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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングスチャートを制した山下智久「CHANGE」の勝因はダウンロード配信にあり…ジャニーズ初の動きに注目

最新7月1日付ビルボードジャパンソングスチャートを制覇した山下智久「CHANGE」には大きな”変革”を見出すことが出来ます。

「CHANGE」のダウンロード指標は5位。実は前作「Reason」もダウンロード配信を行っていますが、シングルCDセールス初加算週におけるダウンロード指標は71位にとどまっています(ジャニーズ事務所所属歌手のデジタルダウンロード解禁は近い? 山下智久「Reason」の動きから一縷の望みを見出す(2月22日付)参照)。今回は所属レコード会社のソニーミュージックが、シングルCDリリースと同日解禁だと告知したことも功を奏したのかもしれません。

また、本日からレコチョクドワンゴ・music.jpでもダウンロードできますので、そちらも是非チェックしてみてください!

遂に本日発売!NEWシングル「CHANGE」(TBS系 金曜ドラマ「インハンド」オープニング曲) - インフォメーション | 山下 智久 | ソニーミュージック オフィシャルサイト(6月19日付)より

ミュージックビデオのティーザー(1分尺)も用意され、動画再生指標は100位未満ながら3週連続で加算されています。

 

自分は昨年以降、ジャニーズ事務所所属歌手のシングル表題曲の動向を追いかけていますが、ダウンロード指標でトップ10入りした記憶はありません。今回は自身が主演するドラマ『インハンド』(TBS)の主題歌ということもあってか、シングルCDセールスは前作の72890枚(2月25日付)から91020枚に大きく伸ばし前作比124.9%を記録(ただしシングルCDセールスは指標化される際、係数が用いられることがあります。詳しくは【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)。そして総合ポイントは前作の7476ポイントから11809ポイントへ、前作比158.0%の大幅アップを果たしています。

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「CHANGE」のチャート構成比に占めるダウンロードはおよそ15%、1770ポイント程度が同指標によるもの。ダウンロード指標が総合ポイントにおける前作比上昇に大きな役割を果たしたのみならず、仮にダウンロード指標が未加算だったならば10262ポイントを獲得したスピッツ「優しいあの子」に敗れていたことが予想された点においても、ダウンロード効果は非常に大きかったと言えるでしょう。

 

 

ではなぜ、山下智久「CHANGE」ジャニーズ事務所所属歌手の中でおそらく初となる同指標トップ5入りを果たすことが出来たのでしょう。

 

ひとつはタイアップの存在。主演ドラマ『インハンド』の最終回は10%を超える視聴率を獲得したのみならず、その最終回にシングルCDがリリースとなり、ドラマの余韻がセールスにつながったと言えます。店舗での購入もしくはネット注文というタイムラグがないダウンロードでの購入は、ドラマに高い満足感を抱いた方をその勢いのまま誘導するのに的確なツールといえます。

 

ただ、今回はダウンロードサービスのうちレコチョク等3つのサービスに配信先が限定された(iTunes Store等は入っていない)ため、ダウンロード可能な状況に気付かない方も少なくなかったはず。そのため、山下智久さんのファンの中でシングルCD共々ダウンロードも購入した可能性が考えられます。ファン心理としてシングルCDの複数買いもあるためその仮説も成り立つのではないでしょうか。

(ただし複数買いはどうしてもファンの負担が増えるため、今後はシングル表題曲のみ先行でダウンロード配信するスケジュールを組むのが良いのではないでしょうか。ファンにとってはシングルCDに先駆けて聴くことが出来ると、ダウンロードでの購入に意味を持つことが出来ます(それでいてシングルCDはファンとしてきちんと購入すると思います)し、ライト層(歌手のファンというわけではないが曲や歌手に好印象を抱いている方)も購入しやすく、気になればシングルCDも買うことになるかもしれません。またシングルCDセールス指標初加算週は先行配信したダウンロードに再び火が付く傾向も見られます。)

 

そしてもうひとつ、山下智久さんやその周囲の環境がデジタルに積極的であることが大きく影響していると言えます。

山下さんはジャニーズ事務所所属歌手や俳優ではじめてInstagramを開設しています。またソニーミュージックに所属する山下さん等、ジャニーズ事務所が大きく関わるジェイ・ストーム所属歌手以外の方はレコチョクで(曲を分割せず)フルバージョンで配信したり、YouTubeティーザーを用意したりしています。最近はV6(avex)やKing & Prince(ユニバーサル)のティーザーがInstagramに登場する等プロモーションにも活用されています。こういったデジタルに前向きな姿勢や環境が山下さんのダウンロード販売の周知につながり、今回の結果に至ったのかもしれません。

 

ちなみに。

レンタルCD解禁日遅らせの件は以前記載したのですが。

これに加え、自分は遅ればせながら今週知ったのですが。

Hey! Say! JUMPのDVDシングル、「愛だけがすべて -What do you want?-」のディスコグラフィーをみると3形態での発売で、うち2種にCDが同梱されていますがDVDをメイン(CDをサブ)にした商品のためCDレンタルは出来ません。今後オリジナルアルバムに収録されるでしょうが、デジタル配信もないため音源を手にするにはDVDシングル購入の一択しかなく、このことからもジェイ・ストーム所属歌手は所有にこだわるという姿勢が見て取れ、二極化という表現を用いた次第です。

(ただし、ポニーキャニオンに所属するA.B.C-Zが2012年から2016年にかけてDVDシングルをリリースしていた経緯があるゆえ、ジェイ・ストーム所属歌手が所有にこだわるイコール他のレコード会社所属歌手がこだわらない、という図式が完全に成り立つとは言えないのですが。)

 

 

二極化の状況も踏まえるに、山下智久さんのデジタルに積極的な姿勢は強く評価されていいでしょう(ミュージックビデオがショートバージョンでもないティーザーだったり、ストリーミング未解禁という状況ゆえまだ十分ではないとは言えますが)。また次週のチャートでは「CHANGE」の総合ポイント前週比にも注目しないといけません。ジャニーズ事務所所属歌手の場合、シングルCDセールス初加算週から翌週にかけては総合ポイントで前週比20%以上を上回る曲がほとんどないため、仮に「CHANGE」が前週比20%を超えたならばやはりデジタル配信の影響は大きいと言ってよいでしょう。そうなれば今後、ジャニーズ事務所所属歌手は総じてデジタルの動きを検討していいと思うのです。デジタルがCDセールスを駆逐しないことは昨日のサカナクションの件(この場合はストリーミングがCDセールスやダウンロードを、という意味で書きましたが)でも実証されていると言えるため、尚の事です。