにくいと以前指摘しています。

 

さて、米津玄師「馬と鹿」および嵐「BRAVE」、両作品ともこれまでよりシングルCDセールスが高いのです。「馬と鹿」についてはドラマ主題歌として似た立場にある「Lemon」(2018)と、「BRAVE」については前作「君のうた」(2018)とそれぞれ比較すると。

米津玄師「馬と鹿」のシングル・セールス初週売上は431,270枚で、同「Lemon」は205,169枚と倍以上のセールスを稼いだが、一方の嵐「BRAVE」は708,595枚で、前作「君のうた」は382,812枚とこちらも倍近いセールスをマークし、シングル1位となった。

「馬と鹿」「BRAVE」は共に3種リリースながら、「馬と鹿」は映像盤同梱、ペンダント添付盤および通常盤に分かれ、「BRAVE」はBlu-rayおよびDVDの映像盤(内容は同一)同梱および通常盤が用意。それぞれCD収録内容は同じであり、特に嵐においては映像盤付を購入する際はBlu-rayかDVDどちらかを選べばよいだろうゆえ、この状況下でセールスがほぼ倍に達したのには驚きました。おそらく、両作品とも封入されたシリアルナンバーを使ってコンサート(ツアー)予約が可能なことから、複数買いが生まれたと想像出来ます。

総合ポイントにおけるシングルCDセールス指標の割合を「馬と鹿」が6割、「BRAVE」が8割と仮定すると、同指標での獲得ポイントは「馬と鹿」が25562、「BRAVE」が28610。ここからシングルCDセールス1枚あたりのポイントは「馬と鹿」が0.059、「BRAVE」が0.040となります。シングルCD1枚あたりのポイントに差が生じているのは各作品に係数が用いられているため(詳しくは【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)。この係数の算出方法については公開されておらず、もしかしたらこの点をもってビルボードジャパンソングスチャートへの不信感を唱える方がいらっしゃるかもしれませんが、係数という概念がなければ先のオリコン合算ランキング同様、シングルCD売上枚数至上主義的な形になってしまいます。そして今回「BRAVE」の係数が高くなかった理由を考えるに、ルックアップの順位が考えられます。

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パソコン等に取り入れた際のインターネットデータベースへのアクセス数を示すルックアップにおいて、「BRAVE」は「馬と鹿」に敗れているのです。しかも「馬と鹿」は(おそらく所属先のソニーの方針により)レンタル解禁が17日後に設定されている一方、「BRAVE」は発売と同日解禁(これはジャニーズ事務所経営のレコード会社でも異例のこと。詳しくは6月3日付ビルボードジャパンソングスチャート首位曲からはじまる、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCDの展開手法を疑問に思う(5月30日付)をご参照ください)。レンタル店は昨夏の段階でおよそ2000店あり、1店舗あたり10枚分が集計期間中に借りられたとすれば2万枚。すなわち、セールス+レンタルで人々の手に渡ったCDは「馬と鹿」の43万に対し「BRAVE」は73万であり、ルックアップは「BRAVE」が勝ると思うのが自然でしょう。しかしそうはならなかったのは、購入者のインポート率も考慮する必要がありますが、ともすれば「BRAVE」のユニークユーザー数(実際にCDを買った方の数。仮に100万枚売れたとしても一人平均10枚購入したならばユニークユーザー数は10万となります)は前作とあまり変わらず、複数買いが増えたゆえに枚数の割にルックアップが上昇しなかったと言えそうです。これが前作「君のうた」同様、通常盤にカップリング曲が用意されていたならば状況は違っていたことでしょう。ルックアップはレンタルの動向と共にユニークユーザー数を推測可能な要素であり、ビルボードジャパンはこの点を踏まえ係数に差を設けた可能性があります。逆に「馬と鹿」は「Lemon」の倍以上のセールスながら、ユニークユーザー数も倍近くに達したのかもしれません。

 

「BRAVE」はシングルCDセールスおよびTwitter指標で「馬と鹿」に勝るものの、その他では敗れています。ジャニーズ事務所所属歌手であり、且つ同事務所が運営するレコード会社発のためミュージックビデオのティーザーは用意されず動画再生指標はカウントされません。またレコチョクでは嵐の楽曲一覧の中に「BRAVE」が含まれるものの、イントロのみもしくはサビのみという部分配信となっており、ダウンロード指標も300位未満に。デジタルに不便な状況を続ける事務所の姿勢が、今回の逆転を許したと言われてもおかしくないかもしれません。

一方の「馬と鹿」はストリーミング未解禁こそあれど、ダウンロードとミュージックビデオも加算され、チャート構成比において前者はおよそ2割、後者は5%程度を獲得。最新チャートではシングルCDセールス初加算週にもかかわらず、ダウンロードは前週から1万近くも増加しています。この理由はラジオエアプレイの動向からも読取可能。

主題歌として書き下ろしたドラマ「ノーサイド・ゲーム」の盛り上りも話題となるなか、同最終回とシングルリリースが重なった今週、チャートイン5週目にして期待通りの堂々1位を飾った。事前アナウンス無しでドラマ内での楽曲初解禁に始まり、物語が白熱するに準じてシンクロ率の高い楽曲への注目度も上げつつ、それが最高潮に達した最終話を迎える週にリクエストも倍増させシングルリリースと、1位獲得に向けた完璧なシナリオであった。

「馬と鹿」における、突如のダウンロード解禁→ミュージックビデオ解禁→シングルCDリリースというタイミングは、ミュージックビデオ解禁が「Lemon」に比べ1週間ほど遅くなりましたがほぼ「Lemon」の流れを踏襲、そしてドラマの最終回放送週のシングルCDリリースも同様。これが楽曲の注目度を高め、フィジカル(CD)もデジタルも伸ばした理由と言えます。この戦略はデジタルを解禁しているからこそであり、「BRAVE」では採用することが出来ませんでした。またラジオエアプレイについて、嵐のシングルCDセールス初加算週の順位が「夏疾風」33位→「君のうた」46位→「BRAVE」56位と落ちていることも気になります。

 

ラジオエアプレイ共々、ウェイトがそこまで高くないと思しきTwitter指標でも「BRAVE」の強くなさが目立ちます。いや、「馬と鹿」には勝ってはいるのですが同指標は3位。同じジャニーズ事務所所属のA.B.C-Z「DAN DAN Dance!!」(9月25日発売)に敗れているのです。

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チャート構成比がTwitterのみで占められた「DAN DAN Dance!!」の獲得ポイントは1664。嵐「BRAVE」のTwitter指標は全体の4.5%と推測され、Twitter指標での獲得ポイントは1609前後。これはA.B.C-ZのファンによるTwitter活動の凄さとも言えますが、ジャニーズ事務所内でも屈指のファン数を誇るであろう嵐がTwitter指標で、それも呟きやすい1単語の曲名で、これから新曲をリリースするA.B.C-Zに敗れるのは意外でした。仮に嵐ファンがTwitter活動に本腰を入れていたならば同指標で2000ポイントは余裕で叩き出せたのかもしれません。Twitter活動もある意味デジタルの一環であり、嵐のデジタル全体の強くなさが露呈した形です(それでも1600ポイント以上稼ぐのは立派ではあるのですが)。

 

 

今回の頂上決戦を振り返るに、嵐「BRAVE」がシングルCDセールス一点集中型という旧来からの手法が米津玄師「馬と鹿」が採った段階型という戦略に敗れたことの意味は大きいと思います。デジタル解禁することの意味の大きさは勿論(ですが、米津玄師さんがストリーミングを未だ解禁していないことには疑問があることについてはきちんと言及しないといけません)、シングルCDセールスが急増してもその内容が伴っていないと他指標や係数のアップにつながらないことも判明。チャートに不服を申し出る方もいらっしゃるかもしれませんが、ジャニーズ事務所所属歌手においてはたとえばダウンロード指標で上位入りした山下智久「CHANGE」の例もあり、また同曲からはダウンロード解禁がシングルCDセールスを駆逐しないことも証明されています。

ならばジャニーズ事務所や経営するレコード会社には是非とも、デジタルについて前向きに考えていただきたいと強く願います。またファンは事務所側に前向きな提言をし続ける必要がありますが、デジタルに明るくならないうちはルックアップやTwitter、ラジオエアプレイには局へのリクエストの形で、出来る範囲で活動することを勧めます。

 

もうひとつ。楽曲が真にヒットしているかを判断する基準のひとつが、シングルCDセールス指標加算2週目の動向。下記ブログエントリーにその理由を記載しています。

シングルCDセールス指標加算2週目のポイント前週比は米津玄師「Lemon」が54.8%に対し嵐「君のうた」は14.7%。「馬と鹿」も「BRAVE」もシングルCDセールスが共に比較対象作品を大幅に上回っていますがその反動で2週目のセールスが下がり、今作におけるポイント前週比は比較対象作品を下回る可能性があります。この動向をチェックして、真のヒットと言えるかを見極めていきたいと思います。

 

 

なお、今週のソングスチャートトップ10等全体の動向等については明日取り上げる予定です。

メイベル「Don't Call Me Up」のチャートアクションにみる、ラジオ局の"守りの姿勢"問題

先週水曜に発表された、最新9月16日付ビルボードジャパンソングスチャート。総合では100位未満(300位以内)ながらラジオエアプレイで6位に入っているメイベル「Don't Call Me Up」は非常に特殊なチャートアクションとなっています。

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この「Don't Call Me Up」の日本における盛り上がりは三度あり、現在が最大のピークとなっているのですが、個人的にはここに大きな引っ掛かりを抱いた次第。

 

メイベルが2017年秋にリリースしたミックステープ『Ivy To Roses』を今年1月にリイシューした際、追加収録となった曲のひとつが「Don't Call Me Up」。2月にリミックス集がEPとしてリリースされたこともありイギリスでヒット。3月14日付ソングスチャートで最高位となる3位に達し、延べ10週間トップ10入りを果たしています。日本ではこのイギリスのチャートアクションにいち早く注目したであろうラジオ局が反応したことで、ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標のひとつであるラジオエアプレイで最高70位を記録(3月11日付)。この最初のピーク後、レコード会社のホームページにてメイベルとは何者かの特集が組まれました。

二度目のピークは6月。6月17日付ビルボードジャパンソングスチャートのラジオエアプレイで突如32位にカムバックを果たしています。5月末にYouTubeMusicの"Artist On The Rise"に選出されたこと、ビルボードジャパンで特集が組まれたこと(下記リンク先参照)、そして新曲「Mad Love」のリリースタイミングに合わせて在阪のFM802でヘビーローテションされたことが要因とみられます。FM802が新曲ではなく「Don't Call Me Up」を選んだ理由は判りかねますが、大都市圏のラジオ局が選出したことがチャートアクションに大きく作用したことは間違いないでしょう。

そして三度目は8月に入ってから。8月2日にイギリスでアルバム『High Expectations』をリリースしたことが契機となっているのでしょうが、その頃日本では徐々にといったところ。アルバムの国内盤が1ヶ月遅れて9月4日に発売されたタイミングで、現段階で最高位となる6位に達したのです。

アルバムリリースのタイミングで、「Don't Call Me Up」が12のラジオ局でヘビーローテションに選出(「Mad Lobe」や「Bad Behaviour」も1局ずつ選出)。しかし「Don't Call Me Up」のヘビーローテションを8月に据えたのはわずか1局のみであり、他11局は全て9月に設定しているのです。

 

国内盤リリースのタイミング(およびそれに伴うラジオ局のヘビーローテション時期)が遅れたのは、メイベルが日本盤リリースの翌日に日本でショーケースライブを開いたことが影響しているのかもしれません。

とはいえ、ラジオ局の「Don't Call Me Up」の選出は遅いと言わざるを得ません。イギリスでヒットした時期に日本ではあまりかからなかったのみならず、ヘビーローテション選出局の大半が大量OA月間を輸入盤ではなく国内盤リリースのタイミングに据えたことも、流行を積極的に追うのではなくヒットが確約されたからかけるという守りの姿勢が見て取れます。現在はデジタルで海外と同時に配信され、インターネットで海外の流行を即座に調べられる状況ゆえ尚の事です。

 

このメイベル「Don't Call Me Up」1曲だけで断言するのは危険かもしれませんが、しかしながらラジオ局が新しい流行を伝えるもしくは作るという気概や理念は薄れているのではないかと考えてしまいます。レコード会社から強力なプッシュがあった曲を取り上げること(今回がそうとは限りませんが)はたしかに必要でしょうが、これは絶対流行するから先取りする!もしくは局をあげて流行らせる!という意気込みで選出は出来ないものでしょうか。それこそ局によってはDJを"(ミュージック)ナビゲーター"と呼び、良い曲を伝導する意味合いを強めているのですから尚の事です。

ちなみに「Don't Call Me Up」、現段階でラジオエアプレイ以外の指標で100位以内はおろか300位以内に入っている指標はゼロ。総合でも100位以内に入ったことはなく、ラジオを聴いてダウンロードやストリーミングに至った人が少ないことを痛感します。新しくそして好い音楽を自信を持って紹介する姿勢を強固にすれば、ラジオ局を信頼して聴く方が増え、ラジオ局から新しく好い音楽を学び所有や接触行動につなげていくはず。その意味でも、ラジオ局にはプライドを持っていただきたいと強く思います。

リゾ3連覇、ポスト・マローン4曲トップ10入り&オジー・オズボーンが新記録達成…9月21日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の9月16日月曜に発表された、9月21日付最新ソングスチャート。リゾ「Truth Hurts」が3連覇を達成、またポスト・マローンは同日付アルバムチャートで『Hollywood's Bleeding』が首位に立ったことでアルバムから4曲をトップ10内に送り込みました。

Truth Hurts」は首位をキープしながらもデジタルでのピークが過ぎた模様。ダウンロードは3週目の首位ながら前週比19%ダウンの31000。ストリーミングは同16%ダウンの2920万(同指標14位)、ラジオエアプレイは同6%アップの1億1080万(同2位)。ストリーミングが11ランク下がったのは後述するポスト・マローンの大量エントリーの影響もありますが、ダウン幅が二桁というのは気になるところ。

 

今週はポスト・マローン祭りとなったトップ10。アルバム『Hollywood's Bleeding』がテイラー・スウィフト『Lover』に次ぐ今年2番目の週間ユニット数を叩き出して今週首位に。489000ユニットのうち、ストリーミング再生回数のアルバム換算分(SEA)は278000。アルバム収録曲の1週間の再生回数が3億6540万となりこちらは今年最高を記録(それまでの記録はアリアナ・グランデ『Thank U, Next』の3億710万)。これがソングスチャートにも波及した形です。

7月20日付で初登場を果たしたヤング・サグとの「Goodbyes」は10→3位、前週初のトップ10入りとなった「Circles」は7→4位、以前首位を獲得したスウェイ・リーとの「Sunflower (Spider-Man: Into the Spider-Verse)」は14→10位とそれぞれ上昇。そして新たに、トラヴィス・スコットとオジー・オズボーンを招いた「Take What You Want」が8位に初登場。ストリーミングは4曲とも3000万を突破しています。

ポスト・マローンにとっては9曲目のトップ10入りとなる「Take What You Want」は、客演のトラヴィス・スコットにとっては6曲目、そしてオジー・オズボーンは2曲目。オジーは1989年6月17日付で8位に入ったリタ・フォードとの「Close My Eyes Forever」以来30年3ヶ月ぶりのトップ10入りを果たし、返り咲き最長記録を更新しました(これまでの記録はドビー・グレイの30年2ヶ月1週)。また4曲以上同時にトップ10入りを果たしたのはポスト・マローンが6組目。ちなみに最高記録はドレイクの7曲となります(2018年7月14日付。こちらもアルバム『Scorpion』が初登場したタイミングで達成)。

 

今週新たにトップ10入りを果たしたのがルイス・キャパルディ「Someone You Loved」。登場18週目で遂に9位に到達しました。ダウンロードは前週比2%アップの17000(同指標4位)、ラジオエアプレイは同11%アップの7900万(同6位)、ストリーミングは同9%アップの2230万(同指標23位)。ストリーミングは前週より10ランクダウンしたもののこちらもポスト・マローンの影響を受けてのもの。前指標アップしているのは曲の勢いの証拠もありますが。

ストリーミングの浮上策として上記"2つ目のミュージックビデオ"を公開したことも影響しています。つまりは米ソングスチャートでよくみられる"仕掛け"が功を奏した形。

この仕掛けについては前週取り上げていますのでご参照ください。実際は仕掛けが効き始めたのは前週のチャートであり今週その効果は薄れるのではと懸念していたのですが杞憂でした。ラジオエアプレイでは既に一定の成果を上げているのですから、あとはストリーミングがどこまで伸びるかがこの曲の浮上の鍵と言えそうです。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) リゾ「Truth Hurts

2位 (2位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

3位 (10位) ポスト・マローン feat. ヤング・サグ「Goodbyes」

4位 (7位) ポスト・マローン「Circles」

5位 (3位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

6位 (4位) リル・テッカ「Ran$om」

7位 (6位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

8位 (初登場) ポスト・マローン feat. トラヴィス・スコット & オジー・オズボーン「Take What You Want」

9位 (11位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

10位 (14位) ポスト・マローン & スウェイ・リー「Sunflower (Spider-Man: Into the Spider-Verse)」

ポスト・マローンがトップ10に送り込んだ4曲のうち、次週はいくつ残るかでチャートが大きく動きそう。また映画『チャーリーズ・エンジェル』リブート版に起用されたアリアナ・グランデマイリー・サイラスラナ・デル・レイ「Don't Call Me Angel」がどの位置に登場するか気になるところです。