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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

和田アキ子 with BOYS AND MEN研究生、AKB48…シングルCDセールスとあわせて”ルックアップ”をチェックしよう

先日取り上げた和田アキ子 with BOYS AND MEN研究生「愛を頑張って」の結果が判明しました。前週ビルボードジャパンのソングスチャートおよびオリコンのシングルCDセールスランキングともに2位を獲得しながら、今週はオリコンでは50位圏外、そしてビルボードジャパンでは100位圏外となっています。

たしかに前週の2位獲得は素晴らしいことです。

胸を張る気持ちは解ります。今や演歌歌謡曲勢でシングルCDセールスのみのチャートは勿論のこと、複合指標のソングスチャートでも2位到達はほぼあり得ないこと。ならばなぜ複合指標でも、そしてセールス単体でも2週目圏外になるのか?という疑問がより強く残ってしまいます。つまりは「愛を頑張って」はシングルCDセールスに特化したものであり、近年の和田アキ子さんのセールスを考慮すれば、和田さん側には厳しい物言いを承知で書くのですが、BOYS AND MEN研究生のファンの努力の結果と言えるかもしれません。

明白になったと断言したのには理由があります。チャートの構成指標ごとに順位の入れ替えが出来るビルボードジャパンのCHART insightにおいて、前週6月4日付で”PCによるCD読取数”(オレンジの指標)をベースに並び替えると、「愛を頑張って」は20位以内にはランクインされていません(Twitterのフォロワーの方曰く、100位以内にも入っていないそうです)。この指標は【ルックアップ】と呼ばれるもの。

CDをPCでリッピングする際に大半のアプリケーションがアクセスする、楽曲やアーティスト名などを表示するためのデータベースが、「グレースノートメディアデータベース」です。そのアクセス数をシングル盤はHot100、アルバム盤はHot Albumsに合算しています。ユーザーのパッケージに対するアクションをフォローするデータとして、または日本特有のレンタル動向をフォローするデータとして有効であると考えて採用しましたが、1年間の実運用を経て、セールスよりも若年層をコアとしたアクティビティをフォローすることが分かってきました。「インサイト」では「セールス」カテゴリに入れることも検討しましたが、むしろアクティビティをフォローする新しい指標として、単独で見て頂きたいと考えました。

ビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANより

CDを買った全ての人が、全てのCDをパソコンに取り込みCDデータベースを活用するわけではないものの、たとえば10万枚売れた場合1%でも取り込まれるCDがあればルックアップは1000となり、同指標でトップ100内には入るはずです。それでもこのルックアップでかすりもしなかったのは、単に取込率が低かったこともあるかもしれませんが、そもそもの売上等枚数に対するユニークユーザー数(CDを購入した人の数)があまりに少ないということを示しているはずです。ちなみにレンタルCD分もカウントされるため、レンタルCD回転率も高くないと言えるでしょう。

 

この【ルックアップ】については今週も驚くべき結果が。

『初週累計2,662,760枚を売り上げ』(上記記事より)、莫大なセールスを記録したはずのAKB48「Teacher Teacher」ですが、CHART insightでルックアップの順位をみるとなんと2位。King & Prince「シンデレラガール」に敗れています。単純比較は出来ませんが(特にAKB48シングル売上枚数にかなりの乖離があるため)、オリコンでは同日付で36500枚の売上を記録している「シンデレラガール」に、その50倍前後もの売上を記録した「Teacher Teacher」が敗れるというのは唖然としてしまいます。どちらも発売日にレンタル解禁されており、タイアップの関係で「シンデレラガール」が多く借りられている(その取り込みがルックアップを押し上げている)と言えるかもしれませんが、それでもレンタル分だけでルックアップが覆るとは思えず、やはりユニークユーザー数の問題ではないかと考えずにはいられません。

無論、AKB48にも認知度の高い曲はありますが、AKBグループの選抜総選挙の投票権が封入されたここ数年のシングル且つシングルCDセールスランキングで年間1位を獲得している2012年(「真夏のSounds good!」)以降の作品で、年間1位に値する程の認知度を誇り老若男女に愛されるような、いわゆる社会的ヒット曲はないように思われます。これはビルボードジャパンの近年のチャートポリシー変更に伴いシングルCDの売上枚数が社会的ヒットと必ずしもリンクしていないことを考慮して同指標のウェイトを減らしたことで、昨年のシングルCDランキング年間1位だったAKB48「願いごとの持ち腐れ」が同年のビルボードジャパンでの年間ソングスチャートでトップ10に入らなかったことに象徴されていますね(ビルボードジャパン年間ソングスチャートにみる、今年の音楽業界のトピックス10(2017年12月10日付)より)。

 

シングルCDセールスが反映される最初の週は、ルックアップについても確認しユニークユーザー数を割り出してみることもお勧めします。楽曲が社会的ヒットになるか否かの分かれ目は、ルックアップを知ることにあると言えるでしょう。そしてセールス反映2週目のポイント低下や総合順位の下落をチェックすることも重要です。AKB48「Teacher Teacher」については次週の動向をチェックして最終的に判断しようと思います。