この1曲だけで、マーヴィン・サップの新譜を買うこと決めました。
マーヴィン・サップが今秋発表を予定している新作から、R.ケリーのソングライティング/プロデュースによる先行曲。周辺が騒がしいRさんですけど、真正面からゴスペルに向き合った時の素晴らしさよ… https://t.co/IuumQqdSDv
— RIN-GO (@hystys) 2017年9月14日
勝手ながら引用させていただいたのですが、音楽ジャーナリストの林剛氏が取り上げたマーヴィン・サップによる「Listen」は、9月29日に発売されるアルバム、『Close』に収められています。
マーヴィンがゴスペル界で確固たる地位を築いた、そのきっかけとなったのが「Never Would Have Made It」(2008)。米ビルボードゴスペルソングスチャートで46週もの間首位を獲得し、同チャートでの最高記録保持者となっています。R&B/ヒップホップソングスチャートで14位、総合ソングスチャートでも82位を記録しており、純然たる(トラディショナルな)ゴスペル曲がジャンルを超えたクロスオーバーヒットとなるのは極めて異例なのです。
今月リリースの『Close』からの先行曲であるタイトルトラック「Close」も純然たるゴスペル曲。こちらも好い曲ではあるのですが、実はゴスペルソングスチャートで伸び悩んでいるのです(最新9月23日付18位、現段階の最高は17位)。
だからこそのテコ入れ…というのではないのでしょうが、今回のR.ケリーの起用はそれも背景にあるのかもしれません。R節炸裂の、美しいゴスペル曲となっています。
さて、林氏がR.ケリーのことを『周辺が騒がしい』と形容したのは、R.ケリーが今夏以降、メディアで"セックスカルト"だと取り上げられているというゆえ。以前彼の寵愛を受けた(と書くと語弊があるかもしれませんが)、K・ミシェルがこの問題についてコメントしており、bmrで記事になっています(9月9日付)。
R.ケリーの歌詞の内容があまりにも卑猥ゆえ"R師匠"と揶揄される...ということはこのブログでも度々書いてきました。その歌詞が彼の実生活から来ているとなると、色々と考えてしまう方は少なくないかもしれません。仮に"...カルト"が事実とした場合、彼の作品に手を出さない、いやそれどころか、たとえば以前ブッシュ大統領を批判したディクシー・チックスに対してCDをローラーで壊すかのような行動を採る方もいるかもしれません。日本では事件で逮捕された瞬間、刑の確定の遥か以前にもかかわらずCDを回収する等の敏感な措置が採られたりもしますね。
しかし、仮に私生活に問題があったとして、これらの曲の輝きは決して失われることないはずです。
ゴスペル、およびゴスペル的な側面を持ったR氏作のR&B集。R&Bの観点から見れば大仰な作品群かもしれませんが、ゴスペルの観点から見れば心揺さぶる曲ばかりと言えます。
人となりと作品の出来不出来について、それがリンクするかどうかという見方は人それぞれだとは思います。しかし、たとえ罪を犯した者であっても改心の可能性があるならば赦し受け入れるという心(イコール余裕)を持つ必要があるでしょう。それでも受け入れられないというのならば...それは理解出来ても、その自身の尺度(受け入れられないというのは"嫌い"という、あくまでその人自身の感情論に過ぎない、と思うのです)を社会一般にも適用する必要はないはずです。ちなみにこれは自分の考えと前置きして書くのですが、ゴスペルは"赦す"という音楽です。美しいメロディを紡ぎゴスペルに新たな風を吹き込める方、林剛氏が仰るようにR.ケリーの『真正面からゴスペルに向き合った時の素晴らしさ』はきちんと素直に評価されるべきだと思います。