イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

邦楽におけるトレンドセッター?三浦大知版「決戦は金曜日」

三浦大知さん。実力は折り紙付きながら、昨年の『ミュージックステーション』出演を機に急激に世間に認知された感があるのですが、そこで慢心することなく、以前からのファンに新しい世界を魅せ続ける、進化し続ける稀有な存在だと言えます。その三浦さんが先日発表したドリカムのカバーが素晴らしいので、遅ればせながら紹介。

今月リリースされた『The best covers of DREAMS COME TRUE ドリウタ Vol. 1』(スペシャルサイトはこちら)からの先行曲として先月末に配信開始。アルバムダイジェストは下記に。

アルバム全体が配信されないことには疑問を抱くのですがそれは置いといて。さて自分、当初このアルバムのアナウンスの際、2つの疑問を抱いていました。ひとつは、これまで『私とドリカム』2作においてオリジナルに忠実なカバーが多かったためにトリビュート盤3作目となる『ドリウタ』に若干の不安を覚えていた点。もうひとつは、ドリカムの中でもとりわけアレンジメントに特徴がある「決戦は金曜日」において、オリジナルアレンジがドリカムファンじゃなくとも強くイメージ付けられ広く認知されているため、いくらアプローチを変えたとして”オリジナル越え”を果たすのは難しいのでは?ということ。なお、自分のカバーへの考えは下記に記載しています。

 

オリジナルのアレンジの源流にあった曲については追悼 モーリス・ホワイト(2016年2月6日付)にて紹介。さすがにこの曲については厳しいのでは...と思っていたのですが、私が甘かった。三浦大知さんの可能性を信じ切ってなかった!と猛省しています。

 

おそらくは、彼が挑戦したのは90年代に流行したUKガラージと呼ばれるダンスミュージックであり、その中でも2010年代半ばに流行したディープハウスというジャンルでしょう。とりわけ有名なのはディスクロージャーですが、個人的に思い出したのはこちら。

・ゴーゴン・シティ feat. ジェニファー・ハドソン「Go All Night」(from『Sirens』(2014))

そしてディープハウスの流れを組んだSHINee

SHINee「View」(from『Odd』(2015))

この2曲を足して2で割ったかのような、いいバランスのアレンジなんですよね。

 

ディープハウスの市場拡大についてはUKガラージ、進化&深化してより広い市場へ(2015年5月29日付)でも触れたのですが、邦楽ではまだまだ...と思っています(単に自分のアンテナが錆びているかもしれません。なおSHINeeは日本でリリースしたアルバム『D×D×D』(2016)に「View」の日本語版を収録しています)。ゆえに、三浦大知さんが今回ディープハウスを仕掛けてきたというのは、日本におけるディープハウスのトレンドセッターという意味においても実に重要なことなのです。

 

そういえば三浦さんは以前も、「Black Hole」(アルバム『D.M.』(2011)収録)でスクリレックスをおそらくは邦楽で初めて落とし込んだり(【極私的選曲】三浦大知を知るきっかけの7曲(2016年6月26日付)より)、最近では「Look what you did」(シングル「(RE)PLAY」(2016)収録)においてジャック・ユー(これもスクリレックスと、そしてディプロによるコンビ。スクリレックスの幅広い音楽性には唸らされます)を踏襲しており、様々なダンスミュージックを広く吸収しようとする意欲に驚くとともに、そこから生まれた作品の素晴らしさに感嘆してきたのですが、今回もディープハウスを完全に自身のものにしていて驚きました。

今回のカバーについても、オリジナルのアレンジが有名過ぎて原曲のイメージを崩せないと思っていた自分のような人に、”これは新しい!”という気付きをもたらしてくれるのでは?と思えてなりません。いやあ、本当に凄い方です。