イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ミント・コンディション

以前、『J-WAVE TOKIO HOT 100』(J-WAVE 毎週日曜13時)で上昇中と紹介したSuchmos「MINT」。先週の今日、同チャートを制しました。

この曲は彼らの3枚目のEP『MINT CONDITION』収録曲。EPタイトルの”ミント・コンディション”とは『中古レコードの盤質〈新品同様〉を意味する』(Mikiki | Suchmos、スケール感あるアンセムと現代的ミクスチャー・サウンドに向き合った新EP『MINT CONDITION』を語る(1/3) | INTERVIEW | JAPANより)のですが、個人的にはもしかしたら、SuchmosR&Bバンドのミント・コンディション(Mint Condition)を意識しているんじゃないか?思い、今回はミント・コンディションについて少し掘り下げてみます。

 

 

ミント・コンディションは1991年6月、アルバム『Meant To Be Mint』でデビュー。途中、メンバーのケリ・ルイスが脱退したものの、残り5名で現在も活動を続けているバンドです。下記bmrバイオグラフィーにもありますが、R&B界においてバンド形態のR&Bグループは貴重な存在なのです。

Suchmosは6人組。ミント・コンディションは当初6人で活動。これもちょっとしたシンクロニシティではないかとふと。

 

ミント・コンディションの代表曲のひとつが、デビューアルバム収録の「Breakin' My Heart (Pretty Brown Eyes)」。米ビルボードのホットR&B/ヒップホップソングスチャートで3位、そして総合でも6位のヒットを記録しています。

この曲をサンプリング使用した曲は少なくないのですが、元2PMのパク・ジェボム(Jay Park)が今月15日に公開した「I Don't Disappoint」もそのひとつ。元曲のイントロ等を印象的に配した仕上がりで、潤いのあるパクの歌声とミント・コンディションの元ネタが相性が好いと感じます。

SuchmosのEPタイトルといい、パク・ジェボムといい、このタイミングでミント・コンディション(および彼らの曲)を用いるとは、偶然にしては出来過ぎな気がするのですが気のせいでしょうか。

 

 

ちなみに、元メンバーのケリ・ルイスは脱退の前、R&Bシンガーのトニ・ブラクストンと結婚(2009年に離婚)。2000年リリースのトニのサードアルバム『The Heat』の表題曲などを手掛けています。夏にピッタリのタイトルながらトニの低音が映えるクールなアレンジが心地いいですね。

トニ・ブラクストンについては、5月にファーストアルバム『Toni Braxton』およびセカンドアルバム『The Heat』が再発。リミックスを大挙加えた2枚組となっていますのでこちらも是非。

 

 

先に、『R&B界においてバンド形態のR&Bグループは貴重な存在』と書いたのですが、実は最近になってバンド形態が増加しているのです。

ハイエイタス・カイヨーテ「Nakamarra」は一昨年のグラミー賞、ベストR&Bパフォーマンス部門にQ・ティップをフィーチャーしたバージョンがノミネート。下記は客演なしのオリジナル版。

ジ・インターネットの「Dontcha」は、ディアンジェロおよび彼の影響を受けた曲を集めたコンピレーションアルバム、『New R&B primer ~新R&B入門~』(2016)の最後を飾るナンバー。

そういえばディアンジェロ自体、一昨年末のアルバム『Black Messiah』のクレジットが”ディアンジェロ・アンド・ザ・ヴァンガード”となっておりバンド名義(形態)になっているのは興味深い流れですね。

 

そして、”ミント・コンディション”をアルバム名に冠した邦楽ミュージシャンも。CRAZY KEN BANDが2010年にリリースしたアルバム『MINT CONDITION』では、シングル曲「1107」のアルバムバージョンの他、アルバムタイトル曲も収録。昭和歌謡等様々なジャンルを自己流に咀嚼する彼らですが、ソウルの要素も多分に持ちあわせており、ある種R&Bバンドといえるかもしれません。

 

 

と、雑なアプローチではありましたが、R&BバンドのアルバムやEPにその名が用いられるミント・コンディション。彼らの名曲をサンプリングした作品も登場し、またR&Bバンド自体も増えてきていることから、この流れでミント・コンディション自体の再評価につながってくれたならと思うのです。個人的には、洋楽にどっぷり浸かりはじめて間もない頃にリリースされたこの作品が大好きなので、またこのような作品をリリースしてほしいと切に願っています。