イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

いとうせいこう氏の提案を、生命保険業界は無駄にしないでほしい

『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』(TBSラジオ)が帯番組になり、時間が7.5倍になったのだから少し希釈するのか…と思ったらそれどころか前番組以上の濃さを毎日放ち続けるのが、この4月から始まった『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)。様々な角度からの情報に、リスナーの好奇心は刺激されまくりです。

そんな中、番組略称が"アトロク"に決まったのですが、当初決まっていた別の略称を華麗に覆したのが、ゲストに登場したいとうせいこうさん。

いとうさんの"アトロク"プレゼンの見事さはみやーんさんによる書き起こし、いとうせいこう『アフター6ジャンクション』略称「アトロク」を提案する(4月11日付)でも追うことが出来ますが、この略称提案とは別に、今回の出演におけるプレゼンは目から鱗。自らの精神科通院を書き、辛いなら気軽に精神科に行っていいんだよと諭す『ラブという薬』紹介には、胸のすく思いがしました。

 

ただ…とせっかくの素晴らしいプレゼンに水を差すようでアレですが、精神科を受診すると、基本的に生命保険には入れなくなる模様です。

自殺率の高さ、他の病気を引き起こす可能性…それらは理解出来なくはありません。しかし、いとうせいこうさんの提案は、心が極めて重くなってしまってからではなく"未病"の段階で行くべきとしているわけで、それを十把一絡げに"精神科受診しましたね...あなたは生命保険入れませんよ?"というのはあまりにも暴力的ではないでしょうか。引受基準を緩やかにした生命保険に入れる可能性もある模様ですが、それでは通常の生命保険より遥かに高くなってしまいます。また会社によって引受基準が少し異なるかもしれませんが、"精神科 生命保険"と検索すると"入れない"等悪いことばかり出てきてしまい、悲観的にならざるを得ません。

いやいや、生命保険って受診する前に入ればいいのでは?と言う方もいらっしゃるでしょうが、全て正しいとはいえません。生命保険は進化していて、"入院数日目→初日からの補償" "先進医療への対応" "保険料の安価"等、より好い保険が登場した場合に乗り換える自由が、一度でも精神科を受診してしまうと出来なくなる可能性が高くなるわけです(たとえ他に病気をしておらず、精神科を未病の段階で受けただけだとしても)。そしてこれは穿った見方と前置きして書きますが、たとえ精神科受診前に保険に加入していたとして、その後精神科を受診し、さらに心とは別の病気で入院した場合でも保険金が出ないのでは?と思ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう悪しき想像してもおかしくないくらい、生命保険における精神科への見方は厳しいというか、それこそ"気軽に精神科へ"とは真逆の状況だと言わざるを得ません。

 

生命保険については以前も、別の点から厳しい問いかけをさせていただきました。タトゥーのファッション化が半ば当たり前になってきている状況の中で、生命保険業界の見方が改善したという報告を聞かないような気がします。

もしかしたら、いとうせいこうさんの問いかけはムーブメントになるかもしれませんし、少なくとも著書を手にされた方にとっては救いになるはずです。しかし、心の未病すら受け付けられないとする生命保険の門戸を知って受診を踏みとどまるのだとしたら、その人の人生に大きな影を落としかねません。生命保険業界側には、今後心の病気を未病の段階で防ぐ流れが生まれた時に、受信された方の生命保険加入条件を緩和して欲しいと切に願いますし、その流れが生まれずとも"私達が支えます"くらいの気概を見せていただきたいものです。