イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

マイケル・キワヌーカ、意義のある全英アルバムチャート制覇

今週火曜昼前、訪れた店で流れていたエフエム青森『simple style -オヒルノオト-』(月-金曜11時30分)でマイケル・キワヌーカの曲が流れ、今月リリースされたセカンドアルバム、『Love & Hate』がイギリスのチャートを制したことを知りました。

流れていた曲は、「Black Man In A White World」。ミュージック中盤のある”衝突”からの展開には驚かされます。

もしやこの歌詞、そして映像にはいわゆる”BlackLivesMatter”を訴えないとならない黒人の現状が反映されているのかもしれません。このミュージックビデオの監督は日本人のHiro Murai氏。最近ではマッシヴ・アタック、フライング・ロータス feat. ケンドリック・ラマー、バウアー等手掛けており、氏のホームページにはそれらミュージックビデオが紹介されているのですが、その画はいずれも、どことなく憂いや不穏な感じが。もしかしたら、マイケルの音世界をより強く伝えられる存在としてマイケル側がMurai氏を起用したのかもしれません。

 

マイケル・キワヌーカはアルバムリリースのおよそ2週間前、イギリスの音楽イベント、BST(ブリティッシュ・サマー・タイム)ハイド・パーク2016におけるキャロル・キングのライブに参加。ライブではキャロルの名盤『Tapestry』を全曲演奏したそうで、もしかしたらそこでの評判などがアルバムを首位に押し上げた要因なのかもしれません。しかしながらそれ以上に、EU離脱で揺れ、その離脱を決めた一因である移民排斥支持という(個人的に強く感じてしまう)蔑視感情が高まっているイギリスにおいて、両親がウガンダからの移民である(BIOGRAPHY - MICHAEL KIWANUKA | マイケル・キワヌーカ - UNIVERSAL MUSIC JAPANより)マイケルの作品が1位になったということは、アルバムがその不穏なイギリスを憂う人たちの拠り所、心の支えになったからなのかもしれません。排斥をNOとする人にとっては先述した「Black Man...」の主人公の気持ちを理解出来るでしょう(Black Manを様々なマイノリティ、と置き換えることも出来ますよね)。他方、排斥を支持する人の中に、もしこの作品を聴いて好いと思ったならば、その素直な思いを大事にしていただきたいものです。後にこの作品が、排斥支持者が嫌う対象の人物による作品と解ったとして、好いものは好いと素直に評価した自身の感情を否定するのは勿体無いこと。好い作品を作った移民の排斥などなんとナンセンスであることか、そう考えて欲しいと切に願っています。

 

昨日の朝、一度このエントリーを書いた後にアルバムを再生したところ、聴き入り何度もリピートしてしまいました。メロディ、声、アレンジが高い次元で絡み合っていて、聴き逃しちゃいけないと思ってしまったのです。これからは全曲の歌詞の内容もきちんとチェックして、彼の伝えたいことをより深く知ろうと思います。