イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MONDO GROSSO復活と15年前の名曲と

大沢伸一さんのプロジェクト、MONDO GROSSOが復活。14年ぶりとなるオリジナルアルバム『何度でも新しく生まれる』からの先行曲「ラビリンス」のボーカルを満島ひかりさんが務めることが話題となっています。

リリックビデオは下記に。

満島ひかりさんといえば、出演したドラマ『カルテット』(TBS系)でのユニット、Doughnuts Hole名義での「おとなの掟」でも主旋律を担当。また中島みゆきさんの絶品カバー(いくつかありますが、「ファイト!」は昨年下半期の私的邦楽ベストに選んだほど)や、昨年3月までの1年間を対象期間とした第54回ギャラクシー賞で個人賞を受賞した際の対象作品であるドラマ『トットてれび』(NHK総合)におけるミュージカル的演出での歌唱シーンなど、歌の仕事が増えていることから、いつか彼女の関連作品をコンパイルしてフィジカルリリースしてほしいと切に願います(特に「おとなの掟」)。

 

さてMONDO GROSSOですが。個人的に最も好きなのがその前年に日本デビューを果たしたBoAさんをフィーチャーした2002年リリースの「Everything Needs Love」。流麗なストリングスとピアノ、強いビートとなにより彼女のボーカルの存在感が高い次元で混ざり合い格別の心地良さを生み出したこの曲は、生涯のフェイバリットとなったといっても過言ではありません。

SNSにて、MONDO GROSSOが新曲を出すタイミングに合わせてYouTubeに過去作品の動画を公式としてアップしていることを知りました。アクセスし、何度も繰り返し聴いて(観て)いる自分がいます。

つぶやいた方曰く、このミュージックビデオには現在主流となっているリリックビデオの趣があるということでしたが、もしかしたらこの曲およびMONDO GROSSOはリリックビデオの先駆けだったのかもしれません。このタイミングでアップしてくださったMONDO GROSSOならびに当時の所属レーベルに感謝し、また新作を心待ちにしたいと思います。

米アルバムチャートで30位にデビューを果たしたレーベルコンピレーションの新たなスタイルとは

2000年代のR&B界を牽引する歌い手のひとり、クリス・ブラウンが次のアルバムについてアナウンス。2枚組になるとのことです。

グッチ・メインとアッシャーを客演に迎え、ビデオ冒頭では日本語も飛び出す「Party」は最新5月13日付米ビルボードソングスチャートで76位にランクイン。

そしてその「Party」の音がビデオ冒頭に流れる、現段階で最新曲となる「Privacy」も収録予定。

アルバムリリース時期は不明ながら、先行曲を聴く限り実に楽しみです。

 

さて、上記のうち「Party」が収録されたコンピレーションアルバムが、こちらも最新である5月13日付米ビルボードアルバムチャートで30位に初登場を果たしています。アルバムの名は『The RCA-List, Vol 5』。レーベル、RCAの最新ヒットをなんと47曲収録しており、曲数や最新曲を網羅している点において、弊ブログで定期的に紹介している『Now』シリーズに近いかもしれません。収録曲については下記で確認出来ます。

The RCA-List (Vol. 5)

The RCA-List (Vol. 5)

  • Various Artists
  • Hip-Hop/Rap

アルバムの冒頭を飾るのは、新鋭シンガーソングライター、カリードによる「Location」。最新米ソングスチャートで前週から9ランクも大幅ジャンプアップ、16位まで上昇しておりトップ10を窺っています。

『Now』シリーズと異なるのは、単一レーベル発のコンピレーションゆえ、イチオシの歌手に偏る傾向があること。カリードについてはなんと4曲も収録、またH.E.R.という歌手については昨年の処女作(EP)からは2曲が。来月第2弾EPの発表を控えたタイミングで、前作の代表曲である「Losing」「Pigment」を収録していることで、新作への注目が俄然高まりそうです。

 

特にH.E.R.についてはフィジカル(CD)でのリリースがないために、今回のコンピレーションは個人的に待ってました!という感じでした...が、この『The RCA-List, Vol 5』、CD化されていないどころかデジタルダウンロードもされていない模様(米Amazonのアルバム紹介ページでは右側に"Streaming Only"と表記)。更にはこのコンピレーション、日本ではストリーミング配信すらされていない可能性があるのです。Apple Musicでは取扱がありませんでした(一方でSpotifyにはあるかもしれませんが確認出来ず)。

 

CDとして形にしていただけたならば...と残念に思ったのですが、どうやらこのコンピレーションには『Now』とは異なる特徴が。All Musicによると、Vol.1(25曲入り)が2016年9月30日配信開始、次いでVol.2(29曲入り)が同年11月4日、Vol.3(35曲入り)が2017年1月27日、Vol.4(36曲入り)が同年2月3日...と、リリースタイミングがあまりにも速すぎるのです(ちなみに最新Vol.5は3月17日に配信開始となっています)。さらに曲数が徐々に増えているのですが、先述したH.E.R.「Losing」がVol.1~5の全てに収録されているというのも特徴で、おそらくはRCAが、発売から時間が経ったものでも"今推したい曲や歌手"をどんどんコンパイルしていることが解ります(クリス・ブラウンもH.E.R.も次作が控えていることが要因かと)。コンピレーションの最新作が配信開始される毎にそれ以前のバージョンが配信を取り止めているのも、前作と収録曲がダブっている等を踏まえれば理解出来ます。これら、リリースの速さ、収録曲の重複、過去作の配信停止...これぞ、フィジカルリリースによる商品在庫を心配しなくともよいデジタル時代ならではの利点を活かした、新たなコンピレーションアルバムのスタイルかもしれませんね。

米ソングスチャート、ブルーノ・マーズが全てのオリジナルアルバムから1位曲を輩出

ビルボードソングスチャートを定点観測。

現地時間の5月1日月曜(日本時間の火曜早朝)に発表された、5月13日付最新チャート。ケンドリック・ラマー「Humble.」は1週で首位から後退。代わって駆け上がったのは長らく2~3位に留まっていたブルーノ・マーズ「That's What I Like」でした。

記事は下記に。

そしてトップ10はこちら。

 

「That's What I Like」はブルーノ・マーズにとって通算7曲目のナンバーワンヒットに。

実はブルーノにとって初の1位獲得となったB.o.Bへの客演参加曲、「Nothin' On You」の1位到達がアナウンスされたのがちょうど7年前の今日というのですから、嬉しい偶然ですね。2010年以降で7曲もの1位獲得というのは男性歌手では最多となります(一方女性ではリアーナが9曲、ケイティ・ペリーが8曲)。

デジタルダウンロードの低下をラジオエアプレイの増加で補った「That's What I Like」。一方ストリーミングでは前週比15%もの大幅増に。これは4月21日に4バージョンものリミックスが公開されたゆえ。たとえばグッチ・メイン参加のバージョンは下記に。

ブルーノ・マーズは主演曲で5曲目の1位獲得。これでオリジナルアルバム3作品から全て1位曲を輩出したことになります(『Doo-Wops & Hooligans』(2010)からは「Just The Way You Are」と「Grenade」が、『Unorthodox Jukebox』(2013)からは「Locked Out Of Heaven」と「When I Was Your Man」が、そして『24K Magic』(2016)からは今回の「That's What I Like」)。ちなみにオリジナルアルバムから1曲以上のナンバーワンヒットを送り続けた記録ではリアーナの7作品が最高となっていますが(『A Girl Like Me』(2006)~『ANTI』(2016))、デビューアルバム『Music Of The Sun』からは1位曲を輩出せず。その点ではブルーノはケイティ・ペリー以来となる、デビューアルバム以降3作連続での1位曲輩出記録を達成したことになります。

 

先週首位だったケンドリック・ラマー「Humble.」はストリーミングで4週目の1位をキープするものの前週比14%ダウン(それでも5760万という驚異的な数値を叩き出しているのですが)。2位をキープしたエド・シーラン「Shape Of You」はラジオエアプレイで微減しているものの同部門で12週目の1位を獲得しており、ケンドリックがストリーミング以外の指標で補完出来れば、またはエドがまだまだ勢いをキープすれば、リミックス効果が途切れたブルーノから首位を奪還する可能性もありそうです。

が、ここにきて伏兵が登場。ルイス・フォンシとダディー・ヤンキーによるスペイン語曲「Despacito」が、ジャスティン・ビーバーを加えたバージョン(リミックス)の登場でさらに勢いを増し、48→9→4位と一気に上昇を果たしています。デジタルダウンロードは前週比43%上昇し、PSY「Gangnam Style」以来となる非英語曲による同部門1位に。総合でもロス・デル・リオ「Macarena (Bayside Boys Remix)」(1996)が14週首位を獲得して以来となるトップ5入り。ストリーミングでは前週比80%も上昇し同部門で2位、ラジオエアプレイも同25%上昇となり32位まで上昇。ラジオエアプレイが今後伸びをみせれば、トップ3入りは間違いないでしょう。

 

コールドプレイとの共演作「Something Just Like This」が今週6位にランクインしたザ・チェインスモーカーズ。彼らにとって、昨年5月21日付で「Don't Let Me Down」がランクインして以来52週連続トップ10入りを果たしたことになります。この連続して1年以上トップ10入りという記録を達成したのはケイティ・ペリー(69週)以来の快挙。あとはこの曲がどこまでトップ10をキープ出来るか、ケイティ・ペリーの記録に迫れるかに注目しましょう。

 

今週唯一のトップ10入りはカイゴとセレーナ・ゴメスによる「It Ain't Me」。

前週から順位を3つ上げてのトップ10入り。セレーナにとっては7曲目、カイゴにとっては初のトップ10ヒットとなりました。ミュージックビデオの解禁が4月24日とのことでストリーミングは10%上昇(次週も公開効果で更に伸びを示すことでしょう)。注目はラジオエアプレイ。既に8700万回という高い数値を叩き出しており同部門で4位。ラジオエアプレイが下支えになっている曲は強い傾向があると捉えているので、しばらくトップ10内をかき回してくれる予感がします。

 

 

次週は上位3強対「Despacito」の戦いになりそうです。

福岡発ディスコバンド、COLTECOがJ-WAVEチャートにランクイン

昨日4月30日付、『J-WAVE TOKIO HOT 100』(J-WAVE 日曜13時)の最新チャート。トップ10内には邦楽が3組(クリープハイプyonige、DYGL)、20位まで範囲を拡げても5組という少なさで、邦楽の勢いが弱まっている状況といえます。そんな中で71位に初登場を果たしたのが福岡のディスコバンドCOLTECO。YUUをフィーチャーした「DO IT」がまさにきらびやかなディスコ/ブギーで、自然と身体が動いてしまう一曲。これは今後のチャートアクションが期待出来そうですね。先月リリースされたアルバム『ALBUS』からの先行シングルとなっています。

曲名から想起したのは、2年前に日本でヒットしたタキシード「Do It」。

ブギー強めのタキシードをよりきらびやかにした感のあるCOLTECOの「DO IT」。松たか子「明日、春が来たら」も想起させ、この時期にピッタリです。

至極個人的なことを申せば曲の最後、拍手の後のFからはじまるカースワードが悪い意味で引っ掛かってしまうので、それを除いたバージョンもリリースしてほしかったなと思うのですが。それはともかく、アルバムは軒並み高品質の作品が続きますので、カースワードが気にならない方(のほうが大多数な気もしますが)は是非一度手に取っていただきたいと思います。

 

ちなみに、今年アルバムリリースを予定しているTLCのかつてのシングル「Girl Talk」の、彼らによるリミックスがもしかしたらオリジナルより好みかもしれません。かなりツボです。

世界的なバレエダンサーの映像作品に触れて考えた、差別の根幹と解消法

このイベントが行われたこと、ましてやこのバレエダンサーについて、恥ずかしながら知らなかったのですが、出演した作品を観て惹き込まれました。

セルゲイ・ポルーニンがダンスを披露した際のBGMは、アイルランド出身のホージアによる「Take Me To Church」。全英、全米共に最高2位の大ヒットとなった作品ですが、オリジナルのミュージックビデオはロシアで実際にあったというアンチLGBTによる迫害事件をモチーフに制作されており、そこにはホージアのアンチLGBTに対する批判が表れているといえます。

歌詞も踏まえ、この曲がヒットした理由については下記のブログが解りやすいと思うゆえ、勝手ながら取り上げさせていただきます。

 

LGBTというワードが浸透し、セクシャルマイノリティに対しての認識は高まっているものと思う一方、「Take Me To Church」のビデオの元となった事件や、未だ根強い差別主義...それも政治の長たる人間に多く見られる極端な思考がある限り、差別がなくなるのは遠い先のことかもしれません。が、例えばLGBTを快く思わない方の中で、セルゲイ・ポルーニンの美しきダンスに魅了されるうちにBGMが内包するアンチLGBTへの批判を無意識のうちに理解し、自然とLGBTへの差別が解消されることだってあるでしょう。公開中の映画『ムーンライト』も同様で、美しい作品に触れることで心が勝手に、自発的に受け入れていくことは有り得る話です。こういう美しいものがどんどん生まれてくるといいなと思います。

 

 

さて、LGBTに限らず、"自分が好ましく思わない存在"について、ズバッと言い切った素晴らしいツイートがありますので、勝手ながら紹介させていただきます。

アンチLGBTについては宗教的にアウトだから成立するという声を聞きますが、たとえばキリスト教でも様々な教派が存在します。

保守派の教派では同性愛は罪と謳いますが、個人的な考えとして、聖書を勝手にそのように解釈した、その解釈の仕方が問題ではないかと思うのです。そしてその解釈の元には、解釈した側に"他人の権力が拡大することで損をする"という上記ツイートの考え方が宿っているのかもしれません。これはかなり邪推ではあるのですが。

自分に冷静になってまた自己を客観視して、心の中に損得や嫌いという物差し、感情が横行してやいないか...ということを一人ひとりがきっちり考えないといけないはずです。宗教のような心を寄り添わせるもの、絶対的と考える存在に対し冷静に考えることは難しいかもしれませんが、それだって必要なことでしょう。そうやって立ち止まることが、内在する差別の芽を摘む第一歩だと考えます。

プロ野球中継終了から22時までの”つなぎ番組”が適当になってやいないか

今週水曜夜に弘前公園の夜桜を観に行ったことについては弘前公園の夜桜を、麗しきデュエット曲と共に(4月27日付)で記載しました。その際、目的地へ向かう車内で聴いたのがRABラジオ『RABミュージックCube』。火曜から金曜に放送されるプロ野球中継が早く終わった際、22時までのつなぎ番組として長く続いているのですが、4月26日21時49分頃に流れた曲の紹介内容に、正直耳を疑いました。

ジェームス・テイラーの情緒豊かな詞と、ボブ・マーリーのレゲエと、スティングのジャズの経験が融合して作られたこの曲は、1983年7月9日から、8週間1位をキープ。ビルボードの年間ナンバーワンシングルになりました。1位の座をキープした長さでは、ビートルズの「Hey Jude」の9週間に次いで2位。ビージーズの「恋のナイトフィーバー」と並んでいるのです。それでは聴いてください。ポリスで「見つめていたい Every Breath You Take」。

・4月26日放送『RABミュージックCube』より。radikoタイムフリーで5月3日まで聴取可能

ポリス「Every Breath You Take」が8週間1位を獲得したことは間違いありませんが、それ以前にこの曲より長く1位を獲得した曲がわずか1曲しかないというのは誤り、オリビア・ニュートン・ジョン「Physical」(1981)、デビー・ブーン「You Light Up My Life」(1977)は共に10週間1位を獲得しています。

もしかしたら「Every Breath You Take」が8週間"連続"で首位をキープし、一方「Physical」や「You Light Up My Life」は不連続的ゆえに割愛されたのでは?と思い、米ビルボードのチャートアーカイブを調べてみたのですが、双方とも連続で1位を獲得していました。ちなみにアーカイブについては特段サイトが用意されているわけではなく、ソングスチャート(The Hot 100)にある"ARCHIVE SEARCH"に年月日を入力することで確認出来ます。非常に解りやすいですね。なお、上記ビルボードの記事ではエド・シーラン「Shape Of You」の記録も掲載されているゆえ、今後長期1位を獲得した曲があれば上書きされていくものと思われます。

 

 

情報の誤りはいつ何時も発生するものであり、それにいちいち目くじらを立てるのはおかしいとは思います。しかし問題は、この曲の紹介が”幾度となく使われている可能性がある”ということなのです。実は一度、この番組についての問題を指摘し、刷新番組の企画案を提示しています。

当初『RABミュージックCube』の問題点として指摘したのは、番組に使用される曲や喋りの使い回し(によるマンネリ感や)、アナウンサーの声がいつのものか不明という問題(ポジティブな見方をすれば、誰の声か当てるという楽しさはあるかもしれません)でした。が、今回のような誤った曲紹介がそのまま使い続けているのであれば、誤情報がどんどん広まっていくわけです。それについての問題意識がないのか、曲に対する扱いが雑ではないのか、そして番組そのものに情熱が注がれなさすぎるのではないか...と思ってしまうのです。

 

自分が提示した新番組案に関してはそれが完璧とはいえないでしょうし、当然ながら人員や経費が必要ゆえ、”言うはタダ”と揶揄されるかもしれません。また、人によっては、どの曲が何週1位を獲ったかだなんて関係ないと言う人もいらっしゃるでしょう。ですが、今回の間違いで『RABミュージックCube』の”脆さ”等がはっきりした以上、やはり刷新は必要ではないかと感じています。格安な価格でもいいですしワンマンでもいいのならば自分が名乗り出たいくらいですがそこまでいかなくとも、現在の体制において【曲紹介原稿の入念なチェック→現在のアナウンサー陣での録音→番組使用音源の刷新】を早急に行っていただきたいと願いますし、それで大分印象は変わるはずです。ポリスを紹介したアナウンサーがどなたなのかすら解らないほど過去の録音と思しきことを踏まえれば尚の事です。

"コサキン"がスルーされてしまったTBSラジオ『ぼんやり審議会』に望むこと

毎週金曜はラジオの話。

 

先週(4月17日~23日)が首都圏ラジオ局の聴取率調査週間。"スペシャルウイーク"と称して大々的な特集が各局、各番組で組まれました。その中でも特に盛り上がっていたのは【コサキン復活】ではなかったでしょうか。その放送に感化されて、下記エントリーを掲載しました。

このコサキン復活を含め、星野源さんがラジオの存在を広く世に示す機会が数多くあったことから、ブログエントリーの最後に『他局でもいいので取り上げていただき、そこからヒントを探っていただけたならば』と書きました。実はこのときには既に4月23日放送の『ぼんやり審議会』(TBSラジオ)の生放送があることを承知していて、さらに同番組で【ラジオ業界の現状と今後】というテーマが設けられるとのことでしたので、局に関係なく意見が飛び交ってくれれば、特に今回のコサキン復活について…という期待を込めての記載でした。

(リンク先の音声(radikoタイムフリー)は今月30日まで聴取可能です。)

 

自分はリアルタイムで聴くことが出来ず、後にタイムフリーでチェックしたのですが…正直言って、非常に残念でした。しまおまほさんからコサキンについての話題が出ていながら、お茶を濁された感が強く残ってしまったのです。番組では、バナナマンがラジオでコントを披露したことを踏まえ、コサキンもコントをやってたよねという流れになったのですが。

(しまお) ああ、コサキンねえ…コサキンは…

(三条) そうですね、ええええ。

(吉田) 他局の。

(しまお) 他局に…はい。

(一同) (苦笑)

(しまお) なんかすいません。

(蓮見) でも全然、お気遣いなく。

(しまお) いや、気は遣ってないんですけど。

(一同) (笑)

(吉田) 解ってます。

(一同) (笑)

 ・当日の放送より(radikoタイムフリーで聴取可能)

これ以上の話は出ませんでしたが、これって、局の編成部員でこの番組の常連である三条毅史氏への過度な遠慮のように見受けられましたがいかがでしょう。TBSの蓮見アナウンサーもフォローしていたのでよりその印象が強まります。そして笑い声において"(笑)"と"(苦笑)"とを分けて記載しましたが、"(苦笑)"は本当に文字通りの苦笑いだったことが如実に伝わってきました。さらにはおかしな空気から発せられる間まで。

この日の放送ではプチ鹿島氏が、『Session-22』に以前、森友学園籠池氏がインタビュー出演した際の音声について、声は正直であるというようなことを言っていたのですが、書き起こし時の放送で感じた声ならびに空気や間には局や三条氏への遠慮が垣間見られ、たしかに声は嘘付けないよなあと痛感。これがいわゆる大人の対応なのかもしれませんが、あきらかに表面を取り繕う"オトナ"な印象が見られて、とにかく残念だったのです。

 

 

コサキンの番組がTBSラジオから離れた経緯や、その際に同局の著名なパーソナリティが特に営業に向けて激昂したなどの噂は伝わってきます。が、あくまで噂レベルゆえそれについては深く言及するつもりはありません。問題はこの日の放送で言っていたことと、コサキンの話をタブーとすることに果てしない矛盾があったことにあります。その矛盾とは。

 

 

① 他局と同様に、TBSラジオでも他局の常連を招いている

たとえば『伊集院光とらじおと』(TBSラジオ 月-木曜8時30分)。4月20日の放送には吉田照美さんがゲストで登場。文化放送で長年、平日帯の生ワイドを担当されていた方です。

また、先述したコサキン出演の『星野源オールナイトニッポン』(ニッポン放送 火曜25時)の真裏、『火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ 火曜25時)には直前の番組を担当するアルコ&ピースがゲストで登場。アルコ&ピースは途中中断もありながら、2012年から2016年にかけてニッポン放送の番組を担当しており、こちらもある種"局の垣根を越えて"の放送といえるかもしれません。

両番組とも『ぼんやり審議会』では触れられているわけで、それゆえ"TBSラジオが他局の常連出演者と共演することについてはOKなのに、なんで逆は言ってはいけないのか"と疑問を抱くのは自然なことではないでしょうか。

 

② ラジオは本音を言えるメディアであると話している

番組の後半、しまおまほさんはラジオが若者の間で聴かれなくなった現状の一因として彼らが『テレビがメインでラジオでは手を抜くんではないかというイメージを持ってる』という意見を述べ、吉田豪さんがすかさず『逆なのに』と相槌を打っています(radikoタイムフリーで4月30日まで確認出来ます)。ラジオのほうが本音を言えると言及するのであれば、やはりコサキンのくだりを濁すその対応は真逆と感じざるを得ません。

 

③ ラジオの将来のためにはラジオ業界全体がタッグを組まないといけないのではという結論が見えていたはず

番組後半において、特に若い人がラジオに接していない、もしくは接し方すら解らないという調査結果、ならびに半ば強制的にラジオを聴かせる実験を行うと実験終了後も多くの方が生活にラジオを聴いてくださるというデータを紹介していました。これらを踏まえてたとえば、"ラジオ聴きながらYouTubeを見る、その両方が1台のスマホで可能"という周知や、より壮大な実験の開催などを行う必要があるはずだと実感しました。その際、単局での実行には限界があるはずで、ならば局が垣根を越えてタッグを組む必要があるはずです。しかしながら、番組中にはTBSラジオだけを持ち上げる空気が幾度となく感じられ(たとえば、好きな歌手が他のラジオ局に出演する際に聴くという子どもを持つ親からのメッセージ紹介後、その子どもが聴く局の中にTBSラジオがなかったからか、TBSラジオも好いし同局ならばまんべんなくフォローしているんですよという声が上がっていました。ちょっとだけ過度なフォローアップに感じられましたが考えすぎでしょうか)、実はラジオの将来を憂うゆえのテーマとしておきながら実は、2月の聴取率が前々回に比べて0.4%も落ち込んだTBSラジオについてのみ聴取率を上げたいと思っているのでは…という穿った見方すら生じるほど。その見方が仮に正しいならば、他局のスペシャルウイークの動向を取り上げるわけにはいきませんよね。この考えはかなりの邪推に基づくものではありますが。

 

 

今回の『ぼんやり審議会』ではコサキンの話が半ばタブーになってしまったことも残念ですし、その点を通して"本音と建前"がはっきり見えてしまったことが悲しいですね。無論、社会に出る者には少なからず建前は必要ですが(その点については自分が真逆の人間であるゆえ激しく痛感している次第)、とはいえ先述した3点を踏まえれば少なくともコサキンについてもタブーにしてはいけなかったはずです。いや、もしかしたらしまおさんはコサキンNGワードだと解っていて敢えて三条氏にぶつけ、その上でそれ以上の話の展開を断念したのかもしれませんが。ならば、次回『ぼんやり審議会』があるのであれば、その際は三条氏を排していただき、より本音で語り合える場所であってほしいと思います。しまおさんをはじめ皆が本音を言い難いと思うならば、ネットなどで寄せられた声を、どんな厳しい意見であろうと拾い上げることも大事でしょう。その際は進行役についても、例えば堀井美香アナウンサーや外山惠理アナウンサーのようなより本音が言えるタイプの方を用意することをお勧めします。