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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン年間ソングスチャートにみる、2018年の音楽業界トピックス10

このブログで毎週木曜に追いかけている、ビルボードジャパンソングスチャート。その年間チャートが発表されました。

米津玄師「Lemon」のポイントは50位以内にランクインした分だけでざっと計算すると358000ポイントを獲得。2位のDA PUMP「U.S.A.」が194000ポイントのため「Lemon」は2倍近くに。如何に強かったかがよく解ります。

さて、このチャートをはじめ、2018年のビルボードジャパン各種年間チャートを踏まえ、自分なりに今年の音楽業界の特徴を挙げてみます。

とはいえ、昨年をアップデートした内容となっているため、昨年に倣い10の項目を挙げてみようと思います。昨年分は下記に。

 

① 米津玄師大ブレイク

昨年はアルバム『BOOTLEG』がヒットし(集計期間の関係で不利だったとはいえ、それでも16位にランクイン)、またDAOKOさんとの「打上花火」も年間3位の大ヒットとなっていたわけですが、「Lemon」とドラマ『アンナチュラル』との相乗効果…リアルタイム視聴率以上にその質の高さ(およびそれが反映された総合視聴率)やドラマ内での印象的な使われ方も相俟って、間違いなく彼をネクストフェーズに進めた感があります。1万ポイント超えは実に8週、また秋には携帯電話会社に用いられたことでポイントが盛り返したこともあり、年間ソングスチャートでダントツとなる首位獲得。また『BOOTLEG』収録の「LOSER」(2016年のシングル)が自動車メーカーのタイアップに用いられ、曲もアルバムもロングヒット。

「LOSER」は年間ソングスチャート16位をマークし、『BOOTLEG』が年間アルバムチャート年間2位を獲得。米津玄師さんは年間ソングスチャートに8曲、そしてアルバムは全て年間チャート100位以内に送り込んでおり、"米津玄師"の名はチャートで、そして世間で年中轟いていました。

 

② 米津玄師関連作品もヒット

先述したDAOKO×米津玄師「打上花火」は昨年の3位に続き今年は4位をマークし、2年連続でトップ5入りを果たしています。またアルバム『BOOTLEG』に収録された「灰色と青」で客演した菅田将暉さんによる「さよならエレジー」は年間9位を記録(「灰色と青」は34位)。

「さよならエレジー」は石崎ひゅーいさんによる提供曲で米津玄師さん関連とは異なるものの、ドラマ『トドメの接吻』主題歌に用いられたこと(また主演で、友人の山崎賢人さんがミュージックビデオに起用)もあり、自身最大のヒットを記録。カラオケで特に親しまれDAMの年間チャートでは4位、JOYSOUNDでは5位を記録。なお双方のカラオケチャート、ともに年間チャートを制したのは「Lemon」でした。

 

DA PUMP再ブレイク

先月放送された『ミュージックステーション』内、"今年の1曲ランキング"で「Lemon」を抑え首位を獲得したのがDA PUMP「U.S.A.」でした。実は「U.S.A.」は週間チャートで1万ポイント超えを果たしたのが2週のみと少ないのですが、6月18日付で3位を獲得して以降これまで2~7位の間に在籍し続けており、2位には通算8週もランクインしています。おそらくこの現象は、同じ事務所に所属する荻野目洋子さんが「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」で再ブレイクしたときに歩んだユーロビート路線を踏襲したものかもしれませんね。「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」もまた、今年23位を記録しています。

 

④ "AKB<坂道"がより鮮明に

昨年度からシングルCDセールス指標においては、実際の売上に対し各作品ごとに係数を設けてウェイト調整を行っています。そのため昨年度からはシングルCDセールスで上位を独占してきたAKB48が年間チャートでは上位に登場しない傾向が発生。とはいえ今年は「Teacher Teacher」が10位に入っており、選抜総選挙投票権付きシングルの強さが表れた形です(昨年は「願いごとの持ち腐れ」の15位が最高)。しかし、AKB48が20位以内に送り込んだのはこの曲のみでした。

一方坂道グループは、乃木坂46が「シンクロニシティ」(6位)、「ジコチューで行こう!」(7位)の2曲をトップ10内にランクイン、また欅坂46は「ガラスを割れ!」(3位)、「アンビバレント」(11位)とトップ3に送り込んでいるのです。シングルCDセールスにほぼ特化しながらルックアップで1位を獲れずじまいだったAKB48に対し、坂道グループはレンタル解禁を遅らせながらもルックアップで首位を獲得、また他指標もきちんと獲得しているという違いは以前から述べてきた通り。そして今年の年間シングルCDセールスチャートをみると上位2強こそAKB48ですが「ジャーバージャ」は5位にとどまっており、3位と4位を乃木坂46が占めるという展開に。最後の武器であるシングルCDセールスも脆くなってきたAKB48が今後どうなっていくのか、気になるところです。

 

⑤ ジャニーズ最高のヒットは新人のKing & Prince

デジタルダウンロードやストリーミングが未解禁ゆえ、シングルCDセールスで大半の動向が読めるのがジャニーズ事務所所属歌手。そのシングルCDセールスで所属歌手中最高の9位を記録したKing & Prince「シンデレラガール」が総合年間チャートでも12位に入り、ジャニーズ事務所所属歌手の作品で最高のヒットに(なおジャニーズ2位は嵐「夏疾風」で、シングルCDセールス10位、総合22位)。デビュー曲というアドバンテージもあれど、ドラマタイアップゆえにルックアップが大きく、同指標では合計5週ナンバーワンを獲得したのは大きいといえます。

 

星野源、今年も大ヒット連発

アニメ映画主題歌がまさかの主人公(およびそのアニメ自体)の名前だったという驚きがいかにも星野源さんらしいといえる「ドラえもん」は年間5位を記録。また、賛否両論を巻き起こした朝の連続テレビ小説半分、青い。』の主題歌「アイデア」は、2番のアイデアに驚かされたものですが、シングルCD未発売ながら週間チャートを制し、年間チャートでも17位という結果に。

面白いのは、星野源さんはストリーミングにおいてまだ未解禁でありながら、年間ストリーミングチャートにおいて「ドラえもん」が36位、また前年総合チャートを制した「恋」が53位にランクイン(「恋」は今年の総合チャートでも46位に登場)。ストリーミングには歌詞表示サービスであるプチリリでの表示回数も含まれているそうで、もしかしたら歌詞表示だけで高い数値を獲得出来たのかもしれません。そう考えると、曲名、曲の展開、歌詞、ミュージックビデオ…星野源さんの一挙一動を見守りたい方が如何に多いかがよく解ります。

 

K-PopはTWICE・BTS二強時代

TWICEは「Candy Pop」(8位)を筆頭に、「Wake Me Up」(18位)、「TT」(19位)が20位以内に、さらに40位以内にまで広げると合計5曲がランクイン。他方BTSはトップ10には入らなかったものの「FAKE LOVE」が13位に入ったのをはじめ、「DNA」(24位)、「MIC Drop」(28位)と40位以内では3曲が登場しています。K-Popではその他BLACKPINK、東方神起、MOMOLAND、ジェジュンさんがランクインしていますが、やはりこの2組が圧倒している状況です。

面白いのは、TWICEの楽曲において「What Is Love?」(29位)が今年春に韓国でリリースされたミニアルバムのタイトル曲、「LIKEY」(30位)が昨年秋に同じく韓国でリリースされたフルアルバム『Twicetagram』のリード曲であり、日本では未リリースの楽曲群であるということ。またBTSは「FAKE LOVE」等が韓国のみならずアメリカでもチャートを駆け上がり(とはいえ直後に大きくランクダウンしたこともあり、真のヒットとは言いにくいというのが私見ですが)、日本語版が出る前からチャートに登場しています。

(なお以前ビルボードジャパンに問い合わせましたが、複数の言語によるバージョンは同一曲として合算され、他方リミックスや客演参加等でオリジナルと異なれば別扱いとなります。)

トップアーティストチャートでのストリーミング指標におけるTWICE1位、BTS3位という位置を踏まえるに、話題の歌手については言語に関係なく聴かれているということが見て取れます。

 

⑧ 今年も高質な映像作品タイアップ曲がランクイン

上記でも映像作品タイアップ曲を多数紹介しましたが、他にも続々ランクイン。 back number「瞬き」(15位)は映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』に、同じく「大不正解」(39位)は映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』に用いられ共にヒット。MISIA feat. HIDE(GReeeeN)「アイノカタチ」(27位)はドラマ『義母と娘のブルース』の主題歌として、ドラマは右肩上がりに評判も視聴率も上げていきました。MISIAさん自身、今年の『NHK紅白歌合戦』に出場することが決まっています。

また、年間アルバムチャートで3位を獲得した宇多田ヒカル『初恋』からは、映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』主題歌の「あなた」が年間ソングスチャートで45位、ドラマ『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』のイメージソングである「初恋」が同70位という結果に。前者は興行収入32億を突破したこともあり曲も上位に食い込むかと個人的には考えていましたが、もしかしたらシングルCD未発売が影響したのかもしれません。ゆえに来年1月、およそ10年半ぶりにリリースされるシングルの動向によっては、シングルCDを切る体制にシフトする可能性もなくはないでしょう。

 

⑨ ストリーミングを味方に次世代歌手が台頭

現在、ドラマ『獣になれない私たち』主題歌の「今夜このまま」がヒット中のあいみょんさんはトップアーティストチャートで16位にランクイン。年間ソングスチャートでは3曲を100位以内に送り込みましたがその強さの秘訣はストリーミングにあります。年間ストリーミングチャートでは「君はロックを聴かない」の11位(総合では68位)を筆頭に6曲がランクインしており、2月の『ミュージックステーション』出演等メディア露出を機に、フェス出演、ドラマ主題歌という流れで徐々にアーティストパワーを高めているように思われます。

他にも、Mrs. GREEN APPLE「青と夏」が84位、Official髭男dism「ノーダウト」が94位にランクイン。共に映像作品のタイアップで、ストリーミングチャートでは「青と夏」が56位、「ノーダウト」が52位と総合順位より高いのも特徴的。K-Popの項でもそうでしたが、もしかしたら若年層ほどストリーミングを好んで用いるのかもという仮説を立てています。

 

⑩ 洋楽は低調ながら映像作品関連曲が強い

昨年は年間チャート2位にエド・シーラン「Shape Of You」が入ったのみならず、K-Pop(の韓国語版)を除けば40位以内に洋楽が5曲も入っていたのですが、今年は40位以内では「Shape Of You」(14位)のみ、しかも100位以内で5曲というのですから寂しい限り。とはいえ映画『グレイテスト・ショーマンサウンドトラックに収められた、キアラ・セトル & ザ・グレイテスト・ショーマン・アンサンブル「This Is Me」が60位にランクイン。サウンドトラックは年間アルバムチャートで5位を獲得しています。

現在は映画『ボヘミアン・ラプソディサウンドトラックもヒット中であることを踏まえれば、良質な映像作品と曲とが相乗効果で共にヒットするという構図が想像出来ます。

ちなみにエド・シーラン「Shape Of You」は登場後数ヶ月が経過した昨年夏、日本ではドラマ『僕たちがやりました』に用いられたことでロングヒットに。映像作品とのタイアップがヒットの鍵といえるかもしれません。

 

 

あくまで私見ながら、10項目取り上げてみました。他にもこのような見方がある等ありましたら、教えていただければ幸いです。