イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

意図的な遅延は信頼失墜を招きかねない

ビルボード、8月12日付チャートの発表が遅れています。本来は日本時間の火曜早朝に速報が、同日夜までに全チャートが更新されるはずだったのですが。

デジタルダウンロード、ストリーミングそしてラジオエアプレイの全情報をビルボードに送信するニールセンへの、最上位のデータ情報提供元が技術的な問題に遭遇した、というのが遅延の原因。今日7時の段階でこのチャート情報が出ていることから、復旧されたものと思われます。ここでは明日、速報に触れられたらと考えています。

 

残念だったのは、この速報発表が遅れる旨のアナウンスの”遅れ”。本来、火曜早朝の段階で出す必要があったはずであり、技術的な問題とアナウンスしてくれたなら納得がいきました。速報発表の遅延が決して意図的なものではないとしても、しかしアナウンスの遅れは米ビルボードの”意図”もゼロではなく、”引き伸ばし”だと余計な勘ぐりをしてしまう方はゼロではないでしょう。

 

 

その遅延について、昨日強く疑問に思った件をここにも記載します。

1会計半額クーポンと記載しましたが、正確にはレンタルCD/コミック全品半額クーポンです。訂正します。

 

GEOアプリでのクーポン獲得サービス【GEOチャンス】は変更となります、というアナウンスがあったのは先月上旬頃と認識しています。が、内容が発表されぬまま...改変前日になってようやく登場した新【GEOチャンス】は、特にCDレンタルユーザーにとって酷な内容となっていました。上記ツイートでの未掲載分を下記に。

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レンタルCD全品半額】から、【レンタルCD1点半額】へ。1点には”新作含む”と記載されていますが、元々全品半額において新作も対象となっており、この訴求の仕方はあたかも、以前は旧作のみでしたという誤った印象を与えかねません。そしてレンタルCD全品半額クーポンを当てるために必要なゲオス(GEOアプリ内のポイント名)が150だったのに対し、1点半額クーポンには80ゲオスが必要...これは明らかに改悪ですよね。

 

ラジオ人としては、しかし若干複雑な事情から局のCDではなく自力で音源を用意しないといけない立場であるため、GEOには本当にお世話になっていました。その点において今回の改変は非常に残念ですが、ツイートに書いた通り、(あくまで想像の域を越えないものの)GEO側の事情は理解出来ます。また、GEOの店舗によってはCDレンタルを省いたところも少なくなく、GEOがCDレンタルに活路を見いだせないと考えていることも、その消極的姿勢は残念ではあるもののこれもまた解ります。

しかしながら、そういった事情のはるか以前の問題として、アナウンスがあまりに直前になってしまったのは、企業としてそして人としてどうなのかと思うのです。ユーザーの立場になって考えればGEOのやり方に疑問が浮かぶはず。バタバタさせることで改変の中身が実は”改悪”を含んでいることを隠そうという目的があったのでしょうが、意図的なバタバタによる情報の未公表は逆に改悪を浮かび上がらせてしまうということを、GEO側は想像出来なかったのでしょうか。非常に残念であり、失望しています。

 

 

意図的な遅延は信頼の失墜を招きかねない...と書きながら、何故か自分の胸が苦しくなりました。自分こそ気をつけないとなあと肝に銘じた次第です。

8月だ 祭りだ祭りだ 豊年祭り

毎週火曜日は米ビルボードソングスチャートを定点観測...なのですが、現地が祝日でもないのになぜかビルボードからの速報発表がないまま。ゆえに明日掲載することになります。

 

さて、昨日も書きましたがいよいよ青森、そして東北は夏祭りモードに。その先駆けとして?、7月30日放送の『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)では音楽特集【祭】でお送りしました。

で、祭といえば真っ先に浮かぶであろう曲のひとつが、北島三郎「まつり」。これを、あの泉ピン子さんがカバーしているのですから驚きです。

泉ピン子「まつり」(from『なかにし礼と13人の女優たち』(2016))

実はこの音源を用意していたのですが、メイン選曲担当のササキさんに”この曲は収穫祭(イコール9月頃)の歌だから”との理由で今回は見送り。たしかに歌詞を読むと収穫祭であり、また大漁祭でもあるわけで...しかし、『ステージでは「ねぶた」に北島が乗って、大勢の踊り手と共に北島が歌うダイナミックなステージングが施されることが多い』(まつり (北島三郎の曲) - Wikipediaより)ということは、当の北島さん自身が独自の解釈というか発展させているんだなあと思ったり。披露する場所に合わせて替え歌にすることもあるそうで、作詞を手掛けたなかにし礼氏の広い心たるや、と感心します。

 

ちなみに、ふと歌詞に出てくる【豊年祭り】をYahoo!で検索したところ、トップに登場した”奇祭”に驚きました。これを知って以降、”倅その手が宝物”が意味深にみえなくもない…と思うのは考え過ぎでしょうか。

夏開ける、RHYMESTERの夏ソング

青森は昨日開幕した黒石ねぷた祭りを皮切りに、八戸の三社大祭弘前ねぷたまつり青森ねぶた祭五所川原立佞武多...をはじめ、大小様々な祭りが開催されます。隣の秋田県でも竿燈まつりが行われるなど、この1週間ちょっとの間に東北は一気に夏モードに。

未だ梅雨が明けていないのが気掛かりゆえ、そろそろ明けました宣言が聞きたいところですが、そんな中自分はひと足早く”夏を開いて”きました。7月8日と9日に博多で初開催された【夏びらき MUSIC FESTIVAL】、その9日日曜の公演に参加。直前の豪雨以降雨の予報が続いていたものの開場前に雨は止み、ほぼ雨降ることなく穏やかな(いやむしろ日差しが刺さる)天気となりました。尚、豪雨被害への寄付金としてドリンクの売上の一部を充てるとのことでしたので自分も微力ながら協力させていただきました。

https://www.instagram.com/p/BWT4QdTHUT9/

この会場で今回、人間交差点フェス以来となるRHYMESTERのライブに参戦。近日中のアナウンスが噂されていた(そして今週その詳細が発表されたばかりの)ニューアルバム『ダンサブル』(特設サイトはこちら)からの楽曲を披露していたほか、個人的に下記の2曲を披露してくれたのは嬉しい限り。どちらも『フラッシュバック、夏。』(2011)収録のサマーチューンであり、夏を開くには最適な選曲です。

「サマー・アンセム」でジャンプしまくったため、ライブの2日後以降の筋肉痛がハンパなかったのですがこれもまたいい思い出。ライブ参戦には体力づくりが必須ですね。

 

ちなみに7月9日の【夏びらき MUSIC FESTIVAL】開催中に唯一雨が降った瞬間はこの曲の最中。

皆さん若い...というのは置いといて、”傘もささずに歩く土砂降りの中を”というライムの前後で見事に雨が降るという、空からの粋な演出。しかしそこのヴァースを担当した宇多丸さんが、サングラスをかけているために雨に気付かなかったというオチが待っていた…という次第。

 

RHYMESTERはアルバムを引っさげてリリースツアーを開催へ。自分は11月3日の秋田公演に参戦します。雨の心配はないけれど、どんな楽しい出来事に巡り会えるか、今から楽しみです。

県域放送局の相次ぐ公開生放送、歓迎と改善要望

地元青森県の県域民放放送局、RABラジオがこの1週間で三度もの公開生放送を実施。本日は『良平のラジオにおいでよ!』(日曜12時)が、平川市のからんころん温泉からオンエアされます。ちなみにからんころん温泉の入り口にはこのような掲示が。

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今週月曜は、『伊奈かっぺい 旅の空うわの空』(月曜19時)が、毎年夏恒例となる八戸市更上閣から生放送を実施。

また一昨日金曜は、『GO!GO!らじ丸』(月-金曜11時55分)が、青森市のサッポロビアレストラン910から公開生放送。

月曜日の毎年恒例となる公開生放送と被る形で、一週間にまさか計三度も行われるのは珍しいことです。これは自分の想像の範囲を越えませんが、今年に入ってから公開生放送の実施が多いような気がしており、もしかしたら今秋からはじまる【ワイドFM】の宣伝という意味合いもあるかもしれません。他方、秋から同じFMのラインに並ばれる形のエフエム青森は、開局30周年というアニバーサリーイヤーに合わせてradiko(プレミアム)に参加したり、JFNアナウンサーを招いた特番を局内のスタジオからお送りしていましたが、今月の海の日には『FRIDAY GOES ON~あっ、それいただきっ!~』(JFN系 金曜13時30分)の斉藤リョーツ・藤井悠両氏を迎えた特別番組を、こちらも公開生放送で発信していました。

 

 

ラジオが活性化されるのは良いことです。単に認知度等が上がるのみならず、公開生放送という場ではラジオ(業界や作り方)に興味がある人がラジオの”中”を見ることが出来るため、次代を担うラジオ人の芽を育てるという意味においても重要だったりします。

ただ、ならばさらにその公開生放送がより良くなるためにも敢えて、苦言を呈したい点が2つあります。

 

ひとつ目は、【訴求が足りているか?】という点。勿論ラジオでは番宣で公開生放送の番組や会場等が流れているのですが、それらを聴き逃した方や再度確認したいという方への配慮がもう少しあれば...と。たとえば本日の番組内容においては、先に引用したRABラジオの公式Twitterアカウントからは発信されていません。他方、同じ番組で今月2日にも公開生放送をお送りしていたのですがそちらは発信されており、つまりは徹底されていないのです。ちなみに今日7時50分の段階で、番組ホームページ等に公開生放送の文言はありません。加えて今日のラテ欄を見てみると。

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(上記は陸奥新報より。)

タイトルも含め大量7行もの番組紹介スペースがあるにもかかわらず、”公開生放送”も、また”からんころん温泉”の文字すらないのは如何なものでしょう。公開生放送は少なくとも、場所や商品等を提供する側(スポンサー)にメリットや配慮がないと、そのスポンサーに対して大変失礼ではないでしょうか。少なくとも、スポンサーは企業(施設)名や商品名をより多くの方に知ってもらう目的で提供しているわけですから、それには応えないといけないはずです。

 

さて、苦言のふたつ目は、【配慮”し過ぎ”てやいないか?】という点。直前に配慮は必要と書いたのですが、配慮も度が過ぎると、はっきりいって聴き手は置き去りになってしまいます。

自分が聴いた限りでは、たとえば『伊奈かっぺい 旅の空うわの空』ではプレゼント商品提供の各企業が入れ替わり立ち替わり登場して商品を訴求、『GO!GO!らじ丸』ではビアレストランを経営するサッポロビールの歴史についてのクイズを会場にいる方に出題に会場内が加熱し過ぎる、他局ですがエフエム青森の海の日特番では、斉藤さんと藤井さんに青森の夏の提案をするという体で青森では一定の知名度がある土産物等を次々紹介...これらはいずれも結構な尺を割いており、正直なところ商品提供者やスポンサーを過度に接待してるかのように聞こえてしまったのです。海の日特番においては、これって青森県内のリスナーではなくradikoプレミアム等で聴く県外リスナー向けでは?と思ったくらい。

無論、民放放送局はスポンサーが大事な存在であり生命線、他方受け手たる聴取者は一銭も支払うことはないため、放送局のスポンサーへの配慮は自然、当然であることは十分理解出来ます。しかし、それも度が過ぎると逆効果ではないかということは、このブログで何度も記載したことです。代表的なところでいえば。

会場にいらした方(今週の公開生放送でいえば、『良平のラジオにおいでよ!』以外は事前抽選有)にプレゼントが当たるという企画は確かに会場内で盛り上がりますし、同様のプレゼントがリスナーにも当選するというのは嬉しいことですが、会場の加熱っぷりに温度差を感じ、聴いて距離感を覚えたのは自分だけでしょうか。

個人的には、番組もしくは長尺で核となるコーナーの冠スポンサーとして企業に参加していただくよう営業に頑張っていただき、番組内では企業名や商品名はこれみよがしに出さずとも良質な番組(コーナー)を制作することで企業のイメージアップを図る...というように民放放送局には動いてほしいところです。イメージとしてはJ-WAVEが理想的でしょうか。J-WAVEは内容を良くすること(ナビゲーター陣を一新等)により春以降聴取率が上昇、つまりリスナーが増えています。リスナーが増えるということは、必然的に番組やコーナーに触れる人も増えるというわけですからスポンサー企業がより認知されていくのは自然なことです。

 

都市と地方では勝手が違うと言われればそれまでですが、今の公開生放送における番組作りのスタンスがかたや不徹底、かたや過度という両極端のやり方になっている傾向が強いため、まずは一度見直す機会を設けていただきたいという意味で指摘させていただきます。

邦楽におけるトレンドセッター?三浦大知版「決戦は金曜日」

三浦大知さん。実力は折り紙付きながら、昨年の『ミュージックステーション』出演を機に急激に世間に認知された感があるのですが、そこで慢心することなく、以前からのファンに新しい世界を魅せ続ける、進化し続ける稀有な存在だと言えます。その三浦さんが先日発表したドリカムのカバーが素晴らしいので、遅ればせながら紹介。

今月リリースされた『The best covers of DREAMS COME TRUE ドリウタ Vol. 1』(スペシャルサイトはこちら)からの先行曲として先月末に配信開始。アルバムダイジェストは下記に。

アルバム全体が配信されないことには疑問を抱くのですがそれは置いといて。さて自分、当初このアルバムのアナウンスの際、2つの疑問を抱いていました。ひとつは、これまで『私とドリカム』2作においてオリジナルに忠実なカバーが多かったためにトリビュート盤3作目となる『ドリウタ』に若干の不安を覚えていた点。もうひとつは、ドリカムの中でもとりわけアレンジメントに特徴がある「決戦は金曜日」において、オリジナルアレンジがドリカムファンじゃなくとも強くイメージ付けられ広く認知されているため、いくらアプローチを変えたとして”オリジナル越え”を果たすのは難しいのでは?ということ。なお、自分のカバーへの考えは下記に記載しています。

 

オリジナルのアレンジの源流にあった曲については追悼 モーリス・ホワイト(2016年2月6日付)にて紹介。さすがにこの曲については厳しいのでは...と思っていたのですが、私が甘かった。三浦大知さんの可能性を信じ切ってなかった!と猛省しています。

 

おそらくは、彼が挑戦したのは90年代に流行したUKガラージと呼ばれるダンスミュージックであり、その中でも2010年代半ばに流行したディープハウスというジャンルでしょう。とりわけ有名なのはディスクロージャーですが、個人的に思い出したのはこちら。

・ゴーゴン・シティ feat. ジェニファー・ハドソン「Go All Night」(from『Sirens』(2014))

そしてディープハウスの流れを組んだSHINee

SHINee「View」(from『Odd』(2015))

この2曲を足して2で割ったかのような、いいバランスのアレンジなんですよね。

 

ディープハウスの市場拡大についてはUKガラージ、進化&深化してより広い市場へ(2015年5月29日付)でも触れたのですが、邦楽ではまだまだ...と思っています(単に自分のアンテナが錆びているかもしれません。なおSHINeeは日本でリリースしたアルバム『D×D×D』(2016)に「View」の日本語版を収録しています)。ゆえに、三浦大知さんが今回ディープハウスを仕掛けてきたというのは、日本におけるディープハウスのトレンドセッターという意味においても実に重要なことなのです。

 

そういえば三浦さんは以前も、「Black Hole」(アルバム『D.M.』(2011)収録)でスクリレックスをおそらくは邦楽で初めて落とし込んだり(【極私的選曲】三浦大知を知るきっかけの7曲(2016年6月26日付)より)、最近では「Look what you did」(シングル「(RE)PLAY」(2016)収録)においてジャック・ユー(これもスクリレックスと、そしてディプロによるコンビ。スクリレックスの幅広い音楽性には唸らされます)を踏襲しており、様々なダンスミュージックを広く吸収しようとする意欲に驚くとともに、そこから生まれた作品の素晴らしさに感嘆してきたのですが、今回もディープハウスを完全に自身のものにしていて驚きました。

今回のカバーについても、オリジナルのアレンジが有名過ぎて原曲のイメージを崩せないと思っていた自分のような人に、”これは新しい!”という気付きをもたらしてくれるのでは?と思えてなりません。いやあ、本当に凄い方です。

【Diggin'】”君の名”がタイトルに付く曲プレイリスト

映画『君の名は。』のブルーレイ/DVDが今週発売されました。大ヒット映画のパッケージ化ということでCDショップ等では賑わいをみせています。また先週末発売されハードの3分の2を売り上げたと言われる『スプラトゥーン2』や明日発売される『ドラゴンクエスト』最新作も相俟って、エンタテインメント業界のこの1週間ちょっとのお祭り状態は、業界活性化という意味で嬉しい限りなのです。

 

さて、『君の名は。』の英語表記は”Your name.”。これが”Your name is...”を指すのかそれとも”What's your name?”を指すのかは受け手に委ねられる模様ですが、この日本語および英語表記から思い出した曲を思いつくままに挙げてみます、というのが今日の【Diggin'】プレイリスト。

 

 

槇原敬之「君の名前を呼んだ後に」(from『EXPLORER』(2004))

風景描写のAメロ、自身の心情に移っていく、Aメロを踏襲したBメロ、そして低音から高音へシフトしたところで”君に早く会いたいよ”と始まるサビ...なんて素敵な展開なのでしょう。個人的に、彼の曲の中でも5本の指に入るくらい大好きです。

 

・少年隊「What's your name?」(from シングル「What's your name?」(1988))

動画はこちら。夏ソングであり...言ってしまえばナンパの歌とも取れそうな歌詞。少年隊のオリジナルアルバムにも、そしてベストアルバムにも未収録というのは、ラジオ選曲担当として痛いところ。このベストアルバムを切望する旨を以前記載しているので再掲。関係者の方に届いてほしいものです。

 

CHEMISTRYYOUR NAME NEVER GONE」(from『ONE×ONE』(2004))

今年活動を再開したCHEMISTRYによる2003年のシングル(翌年のアルバムに収録)。流麗なストリングスが敷かれていますがそれを除けば音数少なめのトラックという当時流行したR&Bを踏襲したアレンジ。こういう刹那な曲世界は彼らの十八番な気がしますね。

 

・Shades「Tell Me Your Name (Clark Kent Remix)」

  (オリジナルバージョンは『Shades』(1997)収録)

1990年代、雨後の筍の如く登場したボーカルグループの中で、モータウンから登場したのがシェイズ。1996年リリースのファーストシングル「Tell Me (I'll Be Around)」(試聴はこちら)のリミックスではワールズ・フェイマス・シュープリーム・チーム「Hey DJ」を用いて大きく改変。「Hey DJ」は彼女たちのアルバムリリースと同じ年にリリースされたマライア・キャリーの全米No.1ヒット、「Honey」でも引用されるなど人気の高い楽曲。ちなみに、シェイズはアルバム1枚しか残せていないんですよね。

 

・Kenny Lattimore & Chanté Moore「Your Name」(from『Uncovered/Covered』(2006))

ゴスペル界で”You”といえば神様のこと(ゆえにYは小文字ではなく大文字)。ゆえに”Your name”という表現は結構用いられていて、ドニー・マクラーキンによる「Lord I Lift Your Name On High」等、クワイア人気曲も多いのです(余談ですが、自分が所属していたクワイアでも歌っていました)。この曲はR&B夫妻のケニー・ラティモアとシャンテ・ムーアによるデュエットアルバム2作目のディスク2、ゴスペル盤からの楽曲でプロデュースはゴスペル界の重鎮、フレッド・ハモンド。後に夫妻は別々の道を歩むのですが、楽曲は非常に良いのでお勧めです。

 

・Leon Ware「What's Your Name」(from『Inside Is Love』(1979))

今年2月に亡くなったリオン・ウェアによる、38年前のアルバムからのシングル曲。ソングライター(楽曲提供)としての功績に注目されがちですが、オリジナル曲にもスポットが当たって欲しいものです。

 

Alicia Keys「You Don't Know My Name」

最後は”My Name”ですが、あまりにも美しいゆえこの曲を。レストランの常連客に恋をしたウェイトレスの話。ラジオで流すには6分もの長尺であるにもかかわらず(一応ラジオエディットとして4分半弱のバージョンも存在)、全米3位という大ヒットに。主人公の、彼に自分の名前を聞いてほしいという思いが、美しいメロディと(プロデューサーのカニエ・ウェストが当時得意とした)高速サンプリングに乗ることで、より深まっていくんですよね。

 

 

他にも”君の名(名前)”、”Your name”ソングは結構あったりします。今回のインスパイア源である映画とは全く関係ありませんが、探してみると楽しいですよ。 

デボラ・コックスとリミックスの相性の良さ、2017年版

ビルボード、総合ソングスチャートが長らく凪に近い状態の中、クラブでの人気曲を示すダンスクラブソングスチャートは目まぐるしく変化。ほぼ毎週のように首位が入れ替わるのは、如何にクラブDJや観客が流行に鋭く反応し、ゆえに新曲へのニーズが高いかが解ろうというもの。

そんな中、8月5日付チャートで9ランクアップの14位に急上昇したのがデボラ・コックス「Let The World Be Ours Tonight」。

ツイートの発信源であるラディカルレコードは今回のリリース元となるインディレーベルです。

デボラ・コックスは”ポスト・ホイットニー(・ヒューストン)”として1995年にデビュー。その際はポップ寄りなR&Bが受けなかったのかスマッシュヒットに留まりますが、しかし1998年のセカンドアルバム『One Wish』からのシングル、「Nobody Supposed To Be Here」が特大ヒットに。全米最高2位ながら1999年の年間チャートで9位という大成功を収めています。このシングルにはヘックス・ヘクターによるリミックスが用意され、1998年秋にダンスクラブソングスチャートで1位を記録。

リミックスは下記に(ただし元来のバージョンは10分を超える長尺版)。

 

”歌える”歌手はリミックスのオケに映えること、そして当時の所属レーベルだったアリスタがリミックス版の制作に精力的だったこととが合わさって、デボラ・コックスといえばダンスリミックスというイメージを持つ方は少なからずいらっしゃることでしょう。実際、ダンスクラブソングスチャートでは10曲以上で1位を獲得しているのです。その期待に応えるかのように、今回の新曲のリミックスも凄いことになっています。たとえば。

レーベルのYouTubeアカウントに掲載されているのは(現段階で)3種類。しかしこの曲には上記を含めなんと10バージョンも存在するのですから物凄いですね。

おそらくは配信のみのリリースに留まるでしょうが、それでもこういうシングルの複数リミックスを用意してくれるというのは嬉しいものです。クラブDJにとっては好きなバージョンでかけようと思いますし、リミキサーにとっては大ヒットを飛ばす彼女の作品を手掛けることで箔がつきます。日本ではリミックス集自体が減っていると先日【Diggin'】今や希少価値? 2010年代にリリースされた1組の歌手によるリミックス集(7月14日付)で書きましたが、クラブフレンドリーな対応を行ってくれるデボラの活動はもっと評価されるべきではないかと思うのです。