少し前ではありますが、オリコンでこのような記事が。
集計期間を勘案するに、『NHK紅白歌合戦』(および『日本レコード大賞』等)での歌唱曲が売上に反映されるわけです。記事によると、効果があった主な作品は以下の通り。
<シングル>
・西野カナ「トリセツ」(前週36位→17位)
・三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Summer Madness」(前週86位→39位)
・同「Unfair World」(前週141位→40位)
・同「R.Y.U.S.E.I.」(前週92位→49位)
<アルバム>
・三山ひろし『三山ひろし 全曲集 ~お岩木山・人恋酒場~』(「お岩木山」収録)(前週123位→66位)
・Superfly『WHITE』(「Beautiful」収録)(前週132位→48位)
・今井美樹『Premium Ivory -The Best Songs Of All Time-』(「PIECE OF MY WISH」収録)(前週104位→49位)
順位の上昇度が低いため、一昔前(といっても10年ちょっと前ですが)の中島みゆき「地上の星」や秋川雅史「千の風になって」のような"紅白効果"は薄まったのでは...と捉えてしまうところでした。
ところが、同日付のビルボード・ジャパンのシングルチャート(1月11日付Hot 100)を見ると大きく異なっています。先ほどの引用箇所をビルボード・ジャパンチャートの順位で置き換えてみると。
<シングル>
・西野カナ「トリセツ」(前週7位→1位)
・MISIA「オルフェンズの涙」(前週101位以下→38位)
・三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Summer Madness」(前週27位→9位)
・同「Unfair World」(前週72位→6位)
・同「R.Y.U.S.E.I.」(前週11位→7位)
<アルバム>
・三山ひろし『三山ひろし 全曲集 ~お岩木山・人恋酒場~』(「お岩木山」収録)(前週および今週101位以下)
・Superfly『WHITE』(「Beautiful」収録)(前週68位→20位)
・今井美樹『Premium Ivory -The Best Songs Of All Time-』(「PIECE OF MY WISH」収録)(前週101位以下→49位)
ビルボード・ジャパンのチャートでは演歌が弱いことが如実に証明されていますが、その他のシングルはMISIAを除いてトップ10以内にランクイン。特に三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEに至っては3曲もチャートに送り込んでいます。
このチャートについて、ビルボード・ジャパンではこのような解説が。
「トリセツ」については『ダウンロードとストリーミングが牽引する形は変わらないものの、全指標で順位を上げ』る形、三代目...については『「R.Y.U.S.E.I.」と「Summer Madness」はダウンロードとYouTubeでのポイントが大きいが、「Unfair World」はTwitterが大きく、レコ大の大賞受賞が効果を上げたことがよく分かる』と分析(『』内は上記の記事より)。その他、"紅白効果"として星野源「SUN」や小林幸子「千本桜」についても言及しています。なお、ビルボード・ジャパンにおける指標については昨夏の記事、ビルボードジャパン・チャートが6月にリニューアル!チャート・インサイト・サービスがデビュー | Special | Billboard JAPANをご参照ください。
さて、オリコンでは51~200位については有料サービスでのみ閲覧可能ということで、オリコン50位以内の作品において抜粋してみます。
<シングル>
・星野源「SUN」(オリコン前週および今週51位以下 ビルボード前週8位→2位)
・AKB48「365日の紙飛行機」(シングル「唇にBe My Baby」のカップリング)
(オリコン前週1位→4位 ビルボード33位→14位(「唇に...」は前週15位→18位)
・嵐「愛を叫べ」(オリコン前週51位以下→31位 ビルボード65位→44位)
・山内惠介「スポットライト」(オリコン前週42位→46位 ビルボード前週および今週101位以下)
・SEKAI NO OWARI「プレゼント」(ダブルAサイドシングル「SOS / プレゼント」収録)
(オリコン前週51位以下→47位 ビルボード前週および今週101位以下)
<アルバム>
・福山雅治『福の音』(シングル「I am a HERO」「虹」「桜坂」「HELLO」収録)
・星野源『YELLOW DANCER』(シングル「SUN」収録)
・松田聖子『We Love SEIKO -35th Anniversary 松田聖子究極オールタイムベスト 50Songs-』(シングル「赤いスイートピー」収録)
・嵐『Japonism』(シングル「Sakura」「青空の下、キミのとなり」収録)
(オリコン前週14位→11位 ビルボード前週11位→11位)
・三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE『PLANET SEVEN』(シングル「R.Y.U.S.E.I.」収録)
(オリコン前週51位以下→12位 ビルボード21位→12位)
・AKB48『0と1の間』(シングル「会いたかった」「フライングゲット」「ヘビーローテーション」「恋するフォーチュンクッキー」収録)
(オリコン前週29位→19位 ビルボード前週16位→15位)
他にも、オリコンで51位未満の曲ながら"ビルボードで紅白効果"が見られたシングルとしては、先に引用した記事にあった小林幸子「千本桜」(前週20位→13位)をはじめ、ゲスの極み乙女。「私以外私じゃないの」(前週39位→15位)、AAA「恋音と雨空」(前週59位→21位)、乃木坂46「君の名は希望」(前週101位以下→25位)、μ's「それは僕たちの奇跡」(前週101位以下→30位)、BUMP OF CHICKEN「ray」(前週101位以下→31位)、椎名林檎「長く短い祭」(前週101位以下→32位)...となっており、オリコンがWeb上で公開してるのと同じ50位以内に絞ってみても、"紅白効果"が表れたのは、順位上でいけば全体的に【オリコン<ビルボード・ジャパン】ということがよく分かります。
(一方で、演歌やアイドルについてはCDセールスのみの指標たるオリコンチャートのほうが強いですね。一部事務所のデジタルやネットへのアンフレンドリーさの表れとも言えるでしょうし、"CD頼み"という姿勢も見えてくるようです。)
というわけで、オリコンだけではなくビルボード・ジャパンの指標もきちんとチェックしないと"紅白効果"は解らない...というのが結論です。ただ、おそらくは未だ多くのレコード会社が"CDを売ること"を第一義としているわけで(そしてメディアでもオリコンのほうが圧倒的に用いられるため尚の事)、オリコンだけで見れば"紅白効果"は薄くCDが売れていないというマイナス面の印象ばかり抱かれるかもしれません。しかし、ビルボード・ジャパンから解ることは、"紅白効果"がCDセールス以外の指標であるデジタルセールスやYouTubeでの視聴、ストリーミング等に反映されているということではないでしょうか。そう考えれば、レコード会社はそれらをきちんと踏まえたビジネスモデルの構築が急務だと考えますし、もっと言えばネット時代に則した著作権法の改正を実施し(個人的には現在の違法建築の如き改正を一旦止め、一から作りなおすことが必要だと考えています)、きちんと収益が上げられる仕組みづくりをしないといけないでしょう。このままだと音楽は失くならずとも、発し手のレコード会社が亡くなるという事態すら起きかねないと思います。