昨年の『NHK紅白歌合戦』(以下、紅白)雑感…もはや完全に乗り遅れていますが、どうしても書き記さないとと思い載せておきます。
多くの方の指摘にもあるように、今回の紅白がお世辞にも優れているとはいえませんでした。が、たとえばメディア経由で流れてくる指摘の中にほとんどと言っていいほど触れられていない点があります。それは司会の拙さ。特に、白組司会を務めた嵐・相葉雅紀さんにおいては、これまで嵐として複数回担当している方があそこまで…というのが、SNSのタイムラインなどで散見されました。しかし、メディア経由で発せられる紅白批判においてこの点がほぼスルーゆえ、私たちの考えが間違っているのかと一瞬考えてしまいました…が、司会の拙さは同じ事務所の中居正広さんや井ノ原快彦さんに比べても明らかなわけで、これはほぼ間違いなく”触れないが勝ち”というメディアの姿勢かと思われます。無論ネットの意見が全てではないとはいえ、(何を基準に上手い下手とみなすかという問題はあれど)それをメディア経由で誰も示さないのはすごく不自然ですよね。
昨年のSMAP解散の件に際し、松本人志さんは元日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)の中で触れた言葉は、現在のメディアの”保身”を端的に示しています。
誰も触れなかったのはその"保身"ゆえでしょう。しかし冷静沈着に指摘することは批判(という体の実際は非難であることが多いのですが)とは異なるはず。指摘も出来ないというのはちょっとおもねりすぎではないかと思わざるを得ません。
台本の拙さは、司会の機転で面白いほうにつなげることは出来るはずです。司会は台本通り一字一句行わないといけないらしいのですが(SNSにて私宛に指摘がありました)、ならば以前の中居正広さん&笑福亭鶴瓶さんによる紅白はあり得なかったわけで、ある種の柔軟性を持ち合わせてもよかったはず。他方、紅組の有村架純さんも巧いとは言えませんでしたが、”彼女は台本通りにこなしているはず、その点においては好い”という意見が多く見られていました。
さて、司会の人選も含め、次回以降の紅白の改善点を3点、何様と言われるのを覚悟で述べさせていただくならば下記の通り。
① 台本のブラッシュアップは必須
タモリさんとマツコ・デラックスさんの企画も、『シン・ゴジラ』とのタイアップも特段悪くはなかったと思うのですが、もっと面白く魅せることが出来たのではというのが私見。推敲しているだろうとは思いますが、バラエティ色を強めるならば優秀な放送作家に相談する、スクリプトドクターに立ち会ってもらう等の施策は必要だったと思います。一字一句台本通りにさせるならなおのこと、です。
タモリさん等の出演は、SMAP出演を見越して長時間空けていた分の隙間を埋めるためという噂もありましたが、ならばSMAP出演が見込めなくなった際に行わないといけないのは何よりもまず、曲を少なくともワンハーフ(1番フル→最後のサビ)にすることではないかと。さほどヒットしなかった曲だからといって1番のみとするのは楽曲に対しても歌手に対しても失礼です。バラエティ色を強めるとしても音楽番組なのですから、音楽への愛情は最低限持ち合わせていただきたいものです。
ちなみに『シン・ゴジラ』企画におけるPPAPと第九のマッシュアップは非常に格好良かったので音源化してほしいなと。
② 宣伝はやめよ
実は先に指摘した司会の人選ですが、相葉雅紀さんの出演は本人がMCを務める『グッと!スポーツ』(NHK総合)が、有村架純さんは春からの連続テレビ小説(以降、朝ドラ)『ひよっこ』(NHK総合)の番宣的意味合いが強いわけです(実際に双方の番組について、紅白で触れられていました)。が、NHKが民放並に番宣する必要が果たしてあるのでしょうか。無論、朝ドラの主題歌担当やオリンピックテーマ曲の歌手が出演に至れるというメリットが局にも視聴者側にもあるとはいえ、さすがにやり過ぎな気がします。
そして個人的に一番辟易したのは、ポール・マッカトニーのサプライズVTR出演。東京スポーツには経緯(あくまで噂レベルと前置きします)が記されています。
・P・マッカートニー紅白サプライズ出演 裏で涙ぐましい努力をしていたNHK - 東スポWeb(1月2日付)
記事には『NHKは放送法によって広告宣伝が禁じられているため、ポール側が主張する来日公演のPRは不可能。そのためVTRメッセージで「公演」という言葉を一切入れず、「2017年は日本に行きます」と表現させることで手を打った』とありますが、これって文言を変えただけで多くの人には広告宣伝と受け止められたはずではないかと。クリスマス色(赤い衣装やポインセチア等、収録時期に季節外れ感)の強いVTRにも違和感を覚えましたが、個人的にはこれは完全にアウトだと断言します。
今のNHKは、ニュースで公開直前映画の宣伝かの如き主演俳優インタビューや、平日は毎朝商品紹介を(商品名は伏せるものの)行っています。こういったことにもメスをいれないとこうした行為がどんどん高まってしまうのではないでしょうか。そういう自局分も含めた(広告)宣伝は一度排除してほしいと切に願います。
③ 紅組優勝は正しかった
これは厳密には改善点ではないのですが、審査員票の重みをもっと視聴者に実感させないといけないと思います。
紅組勝利の瞬間の有村架純さんの戸惑いもあって、投票に文句を言う人が非常に目立っていたのですが、現行の投票システムでは男性アイドルファンを多数擁する視聴者や会場票が多くなるのは自明。デジタルでの審査参加がしやすくなり会場票が復活した2005年以降、今回までの12回での紅白の勝敗は紅組の3勝9敗。2005年からは6年連続で白組が勝利しているのは、正直言って先述したファンの行動のおかげではないかと。正直自分はそこに疑問を抱いていて、芸術的な面でいけば紅組が…と思う回(年)が多くありました。昨年に関しては以前も書いた椎名林檎さんの素晴らしさ等もあり当初から紅組だと思っていて、審査員の方々の投票行動に共感した次第。というか、投票がおかしいと言う人は、投票システムで男性アイドルファンの数が有利に働きすぎている事実、および審査員の審美眼をなかば侮辱しているということを認識しているのでしょうか。
ちなみに男性アイドルについて触れるならば、ジャニーズ事務所枠がSMAPとTOKIO以外にも拡大したのが2009年(嵐が初出場した年)。それ以降最高で7枠(2015年)まで達しており今回が6枠。しかしこれまで弊ブログで触れているように、日本の真のヒットをオリコン以上に示すビルボードジャパンのチャートでは必ずしも彼らの曲が売上以上に浸透しているとは言い難いという事実があります。また、ジャニーズ事務所所属アイドルが他の歌手にダンス等で客演参加することはあれど、自身のパフォーマンスに他の歌手等を招くということがあまりないような気がするのですがいかがでしょう。そういうところから事務所(所属歌手)の閉塞性を感じてしまうのは自分だけかもしれませんが、忘れぬうちに書き記させていただきます。
以上3点。台本のブラッシュアップ、宣伝しないこと、投票システムの強い訴求(および得点を過度に視聴者や会場に委ねない姿勢)は、今年の紅白をより好くする上で大前提になるでしょう。個人的には司会巧者の中居正広さんに再度司会に立っていただきたいものです。独立が囁かれていますが、仮にそうなったとして彼の実力を無視することは出来ないはず。そして本来、NHKは視聴率を民放より気にしなくていいはずで、視聴率獲得のために事務所におもねる必要はないはずですから、独立したとして彼を起用するのは何ら問題ないはずです。